なぜ・・・こんなに憎んでしまったのだろう?
わからない・・・。
誰か・・・誰か、この憎しみの原因を教えて・・・。
あぁ・・・私が崩れて行く・・・。
誰か・・・助けて・・・。
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永遠抗争 〜Eternal Dispute〜
第零幕 始まりの鐘は鳴り響く
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私は何もかも見失っていた。
歩く道、泊まる宿、行かなくてはいけない街・・・そして生きる目的。
誰か・・・私の心を埋めてください。
コ○モ石油さん・・・お金を払ったら心を満タンにしてくれますか・・・?
「・・・」
私は黙って首を振った。
何をバカなことを・・・そう思って、私は空を見上げた。
どんよりと曇って、今にも雨が降ってきそうだ。
―――降って・・・ほしいな。
私は漠然と空を眺めていた。
ヒーローや悲劇のヒロインが雨に濡れたがるワケもわかる気がする。
私はそんなんじゃないけど・・・。
友人に裏切られ、両親は目の前で自殺し、その噂で近所、親戚の人から白い目で見られた。
私の唯一の救いであった祖父母は・・・親戚の『近づかないで』の一言で遠ざけられた。
施設に送られたが、その管理人が子供達を欲求の捌け口としか考えていないと知った時、私はすぐに逃げ出した。
そして・・・私はホームレスとして、何年間も生きてきた。
私は公園のトイレで鏡を見る。
そこにうつっているのは、幸せだった頃『天使』と言われたほどに美しい顔。
それが・・・今となっては一番・・・。
しばらくして、雨が降って来た。
すごい量だ・・・。
私は一気にずぶ濡れになってしまった。
(水もしたたるいい女・・・なんて)
私がそう考えていた矢先、誰かから声をかけられる。
「ね、ねぇ君・・・?どうしたのぉ?」
「・・・」
見るからにイヤらしい顔をしたオヤジ。
何が目的か・・・すぐにわかる。私は自分が美人でないと思うほどバカじゃない。
今となっては鬱陶しい容姿だけど・・・。
それに、もう何十回とこういうのも経験した。これでお金がもらえるなら安いもの・・・。
最低限のルールは守らせて、できたことはない。
「と、とりあえず雨がしのげる所にい、いこう?」
「・・・」
私は逆らわなかった。
オヤジの手がとても冷たい・・・。
―――あぁ・・・この人も私と同じなんだ・・・。
そんなはずはないのに、そんな事で親近感を覚えてしまう。
何をされるか・・・何が目的か・・・そんなのわかりきっているのに・・・。
『おぉっと!俺の彼女に何するつもりだ?』
「ひっ・・・!彼氏いたのか・・・!くっ!」
(・・・?)
オヤジの手が離れた。足音が遠ざかって行く・・・。
不意に、私の不安が倍増した。
『なぁお嬢さん・・・何があったか知らないけど、あんな薄汚れた人間と付き合っちゃいけないよ?』
「・・・」
私は顔を上げた。
だが・・・意外と顔を上げないで、その人物と目があった。
150センチぐらいだろうか・・・?
まだあどけなさの残る少年が、優しい笑顔で私を見つめていた。
その瞳には・・・さっきのオヤジとは比べ物にならない程、優しさで溢れていた。
なにより・・・なぜか、私と似ている気がした。
『水も滴るいい女をやるのは結構だけど、風邪ひいたら意味ないよ?ホラ』
その少年は私に傘を渡してきて、真っ白なタオルで頭を拭いてくれた。
私はその少年に連れられて、あるホテルにやってきた。
オヤジとは正反対で、豪華なビジネスホテルだった。
『―――――』
『―――――?』
『――――――』
少年はフロントと一言二言話すと、私をエレベーターに乗せた。
そのまま・・・私は最上階のスイートルームに通された。
私はなんとなく窓を見る。
―――そこから見た夜景は、とても綺麗に見えた。
「驚いた?」
「・・・」
少年は悪戯したような笑顔を見せた。
私は軽く頷く。
「何があったかなんて聞かない。だけど、心の傷ははやめに治さないとどんどん悪くなるよ?」
「・・・」
私は、その優しい瞳に吸いこまれてしまった。
ただ・・・少年は純粋で、優しくて・・・それが嬉しくて、私は泣き出してしまった。
「ヨシヨシ・・・今は思いきり泣けばいいよ。俺の胸は・・・身長的に貸せないけど」
「バカ・・・」
それが、私が何年ぶりにか発した言葉だった・・・。
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「・・・」
私は目を覚ました。泣きつかれて・・・眠ってしまったんだっけ。
あたりを見まわす・・・部屋だ。
昨日の少年は・・・?
「・・・」
書き置きがあった。
私はそれを手に取る。
『前略中略。心が休まるまで、ここを使っていいよ。何十年でも滞在オッケーなくらい金渡しておいたから』
たった・・・それだけだった。
その優しい夢は・・・本当にあっけなく終わりを告げた。
私はまた泣いた。
誰かのせいで泣いたのは・・・本当に何十年ぶりだった。
私は手紙を丁寧に折ってポケットにしまい、フロントに一言言って、ホテルを出た。
その時、大量のお金を渡されてしまったけど。
「・・・」
また・・・逆戻り。
明日も明後日も・・・一歩踏み出す先さえわからない毎日が、また始まる・・・。
「いや・・・」
自然と言葉が出た。
そうだ・・・今度は繰り返しじゃない。
あの人と出会えたんだから・・・会いにいこう。
アテも何もないけど・・・探しだそう。
それが・・・今の私に唯一残された、最後の道・・・。
私は力強く、一歩を踏み出した。
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そうして何日探しまわっただろう?
あの時のお金を使いながら、ひたすら世界をまわっていた。
ある時は砂漠に・・・ある時は海に・・・。
そうして・・・私はとうとう見つけた。
「あっ・・・!」
彼だ・・・。
浜辺に一人座っていた。
私は駆け寄ろうとして・・・歩みを止めた。
『アスナ〜!!』
可愛い女性・・・明るく、元気で・・・輝いている女性。
彼女は彼に駆け寄って行く。
『スフィア!遅いだろ!』
そして・・・彼の顔も、いつかと違って輝いていた。
私はそのままその場を去って行く。
(・・・)
彼の一番にはなれない・・・。
それをたった今痛感させられた。
彼の優しさを一人占めしたい。
彼の存在を・・・私の物に・・・・!
『汝か・・・?』
(え・・・?)
目の前に現れる何か。
存在しているのがわかるのに、目で見えない。
『我は永遠神剣第一位・・・名前はない。ただ・・・汝が私を求めた』
(私が・・・?)
不思議だ・・・。
なんだか・・・波長があうっていうか・・・。
『汝は欲しいのだろう?彼を手に入れる力が』
(・・・)
『我と共に、彼を手に入れたいと思わないか?』
(欲しい・・・彼が・・・私だけの物に・・・!)
『ならば・・・我を求めよ。我と同化せよ。さすれば汝の求める物は何でも手に入ろう』
(・・・)
私はそのまま声の主に意識を合わせて行く・・・。
『・・・だっ!!!・・・なっ!!』
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「!!」
俺は嫌な予感が身体中に駆け巡ったのを感じた。
「どうしたの?」
隣のスフィアは何も感じてないようだ。
俺はすぐさま立ちあがり、反応に向かう。
異次元から新星を呼び出した。
{どうした?アスナ}
「嫌な予感がするんだ・・・っ!」
俺はただ走った。
そして・・・見てしまった。
彼女が・・・永遠神剣となるその姿を。
「ダメだっ!!!いくなっ!!」
俺は彼女に手を伸ばした。
だが・・・その手で彼女を掴む事はできなかった。
静かに彼女は光に包まれて行く・・・。
「あ・・・ぁぁぁ・・・!」
俺は膝が地面についた。
光が消えていき・・・彼女はそこにいた。
だけど・・・それは彼女ではなかった。
「私は永遠神剣第一位・・・『心』。アスナ・・・私の物になりなさい」
彼女は俺にそう言った。
「アスナッ!!」
スフィアがやってきた。
その刹那・・・彼女の瞳が光った。
「スフィアッ!!来るなっ!!!」
「彼女がいるから・・・彼女さえいなければっっっ!!!!」
彼女の身体が光り、消えて行く。
その光はスフィアの神剣に吸いこまれて行く・・・!
「やめろおぉおぉぉッッ!!!!」
俺は叫んだ。
だが・・・それだけでどうこうなるはずもなく・・・
『ふ・・・ふふ。これで彼女は・・・いないわ!さぁアスナ・・・私の物に・・・!』
スフィアは・・・『心』はそう言った。
なんで・・・
なんでこんなことになった・・・?
『ぐっ・・・!?あぁあああぁぁぁぁああああぁぁッッッ!!!』
『心』が突然叫びだした。
『まだ抵抗するかっ・・・!!』
彼女は門を開いた。
そして・・・打ちのめされた俺を置いて、門の中へ入っていったのだった・・・。
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なんで優しくしたの・・・?
優しくしてくれなければ、私はこんなに壊れなかったのに・・・!
憎い・・・。
彼が・・・彼を独り占めする彼女が・・・私が・・・この世界全てが・・・っ!!!
壊して・・・全部壊してしまえ・・・!
こんな世界いらない・・・。
全て・・・なくなってしまえばいいんだ!
そう・・・思ってるのに・・・彼が私を追ってくるのが嬉しかった。
私だけを見てくれている気がして・・・。
でも・・・彼は私と会う度に、すぐ新星を構えてこう言うの・・・。
『スフィアを返せ』・・・ってね。
彼の瞳は、永遠に私を見ることはない。
そう・・・決まってしまったんだ。
私が誘惑に負けて・・・彼女を殺してしまった時に全て・・・決まってしまったんだ・・・。
あぁ・・・私が壊れて行く・・・。
そうだ・・・彼が手に入らないのならば・・・
全てを破壊して・・・全て私の思い通りにしてしまえば・・・!
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そうして・・・俺の些細な過ちから、戦いの鐘は鳴り響いた。
たったそれだけのことで・・・
そう思えるかもしれない。
だけど、人に未来を掴み取る力があるのなら、こんな風に正反対の方向に同等の力が働く事もある。
結局、俺は数え切れない程の年数を生きていながら、そんな初歩にも気づかなかったんだ。
だから・・・俺は確実に決着をつけなくちゃいけなかった。
たとえ・・・それで命が散ろうとも。
『ア〜スナッ!!』
『ボ〜ッとしてどうしたんです?』
でも・・・俺は二人の女性と共に生きている。
それをシンは許さないのかもしれない。だって・・・彼女をあんな結末にしてしまったのは他ならない俺なんだから。
これはきっと、勝手な義務感とかいう問題じゃないと思う。
だから・・・許さなくてもいい。
認めなくてもいい。
ただ・・・2度と過ちを犯さないために、俺は永遠にこの二人に幸せを捧げようと思う。
――――そう
『アスナ!聞いてる?』
『早く温泉にいきましょう!』
『・・・そうだね!』
俺の隣で、笑顔を絶やさない二人の女性に・・・俺は一生幸せを与え続ける。
Supposing God is
and the God allows, I want to be in a they side forever.
(もし、神がいて、神が許してくれるのなら、俺は永遠に彼女達の傍にいたい)
and
(そして)
I will offer love to them
forever.
(俺は永遠に彼女らに愛を捧げよう)
(そう・・・)
Since two persons'
future is wrapped in brightness, I want to be in a side forever.
(二人の未来が優しい閃光に包まれているものであるために、俺は永遠に彼女らの傍にいる)