そこは冷たかった。
ただ・・・冷たくて、真っ白で・・・何も聞こえなくて・・・。
「あなたが引き取ればいいでしょ!?」
「それが母親の言葉か!!」
これは・・・二人の人間が言い争っている・・・片方の人間には翼が・・・。
「そんなこと関係ないでしょう!?」
「やめてよ!父さんも母さんも!」
二人の間に一人の少年が入ってきた。
(兄貴・・・)
すぐにわかった。
これはあの日だ・・・もっとも嫌いな日曜日・・・。
「あんたは黙っていなさい!」
バシッ!
母さんは遠慮なく兄貴を叩いた。
「あうっ・・・」
「おまえ!今自分が何をしているのかわかっているのか!?」
父さんはその姿を見て怒鳴る。
「なによ!あなただって家庭の事も知らないで!」
「それは・・・!悪かった!」
父さんが頭を下げた。しかし、それでも母さんの罵声は止まらない。
「そうよ・・・あなたとさえ出会わなければ!」
「なっ・・・!」
あまりの発言に、父さんの顔は真っ青になる。
「そうすれば、この子たちにも会うことはなかったのよ!!」
バチィッ!!
父さんの大きな手が母さんを叩いた。
「いい加減にしろっ!!そんなこと二度と言うんじゃない!!!」
「父さん、母さん・・・」
「なによ!?」
「啓太が・・・見てる」
「「え!?」」
両親は、襖の間からのぞき見ていた、幼い俺を見つける。
「啓太・・・っ!」
「お父さん・・・お母さん・・・ボクがいなくなれば・・・いいんだよね?」
「え・・・?」
「ボクがいるから・・・お父さんとお母さんは喧嘩するんだよね?」
「そ、そんなことないさ」
「ううん。ボク聞いたんだ。ボク・・・!」
幼い俺はそのまま外へと飛び出す。
「啓太ッ!!」
「ふん」
母さんは冷たくあしらった。
「・・・離婚だ。離婚しよう。啓太は絶対に俺が引き取る!」
父さんは、その態度に嫌気がさしたのかそう言い放った。
「おまえがそこまで最低だとは思わなかった!」
父さんはそう言って飛び出す。
「ふん、私にはこの子だけで十分」
「イヤだよ母さん。啓太も父さんも一緒じゃなきゃ・・・イヤだよ」
「わがまま言うなッ!!」
バチィッ!!
怯えるような兄貴を思いきりひっぱたく。
「うあっ・・・」
幼い兄貴はそのまま気絶してしまった。
そして・・・その兄貴をひきずるようにして母さんも家を出る。
(・・・思い出・・・なのか・・・?これが・・・俺の・・・!?)
俺は目の前で起こった惨劇に、考えがついていかない。
こんなことが・・・!?本当に・・・?
そして、場面は川の近くに変わる。
「・・・」
幼い俺は、川に写った月を見ていた。
綺麗な満月・・・このとき、俺はどう思っていたのか・・・それは覚えていない。
だが、その暗い顔をみるかぎり、晴れた気分ではなかったのだろう。
「・・・」
「どうしたの?」
「・・・誰?」
幼い俺の近くに、女性が立っていた。
優しいカンジ・・・。その顔は・・・
「・・・はっ!?」
俺は飛び起きる。
(・・・)
「起きたか?」
「あれ?なんでメシフィアが?」
「随分うなされていたようだったからな。側にいた」
「そっか・・・ありがとう」
どうしてうなされていることに気付くのか、と問うところだが、それよりも今まで見ていた夢が信じられなくて・・・恐くてそれどころではなかった。
「メシフィア・・・」
「どうした?随分げんなりしているが」
「・・・手をかしてくれないか?」
「こうか?」
メシフィアの差し出された手をとり、両手で大事に握り、おでこにあてた。
「どうした?」
「・・・恐い夢を見た」
「・・・そうか」
メシフィアはそれ以上言わず、ポンポンと俺の背中を叩いてくれた・・・。
「ありがとう。落ちついた」
「そうか。良かった」
「・・・さて、メシフィアのおかげで元気になったし、今日は何をするかな!」
俺はタンッとベッドから起きる。
(うーん、左腕があるっていいなぁ)
つい肩回しなんかしちゃったりして。
「今日は予定ないのか?」
「ああ。でも、修業でもしておいたほうがいいか・・・?」
帰って来たとはいえ、これからも戦争は続くのだ。
「いや、今日くらい戦争は忘れろ」
「え?」
メシフィアから意外な一言が飛び出した。
「今日は特別な日だからな」
「特別?」
「そうだ。今日は、この世界が作られたとされる記念日なんだ。だから、絶対に争いをおこしてはいけない。戦争中でもだ」
「ふぅん・・・宗教みたいなものか」
不思議な習慣だが、いまさら一つくらい不思議が増えても驚かない。
「だから、今日は私に付き合え」
「そうだね、それもいいか」・・・
「で、どこに行くの?やっぱり孤児院?」
「今日はデートしようと思う」
「・・・デート!?」
メシフィアに似付かわしくない単語が俺の脳味噌を直撃した。
「ああ・・・ダメか?」
「べ、別にいいけど・・・。どこに行くの?」
「メルフィーが、そういうのは男性が考えるものだって言ってた」
「・・・あんにゃろ。まぁいいや。んじゃ、プラプラしますか」
「それもいいな」・・・
「おっ、アイスクリーム?」
「アイスクリーム?名前が違う。でも、それはとてもおいしいぞ?」
「じゃぁ食べようか!」
「そうだな」
意外と乗り気なメシフィアの分も買う。
「ほい」
「ありがとう」
どうやら、やっぱりこれは見た目通り、俺の世界でいうアイスクリームのようだ。
「甘いな」
「そうだ。だが、おいしい」
「うん、久しぶりにこういうの食べたな」
俺はその甘さに酔い痴れた。城でだされる料理はおいしいが、どうも高級感ありすぎて食べにくい。
「あ、メシフィア」
「ん?」
「鼻にクリームついてる」
「む?」
指でクリームを取るメシフィア。それを舐めて取る。
食べながら首を回すと、なんとなく目につく店を見つけた。
「おっ、あそこの店なんか面白そうじゃん。行ってみようぜ?」
「ああ」・・・
そこは、オルゴールやらなにやらを扱っている店だった。
「おっ、これ良くない?」
「これは・・・」
俺が良いと思ったのは・・・
クジラ?
イルカ?
と問いたくなるような、とにかくそんなかわいげのあるようなないような魚のガラス細工が、回るようになっているオルゴール。
俺はネジをまわして曲をかける。
「どうかな?」
「うん、良い曲だ・・・」
本当に良かったようで、目を閉じてうっとりしている。
「これください」
俺は会計をすます。
「はい、コレ」
俺はオルゴールを手渡す。
「え?ケイタが買ったのだろう?」
「プレゼント。たまには気取ったマネしてもいいだろ?」
「・・・うん、悪くないな」
照れたからなのか、顔を赤くしてプレゼントを受け取ってくれた。
「じゃぁ・・・お返しにコレあげる」
俺に、いつもメシフィアがつけていたペンダントをくれた。
「これを?」
「ケイタになら、あげてもいいと思った」
「そっか。なら、もらっておくよ」
俺は早速ペンダントをつける。
「どうかな?」
「・・・結構似合ってる」
「そうか。ありがとう。んじゃ、次行こうか」・・・
そして、楽しい時間はあっという間にすぎていき・・・俺たちはある意味お約束の高台に来ていた。
綺麗な夕焼けを二人並んで見る。
「・・・ケイタ」
「なに?」
「綺麗だな」
「・・ああ」
「・・・ケイタ」
「ん?」
「私は、ケイタが心配だ」
「・・・?」
いきなりなんだ?
「何度も何度もけがするし、気付いたらいないし」
「・・・悪い」
「だけど・・・それがケイタだってわかっている自分がいて」
「・・・」
「だから、この夕日に誓ってくれ」
「・・・何を?」
「お互い、必ず戦争終結まで生き残って、平和な世界を迎えると」
「・・・わかった。約束だ」
「うん、破ったら許さないからな」
「オウ。任せろ」
そして、俺たちはお互いを見て、笑いあった。
「で、今回の出撃場所はそこなわけ?」
俺はカノンを持って部屋を出た。久しぶりの出撃命令だ。
「場所はオークランド。そこに、未知の鉱石が発見されたらしい」
「鉱石ィ?」
すっげー胡散臭そう・・・
「もちろんオークランドは我が領だが、相手が黙って怪しいモノを見過ごすとは思えない」
「なるほどね。つまり、安全に解析するために、おれたちがそこで敵の退治をしろと」
「そういうことだ」
「ヤレヤレ・・・国王も人使いがあらいことで」
俺はオークランドの写真を見て、そこをイメージする。
俺の肩にメシフィアの手、メシフィアの肩にメルフィーの手、メルフィーの肩にアエリアの手。
今回、レイナはお留守番だ。留守を任されるほど信頼されてきたらしい。
「んじゃ、いきますっと!」
ブゥゥン・・・・
「・・・うわ」
俺は開口一番、イヤな感じがしてうめいてしまった。
なんだここは・・・?
「・・・おかしいな」
「オークランドが・・・」
メシフィアもメルフィーも愕然としている。
「なぁ、オークランドってこんなとこなの?」
「いかにもなんか出そうって感じだよね・・・」
アエリアは恐いのか、俺の腕に捕まってきた。たしかに、ここには異様な空気が漂っている。
空には青い部分がちっともないし、薄い煙のせいで視界も悪い。
なにより、人がいるけはいがちっともない。
たまにカサカサ、と新聞らしきものが転がっていく。唯一人がいたと証明できるものだ。
「前に来たときは、もっと活気にあふれていた・・・何があったんだ?」
「なんだか・・・薄気味悪いわ」
「とりあえず鉱山の方にいってみるか」・・・
「・・・ん?誰かいる?」
「ホントだ」
俺たちは身を潜める。
何者かわからないのに身をだすわけにはいかない・・・。
「なんだか薄気味悪かったな」
「ん・・・」
「そうですね・・・」
「いったいどうしちゃったんだろ?」・・・
俺たちみたいなご一行のようだ。一人男がいる。
「ま、おかげで偵察任務は終了。鉱山に脅威はナシと」
「では、いそいでエレキクルに戻りましょう」
(エレキクル・・・敵国か)
「ん・・・待て。ユート」
「どした?」
「・・・誰か、いる」
「なに!?」
瞬時に敵が全員臨戦態勢に入ったのがわかる。
「みんな、いくぞ?」
「わかった」
「アエリア、大丈夫?」
「うん」・・・
俺たちは姿を現す。
「いや、まぁなんちゅーか、覗くつもりじゃなかったんだけど」
「あ・・・あなたは!」
「え?メルフィー、あいつ知ってるの?」
「知ってるも何も!なんであんたは知らないの!?敵よ!」
「敵?」
「と、なると、おまえらはカオストロの?」
「そういうこと。目的はそっちと同じ偵察ってとこ。でもま、報告も盗み聞きできたし、あとはここがどうしてこうなったのかを調べるくらいかな・・・」
「そうか。なら、俺たちは帰るか」
「パパ!やっちゃダメなの?」
「何もこんなところで・・・」
男はあからさまにいやそうな顔をする。俺だってこんな陰気なトコで戦いたくない。
「ユート、奴らはかなり強敵だ。いまのうちに叩いておくべき、だと思う」
「・・・どうする?バカ剣」
{知らん。勝手に考えろ}
男が手に持ってる剣に話し掛けた。その剣がぶっきらぼうに答える。
「ふぅん、アンタも喋る剣持ってるんだ?」
「ん?おまえ・・・も?」
「ああ、コレ」
俺はカノンを見せる。
{なっ!あれは・・・!}
やたら慌てる相手の剣。
「どうしたバカ剣?」
{カノン様!どうして・・・}
{おお、求めか。なつかしいな}
「ん?知り合い?」
何もわからない3人を無視して俺たちは会話を続ける。
{契約者よ、あの方は我ら永遠神剣の頂点にたつものだ}
「頂点?ってことは、位は・・・」
{ふむ・・・啓太。そろそろ自己紹介といこう。俺は永遠神剣第一位『神光』だ。ちなみに、相手の持っている剣は永遠神剣第四位『求め』だ}
「なんだ、また偉そうな名前かよ。やっぱりおまえはカノンだな」
そこがツッコミ所ではないが、カノンはカノンなのだから今更変な名前が出てきても変えるつもりはない。
{カノン様!どうしてそのような輩と・・・?}
{俺の力に相応しくない・・・か?}
{・・・正直}
素直に言う求め。そういう言葉、結構グサッとくるんだよな。
「アンタの剣、結構失礼だな」
「すまん」
{だが、求めとてそいつに何かを感じた故に契約したのだろう?}
{それは・・・}
{俺は、この啓太が俺に一番相応しいと思った。それだけだ}
「・・・カノン」
「おまえの剣っていいやつだな。このバカ剣と違って」
{だが、我らは敵同士・・・やらねばなるまい}
{カノン様・・・}
{いくぞ啓太!}
「・・・わかった」
俺と悠人が戦闘態勢に入る。他のみんなも同時に入る。
{カノン様、勝たせてもらいます!}
{タダではやられない!}・・・
「はぁぁ!!」
「うああ!」
キィィン!!
俺たちは一気に間合いをつめて剣を交差させる。
「せいっ!」
俺は弾き飛ばし、一歩つよく踏み込んで地面をカノンで引っ掻き、悠人を下から突き上げた。
「うおっ!」
それを間一髪でかわす悠人。すかさず地面を蹴って俺に向かってきた。
あれは突きの体勢。求めの形状では突きに威力はないだろうが、距離を取るためなのだろう。
「・・・」
俺は剣を真っすぐ縦にして動かない。
「決める!」
悠人の突きが啓太を襲う。
スッ・・・
「なっ?」
突きの体勢だった求めは、カノンの剣が少し傾いたせいで、そのまま逸れた。
俺はすかさず体を移動させて突きをよけ、悠人の体を薙いだ。
ブシュッ!!
「っ!」
「・・・」
そこでやられたのは・・・俺だった。
「な・・・なんで?」
まるで見えない剣さばき。確実にあたったと思った俺のカノンはスルーされ、逆に俺の腹が裂けていた。
「はぁぁ!」
「っ!?」
悠人の剣が俺を襲った。
「!?」
俺は乱舞剣を発動させる。振り下ろされる剣を、俺は構えて防いだ。
当然、斬劇が悠人を襲うはずだった・・・。
だが・・そういうバリアではないはずなのに、斬劇は俺に跳ね返る。
ブシュブシュブシュッ!!
「ぐあっ!!」
「勝った・・・はぁ・・・はぁ・・・」
悠人は肩で息をしていた。
{契約者、今回はほとんど我の力があったからだ。しっかりした戦いをしたら、契約者が負けていた}
「・・・?つまり・・・コイツは、手加減していたってこと?」
{それとは違うが、カノン様を扱いきれていない。永遠神剣の加護なしで戦っていた}
「・・・恐ろしいな、コイツ」
倒れて気絶している啓太をみて、感心したような顔をする悠人。
{ああ。カノン様が認めたワケがわかった}・・・
「ん・・・おまえ、強いな」
無表情の、綺麗な顔立ちをした薄紫の髪をした女性。
「少しはな」
「ユートの命令だ。手を抜けば死ぬ」
「ここでやられるわけにはいかない。それが、ケイタとの約束」
「ん・・・。いく!」
「!!」
一瞬で間合いをつめられた。
フッ!
軽く後ろに飛ぶ。するとアセリアの剣はからぶる。
「よしっ・・・!?」
避けたと思った瞬間、メシフィアの腹が裂けた。
「な・・・っ!」
「まだだ」
驚く間もなく、飛んで開いた間合いを一気につめられる。
「っく!」
キィィン!!
体勢にやや無理があったが、なんとかアセリアの剣を受けとめる。
バシィィンッ!!
そのまま弾き飛ばされ、建物のそばにあったタルに激突して壊す。
「げほっ、げほっ」
埃が舞って、息を吸うとのどにつっかかった。
「おわりだ」
「!!」
埃の中からアセリアが出てきた。剣で防ぐ間もなく思い切り斬られる。
バシュッ!!!
「っあっ!!」・・・
「あなたが私の相手ですね?」
「エスペリア・・・こうして対峙するなんてね」
「本気でいかせてもらいます!」
「こっちだって!」
二人は一気に間合いを詰める。ちょっとだけエスペリアが早い、いや・・・。
「天雷剣!」
メルフィーは剣に魔法を付加したから遅かった。
四宝剣・光に雷が宿る。
キィィン!!
バチバチ!!
「きゃっ!」
剣をあわせると同時に、雷がエスペリアに伝わる。
「せいっ!」
その隙をついて、メルフィーがエスペリアを弾き飛ばすと、そのまま一気に突きに入る。
「決めるッ!!」
「っ!」
パキィィィン!!
「なっ・・・」
「・・・この私の防御力をお忘れですか?」
「しまっ・・・」
メルフィーの剣はエスペリアのバリアによって防がれていた。
「えいっ!」
エスペリアのバリアが光ったかと思うと、光に宿っていた雷が全てメルフィーを襲った。
バチィィィッ!!!
「キャァァッ!!!」
あまりの威力に倒れてしまうメルフィー。感電しておもうように体が動かない。
「これで決まりです!」
エスペリアは槍型の永遠神剣をメルフィーに突き立てる。
「っかはっ!!」・・・
「君が相手なの?」
赤い、ストレートのツインテールをした女の子がそういう。
あまりに小さい、その幼さにアエリアも驚いてしまった。
(こんな子を戦場にだしているなんて・・・)
そう思わずにはいられない。エレキクルの王は他の国よりもひときわ腹黒いらしい。
「オルファ、パパのためにがんばるからね。見ててね、パパ!」
「!」
いきなり高等呪文を唱えるオルファ。
「くっ・・・火の精よ我に力を貸せッ!ボムブレイクッ」
二人の魔法発動はほぼ同時だった。しかし、遅れた分、アエリアの呪文が劣っているのは事実。
ドガァァァァァン!!
二人の間で爆発が起こる。
「くっ・・・!」
ややアエリアよりで爆発したため、アエリアは衝撃波をうける。
「まだいくよ!」
すかさずオルファは次の呪文を唱える。
「・・・まだくる!土の精よ、我に力を貸せッ!グランパニッシャー!」
ズドォォォォン!!!
「なかなかやるね!でも、いつまでもつかな?」
「まだくるの・・・!?こうなったら一気に・・・火の精よ、その力、矢となり敵を貫けッ!ファイア・レイヤー!!」
アエリアの手から炎の矢が飛んでいく。
「えーいっ!」
パシィィィン!
オルファが何かを唱えると、矢は全て消えてしまった。あっけなくアエリアの反撃は消える。
「そ、そんな・・・!」
「おかえし!」
ズガァァァァン!!!
いきなりアエリアの側で爆発が起こった。
「きゃぁぁっ!!」
避けるどころか、受け身も取れずに吹き飛ばされるアエリア。
「う・・・」
「終わりだね。オルファの勝ち!」
「・・・うぅ」
「じゃぁね?」
オルファは容赦なくアエリアに剣を突き立てた・・・。
「全滅・・・か。結構手強かったな、バカ剣」
{そうだな・・・}
勝ったというのに、浮かない声。
「どした?」
{カノン様が選んだヤツが、これくらいでくたばるとは思えないが・・・}
「自分で言ってたじゃないか、アイツはまだカノンをあつかいきれてないって」
{むぅ・・・}
「・・・気が進まないけど、トドメ・・・か。仕方ないとはいえ・・・敵とはいえ・・・やっぱりやりにくいな」
まだうなっている求めを無視して、倒れている四人に剣を向ける悠人。
「ん・・・代わりにやろう」
「いや・・・隊長として、俺がやらなくちゃ。ありがと、アセリア」
「ん・・・」
「まずは・・・啓太・・・とか言ってたな」
啓太に剣を向ける。
「おまえとなら・・・友達になれたかもな。敵で・・・なければ」
「パパ、本当に大丈夫?」
「顔色が悪いです」
「・・・」
「パパ、オルファも手伝う!」
オルファはアエリアに永遠神剣を向けた。
「そうです。いつも一人で抱え込むなって言ってたじゃないですか」
「ん・・・」
エスペリアとアセリアもそれぞれ永遠神剣を向けた。
「・・・悪い、みんな」
悠人が剣を振り上げる。
「ふわぁ・・・」
俺は寝返りをうつ。すると、求めを振り上げている悠人と目があった。
「・・・おはよ」
「お、おはよう・・・」
俺はムクッと立ち上がる。
「カノン、別にあと寿命何才って教えてくれなくてもいいからな」
{そうか}
ちょっとだけ残念そうな声を出すカノン。
「な、なんで動ける・・・?」
{まさか・・・不死?}
{さすがは求めだ。その通り、コイツは不死の能力者だ}
「不死だって?」
「さってと・・・」
俺は見回す。
驚いて剣を構えている四人、悠人・アセリア・エスペリア・オルファ・・・それに、血をだして倒れている三人・・・。
「カノン、治癒して」
{了解だ}
パァァァッと三人は光りだし、みるみる傷は治っていき、光がおさまると外傷はなくなっていた。
「すごい・・・私でもあんなに早く治せないです・・・」
「みんなの応急処置は終わった。んで・・・あとはきみたちなんだけど・・・」
俺は頭をポリポリ掻く。
「かったるいなぁ」
{本当はやる気満々じゃないか}
「まぁね・・・悠人と愉快な仲間達・・・仲間を傷つけた落とし前はつけていってもらう!だれも殺させはしない・・・誰もだッ!!」
ブワァァァァッ・・・・
一陣の風が吹き、啓太の背中から翼が生えた。
「!!エクステル!?」
「で、でも翼は二枚だよ?」
「・・・」
「・・・悠人、おまえにも守らなくちゃいけない物があるように、俺にもある」
「!!」
一瞬だけ驚いた顔をする悠人。おそらく悠人の心中を当てたからだろう。
「だから、俺を殺す気でこい。まとめてだ!」
俺は地面にカノンを突き刺す。
ドゴォォォォ!!
地面が四方に裂けていく。そこから爆発がせりあがってきた!
ドゴォォォォン!!
「ぐうっ!?」
「うっ・・・!」
「きゃああ!!」
「うああ!!」
四人はその爆発に巻き込まれて吹き飛ぶ!
「くっ!いくぞみんな!全員で集中攻撃だ!」
「ん・・・!」
「いきます!」
「いっくよー!」
四人が瞬時に態勢を直し、一斉にかかってくる!
「乱舞剣!」
変形したカノンがブレはじめる。
「せいやっ!!」
それを一気に横に薙ぐ。すると、残劇が一斉に吹き飛び、四人を切り裂いた!
「うああ!!」
「ぐぅ!?」
「きゃあっ!!」
「うああ!!」
四人は建物に打ち付けられた。建物が崩れ、比較的多く残劇をうけたアセリアとエスペリアは沈む。
「ぐっ・・・」
「うぅ・・・」
悠人とオルファは立ち上がる。
「これで終わりだ!竜人剣!」
啓太のかかげたカノンの切っ先に、青い竜が出現した。
「喰らえ!」
カノンが振り下ろされると、竜が一瞬にしてオルファを襲った。
「きゃああ!!」
「オルファッ!!」
竜はオルファにかみつくと、建物を壊しながらオルファを遠くへ吹き飛ばした。
「こっちも終わりだ!」
「なっ・・・!」
俺は一瞬で悠人の前につく。
「うああ!」
ザシュゥゥッ!!
「ぐうぅっ!?」
俺は悠人を切り裂いて吹き飛ばした。
「・・・一丁あがり。んじゃ、俺たちはここで帰るか」
俺はそそくさと三人を固めて、それに触れながら城を意識してワープした・・・。
「つ・・・強い・・・」
{大丈夫か?}
「む、無理っぽい・・・しばらく動けないや」
{あれでも・・・ヤツは手加減していた}
「そうなのか・・・?ぐっ・・・」
{今は自分の体を心配しろ。大丈夫、スピリット達も全員無事だ}
「そうか・・・とりあえず・・・助かったのか?」
{ああ、カノン様は消えた。仲間もな。もともと殺すつもりはなかったということだな}
「そうか・・・啓太・・・か」
{ヤツは今まで、戦っても殺したことはないらしいぞ?}
「そうなの・・・か」
{ああ。未だにその信念を貫いている・・・本当の意味で、ヤツは強くなれるだろうな}
「・・・バカ剣。随分丸いな」
{放っておけ}・・・
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永遠神剣第一位『神光』・・・カノンの正体。瞬間移動、次元の操作、奇跡とも言える治療、自然を操れる力
不死の素質がある者には不死の能力を与える、変形等の貴重かつ、強力な特殊能力を有する永遠神剣。
永遠神剣第一位の割には、今のカノンはあまりに弱い。人の心に光を照らす事を目的としている。
そのわりには、意外と啓太と友達感覚で、精神年齢的には啓太と同じくらいとなっている。
啓太必殺技『竜人剣』・・・カノンの力を借りて、オーラを竜の形へ変えて攻撃する。まるで意思があるかのように目標に向かい、食らうまで追いかける。
威力が高く、一対一でその真価を発揮する。