……………………………………………………………………………………………………………………………………

 

「ん・・・」

 

俺は目を覚ます。

 

「おはよう、アスナ!」

 

とびっきりの笑顔。

ヒカリの・・・笑顔・・・。

 

「俺は・・・?」

 

「ねぼすけだよね〜。アスナが一番最後・・・と言いたいんだけど」

 

「・・・」

 

俺は隣のベッドで寝ているカナリアを見る。

俺は頭をポリポリ掻いた。

 

「どれくらい寝てた?」

 

「二週間だよ」

 

「そんなにか・・・。う・・・腹減ったな・・・」

 

「ふふ、食堂おいでよ、ね?」

 

そう言ってヒカリは部屋を出ていく。

 

「・・・そうだな」

 

俺はベッドから降りて食堂へ行く・・・。

 

 

 

 

 

「まずは、生還おめでとう」

 

「なんだなんの脈絡もナシにいきなり。さわやかさの欠けらもないな」

 

「それに、カナリアも助けだせたし、よくやってくれたよアスナ」

 

 

 

「・・・俺は何もできてない」

 

 

 

「え・・・?」

 

全員がその言葉に絶句する。

 

 

「カナリアが救出できた?できてないさ・・・手加減されただけだ。

それに、少数チームで行かなければ、ユウト達に無駄な怪我をさせることもなかったし、シンにだって逃げられなかったかもしれない。

カナリアだって・・・眠り続けてるしね・・・。

結局、俺は何もできてない・・・負けたんだ。俺は・・・シンに・・・全てにおいて、完璧な敗北をしたんだよ・・・」

 

 

追い詰めた、と思っていたのは違った。

手加減されてただけなのに・・・俺はそれで調子に乗って・・・みんなを傷つけて・・・。

 

「アスナ・・・お腹減ってるんだよ。だからそんな考えになるんだ。ホラ、食べよう」

 

ローガスが食事をはじめる。

 

「そうだよアスナ、ほら、食べよう」

 

ヒカリにも勧められる。

 

「・・・ああ」

 

俺はスープを口に運んだ。

すごく・・・苦かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然ですが、今オレ達はハイペリアにいます。

さっきからアセリアとオルファがキョロキョロしすぎです。

ヒカリや起きたカナリアも珍しい様子。

どうして急にハイペリアにいるのかというと・・・。

 

 

 

「は?」

 

「だから、ハイペリアに行ってきて」

 

ローガスに突然こんなことを言われたのだ。

理由は・・・

 

「だって、これから激しい戦いになるんだよ?今のうちにおもいきり体を休めておかないと」

 

とのこと。

まぁ、休暇好きな俺にとってはまたとない話。

 

「みんなの説得は任せるからね」

 

オイ、無責任不干渉主義者。

で・・・

 

 

 

「おいおい、冗談だろ?」

 

「いや、本気だ。というわけで、今からオレ達はハイペリアで休暇を取る!!」

 

「オーッ!!」

 

「ハイペリアに行けるのか・・・?」

 

すぐに嬉しそうな顔になるアセリア、オルファ。

 

「そうだそうだ。住む場所は俺の別荘だけどな」

 

「なんでハイペリアにおまえの別荘が・・・じゃなくて。こんな状況でなんでまた・・・」

 

うんうん、と約二名を除いて頷くみんな。

 

「ユウト!」

 

「な・・・なんだよ?」

 

俺はユウトの肩に手を回して耳打ちする。

 

「いいか?あれだけの女性とひとつ屋根の下なんだぞ?

こりゃ変な気が起こってもおかしくないし、もしかしたら・・・むふふなハプニングも!」

 

「聖賢、いくぞ」

 

{うむ}

 

ユウトが俺をにらみつけ、剣に手をかけた。

 

「まっ!じょうだ・・・」

 

「問答無用、てやぁっ!!」

 

ベィィィンッ!!!

 

聖賢が俺の脳味噌をぐらぐら揺らす。

俺はとたんに気を失った・・・。

 

「まぁまぁユウトさん、いいじゃないですか」

 

「トキミ・・・まぁ、そこまで言うなら・・・」

 

と、結局惚れた女に言われて納得。

 

 

 

 

 

これが昨日の話だ。

 

{全く・・・素直に本当の目的を言えばいいものを}

 

「は?」

 

新星がいきなりため息まじりに言う。

 

{本当は、これからの戦いを生き抜くために結束を強めるんだろ?それなのに、何がハプニングだボケエタ}

 

「ボケエタって・・・まさか、ボケエターナルか?ナマエタとエロスナとボケエタ・・・多すぎね?」

 

{はぁ・・・}

 

「大体な、堅すぎるんだよ新星。俺は純粋にみんなと一緒に暮らしたいだけなんだ。理屈をつけるな」

 

{本音は?}

 

「もしかしたら、みんなの裸とか見れちゃったりして・・・むふ」

 

{死ね}

 

キンキンキンキィィィンッ!!!

 

「ぐあぁあ!?」

 

頭痛の連続攻撃。

 

「わ、悪かったよ!」

 

謝るととたんに頭痛が止む。

素直で単純なヤツ・・・。

 

{ちっとは物事を考えるようにしやがれ}

 

 

「うるさいな。じゃぁ何か?俺が

『もしかしたら、これがみんなで集まれる最後なのかもしれないから、気遣ってくれたのかもな?』

とか言えば良かったのか?ガラじゃねぇんだよ」

 

 

{・・・考えてるじゃないか}

 

「はうぁっ!?」・・・

 

 

 

 

 

「さぁここが俺の別荘だ!」

 

ジャジャーンッと現われたのは豪邸。

中にはおそらく・・・いや、絶対にシャンデリアがあるだろう。

というか、日本にメチャクチャそぐわないのは異世界の設計だからだろうか?

 

「デカッ!!本当にこれなのか!?」

 

「おお〜!館よりもおっきいよエスペリアお姉ちゃん!」

 

「そうね・・・というか、本当にここなのですか?」

 

「なんだなんだ、信用ないな。もちろんここさ!ハイ、これ部屋割り」

 

俺は手早く全員に部屋割りを配る。

男三人で一部屋と、アセリア・ウルカ・オルファ、エスペリア・キョウコ・トキミ、テム・ヒカリ・カナリアだ。

 

「さあ、入った入った」

 

俺は玄関を開ける。

少し篭もっているようだが、しばらく窓を全開にすれば大丈夫だろう。

新星の魔法で埃がたまらないようにしておいたし。

小技のきく新星には本当に助かってる。

一家に一本ほしいところだろうな。

そして・・・休暇が始まったのだった・・・。

 

 

 

 

 

 

「・・・やっちまったな」

 

「あぁ・・・」

 

オレ達の間にはまるで戦場で包囲された軍隊みたいな雰囲気が漂っていた。

 

「文句あるならハッキリいってよ!!!」

 

ヒカリが怒鳴る。

目の前にはヒカリが作った数々の芸術品。

 

まず、明らかに毒っぽい紫色の自画像スープ。

なんだか白い線が人に見える。

たまに、ボゴッと気泡が割れる。

 

次は男の彫刻のようなジャガバタ(自称)。

これは色はまともだが・・・いかんせんリアルに男すぎというか・・・モッコリしてるし。

なんでこんなもんを作る?

 

最後は真っ黒にこげた鍋の風景画。

中を覗いても真っ黒で、おたまですくってみるとどす黒いシチューが現われた。

 

「・・・外食しようか」

 

「そうだな。俺いい店知ってるぞ?」

 

「さすがは現地人。よろしくな」

 

「この料理は?」

 

「じゃぁみんな、移動しよう。ユウトについていけ」

 

「はぁい!パパ、はやくはやく〜!」

 

「オルファ、急がないの。ではユウト様、よろしくお願いします」

 

「ああ、任せといて」

 

「だから、私の料理は?」

 

「じゃぁいこうぜ」

 

ダッダッダッと出ていくオレ達。

 

「ねぇ〜!この料理はぁ〜!?」

 

ヒカリの虚しい声を残して。

許せヒカリ・・・背に腹はかえられん。

あれ?違うな・・・。

まぁいいや。

生きるためには非情になることも必要なのさ。

 

ガシッ!!!

 

「え?」

 

みんながスタスタ歩いていく。

俺は何かものすごいちからに引かれて動けない。

 

「ヒカリ?」

 

「こうなったら、アスナで全部食べてね」

 

俺はつい口を吊り上げてしまう。

みんなは死して屍拾う者ナシといった感じで外へ行ってしまった。

 

「・・・」

 

俺はズルズルと引かれてイスに『固定』された。

座った、ではない。『固定』だ。

 

「はい、あ〜ん♪」

 

俺は決して口をあけない。

あければその毒々しいスープが俺の口に・・・!

 

「ア・ス・ナ・君!?」

 

「・・・あ、あ〜ん」

 

俺はおとなしく口をあけた。

ズブッ!

乱暴にスプーンが口に入って来た。

 

「うえ・・・まずい」

 

「何か言った?」

 

「おいしいよヒカリッ!!!!」

 

「ホント!?じゃぁ・・・」

 

「ま、待った!やっぱマズい!!」

 

ギロッ!!

う・・・まるでヘビに睨まれたカエル。

 

「わ、わ〜ぃ・・・次はなんだろ〜・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて・・・どうするかなぁ?」

 

俺はリビングでだれていた。

休暇というのはいいなぁ。

今まで忙しかった分、しっかりだれよう。

 

「はーーーーっ・・・」

 

俺は顔をベターッと机にくっつける。

あ、なんだかほっぺが垂れそう・・・。

 

「アスナ、いくわよ?」

 

ガシッ!

 

いきなり衿をつかまれた。

 

「はぃ?あ、デートですかカナリア。あん、もう、もっと雰囲気考えてよね」

 

「アスナこそ、空気を読んだらどうかしら?」

 

「・・・」

 

カナリアの顔がひきつっていた。

うぅ・・・必死で助けてあげたのに。

 

「ヒカリもいくわよ?」

 

「うん!」

 

「お、両手に花だ。よしいこう!すぐいこう!」

 

俺はすくっと立ち上がり玄関に向かう。

 

「・・・現金」

 

「は!?アセリア、何か言ったか?」

 

「ユウトに教わった言葉を使ってみた・・・」

 

「・・・ユウトめ。あとでトキミの事ばらしちゃる」

 

 

 

「んで、何を買うんだ?」

 

「まず日用品に、食料ね。昨日ヒカリが随分と無駄にしちゃったし」

 

「う・・・」

 

やはりいつものカナリアはこうでなくては。

スカッとしてしまうほどの痛いツッコミ。

これほどまでにツッコミに長けた人物はいないだろうな。

ふっと目の前を女性が通る。

 

あ・・・!

 

気付くと俺はすぐにその女性に声をかけていた。

 

「綺麗なお嬢さん、お茶しない?」

 

「え・・・?」

 

その女性が振り向く。

うむ・・・満点!!

 

「なんてね。俺はアスナ。君はなんていうの?」

 

「え、えと・・・」

 

なんだか俺ではないどこかを見ながらオロオロしていた。

なんだ・・・?

 

「お連れの方が怒ってるみたいですよ・・・?失礼しますね」

 

「あ・・・」

 

俺は手をのばして去っていく女性を見つめる。

うぅ・・・

だれだ?

大事なチャンスを逃す原因となったヤツは!?

俺はキッと後ろをにらみつける。

 

「・・・あはは」

 

俺は笑った。

だって・・・怒れる妖精が二人もいればね。

 

そう・・・般若のような顔をした恐い妖精が二人もいれば・・・。

 

「「このエロスナーーーッッッ!!!!」」

 

「ぎゃぁぁぁあぁっ!!つうか今のは絶対エロくねえぇえぇえっ!!!」

 

その後は推して知るべしアゲイン。

さて・・・

 

 

 

「んで・・・?」

 

俺はボコボコにされて二人に従う。

これ以上ボロボロになったらナンパできなくなってしまう。

俺の両腕には大量の荷物。

まぁ、あれだけの人数が生活するのだから仕方ない。

 

「あとは帰るだけだね」

 

「良かった・・・。腕がちぎれそうだ」

 

「大げさね。そのくらいで」

 

「じゃぁカナリア持ちなさい。俺はその間にナンパしてくっから」

 

ギロッ・・・!!

 

「・・・」

 

俺はトボトボ二人に従い帰る。

サッ・・・!

 

「待てよ!」

 

「いつっ!!」

 

ボトッ・・・!!

 

俺は荷物を地面に捨て、人混みに紛れてスリをした男の腕をひねりあげる。

手からサイフが落ちた。

 

「え・・・?」

 

スリをされた女性は気付いていなかったようだ。

 

「俺の目の前でスリなんてやるじゃねぇか」

 

「ぐっ・・・てめぇっ!!」

 

男はけりをいれてくる。

ひょいっと俺は腰を右にまげてよける。

 

「うらうらっ!!!」

 

次々とけりを繰り出す男。

俺はそのたびに腰を曲げては避ける。

何十回と繰り返した頃・・・

 

「クネクネしやがって!!」

 

「はいそこまで」

 

ドサッ!

 

「っ!離せよッ!!!」

 

警察が到着し、男を取り押さえる。

 

「ザコが・・・いきがってんじゃねぇぞ」

 

「っ・・・」

 

俺は男を一瞥して、サイフを拾って女性に手渡す。

 

「どうぞ」

 

「は、はい・・・ありがとうございます!」

 

「いや、なんのなんの・・・それより、どこかでお茶でもしない?」

 

「え・・・?」

 

「お礼はそれでいいからさ」

 

お礼を自分から決めるヤツなど普通はいないが、まぁお茶するきっかけということで。

 

「は、はぁ・・・」

 

「よし決まり!すぐいこう!どこかいいお店でも知らない?俺って最近ここにきたばかりなんだ」

 

「あ、あの・・・後ろの方は?」

 

「後ろ?あ・・・デジャヴ」

 

俺はなんとなく展開が読めるので、決して後ろを振り向かない。

振り向いたら・・・その時俺の人生は終わる。

そんな気がした。

でも・・・前を向いて生きていても運命は変わらなかった。

 

「いいヒカリ?」

 

「うん、いつでもオッケー」

 

「ん・・・?」

 

俺はついに後ろを振り向いてしまう。

すると、剣を抜いた二人が同時に俺に剣を振るってきた!

 

パキィィィンッ!!!

 

「うああぁぁぁああ・・・・

 

空に向かって飛んでいくアスナ・・・。

 

その速度はジェット機をも追い抜くであろう。

 

キラーンッ・・・!

 

哀れ新星アスナは夕方の空の星と化した・・・。

夕日にアスナの笑顔が浮かぶ・・・。

歯をキラーンッと光らせて、その幻影は消えたのだった・・・。

 

 

 

『永遠抗争』

                           〜Eternal Dispute〜

                                              〜Fin〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヤイヤッ!!終わっちゃだめだってば。

 

「うんしょっと・・・」

 

俺は大量の荷物をテーブルの上に置く。

 

「はぁ・・・疲れた」

 

「お疲れ様。宇宙の旅はどうだった?」

 

「最悪だな。危うく死ぬところだったぜ。んじゃ・・・俺はまただれてるよ」

 

俺は部屋に戻る。

 

「カナリア、ヒカリに料理させるなよ?食えるものから食えないものを作る天才だからな、ヒカリは」

 

「わかってるわよ」

 

「わかってるって・・・ひどい!!」

 

ダバッ!

 

俺はベッドに横たわる。

 

「よぉアスナ」

 

「ユウトか・・・」

 

「どうした?ひどく疲れて」

 

「うぅ・・・カワイイ子が二人もいたんだぜ?なのに・・・両方ジャマされたよ」

 

「それは当たり前だと思う」

 

「カワイイ子がいてナンパしない男は男じゃない!タマなしだ!!」

 

「そ、それは極端すぎだろ」

 

ユウトが苦笑しながら答える。

 

「あれ?そういえばフォルクは?」

 

「ホラ、あれ」

 

「え・・・?」

 

ユウトが窓をさす。

俺は窓から庭を覗き込んだ。

 

「せいっ!!」

 

「ハァアァッ!!」

 

キィンッ!

 

二人が物凄い勢いで斬り込んでいる。

お互い一歩も譲らず、ギリギリのところで相手の太刀をかわす。

 

「フォルクとウルカ・・・似た者同士・・・か」

 

こんな休暇まで稽古するとは・・・根っから好きなんだな。

 

「そういうお前は稽古しなくていいのか?」

 

「ユウトだってしてないじゃん」

 

「俺はしたさ。ちなみに、お前以外は一回はやってる」

 

「え゛!?」

 

初耳だ。

というか・・・トキミとかもやったのか?

ありえん・・・。

 

「みんな、イロイロ頑張ってるんだよ。それがお前は・・・毎日毎日午後二時起き。さらにその後だれて、何もしない・・・。はぁ」

 

「はぁ、じゃねぇよ!いいじゃんか休暇なんだから。こんな時まで稽古なんて、それこそどうかしてる」

 

「断言すんな。まだ戦いは終わってないんだぞ?」

 

「・・・だからだろ?」

 

「え・・・?」

 

突然真面目な声にした俺に驚くユウト。

 

「今が、みんなで過ごせる最後の時間かもしれないんだぜ?」

 

「・・・」

 

「だから、俺は思ったままに過ごす。それだけだって。

ローガスも、訓練や稽古する時間を増やすために休暇をくれたんじゃないと思うけどな?」

 

「・・・結構、考えてるんだな」

 

ユウトが感心したように呟く。

 

「と、いうのは俺の推測なだけで、俺自身は何かハプニングでも起こらないかなぁと期待してるんだけどね。

男と女が一つ屋根の下・・・ぐふふ」

 

「それがなければ・・・はぁ」

 

ユウトが今度は呆れたようにため息を吐く。

 

{ユウト、おぬしは気付かなかったと思うが・・・カナリアを助けだす時も、少数作戦はベストな選択だった}

 

「え?なんで?」

 

{アスナは援軍も見越して少数にしたのだろう。

それに、全員で行って、また大怪我したら取り返しがつかなくなるだろうしな・・・それゆえに、あれで良かったのだ}

 

 

「・・・ウソだろ?おまえそこまで考えてたの?」

 

「聖賢、買い被りすぎだ。俺は思いついたとおりにあのやり方を取っただけで、別にそこまで深く考えてなかったさ」

 

{そうか?もしも・・・の時を考えていたはずだが}

 

「もしも・・・って?」

 

ユウト・・・おまえさっきから質問しすぎ。

少しは自分で考えろ。

 

{全滅の時・・・だ。少数でいけば戦力の大半は残るし、ローガスと合流できたのだ。

トキミのカオス全滅の未来も変わっているだろうしな}

 

「そうか!って・・・本当のトコロ、どこまで考えてた?アスナ」

 

「・・・さぁね。じゃぁ、俺は寝るわ」

 

俺は布団をかぶる。

 

「あ、おい!」

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

「寝るの早ッッ!!」・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「文火災?」

 

「いや、文字違うから。文化祭な」

 

いきなりユウトがそんなことを言い出した。

 

「実はさ、俺の学園・・・元だけど。そこで文化祭あるんだよ」

 

「ユート・・・文化祭とはなんだ?」

 

アセリアが質問する。

かくいう俺もそう言いたかったのでユウトの答えを待つ。

すると、ユウトはしばらく考えた後・・・。

 

「そうだなぁ・・・その学園に通う人達が、自分たちでお祭りをやる・・・って感じなのかな?

それで、学園にたくさんの人を呼んでお祭りをする、ってことかな」

 

「おもしろそ〜っ!パパ!オルファ達も行っていいの!?」

 

「もちろん。それで、せっかくだからみんなでいこうかなって」

 

「いいですね。いきましょう」

 

「ん・・・行ってみたい」

 

「ちょ、ちょっと待った。この人数で移動するのは大変じゃないか?」

 

「・・・それもそうだな。アセリア達は結構目立つし・・・」

 

 

「というわけで俺は提案する!!二つの班に分けて行動しよう!

もちろん、俺のチームはヒカリにカナリアにテムは必須だろ?それからオマケにフォルクでどうだ?」

 

 

「じゃぁ俺は・・・アセリア、オルファ、エスペリア、キョウコ、ウルカ、トキミか?」

 

「そうだそうだ。オマエにはいちゃついたら即死刑のオマケつきだ。どうだ?」

 

そう言うとユウトはぴくっと眉を動かす。

素直なヤツめ・・・。

 

「・・・まぁいいけどな。それじゃぁ明日はそれで。あ、そうそう。アセリア達はちゃんと着替えてくれな」

 

「ん・・・わかった」

 

「わかりました。では明日」

 

それぞれが部屋に帰っていく。

俺はユウトに耳打ちした。

 

「なぁユウト・・・可愛い子はいるのか?」

 

「は・・・?」

 

「可愛い子だよ。祭りっつったら集まるんじゃないのか?くぅ・・・楽しみだなぁ!!」

 

あ・・・何かが飛んでくる。

そうユウトが言い掛けた時には、その何かはアスナの頭を直撃していた。

 

ドガァアァッ!!

ドスッ!

 

「ぼ・・・ボーリング球?」

 

「・・・」

 

倒れて、ダラダラと頭から血を流すアスナ。

それを眺めるユウト・・・。

そしてボーリング球は何か紐のようなもので回収されるのだった・・・。

 

(一体・・・誰が?)

 

ユウトの疑問に答えるヤツは誰もいない・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「わぁ〜!ここがパパの学園なの!?」

 

オルファがスキップしながら門をくぐる。

 

「お、オルファ殿、そのようにはしゃがれてははぐれてしまいます!」

 

それをウルカが止める。

すっかり姉か母親役だ。

 

「へぇ・・・ウチも結構変わったのね」

 

「そうだな・・・」

 

見回すと、新しくできたのか、校舎が増えていたり、外壁が塗りなおされていたり・・・。

 

「さて、と。受け付けもおわったし、いくか!」

 

「うん!いこいこ〜!」

 

「あれ?アセリアは?」

 

俺が見回すと、アセリアがいない。

その答えはエスペリアが持ってきた。

 

「さっきから水が噴射される『何か』を見ています。あれはなんなのですか?ユウト様」

 

「あぁ・・・グラウンドのアレか」

 

「あはは・・・アセリア達にはあれも珍しいのね」

 

俺とキョウコはなんとなく笑ってしまう。

アセリアはじぃ〜っと再び水を噴射するまで、その機械の前にいたのだった・・・。

どうやら、グラウンドで何か催物があるみたいで、それのためにグラウンドの土を濡らしているようだ。

 

「さて・・・どこからまわる?」

 

俺はパンフレットを見る。

アイスに喫茶店におばけ屋敷に部活体験・・・。

 

「えぇ!?パパッ!おばけみれるの!?」

 

「あぁ・・・おばけ屋敷っていうのは、人がおばけに変装しておどかすっていうヤツだから、本物ってわけじゃないよ」

 

「ぶぅ〜!なぁんだ・・・」

 

ガックリするオルファ。

むぅ・・・オルファならきっと・・・

 

 

 

『ばぁっ!!』

 

「あはは〜!パパァ!あの人変な格好してるよ〜!おもしろ〜い!!」

 

 

 

ってな感じだろう。

これではあまりにやってる人がかわいそうだ。

 

「じゃぁ、やっぱりアセリア達にはアトラクションとかの方がいいんじゃない?」

 

「そうだな・・・じゃぁいくか!」

 

オレ達は移動しはじめる・・・。

 

 

 

 

 

 

「へぇ・・・ここが文化祭ねぇ・・・」

 

「すご〜い・・・人がいっぱいいるよ〜!」

 

ヒカリが少々興奮気味だ。

 

「そうね。あっ!あれは・・・!?」

 

ボヒュッ!!

 

屋上からペットボトルが飛ぶ。

 

「あぁ・・・ペットボトルロケットだろ?」

 

「え?アスナ知ってるの?」

 

「まぁね。しかし・・・カナリア。何ビビってるんだぁ?」

 

「なっ、別に驚いてなど・・・!」

 

「ふふ〜ん・・・?じゃぁおばけ屋敷いこう!」

 

「え!?」

 

体を固まらせるカナリア。

俺は吹き出しそうなのを抑える。

 

「おばけ・・・て、本物なの?」

 

「ユウトが言うには違うらしいよ。人間が変装するって言ってた」

 

「ならば・・・あまり恐くないのでは?」

 

「フォルク、それを言ったらダメだって」

 

「カナリアさん?どうしたの?」

 

テムが固まり続けるカナリアに話し掛ける。

それでも氷結がとけることはない。

 

「カナリアってふてぶてしい感じがするけど、意外と女の子っぽいトコロもあるんだな〜」

 

女の子が恐いの苦手っていうのも偏見な気がするけど。

 

「う、うぅ・・・」

 

カナリアがいじけるようにうつむく。

 

「まぁまぁ、恐くないかもしれないんだし」

 

「で、ですけど・・・」

 

「それじゃぁいこう!」

 

オレ達は嫌がるカナリアをずるずる引きずりながら場所を目指す・・・。

 

「おぉ・・・これこれ」

 

黒一色で統一された装飾。

赤く、血をイメージした文字。

定番でしょう!

 

あれ?定番?

 

「アスナがなんで定番を知ってるの?」

 

「なんでだろ?まぁいいや。すいませーん」

 

「あ、入りますか?」

 

「はい!」

 

「では、二人組になってもらえますか?」

 

「二人組?」

 

「ええ。団体で同時に入ることはできないので・・・」

 

「なるほど。んじゃ、俺はカナリア!」

 

「え゛・・・」

 

カナリアがすぐさまイヤそうな顔をする。

おそらく心ではヒカリが良かったなぁ、とか思ってるんだろうけど・・・。

そうは問屋が卸さない!

 

「いくぞ?カナリア」

 

俺はカナリアの手をとって中へ入っていく。

 

「い、やぁぁぁ!!!」

 

可愛らしい声を出して拒否するも、俺の力に逆らえずズルズル入っていくカナリア・・・。

 

 

 

ガサッ!

 

「ひっ!」

 

何かが擦れた音がしただけでこれだ。

中はいかにもなBGMが流れていて、雰囲気はかなり良い。

つうか・・・龍と対峙しても恐れないカナリアがここまで恐がるとは・・・。

 

「ぎゃあぁ!!!」

 

「きゃぁぁああぁ!!!」

 

「・・・」

 

俺の腕にしがみついてくるカナリア。

む、胸の感触・・・グッ!!

じゃなくて・・・

まさかここまで苦手とは。

小学生でも見破りそうな仕掛けなのに・・・。

 

「うわぁぁん・・・」

 

半泣きで進むカナリア、平然な顔をして歩く俺。

 

(むぅ・・・悪いことしたかな)

 

さすがに泣かれてしまうと罪悪感が。

 

「ほら」

 

俺はハンカチでカナリアの涙を拭う。

 

 

『曲者ッ!!』

 

『ち、違うよフォルクッ!!斬っちゃダメーッッッ!!!』

 

 

後ろから緊張感のない声が・・・。

つうか何で斬ろうとしたんだ?

やっぱり神剣なのか?

そうなのか?

 

「うえぇん・・・ひくっ・・・」

 

「か、カナリア・・・」

 

見ると、俺の手を握って大粒の涙を流していた。

うぅ・・・

 

「ごめん、カナリア。まさかここまで苦手とは思わなくてさ・・・」

 

「あとで・・・ぶっ殺してやる・・・」

 

いきなり恐ろしい事を言うカナリア。

普段ならマジでやりそうだが、今はそうも見えない。

 

(はぁ・・・女を泣かすなんて最低だな・・・俺)

 

「なぁカナリア」

 

「ひっく・・・」

 

「いこうぜ?」

 

俺はやさしくカナリアを立たせる。

 

「次からは俺がちゃんと傍にいるからさ。一人で恐かったら、二人でいればいい。そうだろ?」

 

「ほ・・・本当に・・・?」

 

「あぁ!二人ならきっと恐くないさ!それにホラ、いつまでもここにいたら余計に恐いだろ?

だから、いこうぜ?ずっと手を握ってていいからさ」

 

「うん、わかった・・・」

 

俺の手をつよく握り締めるカナリア。

 

ギギギッ・・・

 

(あれ?そういえばいつものカナリアの口調じゃなかったな・・・)

 

ギギギギギギッ・・・!!

 

「って痛いッッ!!」

 

「ふ、ふふ・・・」

 

「!?」

 

カナリアが不敵に笑っている・・・。

 

「慣れれば案外恐くないものね・・・」

 

「ま、まさか・・・もう大丈夫に?」

 

「あなたのおかげでね・・・ふふ。これで仕返しができるというもの」

 

「ま、待った!俺せっかく格好いいこと言ったのに!」

 

「問答無用!でやぁああっ!!」

 

「ぎゃぁぁああ!!」

 

 

 

 

「う〜、結構恐いね、フォルク」

 

「そうか?そうでもない気がするのだが・・・」

 

「いや、恐いのはフォルク!何回斬り掛かったの!?」

 

「あぁ・・・すまぬ・・・つい」

 

「ついで人殺ししちゃだめだって・・・ってあれ?」

 

「ん・・・?今度は逆さ釣りか?」

 

人が天井からぶらさがっている。

暗くて顔が見えない。

いや、普通は見ようとしないが。

 

じーっと顔を近付ける。

 

「・・・ぐばぁっ!!」

 

「きゃぁああ!!」

 

「うわあぁ!!」

 

突然目が開いた。

それに、随分とボコボコで・・・

本当の死体・・・!?

 

「だ〜ず〜げ〜で〜!」

 

充血した目で訴えかける。

 

「きゃあああ!!」

 

「うわあぁ!!」

 

ヒカリとフォルクはそのまま遁走していった・・・。

 

「ア゛〜・・・」

 

「ア、アスナ様・・・?何してるの?」

 

「デ、デム〜・・・」

 

そして俺はテムによって救出されたのだった・・・。