白い大地。

 

雪が一面を覆い、人々は寒さに震えながらも温かい顔で働く。

 

 

 

―――あぁ、目の前を子供2人が通っていく………

 

 

 

 

 

 

 

【こぉら待てって言ってるでしょ!!】

【えっへへ〜♪待てと言われて待つ人はいないんだよ〜!】

【このマセガキィ……!!今日はもう勘弁しないからぁっ!!成敗しますっ!!】

【ボクとクォーリン、対して年齢かわらないのに〜!すぐ子ども扱いするんだから!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――見覚えのある2人だった気がするな。

 

 

 

 

ツインテールと長い髪をなびかせて、2人は奥のほうへ走り去っていく。

こんな呑気な雰囲気が、未だにこのソスラスにはある。

 

 

 

 

 

 

「あ、ケイタさん」

「おぉ!入り口に突っ立って1時間!ようやく気づいてくれたか愛しのメルフィー!!」

「今から神剣とって来るんで、話はまた後にお願いしますね?それじゃ!」

「え、あ………ちょっと、それだけぇ………?」

 

 

 

 

メルフィーまで、すたすたと歩いて町の外れに行ってしまった。

……なに?

 

   

 俺なんか、いてもいなくても変わらない系?

 

 

 

 

 

「おぉ……ケイタさんではないですか」

「あぁ!新キャラにしていきなり次章突入して、すっかり影が薄くなったレイナじゃないか!さっすがレイナ!キミならやってくれると思ってた!」

「そういう物言いは関心しませんが……とりあえず、帰還おめでとうございます」

「そうそう!そういうのを待ってた!ったく、みんなは血も涙もないよな……グスッ……」

「そうでもありません。実際、みなさんはケイタさんがいなくなってから、気持ち暗かったですから」

「え、そう?やっぱそう?そっかぁ、みんな俺がいなきゃダメかぁ!!」

 

 

 

 

そう言われると、早速にでも帰ってやろうという気になってくる。

レイナに付き従って、ソスラスの大地を踏み歩く。

 

 

 

 

 

「それで?こっちでは何か進展あった?」

「特には。イズモという組織も襲ってきませんでしたし」

「……そりゃそうだ」

 

 

 

 

 

俺を追いかけてあっちまで来たんだから。

おかげで毒殺されそうになったり、爆死させられそうになった。

 

よく生きてるな、俺………

 

 

 

 

 

「どうしたんです?手を合わせて祈りなど捧げて」

「生ってなんてすばらしいんだ、と実感していたところです、ハイ」

「そちらでは?」

「裏を操ってるヤツら、に関しては進展なしだね。でも、ホラ、メシフィアと一緒に1人女性来たでしょ?」

「あぁ……あの方ですか?着いてすぐに、奥地に出発されましたが」

「へ?」

「なんでも、調べたいことがあるそうです」

「ふ〜ん……ま、あの人なら、何かしら情報持ってるかもしれないし。そしたら、動き出せるね」

「えぇ……待ち望んだ……やっと」

 

 

 

 

 

レイナが目を閉じて、何か心にあるものに浸る。

たぶん、クェド・ギンも同じものを感じていたのだろう。

 

聡明な人の考えることは、やっぱ理解できない。

 

 

 

 

 

―――――ヨーティアは別の意味でわからないけど

 

 

 

 

 

「あ、そうだ。ヴァルキュリアって知ってる?」

「ヴァルキュリア?まぁ……伝承くらいは。どうかしたのですか?」

「実はさぁ……メシフィアにそれの遺伝子?魂?そんなものがあるらしいんだ」

「え!?あれは……伝承上の女性だとばかり……」

「俺の世界にも似た伝承があるんだけどさ……ソイツが、どうもメッチャ強いらしいんだ」

「メシフィアさんに………して、それは一体どんな女性なのですか?」

「えーっと………」

 

 

 

 

俺は街の人を見て、似た人はいないか、と探す。

いたらいたで困るが、叶さんから聞いたのをそのまま伝えてもわからないだろう。

ふと目に付いたのが、黙々とこっちに歩いてくる銀髪の女性。

 

 

 

 

 

  「そうそう!あんな感じ……ィ!?」

  「啓太、だな?」

「は、はぁ……」

「私に魂をくれないか」

「は……?」

「ケイタさん下がって!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バギッ!!

 

 

俺を庇ったレイナが、その剣でヴァルキュリアの剣を止める。

危うく腹に風穴が開くところだった。

 

 

 

 

 

「お、お前は……」

「初めて名乗るな。私はヴァルキュリア……お前の魂を頂く」

「!みんな逃げろ!!今すぐここから離れるんだ!!!!」

 

 

 

 

 

大声を出して住民を避難させる。

ヴァルキュリアは狙うつもりがないのか、それとも興味がないのか、住民に見向きもしない。

狙う目は、まっすぐ俺を射抜く。

 

気高いくらいの瞳に、つい後ずさりしてしまった。

 

 

 

 

 

「邪魔をするな女。容赦はしないぞ」

「あなたがヴァルキュリアですか……何かしりませんが、ケイタさんはこのソスラスの中心です。やらせるわけにはいきません」

「……(中心っていうわりには、みんな俺のこと気にしてくれてないけど……)」

「ふっ……では、お前の魂も頂くとしよう。ゆくぞ……!!」

「でぇいっ!!!」

 

 

 

 

 

バッ!!

2人が間合いを開けたかと思うと、一瞬にして間合いを詰めた。

ギギギ……とお互い負けない競り合いを続けたあと、ヴァルキュリアがふっと体をかがめた。

レイナの体が前のめりになり、その背後をヴァルキュリアが取る!

 

が、レイナはすかさず地面を転がり、ヴァルキュリアの剣は雪に刺さる!

 

 

 

 

すぐさま距離を開けて立ち上がるレイナに、ヴァルキュリアが真正面から斬りかかっていく。

振り下ろされたヴァルキュリアの剣を、下段で叩き落すように斜めに切り下ろすレイナ。

 

 

ヴァルキュリアの体がレイナの上を舞い、そのままレイナの背後を取った。

すかさずレイナは体をしゃかんでから捻り上げ、ヴァルキュリアの剣を上に弾き飛ばす!

 

ヴァルキュリアも無理せず、そこで距離を置いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

さ、さすが人間最強………

強い……

 

レイナだけでなく、ヴァルキュリアについても同じだった。

小柄な体、長い銀髪、重たそうな鎧なのに、その動きはレイナさえ凌駕する。

それはレイナも同じだが、レイナはマロリガンの軽い鎧のため、その分軽いはずだ。

 

 

 

 

 

「やるな、女」

「レイナ、レイナ・ファルケンだ」

「その名、覚えておこう。あと数分の命だがな」

「言ってくれますね……こちらも、手加減しませんよ!」

 

 

 

 

 

レイナの持っている剣が光った!

まるで、オーラフォトンのようなものを纏い、それがレイナの体に流れ込む。

 

ふっ、と一瞬動いただけだ。

それで、レイナはもうヴァルキュリアの前にいた。

 

 

 

 

 

 

「覚悟!!」

「っ!!」

 

 

 

 

 

 

バギャァッッ!!!

 

 

 

その身を庇ったヴァルキュリアの剣が、ガラス細工のように砕け散る!

それと同時に、レイナの剣のオーラフォトンが弾け飛んで、まるで意思をもったかのようにヴァルキュリアに降り注ぐ!!

その一発一発が、大砲の着弾のような地響きを起こし、積もっていた雪は弾け飛んで黒い土が見えてくる。

 

 

 

 

 

「ぐあっ……!!」

「永遠神剣第五位【天来】よ!!その身に怒りを宿して敵を打ち据えろ!!いきますよゼウス!!」

{はい!}

「永遠神剣……!?」

 

 

 

 

 

レイナの持つ永遠神剣ゼウスが、雷を纏った。

そのまま、まるで雷のように鋭くヴァルキュリアに振り下ろされる……!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パスッ……!!

 

 

 

だが、その勢いもむなしく消えていく。

ヴァルキュリアが、なんと片手でそのゼウスを止めた。

力をふっと込めたかと思うと、急速にゼウスの纏っていた雷が消え去っていく……!!

 

 

 

 

 

「ゼウス!?どうしました!?」

{力が……消えて……!}

「え!?」

「甘いぞレイナ。奥の手というものは……最後まで残しておくものだッ!!!」

 

 

 

 

 

ヴァルキュリアの左手から、何か、虹色の光がほとばしる!

それがだんだんと一本の棒の形になっていく……!!

 

 

 

 

 

「なっ……!!」

「女神よ……彼の者の魂を食らえ!その一撃を振るう!!!」

「ぐ……ばっ……!!」

 

 

 

 

ガスッ!!

レイナの腹部に、ヴァルキュリアの左手に持った、虹色の光が打ち込まれた!

ヴァルキュリアがゼウスを手放すと、ブォッ!!とレイナの体が宙に飛ばされ、俺の所まで飛んできた!

 

ガッ!とレイナをなんとか受け止める!

 

 

 

 

 

「レイナ?おい、レイナ!!」

「う……あ………」

 

 

 

 

 

目がうつろで、しっかりしない。

かなりの一撃を食らったようで、意識が朦朧としているようだ。

たった一撃で、ここまで追いやる威力……それに、身震い……恐怖を感じた。

 

 

 

 

 

「次はお前だ、啓太」

「な、なんだよ……なんで俺の魂ってのを狙う!?」

「出雲がお前を狙うのと同じだ。お前は私と同じ存在なのだ」

「お前と……俺が!?」

「おしゃべりは終わりだ。大人しく私に魂をよこすのだ」

「……ざーけんなよ。レイナをこんなにしておいて………」

「……ならば、私と交えるか?無駄なあがきを……」

 

 

 

 

 

 

ガッ!!

 

翼を広げて、一瞬でカノンを抜き放ち、振り下ろした!

が、ヴァルキュリアは驚きもせず、その手の杖のようなものでそれを止めた。

 

 

 

 

{啓太!この女は危険だ!引け!!}

「もう遅い……永遠神剣第一位【女神】と私の力、見せてくれるわ」

「だ、第一位……!?」

 

 

 

 

 

 

ババッ!!

 

一瞬気を許した隙に、ヴァルキュリアが俺の横を通過した。

それを意識した刹那……俺の体のあちこちから、血が吹き出した!

 

 

 

 

 

 

「ぐあっ!!!?ば、バリアが……!!」

「ほぅ……バリアを張っていたのか。それは気づかなかったぞ」

「カノン……!もっと力を出せ……!!このままじゃ死ぬぞ俺たち!!」

{引け!今のでもう、お前の左腕はやられてしまったんだぞ!?}

 

 

 

 

 

 

綺麗に、神経だけがプッツリ切れている感じだ。

左腕だけ、ピクリとも動かない。

出血はたいしたことないのに、こんな神業ができるのか、と改めて恐ろしく思う。

 

そもそも、あの【女神】には刃がないはず……!

 

 

 

 

 

 

{そういう理屈が通じる相手ではないんだもう!第一位相手では……希望も何もない!あるのは確実な死、だけだ!}

「そういうことだ啓太。この杖には、理屈を超えたものが存在する。諦めて殺されろ」

「くっ……!」

 

 

 

 

 

俺は動こうとしただけだ。

それなのに、体に急な激痛が走る!

 

肉が裂けるような嫌な音がすると、左足の骨がむき出し状態だった。

こうなると、痛みもクソもなかった。

 

 

 

 

 

「う……うあぁッッ!!!」

 

 

 

 

 

初めて生で見る、人間の骨。

真っ赤な血を浴びて、陽に照らされ光る肉……。

 

思わず、吐き気がして、ありったけのものを全て吐き出す。

 

 

 

 

 

 

「これで左半身はもう使えぬぞ?さぁどうする?」

「ぅ……っ………」

「ケイタ……さん……!」

{啓太!………もう……もうやめろ!やめてくれ……!!ヴァルキュリア!!}

「美しい人情……だけれど、それも魂と比べれば劣ってしまう……」

 

 

 

 

 

 

目の前に立つ、美しい女性。

あの綺麗な銀髪には、俺の返り血一つついてなくて……

俺の見るに耐えない傷を見ても、顔色一つ変えず……

 

 

 

 

 

 

 

―――あぁ、コイツは本当に……俺の魂だけが狙いなんだな

 

 

 

そう、思った。

体に……力が………

 

 

 

 

 

 

「ヴァルキュリア……」

「なんだ?遺言なら聞いてやろう」

「俺のこと、愛してるか?」

「……は?何を言っている?」

「どうなんだ?」

「……愛するはずがなかろう。お前など」

「そうかィ……じゃぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バッ!!

翼を広げて、油断したヴァルキュリアに体当たりした!

ヴァルキュリアが倒れこみ、カノンをすかさず腹に突き刺す!!

 

 

 

 

 

「が……はっ!!貴様……図ったな……!!」

「親父にいいつけられてな……愛し合った女性と、親愛なる親友、大切な身内以外に魂を売り渡すなってな!!!意地でもお前に魂は渡さない!!!」

 

 

 

 

 

カノンから直接ヴァルキュリアにオーラフォトンを送り込む!

そのまま体を膨張させていき、限界まで張り詰めさせる!!

それだけじゃコイツは倒せない。

 

翼の力も全てカノンからヴァルキュリアへと送り込む!!!

 

 

 

 

 

「ぐっあぁ……!なんだこの力は!?」

{!やめろ啓太!!その力を使ったら……!!!}

「お前は女神なんかじゃない!!!魂を集めることに固執した、ただの悪魔だ!!!」

「なにを……!!」

「何が魂には劣るだ……何がお前の魂も頂こうか、だ……!!お前に人の命を選ぶ権利はないっ!!あるのなら俺がそんな権利ブチ壊してやる!!」

「お前に何ができる……が、がはっ!!」

「レイナのことを何も知らないクセに!!アイツは、母国が滅びようが憧れの男性が亡くなろうが、それでも辛い道を歩んできたんだ!!」

「ぐ……くぁあっ!!」

「それを簡単に壊すなんて………軽々しく悪魔が言っていいものじゃねぇんだ!!!」

「か、体が……!!」

「俺のことも知らないくせに、誰がお前なんかに……ッ!!!」

「あぁあぁアァッッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――人工天使の翼よ、その力を込めて敵を撃ち滅ぼせ

 

 

――――時空を超え、理屈を超え、全てに等しく与した命を奪おうとするものを

 

 

 

――――その力でうち滅ぼせ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――ヴァルキュリア・ヘヴン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翼から眩い光が放たれ、それは全てヴァルキュリアの体の中へと侵入していく!

ソスラス全体を包むほどに光が膨れ上がり、その場は真っ白になって何も確認できなくなった。

 

そのまま光は空へと昇っていく…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……う、っく………」

{啓太!!}

「がぁ……っ!!はぁっ!はぁっっ!!!」

 

 

 

 

 

突然胸が苦しくなる。

空気が吸っても吸っても入ってこない。

息苦しさが、意識に霞をかけた。

 

 

 

 

 

 

「あ、が……っ!!」

{啓太!今楽にしてやるからな!}

 

 

 

 

 

 

カノンから力が流れてきた。

それのおかげで、まだ息は荒いがやっと落ち着く。

まるで、そのまま死んでしまいそうなほど辛かった。

 

 

 

 

 

 

{啓太よ……}

「な、んだ……?」

{二度と今の技を……二度と、翼の力を使うな}

「なんで……?」

{……わかるだろう?今のような苦しみを、何度も味わうことになるんだぞ}

「……」

{頼むから……二度とするな。お前がいなくなると……困る}

「………わかった。自粛するよ」

 

 

 

 

 

息が整い、やっと歩き出せ………

 

 

 

 

 

「がっ!あが……っ!!」

 

 

 

 

 

左足の骨が未だに出たままだった。

あまりの激痛に倒れこんでしまった。

 

 

 

 

 

{バカものが……その傷を忘れるとは}

「な、なんだよ……さっきは随分心配してくれたくせに」

{アレはアレ。コレはコレだ}

「ふん……あ……」

 

 

 

 

 

目の前に横たわる、綺麗な黒い髪。

匂いとその髪で、それがメシフィアだとわかる。

やはり、ヴァルキュリア=メシフィア……なのか。

 

 

 

 

 

「ケガは……してないか。良かった………ん?」

{それは……}

 

 

 

 

 

メシフィアよりも、俺よりも身の丈が長い長剣。

スラッとした刀身は、白金のように鈍く光り、誰もを惹きつける魅力がある。

 

……あ、流れでこれが何か……わかったぞ?

 

 

 

 

 

「永遠神剣か……」

{……あぁ。俺が導いたものだ}

「え?」

{永遠神剣第二位……【蒼天】。お前が【女神】を打ち伏せた時に、封印したんだ。それが、あの【蒼天】だ}

「つまり、女神の封印された姿がこの剣ってこと……?」

{あぁ……女神を呼び出され、それをメシフィアが持てば……また、すぐにヴァルキュリアが出てきてしまうからな。応急処置だ}

「………じゃぁ、ヴァルキュリアは」

 

 

 

 

  騒ぎの中心であるメシフィアはスヤスヤ寝ている。

全く、人の気も知らないで、と口走りたくなるものだ。

この中に……あのヴァルキュリアがね。

 

 

 

 

 

 

{まだ、メシフィアの中に眠っているだろうな……}

「冬眠中の熊みたいなもんか?」

{お前の魂に惹きつけられて、覚醒してしまったのだろう}

「絶食中のニワトリみたいなもんか?」

{……なぜ動物に例える?}

「じゃぁ赤い糸の伝説みたいなもんか?」

{そう言われてなぜロマンチックに走るかなお前は……}

「じゃぁ{えぇい、うるさい。黙れ!}……ったく」

 

 

 

 

 

 

カノンにうるさがられ、大人しく黙る。

あまり喋ってると、息も上がる。

ん?メシフィア何か握ってる………ペンダント?

 

 

 

大事そうに握っているので、そっと首にかけなおしておく。

 

 

 

 

はぁ〜……早くレスキュー隊〜………

 

 

 

 

 

 

{あれだけの重傷を負わせたからには、しばらくは出て来れないだろうが}

「……参ったな」

 

 

 

 

 

出雲のこと、アエリアのこと、悠人たちのこと、裏で操るヤツらのこと、ヴァルキュリアのこと………

どんどん、問題が山積みになってくる。

 

このままじゃ、いつか………

 

どれか、対応しきれない問題が出てきてしまう。

 

 

 

 

 

 

「あ、啓太!だい……きゃぁっ!!すごいケガ!!平気!?痛い?痛い?」

「アエリア……それにクォーリン……」

「ケイタさん、大丈夫ですかっ!?あわわ、今すぐ治療しますから!!ほらどいてよアエリア!!」

「イヤだよっ!!ボクも!!!」

「こらこら……頼むから、こんな時まで喧嘩しないでくれよ〜……アエリア……さん、もっと人手がイる。呼んデ来てくレないかナ?」

「う、うん……わかった!待ってて!!」

 

 

 

 

 

や、やべ……姉さんだと意識した瞬間声が裏返ったぞ。

それにさん付けしちゃった。

 

うっわ〜、すっげ違和感。

 

 

 

 

 

「それにしても、一体何があったんです?大変だったご様子ですが……」

「ちっと、ね……クォーリンとアエリアが雪玉投げあいしながら奥へ行ってくれて、ホント助かった……」

「み、見てたんですかぁ!?い、いやですもう!!」

「み、見てない見てない……見てないから」

「ほんと?ほんとにほんと?ウソついたらネネの実1000個丸呑みですよぉ!?」

「……じゃぁ見た」

 

 

 

 

――――ネネの実1000個は無理だ。

 

 

 

 

 

 

「傷口にエレメンタルブラスト、いっきま〜す♪」

「こ、こらこら!!何軽いノリでえぐい事しようとしてんの!!」

「だってぇ……責任、と・って・く・だ・さ・い♪」

「また誤解を与える発言を……」

 

 

 

 

 

 

そんなクォーリン。

でも、治療の腕は一流だった。

 

さすが瀕死の岬を救っただけのことはある。

それに、ケガの応急処置の仕方もうまい。

 

 

 

 

 

―――――白の大地が赤く染まる

 

 

 

―――――そう、これはほんの序章

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――これから始まる、終わりなき連続の戦いの………