「ん!」

「……ん?」

 

 

 

 

帰るなりいきなり、アエリアが手を突き出してくる。

小さめな手を目一杯広げて、ん!ん!ん〜っ!!と迫ってくる。

 

なんだ?

新しいおまじないか?

 

 

 

 

「なんだよ?」

「お〜み〜や〜げ〜っ!ちょーだい!」

「………」

 

 

 

 

ポ〜ケットの中にはお金が少し♪

なーんて歌が聞こえてくる。

 

あ〜………

 

 

 

 

「……ん〜っと」

「はい!ちょうだい♪」

「………」

 

 

 

 

あ〜、目の前で純粋に目を輝かす少女を俺は泣かしてしまうのか……

だって忘れちゃったんだもん。

 

 

 

 

「なんていうか非常事態だよな。アエリア」

「ん?」

「ゴメン」

「………忘れちゃったの?」

「ぅ……はい」

「グスッ……酷い……楽しみにしてたのに〜〜ッ!!!」

「あぁあぁっ!!泣くなよ頼むから!じゃぁ作戦うまくいったら、イチゴ大福ってゆーお菓子買って来てあげるから!」

「ぐすっ……おいしい……?」

「メッチャおいしい!ちょっと高いんだけどさ」

「……3個」

「え゛……1個!」

「4個」

「1個!」

「5個………」

「わかったよ2個ね!!」

「うんっ♪えへへ〜、今度は忘れちゃダメだよっ?」

「現金……」

 

 

 

 

本当に年上なのかコイツ……

腕に絡んで、くるくる回る少女を見て疑問に思わずにはいられない。

 

 

 

 

「それより、今日は作戦日なんだぞ。緊張しろよ」

「だって〜」

 

 

 

 

そう。

計測器が揺れ始めている。

干渉してくるのは……たぶん、今日。

よりにもよって、自治区に帰ってきた途端揺れ始めるとは……。

 

俺はガチガチに緊張してるというのに、隣を歩くメシフィアは優雅に雪を踏んでいく。

 

 

 

 

「ん?私の顔に何かついてるか?」

「い、いや……緊張してないな〜、と」

「お前は?してるのか?」

「そりゃ、悠人たちが命がけだったんだ……アイツより実力のない俺が……って思う」

「平気だ。私がついてる」

「………」

 

 

 

 

よくもまぁ平然と………

よっぽど自信があるのかね………

ん?

 

 

 

 

「メシフィア、胸元にあるそれ……」

「あぁ……私が孤児院に拾われたときに、身につけていたものだそうだ」

「は!?孤児院!?」

「言ってなかったか?私は拾われたんだ。そのあとサーギオスに仕官して、結局ここへきた、というわけだ」

「聞いてない!ってか、そうなのかよ」

「まぁな。だからといってどうこうなるわけでもないが」

「そりゃそうだけど。メルフィーは?知ってた?」

「いえ……初耳でした」

「ほらみろ!親友にも話してないクセに、なぁにが【言ってなかったか?】だよ」

「……なんとなく、話したい気分だったんだ」

 

 

 

 

そう言う彼女の横顔は、どこかセンチメンタルチックだった。

案外………

 

 

 

 

 

「……なんだ、メシフィアも緊張してんじゃん」

「そうかもな……お前の緊張を共有してるみたいだ」

「え、縁起でもねぇこと言うな」

「あ、顔が赤く見えるんだけど?」

「クォーリン!!」

「ふふ……」

 

 

 

 

ガバッ!!

クォーリンが抱きついてきて、白い雪の中へダーイブ………!!

 

 

 

 

「がばっ!!ぐ、ぐるじ……!ってか何抱きついてんだ!!」

「緊張してるようなので、解いてあげるね?」

「だ、誰からこんな方法を……!ってか1人しかいねぇ……」

「コーインからだよ?」

「………あ、今呼び捨てにした」

「どうせ聞いてないよ」

「なんてヤツだ……」

「あ〜っ、ボクも〜っ!」

「わ、バカやめろアエリア!!本格的につぶれ………!!」

「だ〜〜いぶっ!」

 

 

 

 

へぶしっ!!

 

更に体が雪にめり込んだ。

たぶん、起き上がれば人型が出来上がっているだろう。

 

 

 

 

 

「何するのっ!」

「だいぶしたんだよ?」

「それは1人で十分なのっ!」

「そんなことないよ〜」

「そんなことあるの!私1人で十分なんだからっ!」

「そんなこと言って〜、啓太独り占めしたいんでしょ〜?」

「なっ!こ、この能天気娘〜〜っ!!!」

「い、いい加減に……降りろ……暴れるんじゃねごぶっ!!」

 

 

 

 

顔を上げたら、その瞬間後頭部にクォーリンの膝蹴りをくらった。

そのまま雪に突っ込む。

 

 

 

 

「生きてる〜?啓太」

「死にたい……きっと雪の中ってつめたいんだろ〜な〜……」

「埋めるのなら手伝うのよね」

「ヤメレ……埋めるなら、上の2人を……」

「あ」

 

 

 

 

あ、と言ってキュリアが退避した。

嫌な予感がする………

 

 

 

 

「へっへ〜んだ♪」

「こ、このっ!これでも喰らえぇえぇッッ!!!」

 

 

 

 

クォーリンがこれでもか!というくらい高く飛んだ。

そして、そのまま片足を出して………え、それって!!オイコラぁあぁ!!

 

 

 

 

「スーパー!!クォーリン!!キィィィィィィィィック!!!!」

「甘いよっ♪ボクに当てようなんて百万年早いっ!!」

「ばっ……!寸前で避けんなぁあぁッ!!!」

「やぁあぁあぁあぁッッ!!!!」

 

 

 

 

 

ビリビリビリィッッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……作戦、行けるのかケイタ」

「いける……と思います」

 

 

 

 

真っ黒になって、あやうく三途の川を世界新記録で泳ぎきるところだった。

嗚呼……ひげもじゃの、去年死んだじいちゃんの顔が………

 

 

 

 

 

「計測器は?」

「ん〜……反応は以前微弱って感じ」

「そうか……油断するなよ?」

「誰に向かって言ってんだか」

「はは、それもそうだ。信じてるぞケイタ。もう二度と私を裏切らない、と」

「……なぁ、メシフィア」

 

 

 

 

 

一つだけ聞いておきたい。

このまま、現実世界に行ってしまうかもしれない前に

 

 

 

 

「どうして、志願してくれたんだ?こんな危ないの」

 

 

 

 

みんなは、気配が悟られず、かつすぐに敵陣を攻撃できるところで待機。

嵐の前の静けさ……とはよく言ったものだ。

 

 

 

 

「……前に言ったとおりだ」

「誰が【誰か志願してくれよ〜】って顔をやめさせるだけで命かけるんだよ。本当の理由だよ、ほ・ん・と・うの!」

「そうだな……強いて言えば、あれだけみんなに好かれるお前の魅力ってヤツを、私も知りたくなった……と、言ったところだ」

「ふ〜ん……俺に惚れると、火傷するぜ……」

「?私がお前に惚れると、お前が高熱を出すのか?」

「…………………………………………………………………いいよ、それで」

 

 

 

 

 

もはや説明したくもない。

ってか、バカらしかった。

 

 

 

――――あぁ、緊張感のない会話だった

 

計測器を見る…………

そして、驚愕の事実を目の当たりにする。

 

 

 

 

 

 

 

ぬおぉおぉおぉッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「やべぇ!干渉値MAXだよ!!気づかなかった!」

「なんでだ!!気を抜きすぎだぞ!」

「だってこれ何の音もしないんだよ!!フツー、危険になったらピーピーなるだろ!?」

「構えろ!来るぞ!!」

「オウ!!」

 

 

 

 

カノンをバサッ!と引き抜いた。

……アレ?

 

 

 

 

「ありゃ……剣間違えた」

「なに!?」

「だって、カノンってこんな黒くないし、でかくない」

 

 

 

 

 

俺が取り出したのは、刃の幅が以前とは比べ物にならないほど広くなり、黒い色をした剣だった。

明らかにカノンではない。

 

ってか、鞘から出す時に変形したような……錯覚?

 

 

 

 

「だが、さっきまでお前は腰にカノンをつけていただろう」

「俺もそう思ってたんだけど……」

{バカやろう。俺だ俺}

「え!?お前カノンなのか!?」

{あぁ。だんだん力が出せるようになってきた……今は、第五位あたりだろう}

「じゃぁ、やっとエトランジェ級の神剣になったのか……それじゃ、この変化はそれで?」

{詳しい話は後だ!来るぞ!!}

「ああ!!」

 

 

 

 

 

 

ズバズバズバァッッ!!!

 

 

眩しくて、目視できない。

いきなり光が現れて、俺たちの目を塞ぐ!

 

 

 

 

 

「ぐっ!見えねぇ……!!」

「ケイタ!私から離れるな!!」

「OK!!」

 

 

 

 

メシフィアと背中を合わせた。

この状況で、2人離れるのは得策じゃない。

 

すると、声が聞こえてくる―――

 

 

 

 

 

【あなたの望むものはなに?】

「え………」

 

 

 

 

ウソだ。

なんで……彼女の声が

 

 

 

 

【閉ざされた過去?苦しい未来?それとも……】

「この声………まさか!」

【ひとたび、この少年に休息を……そして、戦女神の遺伝子にも………】

「かな――――――

 

 

 

 

 

 

声が急に出なくなった。

いや、違う!

 

耳が聞こえなくなって、声がわからなくなったんだ。

光に包まれ、最初この世界に来た時のように…………

 

 

俺は導かれていく――――

 

 

 

 

 

 

「くぅっ……!!」

「メシフィア!!俺を手を離すんじゃねぇぞ!!」

「ああ!!」

 

 

 

 

 

こんなわけのわからない状況で離れ離れになったら、どうなるかわかったもんじゃない。

そう思って、強くメシフィアの手を握る。

 

意外と滑らかで、繊細な小さな手に驚いた。

彼女は、この手でずっと剣を振るってきた。

 

ただ、あの土地を護るためだけに―――

 

 

それだけ……?

 

 

 

 

 

 

そんな彼女には、何かもっと、別のことをやる権利があるんじゃないか…………

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思いながら、俺の思考はホワイトアウトした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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CONNECTING・FATE

                                     〜 奇跡に手を伸ばして 〜

 

 

 

 

 

                                〜第1幕〜

 

 

                            いつか来る日のために…

 

 

                                                      Fin

 

 

 

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あとがき

 

 

第1章を終えまして………

 

 

 

 

長い!

いや、前作と比べると……という意味です。

前C・Fは14話と言えばもう終盤にさしかかる所………

 

 

1章はシリアスな話はあまりなく、主要味方キャラの全員登場でした。

リメイク、ということもあって、前C・Fを読んだことがある人は、伏線がどうなってしまうのかある程度予想がついてしまっているのかも……

 

 

しかし、ただ前作のものに沿っていたのじゃリメイクの意味はありません。

舞台がファンタズマゴリアへ移動した時から、もう前作と同じような道筋はたどれません。

 

そういうわけで、もっと努力して、純粋に感動できるSSを目指していきたいと思います。

 

 

 

次の章は現実世界!

 

ケイタとメシフィアの独壇場になると思うなかれ!

 

 

 

神主さん?違います

トキミおばさん?それも違います……げ、あ、聞かれた?

 

 

 

まぁ、実際に出てきてはないのですが、意外と重要な位置にいる人です。

 

 

 

 

それでは第2章で!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第2章        〜過去を今と繋ぐため〜