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俺はじっと空を眺める。

明日から、再び孤立無援の戦いになる。

オレ達は一直線にシンの世界へ向かい、牽制する。

そこでラクセルとトキミの部隊がやってくる、という寸法だ。

 

はぁ、と軽くため息をつく。

 

 

{どうした?}

「いや・・・おかしいと思ってさ」

{なにがだ?}

 

「カナリア・・・だよ」

{・・・気付いてたのか}

 

 

当たり前だ、と呟く。

 

カナリアは未知というか・・・不可解な部分が多すぎるのだ。

まず、エターナルになっていること自体からおかしい。

普通のスピリットで、しかもエターナルになんの知り合いもいない(記憶が消えているから)はず。

なんでエターナルになったのだろう?

それだけの思いがあったとは思えない。

 

 

背光が教えた、と考えられるけど、じゃぁ背光はどこで?

ファンタズマゴリアに上位神剣は、ユウキ達がテムオリンとラクセルを倒したことでなくなったはずだ。

 

まだある。

カナリアはなんでユウキ・・・もといシンに誘拐されることを知っていたのだろうか?

いや・・・本人は敵にまわるかも、とか言っていたのだけど。

ヒカリに聞いてもよく知らないらしいし・・・。

 

 

「変な感じ・・・」

 

こう・・・認めたくない考えが浮かんでくる。

そう・・・最悪の考えだ。

 

「・・・ま、いっか」

 

考えてもしょうがない。

今、目の前にある問題を全力で解決するだけだ。

 

{ま、いっか・・・で済めばいいけどな}

「・・・」

 

 

 

 

 

 

「んじゃ・・・いこうか」

 

俺はヒカリ、フォルク、カナリア、ユウナ、テムの順番で見る。

みんなそれぞれ決意に満ちた顔をしていた。

俺は安心して門を開く。

 

 

「シンの世界へは3つの世界を通るから、なるべく戦いは避けよう。

ましてや敵の本拠地に近いから、油断なんて問題外な。ま・・・ピリピリいくのもなんだから、いつもどおりにいきましょうかね」

 

 

「アスナ・・・気合いいれてるの?抜いてるの?」

「さぁ、どっちでしょ〜?んじゃ、おさきに〜」

 

俺は門へ飛び込んだ。

 

(・・・なんとかしないとな)

 

誰一人欠けさせはしない。

全員で、またここに帰ってこよう。

必ずだ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぁぁぁ!!」

 

ズバアァッ!!

目の前のロウを斬り伏せる・・・。

恐怖に歪んだ顔が俺の脳にこびりついた。

 

「ふぅ・・・そっちはどうだ?」

「大体ね・・・」

 

みんな傷だらけながらも致命傷は負っていないようだ。

 

「カナリア、平気か?」

「は、はい・・・」

 

一人後方に下げていたカナリアを気遣う。

 

{アスナ・・・くるぞ?しかも、三人だ}

「・・・」

 

新星からピリピリした空気が伝わってくる。

 

 

「俺が一番強いヤツの相手をする。ユウナはそのつぎに強いヤツを。フォルクとヒカリとテムは三人で仕留めてくれ」

「了解、無理しないでよ?」

「オッケー」

「アスナ様も気をつけてねっ!」

 

 

オーラフォトンが集結していく。

さんざんシンと戦ってきた俺でも感じるプレッシャー。

強い。

今までのような下っぱではない。

 

ピキィンッ!!

光が弾けて三人の顔を拝む。

 

 

 

「おまえらか・・・」

 

やさ男が呟く。

 

「うぉぉぉ!!燃えてきたぜーっ!」

 

大男が叫ぶ。

それだけで地面がゆれる。

 

「ふん・・・なぜ僕がこんな下賎の相手を・・・」

 

チビが憎々しい態度で言う。

 

「おまえらは誰だ?」

「自己紹介といこうか・・・。金星のブレスだ」

 

あくまで紳士的な態度でお辞儀までしてくる。

 

「火星のリョートだぁぁあぁ!!」

 

やっぱり叫ぶ大男。

タキオスよりも強い力を感じる・・・。

 

「水星のニネイ。まぁ・・・すぐに死ぬだろうが、礼儀だ」

 

ふん、と鼻で笑うチビ。

 

 

「随分とまぁゾロゾロでてきちゃって・・・こんな大歓迎してくれるなんてね」

「ふふ・・・アスナ程のエターナルに、これ以上下っぱを差し向けても意味がないのでね」

 

ブレスは軽く笑う。

きっと、同じエターナルだからといって仲間意識など欠けらもないのだろう。

むしろ、清々した、という顔をしている。

 

「こっちの自己紹介はいいよな?んじゃ・・・やりますかね」

 

俺は新星を構えた。

 

「そうだな。ここまでくれば言葉など意味をなさない。なかなか賢いようだな」

 

相手も全員剣を構えた。

 

「いくぞっ!であぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

ズガァアァッ!!

ブレスが軽くよけて新星が地面を砕く。

 

「ふふ・・・アスナ、君と戦えることを心から喜ぶよ」

「アンタが女だったら俺も嬉しかったんだけどね!」

 

 

ザパッ!

宙に浮いているブレスを切り付けるも、軽くよけられる。

動きが綿のようにフワフワしている・・・。

 

 

「そう言わずに俺で我慢してほしいな」

「してやるから・・・とっとと消えろっ!!」

 

 

キィン!!

新星と金星がぶつかりあう。

 

 

「それは無理だな」

「おまえらみんなが消えることになるんだぞ!?なんでそれでもいいなんて・・・!」

「シン様のマナの糧となるなら本望。説得など無駄だ。俺の中で、シン様の命令以上大事な物はないっ!」

 

 

キィンッ!

新星がうえに弾かれる。

バッと距離を取ると金星がカラぶった。

 

「そうか・・・」

 

 

前にもいた。

こんな・・・バカなエターナルが。

なんで・・・自分を大事にできないんだ・・・。

 

自分の命を優先させてほしい・・・だけど、悲観してもしょうがない。

だったら・・・消して、進むだけだっ!!

新星から力を引き抜く!

 

 

「うぉぉぉぉ!」

 

タッ・・・!

一瞬で間合いをつめる。

 

「っ・・・!速いっ!!」

「ブレスッ!消えろォォオォォッ!!!」

 

ブザァアァッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でぇやぁぁあぁ!!!」

 

バキィッ!!

鈍い音がして腕が痺れる。

 

「くっ・・・」

「どうしたユウナッ!?そんなものか!?」

 

 

バキィ!!

想いが折れてしまうんじゃないか、と思うほどの衝撃をうける。

その力はタキオスよりはるかにうえだ。

 

そして・・・剣技の面においてもだ。

その速度、力、流れ、どれも絶妙なバランスだ。

 

 

「想い・・・っ!」

{わかってるわ!}

 

力が体に流れこんでくる。

力でくるなら・・・それ以上の力をぶつけるまで!!

 

バキィッッ!!

 

「っ・・・!」

 

火星を受けとめる。

今まで弾かれていたものを、しっかりと受けとめた。

 

 

「そんな剣で・・・!」

「むっ・・・!?」

 

バッと距離を取るリョート。

想いにオーラをまとわせる!

 

「私を止められるなんて思わないで・・・っ!!」

 

ユウキのトコロへいって・・・止めてみせる!

そのジャマをさせなんか・・・!!

 

「やぁぁあぁぁっっ!!!」

「ふっ・・・甘いッ!!」

 

「っ!?」

 

キィィッ・・・!

突然足元に力を感じる。

だけど・・・気づくのが

遅すぎた。

 

 

ボガァアァッ!!!

 

 

「きゃぁぁぁ!!」

 

突然足元が爆発し足がもげた。

一瞬でマナに還っていく・・・。

 

{ユウナッ!!}

「ぐ・・・ああぁ・・・っ!」

 

 

足からマナがどんどん抜けていく。

こんな・・・トラップにひっかかるなんて・・・!

 

 

「冷静さを失ったヤツなど、どれだけ強くても俺にかないはしなぁぁぁい!!」

「くっ・・・うあっ・・・!」

 

私は想いに力を込める。

なんとかマナの流出はとまるも、足がなくては動くことさえできない。

 

「まぁいいさ。今日は顔見せだしな!」

「なんで・・・?」

 

トドメをささずに剣をおさめるリョート。

 

「それに、お迎えでもある!」

「お迎え・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「でやぁぁああっ!」

 

フォルクが側面から切り掛かっていく。

 

「ふっ・・・甘いよっ!」

 

キィンッ!!

 

「っ!?」

 

ブシャァッ!!

剣を軽く弾かれ、態勢が崩れた所に追撃がきた!

避けられず腹が裂けるフォルク。

 

 

「マナよ、その力を彼の者に見せ付けよッ!!シャイニングファイアーッッッ!!

「甘いッ!」

 

 

フォルクを切り付けたのと同時にヒカリの魔法が発動するも、一瞬で場から消え無駄に終わる魔法。

 

 

「どこっ・・・!?」

「後ろだよっ!」

 

キィンッ!!

突然ヒカリの後ろに剣が出現する。

 

キィン!!

 

「ふっ・・・さすがはケーリューケイオンの持ち主」

 

その剣によって水星が止められていた。

あやうくヒカリを串刺しにするところだっただろう。

 

 

「ありがとうテムッ!でやぁぁ!!」

 

 

ヒカリはすぐに剣を構えて斬り付けるっ!

シュッ・・・!

 

「甘い、甘すぎるね」

 

無駄な動きを一切しないで避けるニネイ。

その顔には余裕さえある。

 

 

「君たちじゃ僕の相手にはならないよ。弱すぎる」

「伝令・・・あのすかした坊やに痛い目にあってもらおっか?」

{そうね}

 

 

テムが伝令に力を込めていく。

 

 

「ヒカリさん、フォルクさん、タイミングは私にあわせてっ!!」

「御意っ!」

 

フォルクが斬り掛かっていく!

 

 

「こっちもオッケーッ!」

 

ヒカリも詠唱をはじめる。

 

 

「ふっ・・・無駄さ。いくら力を見せ付けても僕には効かない」

「ぬうぉぉおぉ!!」

 

フォルクが流れるような剣さばきをみせる。

だが、その速さでもニネイに傷一つつけることさえできない。

 

 

「邪魔だよ・・・君っっ!!」

「っ!?」

 

 

キィンッ!

流れていた剣が止まり、流れが死ぬ。

前のめりに攻撃していたので自然と体がぐらついた。

 

「はぁああっ!!!」

 

 

ザッ!

ザッ!!

ズシャァァアァッッ!!!

 

 

 

「おおあぁぁ!?」

 

 

両膝両肘を貫かれ、砕け散る。

剣は握り締めているのではなく、握っているだけだ。

手が固まっているだけ・・・。

ドサッと倒れるフォルク。

 

 

「いくよヒカリさんっ!」

「うんっ!」

 

テムが伝令をかかげた。

 

 

デストロイヤーッッッ!!!

スターダストッッ!!!

 

 

テムとヒカリの呪文が重なる。

二人のオーラフォトンによる魔法が場を一気に張り詰めた。

 

 

ビジジジッ・・・!

空にオーラがかかる。

 

 

ズドォォズドォォズドォォォッ!!!

次々と空から降り注ぐ光線!

 

 

「ふっ・・・弱いね。オーラフォトンアンチッッッ!!

 

 

突然ニネイのまわりにバリアが張られる。

 

キィンッ!

キキキキキィンッ!!!

 

 

「っ!?」

「ウソでしょ!?」

 

 

光線は次々弾かれる。

そして・・・

 

 

「えっ・・・!?」

「なっ・・・!?」

 

ズガズガズガァァァァアァッ!!!

 

その爆発がテムとヒカリを襲う!

 

ボガァアアァッッ!!!

 

「きゃぁぁ!!」

「〜〜〜ッッ!!!」

 

その爆発は容赦なく二人の体を削り取っていく。

 

 

 

 

 

 

 

「う・・・っ」

{ヒカリ!しっかりしろ!大丈夫か!?}

 

栄光の問い掛けにも反応できない。

 

「うぅ・・・自分の力で自滅するなんてっ・・・」

{テムオリンッ!しっかりして!}

 

 

「弱い・・・こんなんでよくシン様と戦おうなんて思ったね?」

「ぐっ・・・」

 

 

フォルクは気絶し、テムとヒカリはあまりのダメージに起き上がれない。

 

 

「まぁ・・・今は殺すなって言われてるしね」

「な・・・?」

 

 

「君たちがつよくなって、死んでいってくれたほうがマナをたくさん持ってきてくれるし。

なによりカオスにより強い絶望を与えられるんだ。だから、慈悲なんかじゃない。ははっ・・・シン様らしい」

 

 

「ぐっ・・・!」

「それと・・・お迎えなんだけどね」

「お迎・・え・・・?」

「そう。まぁ、絶望のデリバリーだ」

 

「どういう・・・?」

 

そこでヒカリは地面に突っ伏した・・・。

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金星のブレス

人間の形をとっているが、実際は永遠神剣を元に作られたミニオン。

ただ、シンによって無理な肉体改造を受けてエターナルと同等の力を持つ。

命令に忠実で、シンに心酔している。アスナにライバル意識を持つが、実力はアスナの方が上。

なぜアスナに対するライバル意識の原因は、シンがアスナをいつも気にしているため。

ブレスはオールマイティな能力を持たされたため、チームのリーダー的扱い。

 

 

火星のリョート

ブレスと同じくシンによって作られたミニオン。

破壊するために生まれたかのような力を持つ。叫んだだけで衝撃波を起こす事も・・・。

攻撃に特化させられたため、熱血漢になっている。

冷静さがないように見えるが、意外と戦局を見る目がある。

 

 

水星のニネイ

ブレス、リョートと同じくシンによって作られたミニオン。

見た目はまだこどもだが、オーラフォトンの扱いは完璧。

魔法支援に特化させられたため、オーラフォトンの扱いはエターナルよりうまい。

 

 

『シャイニングファイアー』

ヒカリ支援技。イグニッションをより強力にした魔法。

詠唱の速さはそのままなため、敵に強襲をかけるのに便利。

 

 

『デストロイヤー』

テムオリン支援技。『神々の怒り』の強化版。

一定ダメージを与えるだけでなく、そのダメージを味方に活力として与える。

 

 

『オーラフォトンアンチ』

ニネイ支援技。反発を起こすオーラフォトンでバリアを作り、オーラフォトンを跳ね返す。

物理的な攻撃は一切軽減できず、剣に纏っているオーラフォトンも跳ね返せない。

だが、大規模な作戦では意外と必要になる技。