「で、みんなを集めてどうしたの?」

おれ達は会議室にいた。

どうしてアレスティナが戦争を仕掛けてきたのか・・・全てを伝えるために。

「まず、わかっていることだけ話す。敵の狙いは・・・カノンだ」

「カノンって・・・啓太の剣でしょ?」

「そう。永遠神剣第一位・・・『神光』だ。アレスティナは、それを狙っている」

「たった一本の剣で・・・?」

信じられない、という顔をするみんな。

それはそうだろう。

この剣だけでそれだけの人々が戦争に巻きこまれるというのだから・・・。

だが、実際戦争と言うのはそういうものなのかもしれない。

相手の物が欲しいから・・・。

相手から物を奪い取ってしまえばいいんじゃないか?

そういう単純な欲望が戦争になってしまうのかもしれない。

「カノンには、それだけの力があるってこと。そして・・・今のアレスティナは、アレスティナであって、アレスティナではない」

「どういうこと・・・?」

「今のアレスティナには・・・叶さん側・・・つまり、オレ達と同じような、異世界の人がたくさんいて、国を乗っ取ったんだ。カノンを奪うのに最適なこの世界で、カノンを奪うために・・・」

「だから・・・戦争を起こしたっていうの!?」

「そういう奴ららしい。残念だけどな・・・」

悠人の苦しい声が、その場を沈めた。

何も、心を痛めているのは現地人だけではない・・・。

この世界を第二の故郷として慕っている悠人達も・・・そして、俺も。

「じゃぁ、カノンだけ渡せばいいんじゃないの?」

「・・・強力な力を手に入れた人間は、その力を使いたがる。なんかで知った」

「・・・仮に、今カノンを渡したとしても、その力でいずれカオストロを制圧しにくるということだ。カノンが相手にわたってしまえば、こっちには対抗できるだけの力はなくなるからな・・・」

敵がどういう目的でカノンを欲しいのかは知らないが、少なくとも渡してしまったら、本当の平和は2度と訪れない・・・。

そんな予感がした。

だからこそ・・・カノンを渡すことはできない。

「それって・・・一時凌ぎにしかならないってこと?」

「そういうことだ。根本的な問題は・・・異世界の人をこの世界から追い出すことだ」

「そう・・・この世界がこんなにも狂ってしまったのは、俺や俺の兄貴と、カノンの覚醒・・・そして、そこからアレスティナにすくう叶さん側の人間が、この世界で活動しはじめたからなんだ。叶さんが言うには、この世界の戦争は、あと二〇年は続いていたらしい」

悠人達はどういうワケかは知らないが、この世界に来る運命だったらしいが。

「そうなの・・・?」

「・・・ええ。それで、大災害・・・地震が起きて、戦争は済し崩しに終了したわ」

「・・・」

あまりに重たい事実に、誰もが声を出さない。だけど、受け止めてもらわないといけないんだ・・・。

 

俺は軽く息を吐いて、言葉を紡ぎ出す。

 

「・・・今回の事は、全て俺に責任がある。カノンを覚醒させて、敵を刺激してしまった。俺は弱かった・・・だから、カノンに頼って、力をもらった・・・そんな行動が・・・平和を思って行動したのが、結局はこの世界に新しい混乱を生み出してしまった」

「啓太・・・」

「俺の行動は、結局この世界にとっては必要のないことだったのかもしれない・・・だから、俺はなんとしても、アレスティナにいる異世界の人々を、この世界から追いださなくちゃいけない。それが、俺がこの世界にできる、最後の行動・・・だからみんなに、お願いしたい。このくだらない戦いを終わらせるために、力を貸してほしい・・・!」

俺は頭を下げた。

 

 

 

「顔をあげろ」

 

 

 

「メシフィア・・・?」

「みんなの顔を見ろ」

「・・・」

みんなの顔は、やる気に満ちていた。

不安などまるでないように・・・。

「啓太がカノンを覚醒させたのが原因かもしれない。だけど、この世界で起こってる事は、この世界の人全員で対処するべきだ。だから、そんな顔するな」

「・・・」

「それに、アンタの行動だってまちがってなかったんじゃない?だって、アンタがいなければあと二〇年は戦争続いてたんでしょ?」

「メルフィー・・そうだけど・・・前の世界では、アレスティナと戦争は起こらなかったはずなんだよ・・・」

「それは、あくまで『前の世界』は・・・でしょう?『この世界』は、『前の世界』とは違います。だから、叶さんが見た物とは違う歴史が生まれて当然じゃないですか」

「レイナ・・・」

「だから、みんなで決着つけようよ、啓太。ボクも力貸すから」

「アエリア・・・サンキュー」

「私達も、忘れないでください」

スピリット隊が答えた。

「悠人様も、啓太様を手伝うようですし・・・力を貸さない理由はありません」

「エスペリア・・・ありがとう」

「んじゃま、泣き虫君のために力を貸すとしますかね」

「光陰・・・」

「そんなしょげた顔しないの。気に食わないヤツは全員で倒す。それだけでしょ?」

「岬、それはどうかと・・・」

「ま、あんまり深刻になるなって。これだけ仲間がいれば、アレスティナにいる、異世界の人たちを追い出すなんて、簡単だろ?」

「悠人・・・そうだな。きっと・・・できるよな」

「幸せ者だね、啓太君は」

「・・・そうですね、本当に・・・」・・・

 

 

 

 

 

「さて・・・と」

オレ達はアレスティナとカオストロの間にある川を越えようとしていた。

ズゴォォォォォォ!!

橋の下はすごい激流だ。

しかも・・・橋の位置も高いから、落ちたら本格的に助からないな・・・これは。

「カノンよぉ、なんで敵がいないんだろ?」

俺は思う。

だって、ここならば橋を落とすだけでかなりのダメージを与えることができるし、アレスティナとの道も一つ減る。

そうすれば、アレスティナがどこから攻めてくるかわからないオレ達は、防衛ばかりになる。

なのに・・・なぜだろう?

{・・・油断ははやいんじゃないか?}

「わぁってるよ。警戒は怠ってない」

今回は、偵察任務ということで、戦力は半分ももってきてない。

オレがいるだけで半分持っていってるようなものだが。

俺と、悠人と、メルフィー。メルフィーはなにげに頭が良いから、地理も得意らしい。

「橋を渡ればすぐにアレスティナ領よ。どこまで偵察するつもり?」

「そうだねぇ・・・宣戦布告してきたってことは、領ギリギリの場所に軍事拠点を置いてる確率が高いし、そこまでくらいかな・・・」

「うっかり敵に見つからないように気をつけないといけないな」

「そう言ってる悠人が見つかったりしてな」

「アホか」・・・

 

 

 

ゴォォォ!!!

 

 

 

「・・・風が変わった?」

「なんだか・・・この感じ、どこかで・・・」

身が裂けるような空気・・・。

「俺は嫌でも覚えてるぜ?これは・・・あの時だ。兄貴と・・・秋月があらわれたとき」

『ご名答・・・』

橋の向こうから、相も変わらずまがまがしい雰囲気を纏った秋月が出てきた。

「さすがだね。オレ達の動きがわかってたのか」

「貴様のカノンは永遠神剣に特につよく反応するからな」

「・・・カノンのせいか」

オレはカノンに力を込める。

もちろん、刃を曲げようと。

{ま、待て待て!折ろうとするな!}

 

 

「啓太、下がってろ」

 

 

悠人がずいっと前に出る。

「そうだ。俺の狙いはおまえだけだ、高嶺悠人・・・!!」

「フルネームで呼ぶな。瞬」

「今日こそ、貴様を求めごと破壊してやるっ!!」

瞬はすぐさま構えた。悠人も構える。

「させない・・・俺がおまえを倒すッ!!」

二人は一気に間合いを詰めた。

橋の上だが、それをちっとも感じさせない安定した戦いだ。

「うぉぉぉぉ!!」

 

バキィィッ!

 

鈍い音がして、二つの剣が重なりあう。

「貴様は壊れるべきなんだ!大人しく壊されろォォォォォ!!」

「ぐっ・・・!」

悠人が押しまけ、そのまま後ろに飛ばされた。

そのまま瞬が追撃に入る。

 

パキィィンッ!

 

なんとかバリアで凌ぐ悠人。

すぐさま剣で応戦して距離を取る。

「くそっ・・・!」

「貴様みたいなクズは所詮それが限界なんだよ!!」

「うるさい!それでも・・・俺は負けられないんだ!!」

悠人がしかけていった。

 

スッ・・・

 

「しまっ・・・!!」

悠人の、冷静さを失った一撃を軽くかわす瞬。

そこに、大きな隙ができた。

「うらぁぁぁ!!」

 

 

ブシュゥゥッ!!

 

 

瞬の横薙ぎの一太刀が、悠人を深く切り裂く。

「ぐおあっ!!!」

傷を押さえてかた膝をつく悠人。

圧倒的に瞬が有利だ。

オレ達はその場を動かない。

動きたい気持ちはあった・・・だが、それで勝てたとしても、悠人はきっと軽蔑する。

オレたちと・・・それ以上に、悠人自身を。

「これが貴様の限界だ。わかったか」

「まだ・・・負けてない・・・!!」

ゆっくりと立ち上がる悠人。

力を入れるたびに傷から血が吹き出る。

「まだ・・・終わりじゃない!!バカ剣!誓いを砕くんだろ!?もっと力を貸せッ!!」

悠人の存在感が増していく。オーラを纏い始めた。

「甘いんだよッ!!そんなもので勝てると思っているのか!!!」

瞬も、悠人とは正反対の色のオーラを纏い始めた。

「待ってる仲間のためにも・・・負けてたまるか!!」

「スピリットと傷の舐め合いばかり気にしている貴様はッ!!佳織の傍にいていいはずがないんだよォォォッ!!!」

二人が一気に間合いを詰め、剣を振り下ろした。

 

 

ドォォォォォンッ!!!

 

 

二人のオーラが激突し、大きな爆発を引き起こした。

眩しさでオレ達は目を閉じる・・・。

 

 

 

 

 

そこに広がっていた光景は、当たり前のものであった。

「がはっ・・・!ぐっ・・・!」

悠人が口から血を吐いて、倒れこむ。

悠人は・・・負けた。

「わかったか?貴様は一生かかっても勝てない。負け犬はくたばれよ!」

「こんなとこで・・・死ねるか・・・ッ!」

それでも立とうとする悠人。

だが、両手足に力が入らず、地面から体があがらない。

「スピリットは所詮戦いの道具。それに感情なんか入れるから勝てないんだよ!」

「うるさい・・・!彼女たちは・・・道具じゃ・・・ない!!」

「オラァッ!!」

傷口をもろに蹴り込む瞬。

「がはっ!!ぐっ・・・」

「力もない貴様が、言葉だけ言ったって意味がねぇんだよ!負け犬が!!大人しく死ねぇっ!!」

「ぐ・・・そぉぉ・・・!」

瞬が悠人に剣を振り下ろす・・・。

 

 

 

パシッ・・・

 

 

 

「・・・邪魔スルナッ!!」

俺は瞬の剣を受けとめた。

「けい・・・た・・・?」

「勝敗はあきらかだ。これ以上戦うまでもないだろ」

「ウルサイッ!!コロス・・・コロス!!」

{ダメだ・・・コイツの意識は・・・もう}

「・・・なんとか・・・ならないのか?」

{・・・}・・・

カノンの返事がこないことに、もう助けられないと悟る・・・。

でも、俺がコイツを倒しても・・・意味がない。

決着は・・・二人の手でつけさせなきゃいけない。

「・・・」

「ジャマだ・・・!消えろッ!!」

俺の手から剣が離れた。

(くるっ・・・!)

俺はすぐに身構えた。

 

しかし・・・瞬の剣は、悠人を狙っていた。

 

「悠人・・ッ!!くそっ!」

気付くのが遅すぎた。

瞬は突きの態勢で、もうかなりの勢いがある。

カノンを突き出しただけじゃ、弾かれる・・・。

俺はその間に割って入った!

 

 

 

 

 

ブシャアァァァァッ!!!

「ぐっ・・・うあ・・・」

瞬の剣は、俺の胸を貫いていた。血が噴水のように吹き上がる!

「啓太ッ!!!」

「フ・・・フフフ・・・カノンの契約者を殺したぞ!ははっ・・・!」

瞬はおもいきり剣を引き抜いた。

{啓太!}

「ま・・・マズ・・・」

頭がクラクラする。一気に体から血の気が引いた。

俺の体・・・傷は治るけど、潰れた物は治らないから・・・な。

もし、心臓が真っ二つに裂けていたら・・・助からないかも・・・。

「け・・・けいた・・・!」

「悠人・・・もっと強くなれ」

「・・・!!」

「ちょっと俺・・・ダメっぽいわ・・・くそっ・・・」

倒れそうになる体をカノンで支える。

「けいた・・・!!」

「しばらく・・・みんなのこと・・・頼むわ」

「お・・・おい!」

俺はカノンを悠人に向け、光を放つ・・・悠人の傷は綺麗に治った。

{啓太!自分の傷を治せバカヤロウ!!}

「ぐっ・・・かはっ・・・!」

もう・・・そんな余力ねぇよ・・・。

カノン・・・。

(カノン・・・いけっ)

{啓太ッ!!}

俺はカノンをメルフィーの方へ投げた。

「秋月・・・付き合えよ」

「なっ・・・!」

俺は油断していた秋月を捕まえて、身動きを封じる。

「離せ・・・ッ!!」

 

ドコォッ!!

 

暴れるので、俺の傷からどんどん血が吹き出る。

「けいた・・・何するつもりだ!!」

「頼むって・・・言った・・・ろ?・・・悠人・・・しばらく、カノン・・・頼むわ」

「お、オイ!!」

 

 

・・・俺は秋月を抱えたまま、橋から飛び降りた。

 

 

(これで・・・なんとか・・・!)

 

 

「離せッ!くっ・・・うおおぉぉぉぉぉ・・・・」

 

 

メルフィーが落ちていく二人を見ると、あっという間に点になり・・・

 

 

 

ザパァァァァンッ!

 

 

 

高い水しぶきがあがった。二人は激流に呑まれ、あっという間に見えなくなってしまった・・・。

「啓太ぁぁぁぁぁ!!」

あぁぁぁぁ・・・と、谷の間でメルフィーの声が響く。

いつまでも谷にはその声が木霊していた・・・。

「くそっ!俺が・・・俺が瞬に負けていなければ・・・!ちくしょう!!」

橋を叩く悠人。

ありったけの怒りと悔やみをぶつけるかのように・・・。

 

 

 

 

 

「それは本当か!?メルフィー!」

メシフィアがメルフィーに掴み掛かるようにして問いただす。

「・・・本当よ。啓太は・・・秋月と一緒に、川に呑み込まれたわ」

「くっ・・・!」

メシフィアは剣を持って部屋を出ようとする。

スッ・・・叶がドアの前に立つと、メシフィアはその場でうなだれた。

今行っても・・・どうしようもないと悟った。

「啓太は・・・俺を庇ったんだ・・・俺が・・・瞬に負けていなければ!」

「悠人様・・・今は、悔やんでも仕方ありません」

「そうだ。啓太はユートにつよくなれ、と言ったんじゃないのか?」

「あ・・・!」

悠人は目が覚めたかのように、顔をあげた。

「それに、彼は不死の能力者じゃ・・・」

「・・・なぁ、エスペリア・・・不死って・・・心臓を貫かれても死なないのか?」

「え?心臓は・・・程度によりますが、大抵は治りません・・・けど・・・もしかして・・・!」

「・・・啓太は・・・たぶん、あの時・・・心臓を貫かれてたと思う」

「そんな・・・!」

再び重たい空気が部屋を包む。

 

 

・・・その空気を破る声がした。

「あなたたちは、彼のこと・・・信じてないの?」

叶の一言だった。

「そんなことあるわけねぇだろ!!」

その一言に悠人が叫ぶ。

「ならば悠人君・・・落ち込む必要はないじゃない。彼が生きてると信じているなら」

「・・・」

「正直、私も彼の状態はわからないし、不安はある。でも・・・彼はそう簡単に死なないって信じてる。会って間もない私なんかより、ずっと時間を共有してきた、あなたたちの方が、もっと強く信じられるはずなんじゃないかしら?」

「叶さん・・・」

「だから、あなたたちは彼が帰ってくるまで、自分たちのできることをやらなくちゃいけないんじゃないの?」

「・・・そうだよね。きっと、啓太・・・生きてるよね」

「アエリア・・・」

「だって・・・啓太だから」

「ふふっ・・・なにその理由?」

部屋に笑いが戻った。

「だ、だって、それくらいしか思い浮かばないんだもん!」

「そうね、啓太だもんね!殺しても死なないヤツだから・・・大丈夫」

「今日子が言うと、本当に殺しそうだけどな」

「光陰、なんか言った?」

「・・・何でもありません」

「メシフィアさん、きっと大丈夫です」

「レイナ・・・」

「きっとひょうひょうと帰ってくるわよ。アンタの顔を見にね」

「そう・・・だよな。メルフィー、レイナ・・・ありがと」

そうやって微笑むメシフィアに、嬉し半分呆れ半分な顔をするメルフィー。

コイツがこういう顔をする時は、大抵が人をからかう時だ。

「なんだかさ〜、メシフィアって本当に性格かわったわよね」

「そうですねぇ・・・啓太さん、惚れられてますねぇ」

「ちょ、もう・・・!」

「こうやって赤くなるのなんて、数ヵ月前まではありえなかったのに。風邪でも赤くならないメシフィアが・・・」

「メシフィアさんも恋の熱には勝てなかった・・・ですね」

「お、うまい!」

「もう・・・勘弁して」・・・

 

 

 

 

 

サラサラ・・・

 

(何かの音が聞こえる・・・とても安まる・・・はっ!)

 

俺は目を開けた。すぐさま確認する。

足・・・ある。

腕・・・ある。

心臓・・・バクンバクン。

ふぅ・・・って・・・

「・・・ここは・・・どこだ?」

俺はあたりを見回す。まるで見たことのない風景だ。

(もしや・・・無人島?いや、でもなんか人が住んでる気配するし・・・ちょっと辺りを探すか・・・)

俺は砂浜を歩く。

 

グラッ・・・

 

「あれ・・・?」

俺はすぐに倒れてしまう。

そういえば・・・カノンがいないから・・・普通に戻っちゃったんだっけ・・・。

(眠いな・・・寝るか・・・そうだな、起きたら・・・再開しよう)

俺は、そのまま意識を放り投げた・・・。

 

 

 

 

「ふわあぁ・・・」

俺は目を覚ます。サラサラした砂を払って、出歩く。

「うーん・・・何にもないなぁ・・・眠れる財宝とか、洞窟とかないのかなぁ・・・」

いつもならこんなシチュエーション、喜んで探険する俺だが、今は状況が状況なだけに、楽しめない。

やっぱり命の確保ができていてこそ、トレジャーハントは面白い。

しばらく歩いても、何も見当らない。

あるのは森だけだ。

(ヤバいな・・・本格的に無人島か?)

しばらく歩く・・・歩く・・・歩く・・・。

 

 

 

 

 

「・・・ウソだろぉ・・・?」

何も見つからない。人がいるけはいはあるのに、なぜか人工物が見当らない。

どうなってんだ・・・?

ぐぎゅるるるる・・・

「うぅ・・・もう少しがんばれないか?俺の腹よ・・・」

俺は呻く腹を撫でる。

「・・・ダメだぁ・・・」

俺はそのまま座り込んでしまう。

もう・・・歩けない。

「・・・こんなところで餓死なんて嫌だぁ・・・・俺主人公なのにぃ・・・」

泣いてもだれも来たりはしなかった。

「メシフィア・・・」

俺は最愛の人を思い浮べて、目を閉じた。

あぁ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・うぇぇぇ?」

なんでか俺は、ベッドの上にいた。しかも・・・隣に女性がいた。

「ま・・・マズイ・・・!これは俗に言う・・・やっちまったというヤツか!?」

俺はいそいでベッドを降りる。

そこで、現実を突き付けられた。

 

 

 

裸・・・だった。

 

 

 

「うおあ!?」

俺は引っ掛けてあった服をいそいで着る。

(お、落ち着け!俺はどうしてココに!?・・・あれ?)

気が付けば、俺は家にいる。

木造だが・・・。

俺は確か、外で寝てしまったはず。

なんで・・・ここにいる?

そうか!

俺の頭脳がはじき出す答え!

それは!俺は無罪だ!

良かったぁ・・・メシフィアにまた殺されるトコだった・・・。

いや、殺されるじゃすまないかもしれなかったな・・・。

っていうことは・・・この女の人が助けてくれたのか。よく見ると、女性は服きてるし。

乱れた様子もなかった・・・。

「・・・腹減った」

安心したせいか、再び鳴りそうになる腹をおさえる。

「・・・とりあえず、起きるまでヘタれてるか」

俺は床にべたーっとなった。さすがにまたベッドに入るのは気が引けるし。

「・・・ぐぅ」

なんだか知らないけど、寝てしまった・・・。

 

 

 

 

 

「ぐぼっ!!」

俺は、重たいものが乗ってきたせいで起きる。

「あ、あら・・・ごめんなさい」

「・・・いえ、大丈夫です・・・」

女性が起きたようだ。何も俺を踏まなくても・・・床で寝てたのが悪いんだけどさ。

「体は大丈夫?」

「はい、なんとか・・・」

「まさか、この島で人が行き倒れるなんてね」

そう言って笑われた。

「す、すいません・・・初めてきたもので」

「めずらしいわね、ここに観光なんて」

「い、いえ!違いますよ!ところでここは・・・?」

「観光でもなく、ここのことも知らない・・・・あなたは誰?」

俺を探るような目で見る女性。

「・・・そんなコト言われても・・・とりあえず、カオストロで戦ってましたけど・・・」

「兵隊さん?」

「そーいう軍隊とは別ですけど・・・ちょっと川におっこちまして」

「あらあら・・・たいへんだったでしょう?」

「ホントに・・・。それで、ここは?」

「・・・追放者の島・・・ジパング」

「!!」

ジパング・・・だって!?

「つ、追放者?」

「ええ。ここにいる人は、それぞれ事情があって、国を追い出された人なの。主に犯罪ね。私は、ここで管理官としてここにいるの」

「危なくないんですか?」

そんな犯罪者と一つの島にいて・・・。

「大丈夫よ。私は人間じゃないもの」

「・・・スピリット?」

「そうよ。だから、これでも結構強いんだから。もちろん、格闘がね。この家も鍵がないと絶対に中に入れないし。木に見えるけど、燃えないし」

「・・・そ、そうですか」

不思議発見だな。スーパーなんとか君を使ったりして・・・じゃなくて。

「スピリットは本来人間に逆らっちゃいけないんだけどね・・・。ま、それもいろいろ事情があるわけ」

「ふぅん・・・だから俺は殺されたのか」

「え?殺された?」

「いえ、カオストロとかエレキクルの人に、ジパングから来ましたって言ったら、いきなり殺された・・・じゃなくて、攻撃されたんで」

「ああ、それはそうよ。この島はいわば刑務所・・・脱獄犯として見られるんだから」

「そうですよねぇ」

「あなたは犯罪者・・・ではないみたいね」

「そりゃもちろん・・・あ、俺以外に、こう・・・黒い、陰気な感じの人はいませんでしたか?」

「・・・見てないけど?」

「そうですか・・・」

となると、瞬は別の所へか・・・たぶん、生きてるだろうなぁ・・・。

「危険人物?」

「まぁ・・・はい」

「大丈夫よ、この島も犯罪者だらけだけど、みんな良い人だもの」

「そう・・・ですかぁ?」

「見てもないのに、先入観で決め付けるのはよくないわよ?」

「・・・はい」

お説教されてしまったぞ。

「でも、どうしますか・・・」

「え?」

「帰る手段よ。あっちから船がないかぎり、帰れないわよ?」

「大丈夫。飛べますから」

「・・・は?あなたってエクステル?」

「ええ、エクステルなんですよ」

「あぁ、なるほど。でも・・・翼ないじゃない?」

「ハーフなんですよ。だから、いざというときだけ」

「ふぅん・・・でも、無理ね」

「ぇぇぇぇ!?なんで?」

「この島は、本土から130q離れてる。普通のエクステルが一回で飛べる距離は60qが限界。もちろん、途中で島なんかないから、休憩はできない・・・意味、わかるわね?」

「・・・マジっすか?そんなむちゃくちゃな設定でいいんですか?」

「仕方ないのよ。こっちから向こうへ行く人なんて、いないんだから」

「・・・はぁ」

「お腹減ってるんでしょ?食べさせてあげるわ」・・・

 

 

 

 

 

「いやぁ、おいしかったです」

この島の物で作られた料理なのに、すごくおいしかった。

メシフィアとは大違いだ・・・なんて失礼な事は心の中だけで。

調味料とかは保存してあるみたいだし・・・普通に生活できるんだな。

「さてと・・・少しは私の疑問にも答えてくれるのかしら?」

「別にいいですけど・・・」

「・・・まず、その服」

「これが?」

「なんで、心臓の部分が突き抜けてるの?」

「だから、そういうけがをしたんですって」

「それで、川に落ちた・・・傷は?」

「あ・・・それは、不死・・・っていう能力なんですけど」

「へぇ・・・本当にいたんだ。不死なんて・・・」

「ええ、まぁ・・・」

「ふぅん・・・じゃぁ次は質問。本土って、今どうなってるの?戦争は?」

「終わりましたよ。カオストロとエレキクルのは」

「どっちが勝ったの?」

「形だけはカオストロですけど、実際は和解って感じです」

俺と悠人の策略でなんとか・・・。

「へぇ・・・あのカオストロが・・・」

「どしたんですか?」

「いや、戦力差はすごくあったのに、誰が覆したんだろうねぇと」

「・・・」

俺だろうけど、言わないほうがいいよな。

「でも、カオストロとエレキクルの『は』・・・ってどういうこと?」

「実は、イロイロ事情がありまして・・・今度は、カオストロとアレスティナで始まりました」

「ふぅん・・・アレスティナがねぇ」

「まぁ・・・私憤みたいなものですけど」

カノン欲しさに道を外れた、異世界の人々・・・みんなやカノンは無事なんだろうか?

「私憤?」

「ええ・・・一本の剣を狙ってるんです」

「剣?」

「はい、俺の剣ですけど・・・」

「持ってないじゃない」

「・・・呼んでみるか」

俺は意識をカノンへと集中させる。

 

 

 

(カノン・・・聞こえるか?)

{啓太!生きていたのか!!}

(おお!つながった!スゴイなぁ。絆の深さってやつ?)

{冗談がいえるほど回復したのか?}

(なんとかね・・・死ななかったよ)

{そうかそうか!}

やたら嬉しそうなカノン。なんだかんだで心配してくれていたのかもしれない。

{いやぁ、死なれたらまた、ただの剣に逆戻りだからな。そんなつまらない剣生はもうこりごりだ}

前言撤回。帰ったら火あぶりの刑決定。

(みんなにも伝えておいてくれる?)

{残念だが、それは無理だ}

(え?)

{契約者が離れすぎて、俺は今ではただの剣だ。まわりに意識を伝えることができない}

(ちぇ)

偉そうな名前をしているくせに、案外使えないヤツだ。

{だから、早く帰ってこい}

(それがさぁ・・・今、ジパングにいるんだ)

{なんだと!?・・・つくづく運が悪い男だ}

(ほっとけや。と、いうわけで・・・しばらくかえれそうにもない。定期的に会話するから、状況教えてくれな。んで、今はどう?)

(先程、悠人・レイナ・エスペリアのチームと、今日子・光陰・アエリアのチームが国境にあらわれた敵軍を攻撃しにいった。相手もこちらの偵察という感じだから、大した戦闘にはならないだろう)

(そうか・・・気をつけてくれよ・・・)

{それはおまえに言いたい。何度死ねば気が済む?あと50回か?100回か?}

(うっさいな。そんなに死んだら寿命なくなるだろうが!!じゃぁな!)・・・

 

 

 

 

 

「というわけで」

「なにが?」

「とにかく、そんな感じで戦争はまた始まりました」

「そうなんだ・・・んで、君はなるべくいそいで戻りたい・・・と」

「そうですけど・・・」

「そういえば、今は何をしていたの?」

「俺の剣に連絡を」

「・・・噂に聞く、永遠神剣?」

「まぁ・・・はい」

「・・・迎えに来てほしい、とか言った?」

「・・・なんでも、今は俺が離れすぎて、意識をまわりに伝えられないそうです」

「使えないやつめ・・・」

「全く・・・ですね」

「じゃぁ、しばらくここで生活・・・ということになるのかしら?」

「まぁ・・・そうですね」

「どしたの?不安でもあるの?」

「いえ・・・女の人と一つ屋根の下っていうのも・・・」

「・・・スピリットにそういう目があるんだ?」

ある意味軽蔑の目で見られる。そういう偏見がある世界でも・・・俺はスピリットを人間と同じように見ていたい。

「だ、だって!」

「そういうの、変り者っていうんだよ?本土に帰ったら、気をつけたら?」

「でも、俺の周りにいる・・・スピリット隊の隊長も、そう思ってますし・・・」

「ふぅん・・・ま、いいけどさ。人間みたく見られるのも、悪くないしね」

「・・・」

「と、いうわけで、はいこれ」

俺は釣り道具を渡された。

「なんですか?」

「今日の昼ご飯と夕飯のお魚・・・期待してるからね?」

「・・・サバイバルっすか」

「ここじゃ、自給自足が当たり前なの。がんばってね」

「・・はい」

「あ、そうそう。私はエルーナ・・・エルーナ・エクス」

「俺は大川啓太」

ハッと驚いた顔をしたあと、すぐに微笑むエルーナ。

俺の変わった名前に驚いたのかな?

「んじゃ、よろしくねー」・・・

 

 

 

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エルーナ・エクス・・・追放者の島『ジパング』の管理スピリット。通常とは別の教育を受けて来たので、人間に容赦ない。

           永遠神剣を持たされなかったが、格闘に優れている。その力は常人では太刀打ちできない。

           必殺技が『必殺!エルーナ風昇天スパイス仕込み卍固め』