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俺達はあちこちの世界をまわっていた。
なぜなら、今はそれが仕事だから。
「トキミ、あとどれくらいだ?」
「そ〜ですね〜・・・あと40分くらいでしょうか」
今、未だ根強い反抗を見せるエターナルとの戦いの真っ最中。
チームは、あのいつものメンバー。
「それにしても・・・アイツらが消えてからもう1周期だつんだな」
「そうですね・・・」
ヒカリとカナリア・・・二人がシンと相討ちしてからもうそんなに経つ。
どうやって討ったかを不思議と覚えていないのだが、あの二人のおかげで世界は守られた。
「あの二人のためにも・・・まずはこの任務を無事に終わらせないと」
「絶対にできると思いますよ?」
「絶対なら言い切れよ」
そんなくだらないやりとりをしながら、先遣隊の報告を待つ。
せっかくあの二人が命をかけて世界を守ったというのに・・・と呟く。
今はカオスとロウほどじゃないが、エターナル同士で対立が続いている。それを率先して沈静化するのが俺たちの部隊の役目だ。
『ユート・・・トキミ・・・』
アセリアの声がした。
どうやら永遠神剣を通じてのようだ。
「どうした?」
『ちょっと・・・きてほしい』
「わかった。とりあえずいこう、トキミ」
「そうですね」
アセリアは無駄に俺達を呼ばない。
ということは、それなりの何かがあったということだ。
「どうした?」
俺とトキミがアセリアの所へついた。
「ん・・・」
アセリアの視線の先には・・・二人倒れている人がいる。
今、今日子とエスペリアが介護しているみたいだ。
「どうした?」
「あ、ユウ・・・この二人」
「・・・っ!?」
その二人に・・・この場の誰もが見覚えがあった。
シンを討った・・・
「ヒカリにカナリア・・・」
二人は手をつないで倒れていた。
「おい、おいっ!!」
俺は二人をペチペチ叩く。
「「ん・・・」」
二人がほぼ同時に目をあけた。
その瞳は潤んでいて・・・何か、不思議な感じがした。
「ヒカリッ!カナリアッ!!!」
「ユウト・・・?ここは・・・?」
ヒカリが目をシパシパさせながら見まわす。
「それよりどうしたんだよ、こんなところで倒れてるなんて!?」
「倒れて・・・そう、シン・・・。アイツは?」
カナリアが髪の毛を撫でる。
短くなっていたことに気づいたようだ。
「アイツ?アイツはお前らが討ってくれたじゃないか」
「そう・・・なんだ。どうも覚えてなくて・・・あっ!アスナは!?」
ヒカリはハッとして見まわすが、そこにアスナの姿はない。
―――アスナ?何それ?
みんなの口からは・・・それしかでてこなかった。
「そんなっ・・・!じゃぁ」
「本当に・・・消えた、んですね・・・ッ?アスナ・・・っ!」
カナリアがふるえだした。
なんのことかわからないユウト達はオロオロするだけ。
「約束・・・したのにっ!!なんで一人で消えちゃうのよ・・・っ!!アスナぁぁあぁッッ!!!!」
イヤ・・・。
アスナのいない世界で生きていくなんてっ!
なんで・・・勝手に消えたの・・・!?
最低・・・最低だよ・・・人の気持ちも知らないでっ!
なんで・・・なのに、なんで・・・!?
私は・・・なんでこんなにアスナが好きなのよ!!
あんな人が・・・っ!
どうしようもないくらい・・・っ!!なんで・・・!?
アスナ・・・っ!!
【ははっ!ヒカリは泣き虫だなぁ】
その場にヒカリの叫びが木霊す・・・。
でも、いつものように笑いかけてくれる人は・・・もういなかった。
「アスナ・・・なんで・・・私達は・・・っ!!」
一緒にいると約束した。
私の笑顔が綺麗だと言ってくれた。
私を好きだと言ってくれた。
仲間を殺した私を、裏切った私を笑顔で受け入れてくれた。
その・・・笑顔一つで、私はどれだけ救われたのかわからない。
なのに・・・最後に、なんでこんな裏切りをするの・・・!?
なんで・・・こんな酷い結末を見せるのよ・・・っ!?
私達だけあなたのことを覚えてて・・・どうしろっていうの!?
酷い・・・。
苦しいよ・・・助けてよ・・・アスナ・・・っ!!!
【な?笑ってくれよ。その方が似合ってるからさ】
カナリアの噛み殺した泣き声が場に響く・・・。
それは、今まで溜めこんだいろんな物がでてきている・・・。
それを感じて、痛々しくて・・・誰も声をかけられなかった。
そうして・・・瞳の輝きを失った二人は、拠点へと帰っていく・・・。
まるで、それが現実だ、とでも言うように・・・木々は全て枯れていた。
これが『永遠抗争』の全貌である。
私はそこで本を閉じた。
「ふぅ・・・」
記録を残すのも結構苦労する。
なんせエターナルに対する戦いだ、なんていままでなかった。
「さて、と・・・」
私はその本を持ってユウキの所へ行く。
エターナルはシンが消え去った後、一つに統一された。
それが今のエターナル。
カオスとロウという言葉は使われなくなった。
消え去るとわかっていてそれをしようとする事が、どれだけおろかな事かがわかったようだ。
もちろん、ロウの中には反対するものが多く、現在は私達とその反乱エターナルとで小競り合いがつづいている。
カオスとロウのリーダーを中心に、全てが一つにまとまりつつある。
現在、ローガスの直下でユウキが次のリーダーとなるべく修業中。
剣を失ったのを機に、生身でもソイツくらい戦えるようになりたい、と言っていた。
「ソイツ・・・か・・・」
私は空を見上げる。
今でも目に焼き付いている・・・アイツの笑顔。
ユウキ達が、私とカナリアを気遣って話をあわせてくれてるのはわかってる。
でも、私はあえてそれを続けさせる。
そうすれば、いつかアイツのことを思い出すんじゃないか・・・そう思って。
「・・・さ、がんばらなくっちゃ!」
「すごいね。さすがヒカリ」
「私にかかればこのくらい楽勝」
ユウキはパタンッと本を閉じる。
「これだけ詳しい記録があれば大丈夫だな。ご苦労さま。
いやぁ、今回の戦いでアイツから学ぶ事たくさんありすぎてさー。
メテオフォトンでしょ?精霊召喚でしょ?立体型オーラフォトン展開も・・・」
あれやこれやと言うユウキを尻目にユウナがこっちを向いた。
「あ、そうそう」
ユウキの隣にいたユウナが何か思いついたようだ。
「どしたの?」
「ヒカリには今日からしばらくお休みあげる」
「え?いいの!?」
突然の事で驚く。
だけど・・・ずっと記録を書いていて、気が滅入っていたので嬉しい。
「ずいぶん疲れたでしょ?だから、ゆっくり休んでいいよ」
「やった!!んじゃ、またね〜!!」
小躍りしながらユウキの部屋を出ていく。
・・・・・・
・・・・
・・
・
「随分無理してたな」
「記録を書いてれば・・・イヤでも自分の気持ちやアイツの事・・・」
「アスナ・・・だっけ?本当はいないのに・・・戦いのトラウマで作り出したんだろうな。
とりあえず話をあわせたけど・・・立体型オーラフォトン展開なんてローガスでもできないらしいぞ?」
二人はドアを見つめる。
彼女がどれだけ苦しい想いをするかわかっていたのに、区切りをつけさせるため・・・なんて浅知恵で仕事をさせた。
そんなことできるはずもないのに・・・。
―――アスナという人物は、最初から存在しないのだから・・・。
「そうだ、ユウト達はどうなってる?」
「あぁ・・・また一つ、拠点を落としたそうよ」
「アイツらもがんばってるな・・・。ヨシ!俺もやるぞっ!アイツらの期待に応えないとな!」
「・・・うん、がんばって!」
・
・
・
「おっ!ヒカリじゃないか。一緒にランチでもどう?」
最近知りあったエターナル。
名前は忘れた。
「私はいいよ」
「そんなこといわずにさ」
私の手を握ってこようとしたので軽くよける。
「それじゃ」
・
・
・
「はぁあぁ・・・」
こう見せ付けられると悪戯したくなる。
「全く・・・ユウキもユウナも場所と時を選んでほしいよ」
私はゴロッと草原に転がる。
「お昼寝?」
「テム・・・」
テムがプカプカ降りてきた。
「お疲れ様」
「記録するってのも、結構疲れるんだよね〜」
私は手をヒラヒラさせた。
「疲れたのは・・・それだけじゃないだろうけどね」
「テム?あまり人の心に土足で入り込まないの」
「ふふ、わかってるよ。それじゃね!」
「もういくの?」
「私はまだ仕事があるから」
「そう。バイバイ」
私は手を振ってテムを見送る。
彼女は・・・あれだけアスナを慕っていたのに、今ではすっかり忘れている。
いや、本当は『伝令』の能力で真実を知っているのかもしれない。
そして、あんな笑顔をして・・・辛い。
「ふぅ〜・・・」
青い空が眩しい・・・。
本当に・・・綺麗な空・・・。
「アイツと・・・見たかったな」
この平和な空を、日々を・・・一緒に。
それが永遠に実現しない夢だと思った時、不意に涙が流れだした。
「アス・・・ナぁ・・・っっ!!バカ・・・っ!」
この気持ちが永遠じゃないことはわかってる。
だって・・・いない人を想うほど辛い事はない。
きっと・・・いつか私はいつかこの想いを忘れる。
さっきの自惚れ男みたいなヤツじゃなければ、私はアイツ以外の人に心惹かれるのだろう。
それが、人間である限り絶対訪れる『時間』・・・。
それが、私はとても恐かった。
だから・・・私は極端に新しい異性との出会いを拒む。
ユウナには、それが私自身を傷つけている原因だって言われた。
でも・・・
だったら、どうすればいいの・・・!?
そんなやさぐれた、とも言える状況が私を一変させた。
と、言っても周りが『ヒカリ、変わったね』というからなんだけど・・・。
私は単に、髪を結い上げるのをやめただけ。
―――ねぇ、私の居場所ってどこなのかな・・・?
「・・・」
「うわぁっ!?」
隣にカナリアがいた。
「いいのよ、泣いてても」
「イ、イヤ!格好悪いもん!」
私は涙を拭う。
「カナリアは・・・泣かないの?もう」
「・・・さんざん泣いたから。今でも・・・ちょっとくるときはあるわ」
やっぱり・・・カナリアも。
「でも・・・泣いても彼は戻ってこないし。
だから・・・彼が残してくれたこの世界を・・・より良い方向へ導くことに専念するわ」
「強いね・・・カナリアは・・・」
「つよくなんかないわ。こうして・・・忙しいフリして、心が彼に奪われるのを恐がっているだけだから・・・」
「カナリア・・・」
「ふふ・・・いなくなって、本当に彼の存在の大きさを痛感させられるわね・・・。他人ごとじゃないのに・・・」
カナリアの目尻に涙が浮かんできた。
せっかく整理をつけていたのに、私がかき乱してしまったんだ・・・。
「もう・・・会えないのかな?」
「・・・」
その問いにカナリアは答えなかった・・・。
答えなんて・・・自分が一番知っているはずなのに、問い掛けてしまっていた。
アスナは・・・本当にあれで終わりだったのだろうか?
ローガスだって、ユウキだって、ユウナだって・・・私も、カナリアも・・・みんな、きっとまだアスナが必要。
それなのに・・・消えてしまって・・・本当に、アスナの役目は終わった・・・なんて信じられない。
そういう気持ちが残っているから・・・問い掛けてしまったんだ。
今でも耳に残っている・・・アスナの声が・・・。
もう・・・アスナが消えて・・・私達が助かってから一周期以上たつというのに・・・。
「ん・・・?」
私とカナリアがなんとなく視線を向けると、何人かのエターナルが拠点の方へむかっていた。
「なんかあったのかな?」
「さぁ?反乱エターナルの事ならいくらでもあるでしょうね」
未だ根強い反抗・・・。
せっかくアスナが全世界を救っても、自分の信念やらプライドやらで・・・全く。
はぁ・・・
「なんで・・・消えちゃったのかな」
「そうね・・・」
私はカナリアと一緒に曇ってきた空を眺めていた・・・。
「テムはあーして世界を飛び回って・・・ラクセルは上のエターナル達に精一杯で・・・
ユウト達はあちこちの戦いに駆り出されて、ユウキとユウナはリーダーになるために十周期くらい会えなくなるっていうし」
「そうね・・・みんなバラバラになっちゃうわね」
二人で空を眺める。
戦いはイヤだった。
でも、あの頃はいつもみんなで一緒にいた。
それがわかるから悔しい。
アイツも・・・みんなも、ずっと・・・。
「これがエターナルとしては普通なんでしょうけどね・・・」
「うん・・・やっぱ寂しいよね・・・」
「やっぱり・・・あの人がいたからみんな一緒にいたのかな?」
「え・・・?」
カナリアの呟きに抜けた声を出してしまう。
「あの人は・・・中心だったから。あの人がいなくなると、必ず崩れたし・・・」
「・・・」
ドガァァアァァァッッッ!!!!
突然拠点から爆音がした。
振り向くと、黒く大きな禍禍しい何かが渦巻いている・・・。
「いこうカナリア!!」
「ええ!!」
さっきのエターナル・・・!
しかも・・・強い!
すでにかなりのエターナルが消えていた。
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俺は闇に閉ざされていた。
二度も愛する人を殺した。
もう・・・誰とも会いたくない。
もう・・・2度とこんな思いはしたくない。
ネレイの体は俺の体のマナで構成されていた。
最後に、ネレイがマナを俺に返し、消え去る俺の代わりにネレイの肉体が消えた、ということらしい。
つまり・・・ネレイが俺の身代わりになった、ということだ。
(だけど、当然マナは少なかったわけで、この体に戻るまでにこんなに時間がかかったってことか)
ネレイ・・・本来の契約ではあんなことしないはずなのに・・・。
ネレイ・・・
俺は彼女の存在程の価値があるのだろうか?
存在が確認されてる精霊は永遠神剣第一位と同じくらいしかいない。
そのうちの一人・・・。
{あるわよ}
(え・・・?)
突然ネレイのけはいがした。
俺の・・・頭の中だけで。
こうして話しかけられるのは何日ぶりだろう?
俺がこうして目を閉じている間、ずっとネレイが話しかけてくれていた。
{あなたはまだ死んじゃいけないわ。まだあなたはこの世界の中心なんだから}
(でも・・)
{あなたは、私みたいな力だけの存在より、ずっと価値がある。あなたがいることで人間はいろんな大切な物を得ることができるの}
(ネレイ・・・)
{大丈夫。あなたのことはずっと見守っていてあげるから}
(え・・・?なんでお前はそこまで・・・)
{・・・わからないの?スフィアって子に頼まれたのよ。ずぅっと前にね}
(なっ・・・そうだった・・・のか・・・)
てっきり俺は実力でネレイに認められたと思ってた。
だけど、それは間違いだったんだ。
ずぅっと、ネレイとスフィアが守っていてくれたんだ・・・。
{だから、私は永遠にあなたの傍にいる。それだけ。じゃぁね!}
(ネレイッ!?)
突然ネレイのけはいが消える。
すると、手のひらに何か感触が・・・。
「・・・」
そういうことか。
俺は手のひらにあるペンダントを握り締めた。
(サンキュー・・・ネレイにスフィア)
【アスナ・・・】
「!?」
突然目の前に人が現れた。
全く知らない人・・・のはずなのに、なぜか親近感が・・・。
「誰だ・・・?」
【ふふ・・・やっぱり、お母さんのことは覚えてないのね】
「母さん・・・!?」
そんなバカな・・・!
なんでここにいるんだ・・・?
【信じられない?でも、あなたの魂はそう言ってるんじゃない?】
「そんな・・・うそ・・・」
俺の体の奥底から懐かしい気持ちが溢れてくる。
それが・・・彼女が母さんだと認めていた。
「どうして・・・?」
【ふふ・・・だって、あなたはまた歩き出すんでしょ?今度は見送りにきたかったの】
悪戯っぽい笑顔で俺を見る母さん。
そこらへんは親譲りなんだろうな・・・。
【お母さんね、あなたを産めて誇りに思ってるわ】
「・・・」
なんで・・・?
母さんは俺を産んだせいで死んだんだよ?
そのおかげで父さんはメチャクチャになって・・・。
【お母さんの全身全霊をかけて産んだ子供だもの。お母さん、自慢しちゃうから】
「・・・うん、うんっ!」
【泣かないの!男が泣いていいのは、目標が達成できた時と、誰かが死んだ時だけよ?】
「・・・うん!」
【まさか、あのアスナが世界を救うなんて・・・ホント、あの人との子供だわ】
「父さん・・・?」
【ええ。ね?あなた・・・】
『そうだな・・・』
「父さん!?」
参った。
ここはなんでもありなのかよ・・・。
『父さんもな、お前くらいの歳にエターナルになったんだ』
「はぁ!?」
【それでね、お母さんと出会って、惚れてしまったってわけ】
『おい、恥ずかしいじゃないか、アスナの前で・・・』
「はぁ・・・?」
『つまりだ。カオスエターナル1号はお前じゃない。父さんなんだ』
「いや、べつにそれはいいけど・・・だって、俺の記憶じゃ父さん・・・老けてったじゃないか」
【あはは。それはね?お父さん、エターナルやめちゃったの】
「はぃ!?」
なんだこの能天気夫婦は。
さっきから爆弾発言しまくりだぞ。
【私と結婚したいって。でもね、お母さん、体が弱くって・・・生きた証に子供が欲しかったから、あなたとは結婚できないって】
『それで、父さんはエターナルを辞めて、母さんと結婚した・・・そういうことだ』
「な、なんだそりゃ・・・?」
『アスナ』
「・・・なに?」
『すまん。母さんがいなくなって・・・お前にやつあたりして・・・片目の色が違うのも、父さんのせいなんだろ・・・?』
「うん」
『・・・即答か』
「気にしないで。別に怒ってないし・・・これのおかげで、俺は新星と出会えたから。それで・・・」
俺はそっと目を閉じる。
新星と出会って・・・ローガスと出会って・・・スフィアと出会って・・・
「そうした一つ一つの思い出は、どんな経緯であろうと、素敵な思い出だから」
『お前・・・本当に立派になったな』
【・・・えぇ】
「そうかな?」
【さて・・・そろそろいきましょうか、あなた】
『そうだな』
「一つだけいいかな?」
【なに?】
『手短にな』
どうやら、人を食った性格は母譲りで、いい加減な性格は父譲りのようだ。
「俺・・・この世界に生まれて良かった!だから・・・産んでくれて、アリガト!!それだけっ!!!」
俺はそのまま背を向けた。
もう振り向かない。ヒカリとカナリアはこっちにいるんだから。
それと・・・恥ずかしい気持ちもあったけど。
俺の居場所は・・・ヒカリとカナリアの傍だ。
それは、どれだけ時が過ぎようと変わらない。
―――だから・・・いこう。
俺は何年・・・いや、もしかしたら年ですまないかも。そのくらい久しぶりに目をあけた。
そこには、晴れた空とまぶしい光があった。
「そうだな・・・。俺はまだ終わっちゃいないな!」
一歩踏み出そう。
一人では、何も得られない。
そう・・・シンに言ったのは俺だ。
スフィアに会わなければ、あんなに幸せになれなかった。
ヒカリとカナリアに会わなければ、あんなに幸せになれなかった。
アイツらに会わなければ・・・俺はくたばっていた。
行こう。
アイツらが俺を覚えてないのは知ってる。
当然・・・初対面から始まる。
そうすれば、とてつもない痛みと寂しさを受けることになる。
でも・・・いいんだ。
また始めよう。
アイツらも、俺も死んじゃいないんだから。
あの思い出はみんなの中に、どう残っているのだろう?
そこに俺はいないけどね。
「よっしゃ!新星・・・じゃなくて、ネレイ!」
{なぁに?}
「ローガスんとこへ挨拶にいかないと!起きやがれ」
{なによその口の聞き方?私のおかげで助かったのに}
「恩を売るな。ホレ、さっさといくぞ!」
{ハイハイ・・・}
やる気のないネレイをたたき起こし、俺は門へと入って行く。
「えいしょっと・・・」
俺は門を抜ける。
そこは、以前よりさらにボロくなった拠点・・・。
「ここ・・・からか。ん・・・?」
なんだか戦ってる雰囲気がする。
それを感じて、俺は両手を握り締める。
無償の奇跡なんてない。
だから、アイツらが俺を覚えてることはない。
だけど・・・それでも俺はアイツらと一緒にいたいんだ。
だから・・・行こう!
俺は拠点に向かって走りだしたのだった・・・。
そうして・・・俺は再び時を動かした。
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エターナルって・・・なんだろう?
ときどき考える。
世界を仕向けるためにいるんじゃない・・・。
―――世界を導く者?
―――神?
違う・・・。
やっぱり、エターナルもただの人間だ。
だって・・・こんなに温かい気持ちを持っている。
こんなに幸せな時間を過ごしている。
だから・・・気負わないで、思った通りに生きていこう。
そうすれば・・・もう、きっとあんな戦いは起こらない。
失ったものも大きかったけれど・・・きっと、得たものはもっと大きい。
だから・・・もう二度と何かを失わないようにしていかないと。
それが・・・今、生きている・・・エターナルも人間もない。
生きている・・・オレ達の役目なんだ。
一人一人が・・・未来を形づくっていく。
その未来が・・・戦いの連鎖から解放されているようにするために。
その全てが輝かしいものであるようにするために。
それが・・・新星が俺に求めたものだった。
永遠神剣ってなんだろう?
今回の戦いがあってから・・・永遠神剣とどう付き合っていくか。
それが見直されはじめていた。
今回の戦いは・・・エターナル自体が永遠神剣に依存していたから起きた。
何も知らず大きな力を手に入れて、我が物顔で使っていたエターナルへの報復・・・。
―――そう思うと、俺はシンを倒してしまってよかったのかとまで思ってしまう。
でも・・・『これでよかった』なんて逃げの言葉は言わない。
これしかないんだ。オレ達の生きていく道は・・・これしか。
後戻りはできない。
占い師だろうが預言者だろうが、そんなのただの『予想』にすぎない。
『事実』ではないのだ。
なぜなら、未来は一秒先に枝分かれしているのだから。
だから・・・結局、オレ達は目の前に迫った問題を一生懸命解くしかない。
まずは・・・永遠神剣の問題を解決してしまおう。
願わくば・・・全ての世界が、人が・・・平和な未来を掴めますように・・・
『永遠抗争』
〜Eternal Dispute〜
―Fin―
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『水の聖者アスナ』
永遠神剣最上位『水聖』と契約したアスナ。
命を助けられ、その後のケアもしてもらったため一応『水聖』に感謝はしている。
その実力は最終決戦のアスナさえ軽く越えると予想される。
数で表すととんでもないくらいになる程生きているアスナは、生身でオーラフォトンを操れるようになっていた。
もう剣がないため、素手での戦闘と素早い魔法で戦うことになる。
アスナの存在自体が永遠神剣に近くなっていたため、アスナは永遠神剣に好かれる。
こうなったアスナはもはやローガス以上の実力を持っていることになる。
しかし本人は、もう一度大きな戦いが起きれば全てに見切りをつけて世界から離れるつもり。
四年程度エターナルでなかったため、身長は170センチに。
永遠神剣最上位『水聖』
ネレイの力がそのまま永遠神剣になった。
召喚していた時はもっと清楚で凛としていた感じだったのに、今ではやかましくとてもうるさい。
というのも、一命をとりとめた頃のアスナは、二度も愛する者を殺した重みと傷で廃人寸前だった。
それを救うためにこのような性格をしていたらそれがピタッとハマってしまった。
ネレイが精霊の時の力がそのまま永遠神剣になったため、その力は強力無比としか言いようがない。
ネレイは水を司る精霊だったため、この名前になった。
明確な意志(生物全般)をもつ者以外の水に影響されるもの全てを操ることができるため、世界のほとんどの物は操ることができる。
形状はペンダント。
アスナはもう二度と戦うつもりがないため、戦うとどう変化するかはわからない。
おそらくオーラフォトンでネレイを作り出し、それを使役するものと思われる。
つまりは、剣などで戦うのではなく魔法戦闘をする。