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「ヒカリ・・・」

「え?」

 

「俺はおまえが好きだ」

「え・・・えぇ!?」

 

いきなりの告白に驚くヒカリ。

古典的なリアクションをしてくれる。

 

ま・・・もちろんカナリアも好きなんだけど。

カナリアだけに言ってヒカリには・・・ってのはね。

 

「今言っておかないと・・・後悔しそうだし」

「それって・・・死ぬとか、そういう意味じゃないよね?」

 

 

「・・・なるべく生き残るつもりだけどな。

カナリア・・・二人とも、聞いてほしい。たぶん・・・俺は、この戦いがおわったら、消えると思う」

 

 

「「っ!?」」

 

 

俺は黙って右腕を見せた。

力を軽く抜くと、一気に透明になった。

 

「それは・・・っ!?」

 

 

「スピリット・オブ・ネレイのせいでね・・・。

なるべく使わないでおわらせたいけど・・・手を抜いて倒せるやさしい相手じゃないからな」

 

 

「そんなのダメだよ!みんな待ってるんだよ!?」

「それに・・・ユウキも助けないといけないし」

 

はは・・・やること多いな。

 

 

 

 

 

{アスナ・・・}

「お、ヒサシブリだな、新星」

{ずいぶん・・・たくさんのものを背負ったんだな}

 

「・・・まあね」

{だが・・・アスナにはそれを成し遂げられる力がある。背負った思いを全て力にかえるんだ。きっと・・・勝てる}

「・・・そうだな」

 

 

消えちゃ・・・ダメだよな。

背負った人々の思いのなかに・・・ヒカリとカナリアの、消えないで欲しい。

3人でいたい・・・そのふたつもあるのだから。

それを思って、新星はそう言ったのだろう。

 

 

「サンキュ・・・ちょっと格好付けたかな?」

{そうだな・・・。だが、それくらいが今はちょうどいい!}

 

 

「よし・・・新星ッ!いくぞっっ!!」

{ああ!!全てをぶつけてシンを越えるんだっ!!長い因縁に、オレ達の手で決着をつけよう!}

「シンッ!うぉぉおぉぉぉ!!」

 

キィンッ!!

ドガァアァ!!

 

「そんな程度で私を越えるつもり!?」

 

簡単に見切られ、軽く受けとめられる。

だが、オーラフォトンが反発しあい、俺たちの体に襲いかかる!

 

「まだだ・・・っ!絶対にお前を倒してみせるっっ!!」

 

キィッ!!

ドガァァアァッ!!!

 

剣が重なっただけで場を揺らす程の爆発が起きる。

 

ドガァアァッ!

ドガァアァァッ!!

 

 

ヒカリとカナリアは必死で二人を追うが、ついていけない。

右で剣を合わせたかと思うと次の瞬間には後ろであわせていた。

それが肉眼で確認できないほどあちこちでやるものだから、あたりの自然が全て吹き飛んでしまう。

 

 

「シンッ!!あまりに俺をみくびりすぎたなっ!!」

「ここであなたを消せば同じことっ!あなたに私の計画を邪魔させはしないっ!!!」

 

 

ドガァアアァッ!!

 

オーラフォトンが反発し、まるでかまいたちのようになってお互いの体を切り刻む!

 

 

「そこぉっ!!」

「っ!?」

 

ザンッ!!!

 

「アスナッ!」

 

ヒカリが叫ぶ。

わずかな隙をつかれて、綺麗に右腕を切断された。

一緒に新星が落ちる。

 

「しま・・・っ!」

「これで・・・終わりよっ!!」

 

胸にむかって剣が迫ってくる。

肉眼で確認できた剣筋が速すぎて見えない。

 

(ここだっ!!)

 

俺は素早く左手に力をこめて剣を弾いた。

 

バスゥゥッ!!

それでもかわしきれず、右肩にシンが食い込む。

 

「〜〜〜ッッッ!!」

「よく避けたわね・・・」

 

(まだだっ!まだ攻め続けろ・・・っ!離されるな!!)

 

俺はそう思って、すぐさまシンとの距離を詰めた!

 

「でやあぁあぁっ!!」

 

俺は左手をシンの腹部にあてた。

 

ボガァアァッ!!!!

 

「あぁぁあぁっっ!!!?」

 

 

左手で起こった爆発がシンの体を吹き飛ばす。

ザブッ!と右肩からシンが抜ける。

俺はすぐさま新星を握り、右腕を再生する。

 

 

「さすが・・・ね・・・生身でもそこまで・・・だものね」

「無駄に時間があったせいでね・・・。やっといてよかったぜ」

 

 

「でやぁぁあぁぁ!!」

「うぁぁあぁぁ!!」

 

 

 

バキィッ!!!

再びオーラフォトンの反発で生まれるかまいたちがオレ達をきざむ。

 

「アスナッ!この女がどうなってもいいの!?」

 

{アスナ・・・ッ!痛い・・・っ!}

 

「・・・やべっ!」

 

彼女の声で一瞬だけ・・・!

つい力が抜けた。

 

ズバッ!!!

 

一気に押され、かまいたちで左足が吹き飛んだ。

 

「くそっ・・・!」

 

偉そうな事を言っておいて、まだ・・・ダメか・・・!

 

「ふ・・・人間なんてそんなもの。一人で達観した言い方しても、しょせんはあなたも人間だった・・・ってことね」

 

あきれた、とでも言わんばかりに首を振るシン。

 

 

 

 

「当たり前だ・・・っ!人間の何が悪い・・・!?」

 

俺はシンを睨み付けた。

左足がジリジリ・・・と治っていく。

不意にスフィアの顔が浮かぶ。

 

なぜか・・・出てくる顔は笑顔ばかり・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は・・・人間だ。それで十分だッッ!!!

人間だからこの気持ちを持てた!この笑顔を得られた!!」

 

やけくそで言う。

そして、それは俺の力となっていく。

 

 

「オレは・・・・俺は・・・!」

 

結婚を誓ったときに見せたあの笑顔・・・それが焼き付いて離れない。

 

 

「俺はぁぁあぁっ!!!」

 

グググッ!

シンを一気に押し返す。

 

 

「っ!?これは・・・!?」

 

 

「スフィア・・・っ!」

 

 

 

なぜ・・・俺と彼女はこんな結末を迎えなければいけなかったのだろう?

 

―――苦しい。

 

愛する者を消さなくてはいけないなんて・・・こんな傷、二度と受けたくなかった・・・。

 

 

 

―――そう思った時、救ってくれた二人がいた・・・。

 

 

ヒカリとカナリア・・・。

だから、俺は・・・あの二人のために生きようと思う。

 

だから・・・お別れだ、スフィア。

君といた日々は・・・毎日楽しくて、面白くて・・・きっと、一生忘れらない宝物。

そう・・・今から、君を俺は宝物にするよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さよなら、スフィア・・・

 

 

{アスナ}

 

 

「スフィア・・・?」

 

シンに俺の剣が食い込む瞬間、声が聞こえた。

 

 

{私はアスナに会えて幸せだった・・・}

 

 

「!!」

 

この言葉・・・っ!!

あの時の!

 

 

{アスナも・・・幸せだったよね?・・・だったら、嬉しいな・・・}

 

あの時と同じ言葉・・・それが俺の感情を爆発させた。

 

 

「うあぁあぁぁぁぁああ!!!!」

 

 

ザバァアァッ!!!

 

新星がシンを真っ二つに切り裂いた。

急激にシンのマナが薄れていく・・・。

 

ポタッ・・・!

一粒の雫が、乾いた地面に大きなシミを作る・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わるものか・・・!」

 

後ろを振り向くと、体が真っ黒になったシンがいた。

 

「な、なんだ・・・!?」

「アスナ・・・アスナあぁあぁっ!!私は負けないっ!!全てのマナを使い尽くしてやる!!」

 

グオォォオォォッ!!!

 

「アスナッ!」

「こっち!!」

 

俺はヒカリとカナリアの所へいく。

 

「これは・・・!?」

 

 

どんどん黒い物が大きくなっていく。

ユウトの世界で見た学校くらいになっていた。

しかも、マナが急激に集まりだして、威圧感が半端ではない。

指一本動かすのも容易ではないくらいだ。

 

 

『ふっ・・・ふははははっ!!すばらしいわ・・・っ!この力・・・!』

 

 

「シンッ・・・!」

 

その黒い物体はだんだんとドラゴンの形をとっていく。

三つの頭、大きくまがまがしい黒い翼・・・。

 

 

『最初からこうして世界を破壊していけばよかったのね!』

 

 

「あきらめが悪いぜ・・・!」

 

 

『なんとでもいいなさい!もう誰も止められないわ!手始めに・・・アンタらを殺してやるわっ!!!』

 

 

三つの頭が俺とヒカリとカナリアにそれぞれ向く。

 

「ぐっ・・・!仕方ない。一人一つ、頭をつぶせっ!!」

「了解・・・っ!カナリア!いけるの!?」

「大丈夫っ!やってみせるわっ!!」

「いくぞっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴォォォオオォッ!!!

 

「っ!!」

 

ボガァアァッ!!

 

ブレスが濁流のように襲いかかってきた。

かろうじて避けると、地面が爆発してえぐれた。

 

「なんって威力・・・」

 

くらえばひとたまりもないだろう。

 

「なら、くらわなければいいだけっ!」

 

私はちょこまか動きながら頭へと駆け出す!

 

ブォォ!!

 

「っ!?」

 

ズゴオォオオッ!!!

ドラゴンの腕が突然現われて私の体を吹き飛ばした!

 

ズガァアァッ!!

 

当たった衝撃だけで体のあちこちが折れたようで、受け身も取れずに地面を転がる。

 

「い・・・いった〜〜いっ!!」

 

私はすぐさまドラゴンと距離を取る。

 

「・・・よし」

 

私は思いついた作戦をやるために、一気にドラゴンの頭の上に飛んだ。

 

「揺れるなっ!!」

 

私を振り落とそうと激しく頭を揺らすドラゴン。

 

 

「マナよ、その力、この地に最大の破壊として示せ。全ての物を終焉へと導けッッ!!!ラストテンペストッッッッ!!!

 

 

ゴォォオオォォッ!!!

突然空が黒いオーラで覆われる。

私はそれを感じてすぐにドラゴンの頭から降りた。

 

キィイイィッ!!

 

「っ!!」

 

ドラゴンがまたブレスを放とうとしていた。

同時に腕が私の体を地面へ叩きつけた!

 

ドゴォォオォッ!!!

 

 

「ぅぁ・・・っ!!」

 

あまりに重たい衝撃で、今度は全ての体の骨が折れたみたいだ。

どこも動かせず、ただ地面に横たわる。

意識を失っていないのが奇跡だ。

 

「でも・・・勝った・・・っ!」

 

ブレスが放たれようとしたその時・・・!

 

 

ビィィィィィイッ!!!!

 

 

細い光線がものすごい勢いでドラゴンの頭を打ち抜いた。

光線が地面へ到達すると・・・

 

 

ボガァァアァッ!!!

ズバァァアアァァァンッッ!!!!

 

 

突然爆発が起こり、全てを飲み込んでいく・・・っ!

その爆発の強さに体が吹き飛ばされた。

 

バシッ!

 

「・・・え?」

 

なにか・・・暖かい物に受けとめられたようで、衝撃がまるでない。

ドラゴンを見ると、その頭は完全に溶けてなくなっていた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シン・・・哀れな姿になったわね」

 

ドラゴンをみあげる。

デカい・・・。

ただ、なぜか悲しい。

 

『哀れ?ふふ・・・それはあなたの方じゃない。わざわざ死ぬほうについてしまった・・・ね』

 

「死ぬわけないじゃない。私にはヒカリとアスナがいるのよ?それに・・・」

 

 

{私もいますからね}

 

 

『!背光!?』

 

シンが驚いていた。

 

 

『なぜ!?誘拐したときにちゃんと自我は消しておいたのに!』

 

 

「反乱分子は全て消すつもりだったんでしょうけど・・・。

これは私の剣であって、あなたの剣じゃない。だから・・・あなたなんかに負けはしない。私が負けてなかったのだから」

 

 

『カナリアぁあぁぁ・・・っ!』

 

 

ボガァアアッッ!!

 

 

突然ブレスが襲ってきた。

ひょいっと軽く避ける。

当たればひとたまりもないなら、当たらなければいい。

きっとヒカリはそう思う。

 

「その体も返してもらうわっ!それはユウキの体なんだから!」

 

 

『できるものならやってみなさい!どこまでも私を失望させるカナリアッ!!!』

 

 

私は一気に駆け出した。

 

ズドォォオオォッ!!

突然現われた腕をかわし、おもいきりジャンプした。

 

キィィィッ・・・!

私に向けてブレスを放とうとしているシン。

 

 

「はぁぁああぁ!!シャイニングスタァアァァッ!!!

 

 

突然背光がオーラを纏い、剣の長さが数倍になる。

私はその剣をそのまままっすぐ振り下ろした!

 

 

「シンッ!!!私はあなたを今!この瞬間に越えたわっ!!!」

 

 

バシャァァアァァッ!!!!

そのオーラが深く頭を切り裂いた!

 

 

グッ・・・!

スパァアァァアァンッ!!!

 

 

頭が弾け飛び、金色のマナへと還っていく・・・!

 

「私は勝ったよ・・・アスナ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドガドガ・・・好き放題しやがって!!」

 

辺りはブレスによってまるで地上絵のようになっていた。

こっちは連戦だってのに・・・!

 

 

『アスナあぁあぁ!!あんたさえいなければ!!』

 

 

「そいつはわるかったな!でもそれはお互いさまだ!!

お前がいなければ・・・!スフィアも!ユウキも!フォルクも!!

辛い思いをしないですんだんだッッ!!!もう犠牲はださない・・・!その体!ユウキに返してもらうぜっ!!!」

 

 

俺は新星に力を込めた。

真っ赤なオーラフォトンを纏い、刃となる。

 

 

『潰れなさいっ!!』

 

 

腕が俺にむかってきた。

 

「でやぁああぁっ!!」

 

 

ズバァアァッ!!!

 

俺は横に避けて、腕を切り裂いた!

 

ドスゥゥッ!!

剣より遥かに大きい腕がバッサリ落ち、マナへと還っていく・・・。

 

「へっ・・・これでおまえの両腕はなくなったぜ!!」

 

 

『負けるものか・・・!天地に・・・天地になるためにも!!』

 

 

ブサァアァッ!!!

 

「!!!」

 

ウソ〜ん・・・!

ドラゴンの体が全て再生した。

冗談キツいよ〜・・・。

 

 

『死ねえぇぇえぇっ!!』

 

 

「っ!?」

 

バシィイィッ!!

両手で体を掴まれた!

 

ギリギリッ・・・!

俺を必死に押し潰そうとしているのがわかる。

それに・・・

 

「ぐ・・・っそっ!!」

 

新星が脇腹に食い込んでいる。

もう背骨あたりまでいっているだろう。

 

ブシュゥゥッ!!!

途端に血が吹き出し始めた!

 

「や・・・ば・・・」

 

意識が朦朧としてきた。

連戦の疲れもたまってたのだろう。

 

「く・・・そっ・・・!」

 

負ける・・・のか・・・?

 

 

『アスナが死ねばもはやカオスに敵はいない!私の勝ちよっ!!』

 

 

「死ぬ・・・か・・・?」

 

俺は目を閉じた。

いや・・・目を開けている力さえなくなった。

 

 

 

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『ラストテンペスト』

ヒカリ最終支援技。その一撃の威力はエターナルのオーラフォトン技の中でも上位に位置する。

『ハイペリオンスターズ』よりも更に強く、広範囲になった物。

敵を光線で撃ち抜いた後、光線付近のマナを連鎖的に爆発させていくという難しい技。

問題なのはその敵の付近で詠唱しないといけないというところ。

大型の敵には有効だが、一対一やエターナル同士の戦いにはあまり向いていない。

 

 

『シャイニングスター』

カナリア最終攻撃技。ユウトの『エクスプロード』を参考にした技。

背光にオーラフォトンを纏わせて斬り付ける。そこでオーラフォトンを相手に送りこみ、内部爆発を起こす。

『エクスプロード』と違うところは、刀身がオーラフォトンにより数倍になる。

その刀身のおかげで、相手がまとまっている場合は一気に殲滅することができる技。

一対一でも、一対複数でも抜群の使いやすさ。特に疲弊することもないので行動しやすい利点もある。