「なんだこれ・・・」
{酷いわね・・・}
拠点の門に、傷だらけのエターナルが倒れていた。
その数が尋常ではない。軽く40人はいるだろう。
「どうした?」
俺はそのうちの一人に話しかける。
「おま・・・えは?」
「新しいエターナルだ。誰にやられた?」
「わか・・・らん。反エターナルだと思うが・・・」
「そっか。じゃぁ少し寝てな。傷に触るぜ」
俺はそのままそいつを寝かせた。
「・・・ネレイ。相手の強さは?」
{かなりのものね。ラクセルと同等・・・いや、もう少し上くらい}
「じゃぁ平気だな。サクッと助けにいきましょうか」
俺は拠点の中に走って行く!
ヒカリとカナリア・・・二人の反応が中にある。
頼む・・・死なないでくれよ・・・!!
「ぐあ・・・っ!!!」
ラクセルは傷つき倒れる。
「くそっ・・・!まだっ!!」
「無駄だ」
その男は姿を消した。
「どこに・・・ぐあっ!!!」
突然ラクセルの体が吹き飛ぶ!
壁に激突して、事切れたかのように動かなくなる。
「弱いな・・・。所詮この程度か」
「ラクセルッ!!」
ヒカリが駆け寄る。
致命傷は負っていないが、意識はない。
「まさか、リーダーが踊り出てくるなんてね」
カナリアは切っ先を喉もとに向ける。
が、そこに敵はいなかった。
「っ!」
突如目の前に現れ、首を締め上げてきた!
一気に空気が抜け、頭に霞みがかかる。
「どうした?シンを倒した英雄もこの程度か?」
「倒したのは・・・私じゃな・・・いっ・・・!」
「はァ?」
ギリギリと首が締まって行く。
カナリアの目がとろんと落ちて行く・・・。
『知りたいか?シンを倒したヤツを』
「!?誰だ!!」
全く・・・せっかちだな。
俺は仕方なく姿を見せる。
「誰だとは随分なご挨拶だな」
「まだザコが残っていたのか・・・」
カチン!
人をいきなりザコ呼ばわりか。
「ネレイ、わかってんな?実力バレないようにリミッターつけとけ」
{了解。そうね・・・あの程度の敵なら総合能力1/4リミッターでいいかしら?}
「それでいい」
俺とネレイの会話を聞いていたのか、カナリアの首を締めながら、男は睨みつけて来た。
「俺の実力を知らないんだな。手加減・・・?そうか、ならすぐ殺してやる」
全く・・・せっかくヒカリとカナリアに会えたのに、これじゃちっとも挨拶できないや。
「ネレイ、やるぞ」
{ええ。1分で終わらせてね?そうじゃないと体にだるさが残るのよ}
「心配すんな。30秒でたくさん」
「ナメやがって・・・!!でやァアァッッ!!!!」
男が切りかかって来た。
パスッ!
俺は人差し指と中指だけでそれを受け止めた。
「ネレイユニット召喚ッ!!!」
左手に小さなネレイが出て来た。
それを、剣を受け止められて驚いている男に撃ち込む!
ボガァァアァァッッ!!!
「グァァァァッッ!!!?」
男は簡単に吹き飛んでいく!
男は足で壁をけって、こっちに向かって来た!
(・・・・・・・)
俺は目を閉じて集中する。
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
ピキィッッ!!!
「見えた・・・っ!!!」
突然まわりの空気に電撃が走る!
その瞬間、男の攻撃を完全に見切った。
俺は体をかがめて、突き出して突進してきた男の剣をかわして懐に入る。
「ネレイユニット!!一撃ッッ!!!」
右手に小さなネレイを召喚して、下から男のアゴを撃ち抜く!!
男はそれだけで力が抜けたようで、そのまま無様に打ち上げられる。
「二撃目ッッ!!全てを撃ちぬく水の聖ッッ!!ネレイストライクッッ!!!」
俺の手から20本を越える水色の矢が飛んで行く!
ズガガガガガッッ!!!!
男に次々と刺さっては爆発していく!
「三撃ッッ!!これで終わり!!吹きすさべ風の聖、荒れ狂え水の聖!ネレイブラストッ!!!」
俺の右手に鋭い尖剣が宿る!
その青い光を放つ剣を男に突き刺した!
「ぐおおおああァッッ!!!!」
男の体の中から竜巻が発生して、その男の体をズタズタに引き裂いた!
あっという間に消えて行く男・・・。
「俺の名前は水の聖者アスナだ。覚えときな・・・って無理か。よし、キッカリ30秒。全く、弱いくせに」
{全くね。まァきっかり30秒で倒せるのはアスナしかいないでしょうけど}
「さァてと・・・」
『よくもリーダーをォォッッ!!!』
『集中攻撃だ!!油断するなよっ!?』
リーダーの従者らしきヤツらが一斉に襲いかかってくる!
ビギィッッ!!!
また空間が割れるような音がした。
その瞬間、敵の動きが頭に流れ込んでくる!
「何人でこようとッッ!!!でやぁあぁぁッッ!!!」
キンッ!ザバァァアァッッ!!!
一番速いヤツの剣を軽く流して切り裂く。
その間に目を閉じて残りのヤツの位置を頭で覚える。
(十時の方向距離15、三時の方向距離20、6時の方向距離25!)
俺は右手にネレイユニットを召喚した。
「うあぁあぁぁッッッ!!!!」
バシッ!!
ネレイユニットをそのまま地面に撃ち込む!
ズシャァアァァッッ!!!
『ぐあぁぁあぁッッ!!?』
『な、なぜだ・・・!?』
『っは・・・!』
地面から突き出た氷の槍が三人をくし刺しにした。
まともに声も発せず、真っ二つになり消えていく・・・。
「っはぁ・・・疲れた」
{ねェ、あんまりビキビキやってるとニュー○イプだと思われるわよ?}
「だったら、1/4リミッターつけても発動する先読み能力を封印してくれ。そうすりゃ俺もそうはならないから」
{イヤよ。本来の能力を抑えつけるとだるいもの}
「・・・そうかい」
俺は唖然としている二人に振り向いた。
「アスナ・・・?」
「え・・・?」
そこには、驚いた顔をしたヒカリとカナリア。
なんだか・・・変だ。
「あれ・・・?」
覚えてる・・・のか?
ウソだ。
そんなバカな・・・。
「アスナ・・・アスナだよね!?」
ダダダッ・・・!
バシッ!!
俺はヒカリを抱きとめる。
ラクセルが無残に捨てられたが気にしない。
その温かさに、視界が滲む。
「ホントに・・・覚えてるのか?俺を」
「ひどいですよ・・・っ!アスナ!勝手に消えて!」
「カナリアまで・・・?ははっ・・・一体どうなって・・・!?」
嬉しくて嬉しくてたまらない。
そう思った時には・・・涙が溢れ出していた。
「おかえり・・・なさいっ!」
カナリアもパスッとよりかかってきた。
俺はしっかりと受け止める。
髪を撫でながら、強く強く抱きしめる。
「ホントに・・・!」
嬉しい・・・。
俺はエターナルになる時、何も失わなかった。
忘れられることが、こんなに辛いなんて思わなかった。
でも・・・
一番覚えていてほしい二人が、ちゃんと覚えていてくれて・・・俺の傍にいる。
それが、ホントに・・・嬉しい!
「ヒカリ・・・カナリアッ!!好きだ・・ホント・・・大好きだよお前ら・・・っ!」
俺は強く強く抱きしめた。
2度とこぼさないように・・・。
離れないように・・・。
「アスナ・・・もう、二度と勝手に消えないで。そんなことされて、残された私たちはどうすればいいのよ!?」
「ごめん・・・」
「辛かったんだから・・・っ!カナリアしか覚えてなくて・・・
もしかして、本当に幻影だったんじゃないかって・・・スッゴク恐かった・・・!恐かったんだから・・・っ!!」
「アスナ・・・約束して。もう、二度とあんなことはしないって。自分が犠牲になって世界を救うなんて・・・
そんなこと、誰もしてほしくないんだから。だったら、世界が消えた方がマシなんだから・・・っ!」
「約束するよ。ヒカリ、カナリア・・・っ!」
3人の想いが叶う時・・・再び時は動き出す。
それは、静かだけど大きな出来事。
かけがいのない想いが重要なのは、それが大事だからだけじゃない。
それが、全ての根源になるからなんだ。
シン・・・俺もお前と同じだったかもしれない。
こんな大切な想いに今まで気づいてなかったんだから。
ははっ・・・俺もまだまだってことだな。
でも・・・俺はもう大丈夫だ。
一緒に歩んでくれる人がいる。
一緒に笑って、泣いて、悲しんで、幸せを感じてくれる人がいる。
「いこう!カナリア、ヒカリッ!」
「うんっ!」
「はい!!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――そして・・・
「ほいっと」
俺はまた一本神剣を回収した。
「全くな・・・」
ローガスめ・・・。
俺は、俺が永遠神剣に好かれやすいのを理由に、永遠神剣回収をやらされていた。
あちこちの世界をまわり、神剣を仲間に引き入れる。
この仕事を初めてから記念すべき100本目だ。
といっても、上位永遠神剣を全て集めて、そしてみんなでエターナルを辞めるためなのだからしょうがない。
――何が記念だ・・・けっ。
「結構辛いぜ・・・」
{何を言ってるんだか}
「神剣を回収するっつっても、場合によっちゃぁ一週間かかったりするんだぜ?
ホント辛いよ・・・しかも、隣にいるのは口うるさい神剣だけ・・・あぁ、色気がねぇ華がねぇやる気がでねぇ」
{うるっさいわねっ!!}
あのペンダント・・・。
コイツのおかげで俺は救われたのは確かなのだが・・・まさかこんなうるさいとは思わなかった。
{聞こえてるわよ}
「そりゃ聞かせてるからな」
{なんですって!?}
俺はネレイの声を無視して洞窟から出る。
「あ・・・」
{・・・}
洞窟を出ると、そこには大きな桜があった。
あまりの大きさに圧倒される・・・。
(・・・あれ?)
「ネレイ、俺が入った時、ここに桜なんてあったか?」
{あるわけないでしょ?私が出したんだもの}
「え・・・?なるほど・・・」
水聖が・・・か。
変な能力だよな。桜を作り出すなんて。
実際は明確な意志があるもの以外の、水に関する物全てを操ることができるらしいが。
その主たる物が植物。天気だって、なんだっていじれる。
そこらへんはさすがネレイとでも言うべきか・・・。
「でも・・・」
綺麗だ・・・。
大きな大きな桜の木から、つぎつぎと絶え間なく散る薄いピンクの花びら。
この空間全てが桜色で染まってしまったかのような・・・。
{少しはやる気出た?}
「・・・うん。サンキューな、ネレイ」
{どういたしまして!}
なんだか温かい気持ちがネレイから流れてくる。
いや・・・これは俺の気持ちかもしれないけど。
ローガス達が俺を覚えていなくて・・・すごく寂しかった。
でも、コイツのおかげでこうして生きていられた。
だから、感謝してる。
だから・・・俺はみんなと元の関係を作るまでがんばれた。
あと何十本かで全世界の上位永遠神剣が集まる。
そうすれば・・・
その管理者に選ばれた俺とローガスが永遠に蓋の開かない世界へと行き、そこで永遠に上位永遠神剣を管理する。
ヒカリとカナリアは・・・言わずもがなついてくるんだろうけど。
それはみんなもなぜか認めてくれてる。
そして・・・
その時、エターナルは全ての世界からいなくなる。
まさか、俺が倒したのが反エターナルのリーダーとは思わなかった。
だって・・・弱かったし。
「んじゃ・・・ヒカリとカナリアのトコへ帰るか。デートの約束してるしな」
{相変わらずベタベタよね}
なぜか俺のことをおぼえていた二人。
今となっては、とても大事な二人。
「まぁ・・・ね。3人でずっと一緒に生きるって約束したからな」
それも・・・フォルクやネレイ、スフィア・・・ついでにまぁ、シンも入れておこう。
それらの犠牲があったから・・・。
だから・・・精一杯生きてみるか。
目の前の問題を一つ一つ一生懸命に解いていって・・・な。
{ラ〜、ラ〜ララ〜、ララララ〜、ラ〜ララ〜、ララ〜、ラララ〜、ララララ、ラ、ララ、ラ〜}
突然あの歌を歌い出すネレイ。
っていうか・・・
「オイ・・・いつのまにそれを」
{へへ〜、うまい?うまいよね〜?}
「俺教えた覚えがないんだけど」
{勝手に覚えたの。いい曲だよね〜?歌詞が探り出せなかったけど}
「・・・人の心を勝手に探るな」
{いいじゃない。さ、さっさと帰ろ?}
スパァアァアアンッ!!!
突然桜の花びらが一斉に散った。
「・・・驚くから、このやり方でなんでも消すのやめてくれない?」
{いいからいいから。いつまでも浸ってると、デートの時間に間に合わなくなっちゃうぞ〜?}
「わかったわかった。んじゃ、いくか!」
俺は門を開いた。
その中に飛び込む・・・。
桜舞う季節に始まり、桜舞う季節に終わりを告げたDispute。
いや、後者は季節じゃないな。
この戦いでオレ達は一体何を得たというのだろう?
――――わからない。
でも、きっと生きていればいつかわかる。
あの戦いはこれをえるためだったんだって・・・。
ピキイッ!!
新しい世界へと俺は足を踏み入れた。
そんなこんなで・・・その後のエターナル。
『運命のローガス』
今もリーダーとして、エターナルの中心として働いている。
反乱エターナルを沈めたあとの、エターナル運動(エターナルをやめること)について行動を開始している。
「ねぇアスナ、また一人キミに恨みを持った女性がきたんだけど・・・一つ貸しにしておくね?」
「ぐっ・・・コノヤロ」
『明王のラクセル』
優秀な補佐官として重鎮エターナルの世話をしている。
というのは仮の姿で、誰が何を考えているかをローガスに伝えるための、諜報部員みたいなものをやっている。
「アスナ、その女だけはやめたほうがいい。既に目をつけられている女性だ。むやみに争いを起こしたくないだろ?」
「なぜアイツの事をお前が・・・」
『伝令使テムオリン』
反乱エターナルを沈めるために、あちこちの世界に散った仲間を繋ぐ伝令をしている。
テムオリンのおかげで異世界同士でも連携が可能になったため、反乱エターナルが消えたのは彼女のおかげと言ってもいい。
「アスナさ〜ん、面白い世界見付けたんだけど、一緒にいこうよぉ」
「だぁから肩車させるな!お前浮いてるんだから意味ないだろ!?」
「いく?いくよね?」
「うんうん!いくから!だから降りて!恥ずかしい!」
『洗礼のユウト、時詠のトキミ、永遠のアセリア、聖緑のエスペリア、再生のオルファ、深遠の翼ウルカ、紫電のキョウコ』
永遠抗争において最も活躍した部隊と称され、英雄としてヨイショされている。
今までのように騒がしくもしっかりと仕事をしている・・・らしい。
ババァ・・・いや、トキミの能力と、ユウトの洗礼のおかげでこの部隊はかなり重要視されている。
今日もどこかで暴れているのだろう。
・・・主に痴話喧嘩で。
「ユウトはぁ〜、あの晩もトキミの部屋でぇ〜」
「てめっ!アスナッ!!」
ビギビギ・・・!
「待てみんな!誤解だ!」
「そのあとぉ〜、トキミの部屋からガサガサ音がしてぇ〜、きゃっ♪その後はとても・・・」
「アスナ・・・ッ!後で覚えてろぉぉぉ!!」
『栄光のヒカリ、背光のカナリア』
今まで以上に仲良くなった二人。その絆は神剣を持ってしても断ち切れない。
今は反乱エターナルにメチャクチャにされずに済んだ世界の見回りと、
俺がローガスの所へ行くまでに蓋をした世界を見回っているそうだ。
「アスナアスナ!なんでも女グセが治る温泉があるんだって!」
「今度の休暇にいきましょう」
「え゛?イヤだよそんなおぞましい温泉なんか」
「問答無用だよ♪」
「せっかくの機会ですから、しっかりと治してもらわないと」
「べ、別に女の一人や二人、男の甲斐性・・・」
「えぇい♪」
「ダメよヒカリッ!笑顔で神剣抜いちゃ」
「・・・わかりました」
「神剣がなくても強いのに、アスナって本当に優しいね!」
「えぇ」
「カナリアも剣抜いてたクセに・・・」
『ユウキ、折れぬ想いユウナ』
人目をはばからずいちゃつくようになった二人。甘ったるくてムカムカする。
あまりに二人が幸せそうな顔をするので怒れないのだが。
そして今はユウキがリーダー修業中、それにいつもくっついているユウナ。
もう、二人揃うと無敵といった感じだ。
・・・二人でリーダーになっちゃえば?
「ユ・ウ・キ!は〜い、ア〜ンして♪」
「あ〜ん☆」
「・・・なんすか?俺に見せ付けてるんだな?そうなんだそうかそうか」
「イヤだなぁ、ただの昼飯だよ♪」
「そうそう。アスナもピリピリしないでこれ食べれば?」
ポイッとにぼし袋を投げ渡された。
中に手を突っ込むと一匹しか・・・。
「うがぁぁあぁあぁっ!!!」