怖かった。

自分を見つけてくれる人がいなくなることが。

誰にも必要とされなくなることが。

 

 

あの人は全てだった。

あの人がいなければ、何も見えなかった。

だから、逃げた。

 

 

あの人のいない現実から、逃げた。

もとからいなかった―――そう思わないと、何かが砕けそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、あいつは言った。

楽しいことをつまらなくする過去なんて、捨てちまえ――――――

 

 

そうしようと思った。

それが正しいと思った。

 

 

でも、できなかった。

捨てようとすればするほど、楽しかった時の記憶だけが蘇ってくる。

 

過去は穴を岩で塞いでもわらわらと這い出てくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――どうしたらいいんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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CONNECTING・FATE

                           〜 奇跡に手を伸ばして 〜

 

 

 

 

 

                               〜第2幕〜

 

 

                            後戻りのできぬ道

 

 

 

 

 

 

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空が光った!

そう認識した瞬間、地面を激しく揺らす爆発が起きる。

耳が突き破られそうな爆音が、脳に直接響く。

グラグラとして、直立していられなかった。

 

 

 

 

「っ・・・・・・・」

 

 

 

 

突然の吐き気。

なんとも言えない汚臭が漂ってくる。

だが、その臭いはすぐに消えた。

 

 

 

 

「・・・・・・・」

 

「スピリットは、殺されるとマナになる。髪の毛一本すら、残らない。吐き出した血も。死体の臭いすら、な」

 

「・・・・・」

 

「どうする?その目に刻むか?」

 

 

 

 

俺は再び、恐怖を覚えた。

今、俺は戦闘地域からかなり離れた場所にいる。

物音と臭いしかしないのに、それだけでこのザマだ。

斬られる様を見たら、自分がどうなるかわからない・・・・・・。

 

 

 

 

「・・・・・そうか」

 

「・・・・・・メシフィアは、いつもこんな・・・・・っ!?」

 

 

 

 

また、爆発音。

地面が揺れ、竦んだ足がガクガクと揺れて、俺は座り込んだ。

 

 

 

 

「そうだな。こういった戦闘は、初めてじゃない」

 

「慣れた・・・・・・・・ってこと?」

 

「慣れなければ・・・・・・・・心が壊れるからな」

 

「っ。俺が・・・・・・・こんな戦いを・・・・・・?」

 

「ああ。いつかは・・・・・しなくてはいけないのだろう」

 

「・・・・・」

 

「む・・・・・・?」

 

 

 

 

俺はヘナヘナと座り込んだまま、地面を撫でる。

すると、わらわらとラキオスの兵士らしき人たちが、俺たちを取り囲んだ。

ざっと、12人くらい。

 

 

 

 

【なんだぁこの女二人】

 

「・・・・・・俺も女か」

 

「まぁ・・・・・・初対面で、そんな座り方をしてればな」

 

【おい、髪が蒼いぜ?スピリットじゃねぇのか?】

 

【バカ。スピリットの青ってのはもっと禍々しいんだよ。ありゃ、あーしてれば襲われないとでも思ったんだろうぜ】

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

どうやら兵士のようだ。

そのくせ、メシフィアを知らないとは勉強不足にもほどがある。

 

 

 

 

【しかし・・・・・・両方かなりの上玉じゃないですかぃ?】

 

【ああ。茶髪の方は少しカラダが物足りないがな!】

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

そのイカツイ男が笑う。

そんなブ男だから、モテたこともないのだろう。

だから、俺を女と勘違いするんだよ。

 

 

 

 

【姉ちゃんたちよぉ。ちょっくら相手してくれよ。なぁに、すぐ終わるさ】

 

【よく言うぜ。まだ物足りねー!とか叫んでぶっ壊すまで続けるくせに】

 

【今回は特に続きそうだぜぇ・・・・・・。なにより、その目がいい。絶対に屈服しないような気高い目・・・・・・・いいねぇ】

 

 

 

 

舌なめずりをして、メシフィアの体を嘗めるように見つめる男ども。

今、メシフィアは鎧をつけていない。

胸のふくらみ、ウェストのくぼみ、それらが服の上からでもわかる。

そして、男どもが一斉にゴクリとツバを飲んだ。

 

 

 

 

「お前ら・・・・・・」

 

【あん?】

 

「今まで占領してきた国でも、しようとしてることをしてきたんだな?」

 

【そうだなぁ・・・・・・・もう数えるのも忘れちまったぜ。すぐ壊れちまうしよ!】

 

「・・・・・・」

 

【姉ちゃんはすぐには壊れてくれんなよ・・・・・・!?】

 

「ケイタ。これが、戦争だ」

 

「・・・・・」

 

 

 

 

メシフィアの体が震えてる・・・・・・・。

それは、怒りなのか恐怖なのか、それとももっと別の感情なのか。

 

 

 

 

「本当は、お前にだけは・・・・・・・見られたくなかった・・・・・・」

 

「え・・・・・・?」

 

「絶対に目を閉じるな。その目で、私だけを見続けろ」

 

「メシ・・・・・・・・・!?」

 

 

 

 

一瞬だった。

包囲網とは、10メートルは距離があったはず。

それを、一瞬で詰めた。

 

メシフィアの振るった長剣は、一人の兵士の首と胴体をキレイに切り離し、血が噴水のように噴き上がる。

 

 

 

 

【なっ・・・・・・・ぐぅっ!?】

 

「痛みはない・・・・・・一瞬だ」

 

 

 

 

それからは、模範的な虐殺だった。

 

首と胴体を切り離された者。

叩きつけられ、骨が砕け散り、身長が半分以下になった者。

首を折られ、口から泡を吹いて白目を剥いた者。

蹴り飛ばされ、頭が砕け散り、脳が飛散する者。

 

 

最後に残ったのは、失禁して地面を濡らして腰を抜かしたヤツ。

メシフィアを笑っていた・・・・・・イカツイ男だ。

 

 

 

 

「っ・・・・・」

 

 

 

 

見ていられなくて、俺は顔を背けた。

吐き気がする・・・・・

こんなの、こんなの・・・・・・っ!!!

 

 

 

 

「目を背けるな!!」

 

「ッ!!」

 

「お前はこれから、何人もこういう目にあわせなくてはいけないんだっ!」

 

「やだ・・・・・」

 

「スピリットを殺すのは、なぜ簡単か知っているか?」

 

「・・・・・」

 

「殺したという感覚が残らないからだ。死体も、臭いも、血も・・・・・・何もかも消えていく。そして、それを悲しむ者さえいない」

 

「やめろ・・・・・・」

 

「それに、神剣がマナを得ると契約者に高揚感を与えるそうだ」

 

「やめろって・・・・言ってるだろ・・・・・・・」

 

「だが、やることは、これと同じなんだ」

 

「やめろぉ・・・・・」

 

【ひ、ひぃっ!た、助けてくれぇ・・・・・・っ!!】

 

 

 

 

男が、俺に向かって地面を這ってくる。

メシフィアが、剣を振り上げた。

 

 

 

 

「・・・・・・・すまない」

 

【ッ!!!】

 

 

 

 

一刺し。

メシフィアの長剣は、男の鎧を貫いて刺さった。

男が刺さったまま剣を持ち上げ、振りぬく。

 

男は吹き飛ばされ、消えた。

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

大量のどす黒い血を浴びて、メシフィアが歩いてくる。

言いたいことは、いっぱいある。

あるはずなのに、喉が震えて声にならなかった。

 

 

 

 

「・・・・・私が怖いか?」

 

「・・・・・・・」

 

「・・・・・いいんだ。覚悟はできていた」

 

 

 

 

そう言う彼女の顔は、とても辛そうだった。

それはそうだ。

仲間に、人を殺す場面を見せたのだから――――

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

「お前が私に言ってくれた、いろんな言葉・・・・・・嬉しかった」

 

「・・・・・で」

 

「?」

 

 

 

 

なんでそんな勝手なことを・・・・・

 

そう言おうとした。

声を絞り出そうとした。

 

でも、言えなかった。

メシフィアの体から、鮮血が噴き出した。

俺の顔にかかり、独特の臭いが鼻を麻痺させる。

 

 

 

 

「っ!不覚・・・・・っ!」

 

【メシフィア・プルーストね】

 

「お前は・・・・・・ラキオスの・・・・・ぬかった・・・・・っ!!」

 

【そっちが、3人目のエトランジェ・・・・・確か、名前は・・・・・オーカワケイタ、だったはず】

 

「メシフィアっ!」

 

 

 

 

俺はすぐさま片膝をついたメシフィアに駆け寄る。

腹を一突きされたようだ。

出血量からして、急がないとかなりヤバイ状態なのが、一目でわかった。

 

メシフィアの背後に、ブルーとレッドのスピリットが一体ずつ。

ブルーの神剣から、血が滴れている。

 

 

怒りがこみ上げてきて、カノンを強く握り締めた。

立とうとして、メシフィアに腕を掴まれた。

 

 

 

 

「ケイタ・・・・・っ。私が時間を稼ぐ。逃げろ・・・・・・!」

 

「なに言ってんだよ!!斬られたんだぞ!死んじまうんだぞ!!」

 

「私はたくさん人を殺した・・・・・。マトモな死に方ができないのは・・・・・・当然・・・・・・だ」

 

「ッ・・・・・!それでも生きてほしいからこんなこと言ってんじゃねぇか!!」

 

 

 

 

俺は問答無用でメシフィアを担いだ。

カノンを握り締め、呼び起こす。

 

 

 

 

【待ちなさい。行かせるとでも思ってるの?】

 

【エトランジェ。お覚悟を】

 

【ヒミカ、絶対に逃がさないように!】

 

【ええ。セリアこそ、しくじらないように】

 

「・・・・・・っ!!」

 

 

 

 

首筋に冷たい感触。

西洋のような剣・・・・・・ブルースピリット?

 

 

 

 

【あなたがユート様の友人であることは知っています】

 

「・・・・・・・」

 

【どうか投降してくれませんか?】

 

「メシフィアは・・・・・・?メシフィアも助けてくれるのか・・・・・・?」

 

 

 

 

すがるような声が出た。

いや、自然にそうなっていた。

誰でもいい、とにかく目の前で倒れる女性を助けてほしい。

 

―――――コイツがメシフィアを斬ったのに

 

 

 

 

【・・・・・・助けることはできます】

 

「え・・・・・・・・・?」

 

【・・・・・・・・ですが、おそらく死刑を待つ身となるだけでしょうが】

 

「!!!」

 

 

 

 

そうだ。

相手にとって、メシフィアは敵を強くしてきた厄介者。

許されるはずもない・・・・・・

 

 

 

 

「なら・・・・・・・・っ!」

 

【変な考えは起こさないことです。あなたの首を飛ばすことに、私が躊躇いのようなものを抱く、とでも?】

 

「っ!!」

 

 

 

 

首筋の冷たい感覚が強くなった。

足が震え、立ち上がろうとした膝は折れる。

 

 

 

 

【そうです。・・・・・・あなたにとって、その女性はなんですか?】

 

「え?」

 

【あなたを無理やり戦場に出させ、戦いを強いる迷惑な存在でしょう?】

 

【セリア・・・・・・・その手段は・・・・・・・・】

 

 

 

 

セリアというブルーの背後に控えた、レッドがそう言った。

だが、それを聞こえていないかのように、無視するブルーのセリア。

 

 

 

 

【どうですか?あなたにこの女性がなにをしてくれました?】

 

「・・・・・・・・」

 

【なぜ躊躇うのですか。そちら側にいる理由などないでしょう?】

 

「・・・・・・・・・」

 

 

 

 

メシフィアがなにをしてくれた―――――?

 

 

 

 

{・・・・・・・・ケイタ?}

 

 

 

 

―――――俺が寂しくないよう、なにかと気にかけてくれた

 

―――――馴染めない俺と、一緒に出かけてくれた

 

―――――目の前で、見せたくもない殺人を見せてくれた・・・・・・・

 

 

 

 

【あなたはユート様と戦うのですよ?それができるのですか?】

 

「・・・・・・・・ごめん」

 

 

 

 

突きつけられた剣を掴んだ。

 

 

 

 

「はは・・・・・・・俺、なんて弱いんだろう・・・・・・・・」

 

 

 

 

自分の命欲しさに、投降しようとした。

メシフィアを見捨てようとした。

 

―――――くだらねぇ・・・・!!!

 

―――――俺はこんな人間になりたくねぇっ!!!

 

 

 

 

「邪魔しないでくれないかな・・・・・?急いでこの人を助けなきゃいけないんだ・・・・・・・」

 

【・・・・・・やはり言葉だけで人の心が動くなど・・・・】

 

 

 

 

セリアは、ハナからアテにしてなかったように、薄く笑った。

だが、同時に怪訝な顔になる。

 

 

 

 

【・・・・え】

 

【どうしたの?】

 

【・・・・・剣が・・・・・動かない・・・・!?】

 

「・・・・・・ごめん、叶さん・・・・・約束、破ります・・・・・・」

 

 

 

 

右腕の服の裾から、ナイフを取り出した。

奇妙な文字が刀身に描かれた、約束の品。

なよなよしくて、情けない小さかった男の子が、女性から教わった秘術。

 

決して何かに向けて使ってはいけないと、約束した。

 

 

 

 

「っ!!」

 

【なっ・・・・・・!!!!!】

 

 

 

 

剣ごとセリアを手繰り寄せ、わき腹にナイフを突き刺した。

その柄を殴り、セリアの体に押し込む。

 

刹那、わき腹が音もなく爆発し、血肉が吹き飛んだ。

 

 

 

 

【ぐぅ・・・・っ!!!?】

 

【セリアっ!?】

 

「・・・・・あぁ」

 

 

 

 

――――これが人を傷つけるってことなんだ・・・・・・・

 

 

 

 

現実味が薄い。

目の前で苦しむセリア。

彼女を苦しめているのは、紛れもない自分自身。

 

 

 

 

「・・・・・人を殺すのは、強さでも力でもない・・・・・」

 

 

 

 

―――――人を殺すのは、強さや力の溺れた人間なのよ・・・・・

 

 

 

 

「・・・・・ごめんなさい・・・・・」

 

 

 

 

記憶の中の【あの人】に、謝った。

それでもきっと、【あの人】は許してくれると勝手に思い込む。

 

――――烈火のごとく怒り出すだろうけど・・・・・・

 

 

 

 

「メシフィア・・・・・・・絶対死なせないから・・・・・っ!!」

 

 

 

 

赤の他人のために、人殺しまでやってくれたこの人を・・・・・

絶対に助けたい・・・・・・!!!

 

 

 

 

【くっ・・・・・待ちなさいっ!!】

 

「お願いだから通して・・・・・っ!!メシフィアが・・・・・っ」

 

【あなたがその人を傷つけられて怒ってるように・・・・・】

 

 

 

 

突然、熱風を感じた。

メシフィアを乱暴に担いで、その場から退く。

 

直後、炎のレーザーとしか言い様のない炎が全てを焦がした。

 

 

 

 

「っ・・・・」

 

{ケイタ、その女・・・・もうここを出発しないとマズいぞ}

 

「頼むからっ!!こいつを助けさせてくれよっ!!」

 

【できませんね・・・・・セリアを傷つけた。あなたはラキオスの障害となるでしょう】

 

「ならどうしたら通してくれる!?」

 

【通せない、ここであなたは死んでもらいます・・・・・そう言ってるのがわかりませんか?】

 

「っ・・・・・!こうなったら・・・・・っ!!」

 

 

 

 

その場で回れ右。

カノンの力を借りて走り出した。

 

 

 

 

【待ちなさいっ!!】

 

「いいのか!?セリアって仲間を置いて!!」

 

【あの程度彼女なら自分でなんとかできます!】

 

「っ」

 

 

 

 

一つ目のアテは外れた。

なら二つ目。

走って追ってくるあのレッドを・・・・・走りながら倒す

 

と、言うのは簡単だが・・・・

 

 

 

 

「くっ!!!」

 

 

 

 

人を抱えてるうえに、後ろから次々とファイアボールが飛んでくる。

避けるだけで精一杯だ。

 

 

 

 

{!!ケイタ止まれ!!!}

 

「へ・・・・・」

 

 

 

 

――――浮いてる?

 

 

 

 

【・・・・・あの程度で・・・・私が倒れるとでも・・・・・!?】

 

「ウ・・・・・・ソ・・・・・・・・」

 

 

 

 

あぁそうか・・・・・

斬られたんだ・・・・・・・

浮いてるんだ・・・・・・

 

なんだろう・・・・お腹が熱い・・・・・

 

 

 

 

「げほっ!!」

 

 

 

 

血を吐き出した瞬間、意識が戻ってきた。

 

――――戻ってこなきゃよかった

 

腹部に激痛。

メシフィアは放り出され、自分はうつぶせに倒れている。

そして、目の前に立つセリア。

白いハイロゥの翼に、血が飛び散っている。

 

 

 

 

「・・・・・」

 

【スピリットを甘く見ないこと。私がそこらへんのスピリットと一緒だと思って欲しくないわ】

 

「・・・・・はは」

 

 

 

 

絶対の約束も破ったのに。

カノンの力もさんざん借りたのに。

助けられないんだ。

ここで死ぬんだ。

結局、会いたい人には会えず、助けたい人も助けられないんだ。

 

こんな世界じゃ、俺は何も出来ないんだ・・・・・・

 

 

 

 

「お願い・・・・・っ!メシフィアだけ・・・・・」

 

【・・・・・自分の命ではなく、他人の命を助けてほしいという精神は尊敬します。ですが・・・・・】

 

【ええ。それは叶えられない・・・・・なら、その望みを消してしまいましょう】

 

【セリア・・・・・?】

 

【普段虐げられているのだから。このくらいの復讐はいいでしょう?】

 

【悪趣味・・・・・ね】

 

【どうせこの人もエトランジェ。構わないでしょう?】

 

「・・・・・・・・・」

 

 

 

 

あはは・・・・・・

復讐だってさ・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――死にたくないな

 

――――――助けたいな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【・・・・・ならば望め】

 

「え・・・・・?」

 

【我と変われ・・・・・・・・・愚かな妖精を・・・・・・・】

 

「・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【・・・・・・しっかりと見ていなさい。あなたが守りたかった人の最期を】

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

セリアの神剣が、振り下ろされる。

真っ直ぐ、メシフィアの首に向かって。

 

 

 

 

――――――だが、その神剣は首を切り落とせなかった。

 

 

 

 

【・・・・・なっ】

 

「貴様らのようなクズマナの塊を見てると・・・・・・吐き気がするわ・・・・・!」

 

【・・・・っ!?】

 

「自分なりの信念を持っている。大切な仲間がいる。素晴らしいことだな」

 

【・・・・・あなたは】

 

「この世界では珍しい妖精たちだ。・・・・・・・だが、所詮はクズの中に埋もれた妖精なり!!」

 

【っ!?っあ・・・・・っ!!】

 

 

 

 

セリアの顔面に裏拳。

鼻が折れ、血が飛び散った。

仰向けに倒れこむセリア。

 

 

 

 

「人間への復讐心や憤り、そして諦め。今の貴様には、それが色濃く出ている。所詮はクズということだ!」

 

【一体どうなって・・・・・!!】

 

【気をつけてヒミカ!普通じゃないわよ・・・・・!!!】

 

「本当に強きものは運命も境遇も嘆かない。希望を語る!だが貴様らのような弱きものは、ひたすら嘆き、不満と絶望を語る!!」

 

【知ったふうなことを・・・・・!!】

 

「・・・・ふむ、時間がない。この女が死んでしまっては、宿主に影響が出るな・・・・・」

 

【宿主・・・・!?】

 

「・・・・・ぬぅ。まともに力も出せぬな。クズども、さらばだ」

 

【っ!?】

 

 

 

 

右手を地面に打ち込むと、爆発が起きた。

砂煙が視界を奪う。

 

 

 

 

【・・・・・っ】

 

【逃げられた・・・・・?反応が・・・・・ない?】

 

【・・・・・撤退するわよ、ヒミカ】

 

【・・・・・・・・そうね】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、傷ついたメシフィアがマロリガンへ運び込まれた。

だが、それと同時に光陰、今日子のエトランジェ部隊が撤退。

 

ラキオススピリット隊がマロリガン領に侵攻してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――戦争は、まだまだ終わらない