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{ケイタ。急ぐのだ}
「急いでるよっ!くそっ!」
空模様が、怪しい。
メルフィーから聞いたことがある。
イースペリアで起こった、人的災害・・・・・。
{あの食えない大統領のことだ。おそらく、誰かが止めなければ本当にマロリガンは・・・・・}
「ったく・・・・・何考えてるんだよっ!あそこにはっ!!」
傷ついたメシフィアや、メルフィー。
アエリアにシルビア・・・・・
嫌味な議員とか、何十年って仕えてきた忠臣とか。
「人がたくさん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・む?」
{む。気づいたか?}
「あぁ。なんか弱いけど・・・・・・神剣の反応だ・・・・・」
しかも、近い。
砂漠ということもあって、他にあまり反応がないのが幸いした。
どうする!?
「いや迷うなよ俺っ!!」
俺は急いでその反応に向かって走り出す。
しばらく走ると、遠くでもわかるほど出血した男が倒れていた。
――――!!!
「光陰!!どうした光陰!?」
「・・・・・」
重い体を抱き起こしても、反応がない。
だが、マナになってないということは、まだ助かるはずだ。
{無理だ}
「えっ・・・・・?」
{今からどこへ連れて行く?}
「そりゃ、ラキオスのヤツらん中にグリーンくらい・・・・・!」
{こいつはマロリガン側だぞ。どうして助けてくれる?}
「トドメを刺さなかったんだ。きっと・・・・・それに、ラキオスの悠人と光陰は友達のはずだ!」
{・・・・・どっちにしろ、首都につくまであと5分。間に合わん}
「・・・・・・」
違う。
そんなはずがない・・・・・!
今まで頑張ってきたヤツが、こんな死に方許されるはずがないっ!
刹那、頭に一つひらめく。
唯一、俺が得意としてる神剣の使い方。
「カノン・・・・・オーラフォトン、だ」
{何を言ってる?}
「傷を癒すのに特化したオーラフォトンだ!」
{そしたら、お前は首都にたどり着けないぞ。速度が落ちるからな。しかも、オーラフォトンじゃしっかりした治療にならない}
「だから?」
カノンが言いそうなことなど、とっくにわかっていた。
だが、そんなことはない、そう思う。
{結局、そいつは間に合わない}
「簡単だ。同時に二つ展開させりゃぁいい!!」
{本気か!?これ以上のマナ消費は、お前を苦しめることになるぞ!!}
「だからなんだよ!苦しむだけで死にはしないならいい!さぁいくぞ!!」
{チッ・・・・・・なら、6角形の下も光らせろ!一歩踏み出す度に激痛が走るがな!!}
「上等!」
俺はカノンにイメージを送り込んだ。
白かったオーラフォトンは掻き消え、その代わりに黄金色のオーラフォトンが地面に展開する。
体は軽いままだ。
黄金のオーラオフォトンが光陰に入っては、傷口を本当に少しずつ、癒していく。
「っつぅ・・・・・っ!!」
{ほらみろ。歩くことさえできないじゃないか}
足から体全体に、電撃が走るような痛み。
思わず、顔をしかめてとまってしまう。
「見殺しにはしねぇっ!これ以上死なれてたまっかよっ!」
{ケイタ・・・・・。まさか、兵士が殺されたこと}
「あいつらにだって、家族はいた。誰かが悲しむって・・・・セリアとかいうヤツの方が、この世界じゃ正しいってわかってんだよ!んなこたぁ!!」
{なら、なぜ面識もロクにないコイツを必死で・・・・}
「助けて欲しい人がいて!助けられる力を持ってたら!!・・・・・・・それで十分だろッ!!」
俺は走った。
体全体に、軋むほどの痛みが走る。
だが、とまらない。
自分でも、止められなかった。
{・・・あほぅが}
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
マロリガンは逃げ出す人々で混乱していた。
イースペリアの惨劇を知っているせいか、必死で逃げ出す人々。
俺はその中を突っ切り、城になだれ込んだ。
――――だが、そこには誰もいなかった。
(ぅ・・・・も・・・・・・ダメか・・・・・!)
膝がカクンと折れそうになる。
一歩踏み出して、その足に力を込める。
―――――まだ、倒れるわけにはいかない!
だが、オーラフォトンはもう消えかかっている。
おそらく、カノンの中のマナが限界にきているのだろう。
「地下・・・・・だ」
「え?」
雫の滴る音で消えてしまいそうなほど、小さい声が背中から聞こえた。
気がつくと、光陰の体から温かみが・・・・・。
「地下に・・・・・悠人たちが・・・・・いる」
「光陰!?意識が・・・・・!」
「地下に・・・・連れてってくれ」
「でも・・・治療が・・・・・」
「大丈夫だ・・・・・・俺は、アイツの前でなら、気張れるからな・・・・・。それに・・・・・約束しちまったんだ。絶対行く・・・・・ってな」
「・・・・・・・・・わぁったよ!!いくぞカノン!!」
{・・・・・・}
「・・・・ちっ。本当にマズイのか!くそっ!!」
意識を失ったカノン。
おそらく、これから俺は強制力に縛られる。
でも、これが何かの、誰かの役に立つことになるなら・・・・・
――――後悔しない!!
俺は床を蹴って、反応を追っていく。
いつのまにか景色は禍々しいものに変わり、ものすごい量のマナが、圧迫感を醸し出す。
息苦しいとさえ思うほどだ。
「あそこかっ!!」
複数のマナ反応がある。
特に強いのが、二つ・・・・・・。
「っ!!光陰!もう行けるな!?」
「ああっ・・・・・!ありがとよ!!」
「っ!行けっ!止めなかったら許さねぇからな・・・・・っ!」
俺は膝にキて、走りながら倒れこんだ。
背中から飛び降り、駆け出していく光陰。
遠慮なく俺を見捨てていく様が、いかにもヤツらしい。
わかってるんだ。
一刻を争う時だということが・・・・・。
(ぅ・・・・・ちょっと、カッコつけすぎたな・・・・・・)
傷を負ったわけでもない。
戦ったわけでもない。
それでも、体のあちこちが痛む。
引き裂かれるような、激痛。
声を押し殺すだけで精一杯だった。
{マナが足りなくなってるんだ}
(カノン・・・・・?)
{俺の中のマナはとっくに尽きてた。お前は、無意識におまえ自身のマナを使ってたんだよ}
(・・・・・?)
{もう少し使い続けていたら、お前の体が維持できなくて、消えていたところだ}
(そか・・・・・)
{これから・・・・・俺の意識は、眠りにつく}
(え・・・・・・)
{神剣の位まで上げて、ここまで酷使したんだ。お前の全てを奪われると思え}
脅しじゃない。
いつのまにか、カノンの言葉に優しさは消えていて・・・・・
まるで、獲物を前に舌なめずりする獣―――――
(・・・・・・ぁ)
地面が・・・・・揺れている気がする・・・・・
戦ってるのかな・・・・・
疲れた・・・・・
もう・・・・・目も開けられないや・・・・・・
【啓太君】
(・・・・・・・え)
【頑張ったね。カッコ良かったぞ】
(・・・・・この声)
【初めての戦場で・・・・・・あれだけのことができるなんて、すごいよ】
(かな……)
【やっぱり君は私の思った通りの子だった。体の痛みは取っておいてあげるからね?】
(え………)
【お休みなさい・・・・・・】
(さん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
ゆらりゆらりと・・・・・
不思議な温かさを感じながら・・・・・・・・・・・・・
俺の意識は・・・・・・・・
飛んでいった・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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