「我が魔力、我がオーラフォトンよ!その姿をひとつにかえ、敵を薙ぎ払えッ!!!!」

 

 

ゴンッッッ!!!

ドパァアァアアァッ!!!!

空から地面に刺すような重い衝撃!

 

ザパッ!!!

ドゴォォオオォッ!!!!

地面に十字に衝撃波が走る!

 

「っ!?」

 

…………………………………………………………………………………………………………………

 

 

 

俺は退いてなんとかよける。

いや・・・むしろ、この衝撃で吹き飛ばされた、が正解だ。

 

「逃がさないっ!!」

 

「っ!?」

 

ゴンッ!!

ドパァアァアアァァッ!!!

 

詠唱ナシで次々落ちてくる圧倒的な圧力!

あちこちに隕石が落下したみたいな大きなクレーターができる。

その一撃を食らえばエターナルでさえも消え去るだろう。

 

「あれは・・・!?」

 

「まだまだいくわよっ・・・!!」

 

フォンッ!

ドガァァアァッ!!!

 

「うぁ・・・っ!!」

 

俺の頬をかすめた。

かすっただけなのに、焼けて熱をもつ。

 

ウソだろ・・・!?

 

俺はタッ!と新星の力を借りて急いでシンと距離をとる。

 

「遅いわ」

 

ゾクッ・・・!

 

俺の背後からシンの声がした。

 

ダッ!

フォォンッ!!!

ドガァァァアァアッ!!!!

かろうじて飛んでかわす。

だが、それもいつまでもつか・・・。

 

(逃げ切れない・・・っ!!反撃する隙もない・・・っ!?)

 

完璧に甘かった。

俺は・・・アイツの死から逃げるばかりだった。

なのに・・・シンは力をためこんでいた。

今の俺の実力では・・・勝てない・・・っ!

 

 

――――――圧倒的な力の差に『死』の一文字が浮かぶ。

 

 

大体・・・なんだこれは!?

あちこちから、煙のあがるクレーターができていた。

その深さはゆうに5メートルはある。

それだけの威力が・・・圧力が・・・どうしてあんなズバズバ生み出せるんだ・・・!

 

 

「ドコ見てるの?」

 

「っ!!」

 

フォンッ!!

ズゴォォオォッ!!!

 

「畜生・・・っ!」

 

左腕をもってかれた・・・っ!

ブラーンと力なく垂れる。

 

「どうしたの?そんなものだっけ?」

 

ケラケラ笑いながら次々『何か』を放ってくるシン。

 

フォンッ!!

ズゴオォオオォッ!!!!

 

ダッ!

俺は瞬時に飛んでなんとか避ける。

 

(くっ・・・近付いてもダメ。逃げてもダメ・・・・いったいどうすれば・・・!?)

 

一瞬・・・たった一瞬気をとられた。

それだけなのに・・・シンはすでに居合の構えをとっていた。

 

「あなたが聞きたいことに答えてあげる。魔力とオーラフォトン合成による居合よ。聞こえた?じゃぁもう死になさいっ!!」

 

サッ・・・!

俺の上空に飛んだシン。

 

(直撃は・・・!)

 

俺はオーラフォトンを展開した!

その歪みが俺を守る盾となる!

 

ドッ!!!

パァァアァッ!!!

なんとかその衝撃を相殺する!

 

「オーラフォトンバリアは熟練次第でいくらでも強力なバリアとなる・・・。だけどね」

 

タッ・・・!

煙が消えないうちに、俺の懐に入るシン!

 

(〜〜〜〜ッ!!!)

 

俺は急いでオーラフォトンを展開するが、シンの突き出した手で簡単に破られた。

 

その瞬間、俺はシンが居合の構えをとったのを見た・・・。

 

「懐をとられたらオシマイなのよ・・・っ!」

 

フォンッ!

ガゴォォオォッ!!!!

 

ザッ!!

パァアァンッ!!!!!

 

「が・・・っ!?」

 

居合が至近距離で俺に炸裂した!

 

ドパァアァッ!!!

あまりの衝撃に内蔵があちこち破裂したようだ。

口から噴水のように血が吹き出す!

俺の体は吹き飛ばされて、まだ地面につかない。

 

そこで、シンが二発目の居合を放った!

 

フォンッ!

ガゴォォオオォッ!!!

 

「っ!!」

 

なんとか上体を反らして居合を避ける!

 

ジリリリッ・・・!

腹部の服がふきとぶ!

俺はシンの顔を見た。

 

 

 

―――――終わりね

 

その顔に・・・俺は初めて戦慄というものを知った。

シンの体が軽く浮く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――そして・・・

 

フォォォオオォンッ!!

 

ドゴォォオォンッ!!!!

 

ザパァアァアァッ・・・!!!

 

 

俺に、最大威力の居合をぶちこんできた!

俺はマトモにくらって、地面へとめりこんでいく・・・!

 

シュゥゥウウゥ・・・!

あまりの熱気に煙があがる・・・。

 

(く、そ・・・)

 

俺の意識が闇へと落ちていく・・・。

 

 

 

もう、無理だ・・・。

手にあるはずの新星の感触がなくなっていく・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、おい・・・アスナ?」

 

おれ達は急いでアスナに駆け寄る。

 

「・・・」

 

その体は、ハッキリ言ってズタボロだった。

というか、ズタボロ以外に言えない。

息もしていないし、足もあらぬ方向を向き、腹が変な形に膨らんでいた。

 

「生きてるか!?オイッ!?」

「・・・」

 

返事をするどころか息もしない。

 

「くっそ・・・っ!」

 

俺は何もできずに地面を殴る。

エスペリアがいてくれれば・・・っ!!

シンがおれ達に歩み寄ってくる。

 

「お願いアスナ・・・目をあけてよ・・・っ!」

 

ヒカリが涙目で、訴えるようにアスナを揺するがピクリともしない。

 

 

「バカ・・・っ!なんでいっつも無理するのよっ!!立ってよアスナーーーーッッッ!!!」

 

 

「無理よヒカリ。全身粉々で生きてるはずないもの。全員まとめて消し去ってやるから覚悟しなさい」

 

シンが居合の構えをとった。

とたんにおれ達の体が動かなくなる。

 

(こ、こんな中でアスナは・・・っ!!)

 

「死になさい」

 

フォンッ!!!

ゴォォオオォオッ!!!

 

「っ!!ダメ・・・なのか!?」

 

ユウトが聖賢をかざすも、完全に恐怖にのまれてオーラフォトンを展開できない。

他も同じ状況だった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(・・・誰かが叫んでる)

 

俺はボーッとしながらその叫び声を聞いていた。

 

(誰だろう・・・?いや、聞いたことがある・・・誰だったろう・・・?)

 

 

俺は動こうとするも、体が反応しなかった。

指一本どころか、息さえできない。

 

だけど、それが不思議と苦しくない。

むしろ、このまま眠ってしまいそうなほどやすらぎを感じる。

 

 

(・・・このまま寝るか)

 

 

なんだか、むしょうに眠い。

今まで・・・何してたんだっけ?

オカシイな・・・記憶がないや・・・。

 

 

『―――ナーーーッッッ!!!!』

 

 

(・・・!?)

 

ダメだ!

そう思って俺は目をあける。

今の声・・・なんだっけ?

でも・・・なんだか寝ちゃいけない、そんな気がする・・・。

 

『お願いだから・・・っ!』

 

(・・・あれ?)

 

 

不思議だ・・・。

なんだか、力が沸き上がってくる・・・って感じだ。

そうだ・・・まだ俺には・・・まずは、シンを・・・っ!!

 

 

俺は動かないはずの右手を握り締めた。

そこに・・・新星があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願いだから・・・立ってよアスナ・・・っ!」

 

 

ザッ!

パァアァアァアァッ!!!

 

見えない居合の衝撃波が俺の目の前で弾ける!

水しぶきのように消え去っていく!

 

「いくぞシンッ!俺は・・・お前を消すって言っただろ!?」

 

 

 

『アスナッ!!』

 

 

 

アスナが立っていた。

ただ・・・目はどこを見ているかわからない。

虚ろで・・・今にも閉じてしまいそうな目だった。

アスナがシンに真正面から飛び込んでいく!それは、今となっては自殺行為でしかない。

 

 

「特殊オーラフォトン展開、『フォトンイン新星』、能力限界突破15秒・・・」

 

アスナは小さく何かを唱えていた。

シンが再び居合の構えをとる。

 

「うああぁぁああぁぁぁっ!!!!」

 

「死ねぇっ!!!アスナぁぁあぁっ!!!」

 

フォンッ!!

シンの刀が振り切られる!

その速さは誰の目にもとまらない。

 

ゴォォオオォッ!!!

衝撃波がアスナへと向かっていく!

 

「見えなくったって・・・っ!オーラフォトンよっ!!」

 

ザッ!!!

ドパァァアァァアッ!!!

 

アスナがそのまま激突し、煙がドバァアアァっとたちのぼる!

 

 

スパァァアァアアァンッ!!!!

 

 

「抜けた・・・っ!!」

 

「っ!」

 

今度は今までと違ってシンが驚く番だった。

衝撃波を切り抜け、懐に出てきた。

 

「発動ッ!!でやぁあぁぁあっ!!!」

 

新星に真っ赤なオーラフォトンがまとわりつく!

その発動の速さは通常の倍速・・・。

 

それをシンにむかって突き刺した!!

 

 

ドパァアァッ!!!

 

 

シンの背中から鮮血がふきあがる!

 

「がっ・・・!?」

 

フォォォンッ!!

 

「っ!?」

 

ドゴォォオオォッ!!

 

ズザァアァァァッ!!

 

居合で吹き飛ばされ、地面を転がるアスナ。

至近距離では格段に威力が下がったようで、すぐに態勢をたてなおしてそのまま斬り掛かっていく・・・!

 

「うぉぉおお!!!」

 

アスナはマナを掻き集めてオーラフォトンを展開する。

 

ビキィッ!

 

突然オレ達の空間だけが周りから遮断された。

 

「!?何をするつもり・・・!?」

 

「我に新星の輝きをッ!!ミニスタァァアアァッ!!!

 

ブワァアァッ!!

 

オーラフォトンがアスナの能力を全て引き上げる!

体がはちきれんばかりのオーラに包まれた。

 

「絶対に・・・決めてやる!!貴様はここで砕け散れッ!!!オーラフォトンスラッ・・・」

 

アスナは新星を振りかぶった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やめて!!』

 

「!?!?」

 

突然の声・・・。

アスナはついシンを凝視してしまう。

 

「ふふ・・・私の中には彼女の意識もあるのよ?どう?それでも壊せる?」

 

「なっ・・・おまえは封印したはず!なんで彼女が・・・!?」

 

「さぁ、どうしてだと思う?まぁ・・・」

 

 

 

『アスナ・・・』

 

 

 

「スフィアッ!!」

 

愛しき人の声が聞こえる・・・。

 

「こうして彼女の意識があることは事実だけどね」

 

「ぐっ・・・!」

 

アスナは唇を噛み締める。

 

「アスナとローガスが強敵だってくらいはわかってた。なら、対策をしておくのも当然でしょ?」

 

「・・・っ!?」

 

アスナは突然膝がガクッとなった。

しまった・・・!

ミニスターの効果が切れて疲労が・・・!

 

「さぁ・・・這いつくばりなさい!!!」

 

 

 

『アスナッ!!助け・・・!』

 

 

 

「スフィアッ!!くっ・・・!?くるっ!!」

 

 

シンがあの時と同じ・・・オーラフォトンシンを放とうとしている。

 

「ユウトキョウコユウナアセリアヒカリッ!!!全力で防御しろ!!」

「ぐっ・・・またあれか!?耐えられるのか!?」

 

「耐えるんだよバカ!カタストロフィィィイィ!!!

「くっ・・・ホーリーッ!!!

 

それぞれがオーラフォトンを展開していく。

だが・・・

 

 

(足りないっ!!これじゃ・・・死ぬ!くそっ・・・!!)

 

 

いくらユウナがいても、前より絶対的に数が少ない。

このままだと直撃同然だ。

タラーッとイヤな汗が流れる。

 

「くらいなさいアスナッ!!」

 

「!!」

 

シンが剣を空高く掲げた。

 

(新星・・・っ!イチかバチかやるぞ!!)

 

{なに!?あの技をここでやるのか!?}

 

新星が驚きの声を出すが、躊躇している暇はない。

はち切れんばかりの痛い空気がアスナ達を切り裂く。

 

「防げないなら相殺するまでだっ!!我が名はアスナ。汝の力を求める者。その力、我のマナをもってしめせ!

 

アスナは両手からオーラフォトンを放った。

それが急激に集まり人を形作る。

 

「スピリット・オブ・ネレイッッ!!!」

 

ザパァアァッ!!

 

光がアスナ達の目の前に現われる。

そして、その中から突然綺麗な女性が現われた。

青く澄んだ髪を両側でしばり、手には二つの光球。

巫女みたいな格好をしていた。

 

「!それは・・・!なぜあんたがそれを!?」

 

「スフィアに教わったんだバカやろう!!ネレイッ!!敵のオーラフォトンを相殺してくれっ!!」

 

 

『了解』

 

 

「そんなもので防げると思わないで!!いっっっけぇぇっっ!!!」

 

ネレイが光球を投げ付けた!

同時に戦慄するほどのオーラフォトンが地面からせりあがってくる!!

 

ボガァァァアァッ!!!

ズガァアァンッ!!

 

ズガガガガァアァンッ!!!!!

 

ネレイの攻撃がオーラフォトンシンと激突し、核にも勝るような爆発を起こす!

 

「ぐあぁああぁっ!?」

 

「っ!?うあぁあぁっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ・・・みんな、無事か・・・?」

 

俺の体は微かに痛む程度で済んでいる。

新星である程度傷を治す。

 

「あ、あぁ・・・なんとか・・・な」

「あたしも・・・ね・・・」

 

どうやらなんとか無事なようだ。

 

 

「!!おまえ腕が!!」

 

 

サッ・・・!

俺はユウトに言われてから右腕を隠す。

 

 

「え?どうしたの?」

「なんでもないって。それより・・・シンッ!!」

 

 

俺はすぐにシンに向き直る。

 

 

「さすがは・・・とでも言うわ。まさか、まだたてるほどにまであの技を抑えるなんて」

「少しは見なおしたか?」

「ふふっ・・・まぁね。でも・・・さすがにもう戦えないみたいじゃない?」

「まだだ・・・!」

 

 

俺は新星を構えた。

右腕の感覚がないが、気にしない。

 

 

「・・・残念だけど、もうタイムリミット」

「なに・・・?」

「ま、あなたの健闘に免じてカナリアだけは返してあげるわ。ついでに置土産もあげるわね。だから・・・またね」

 

 

シュンッ!

突然消えるシン。

 

「っ・・・!逃げられたか・・・」

 

俺はつい膝をつく。

正直・・・助かった。

気力だけで立っているようなものだったのだ。

 

でも・・・なら、なぜ撤退したのだろうか?

俺はとりあえずカナリアを取り戻せたことを喜んだ。

 

 

「おーい、カナリア?」

 

俺はカナリアを起こしにいく。

ユサユサ揺らしても起きるけはいがしない。

 

 

「仕方ない・・・」

 

背光も反応しない。

だから、俺は黙って背負っていく。

 

 

 

 

「あぶないっ!!」

 

「え・・・?」

 

キインッ!!

 

「ユウト・・・?」

 

俺の真後ろで、ロウの剣を受けとめているユウトがいた。

ロウの後ろには・・・!

 

 

「なっ・・・ウソだろ!?」

「置土産ってこれみたいだな・・・」

 

 

俺はカナリアを降ろし、剣を構えた。

カプセルに入っていたエターナル達・・・それが、全員剣を持ってオレ達を取り囲んでいた。

 

「ぐっ・・・」

 

「アスナ、おまえは無理するな」

「そうよ。さっきだってあたし達まで守ってくれたんでしょ?少し休んでなさいって」

「ん・・・任せろ」

「アスナ、ゆっくり休んで」

 

 

ヒカリに肩を押さえられて、座らされる。

 

 

「バカ言うなっ!お前たちだって・・・」

 

ハッキリ言って顔色の良いヤツなどいない。

ユウナでさえ・・・。

 

 

「あのね、アスナ。私達は、あなたが思ってる程弱くない」

「ユウナ・・・」

「それを、今から見せてあげるから。いくよみんなっ!!」

「了解!いくぞ聖賢ッ!!」

 

 

ユウナの号令で全員が斬り掛かっていく!

体の動きは鈍すぎる。

なのに・・・目一杯体を動かして、最大の攻撃を打ち込み、一人・・・また一人と消えていく。

俺はさすがに疲労の限界で、倒れてしまう。

 

「ぐっ・・・マズい・・・」

 

右腕が消えかかっている。

ネレイのマナのためにかなり体からマナを引き抜いた。

そのうえにダメージが重なり存在自体が消えかかっていた。

 

「ぐっ・・・新星・・・」

 

{わかっている。応急処置はしておく}

 

フゥゥッ・・・!!

左腕のブレが消える。

なんとか流出は止まったようだ。

 

「カナリア・・・」

 

俺は隣で安らかに目を閉じているカナリアを見る。

 

(うっ・・・)

 

 

 

 

 

 

 

「くっ・・・!?」

 

バシャァアァッ!!

 

俺の腹から鮮血が飛び散る。

 

「でやぁっ!!」

「!?」

 

ズバァアァッ!!

 

俺は聖賢を振りぬきロウを切り裂く。

かなり深く入ったはずなのに、ロウは立ち上がる。

 

「ぐっ・・・!パッションッ!!」

 

俺はオーラフォトンを展開して軽く傷を塞ぎ、相手に斬り掛かる!

 

「でやああっ!!」

 

キィンッ!!

 

「っ!?」

 

ロウに剣を受けとめられてしまう。

 

「甘い・・・!」

「!?」

 

ブズゥウッ!!

 

再び俺の腹に激痛が走る。

今度は貫かれて、傷が熱をもつ。

体が縮こまり、その場で蹲ってしまう。

 

「ぐっそぉぉおおっ!」

「終わりだ」

「っ!」

 

俺は瞬時に地面を転がって避ける。

 

「だあぁぁっ!!」

 

ブシャァアァッ!!

 

すかさず聖賢を突き刺し、引き抜く。

 

「ぐっ・・・おわり・・・か・・・」

 

無表情のまま消えていくロウ。

 

「ぐっ・・・ホーリーッ!!」

 

俺は再びオーラフォトンを展開する。

だが、あまり傷が癒えた感じはしない。

やはり、精神を強く持つ事が大事だ。

そう思って俺は気張る。すると、マナの流出が止まる。

 

「ぐっ・・・!」

「キョウコッ!?」

 

突然キョウコが転がってきた。

すぐさま立ち上がる。

見ると、俺とキョウコは囲まれていた。

 

「これ・・・マズイんじゃない・・・?」

「あ、あぁ・・・」

 

オレ達は背中あわせにロウを睨む。

体がギシギシいいそうだ。

 

「いくよ、ユウッ!」

「キョウコも無理すんなよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

「ていやっ!」

 

ザパアアッ!!

 

目の前でやっと一人目が消えていく・・・。

命を奪う事は悲しい。

だけど・・・今のこの状況ではそうも言えなかった。

 

キィンッ!!

 

すぐに後ろから来たロウの剣を止める。

 

{ヒカリッ!!ホラはやく反撃しろ!!}

「うっさいわね!今やるってば!!」

 

キィンッ!

ズバァシュッ!

 

相手の剣を弾いて素早く切り裂く。

 

「せいやっ!!」

「っ!?」

 

ザパアァアッッ!!

 

「え・・・!?」

 

私は空を見上げた。

いや・・・倒れた。

それに気付くのが遅すぎた。

目前にはもう剣を振りかぶったロウ。

 

ブスゥゥッ!!

 

「アァアァッ!!」

 

微かに避けたが、それでも避けきることはできなかった。

脇腹を貫通し、地面にささるロウの剣。

 

「ぐっ・・・でやぁあぁっ!!」

 

ズバンッ!!

 

ロウの首が吹き飛び、ささっていた剣が消える・・・。

 

「はぁ・・・はぁ・・・!!」

 

私は脇腹を押さえながら立ち上がる。

 

{大丈夫なのか?}

「う、うん・・・なんとか・・・」

 

 

 

 

 

 

 

「てやぁあぁっ!」

「はぁあぁっ!!」

 

アセリアは縦に切り下ろし、ロウを真っ二つにした。

私の剣はロウの剣ごと相手を引き裂く。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

「アセリア、大丈夫?」

「ん・・・平気・・・」

 

ヨロッ・・・!

アセリアは力なく倒れる。

 

「無理しない。しばらく休んでて」

「ん・・・」

 

おとなしく従うアセリア。

いや・・・それだけの余力がないのか・・・。

 

「ん・・・!ユウナッ!」

「え・・・ん!」

 

私はすぐさま振り向いて剣を振りぬいた。

 

ザバァアァッ!!

 

「ば、ばかな・・・!」

 

驚いた顔のままロウは消えていく・・・。

 

「でりゃぁああ!!」

「うぉぉぉぉ!!」

「どりゃぁぁあぁ!!」

 

「っ!?」

 

今度は三人同時に襲いかかってくる。

 

(くっ・・・想い!いくよ!?)

{ええ!}

 

 

 

 

 

 

「限界・・・か・・・!」

 

次々膝をついていく仲間・・・。

かくいう俺は倒れたまま動けない。

カツカツ・・・

誰かが近寄ってくる。

 

(俺も・・・ダメ・・・か・・・)

 

俺は隣のカナリアを見る。

 

「・・・ごめん」

 

チャキッ・・・!

 

剣が抜ける音がした。

 

「おわらせる・・・」

 

「あれ?」

 

ちっともその終わりがこない。

俺が目をあけると、そこには誰もいない・・・。

 

「大丈夫ですか?」

「え・・・エスペリア・・・?」

「はい。援軍に来ました。あとはお任せください」

「オルファにおっまかせ〜!」

「そういうことだ。ゆっくり休むといい」

「フォルクまで・・・」

 

まったく・・・なんてオイシイタイミングだ・・・。

俺は安心したとたんに、意識が途切れた・・・。

 

 

 

………………………………………………………………………………………………………………

 

 

「ア〜スナ!」

「うん?」

 

俺が振り向くと、手を後ろで組んで、少し前かがみになっているスフィアがいた。

 

「どした?」

「あのさっ、もう付き合いはじめてかなりたつよね?」

「ああ。もう人間なら五世代くらいは」

 

「だから・・・その・・・」

 

急にモジモジしはじめるスフィア。

なんだ・・・?

 

「そろそろ・・・その・・・」

「あぁ・・・結婚しようか、スフィア」

 

「:@ー^¥!?」

 

スフィアが顔を真っ赤にして声にならない声を出した。

 

「そう言ってほしかったんだろ?」

「い、いや!あ、あれ?違わないけど・・・でも!なんでそんな軽く!?」

 

どうも雰囲気が気に入らなかったらしいのか、抗議してくるスフィア。

 

「信じてるからな。スフィアが俺の事を愛してくれてるって」

「うぅ・・・真顔で言わないでよ・・・」

「はは・・・で、どうなんだ?」

 

「え・・・?」

 

「え?じゃないだろ。答えだよ答え。俺だって結構恥ずかしいんだから・・・」

「あ・・・うん・・・その・・・結婚・・・しよ?」

「おう。この任務が終わったらローガスとかに頼んで盛大なのやるか?」

「うん!」

 

そう言ってるスフィアの顔がとても眩しかったのを覚えている・・・。

でも・・・

オレ達の結婚が成立することはなかった・・・。

 

 

 

 

 

 

場所は変わって港町だ。

いや・・・港町だった・・・。

 

崩れ落ちる建物、燃え盛る船・・・。

一人、また一人と炎に包まれていく・・・。

そんな中・・・俺はある人物と対峙していた。

俺の手にはしっかりと新星が握られている。

その隣にはローガス・・・。

 

そして、オレ達が対峙している人物の手にはシン・・・。

 

「シンッ!!いますぐスフィアから出ていけッ!!」

「ふふ・・・イヤよ。せっかく手に入れた体ですもの」

「アスナッ!もう無理だ!封印しよう!!」

「でも・・・!そしたらスフィアが!!」

「スフィアとこの世界に住む全員の命、エターナルなら・・・!」

「どっちが大切かなんて決められねぇよっ!!スフィアは・・・俺の恋人なんだぞ!?」

 

 

(アス・・・)

 

 

「え・・・?」

 

突然頭に響く声・・・。

 

 

(お願・・・シン・・消して・・・)

 

 

消え入りそうな声・・・でも、俺の頭にしっかり響く。

 

「スフィアまで・・・!そんなこと・・・!!」

 

なんで・・・そんな事言うんだ・・・!

 

 

(アスナ・・・あのね・・・)

 

 

「・・・え?」

 

 

(私は・・・アスナに会えたから・・・だから・・・お願い)

 

 

ピキィンッ!

 

「っ!?体が・・・!?」

 

シンは身じろぎするも、体は動かない。

 

「アスナ、チャンスだ!」

「・・・ああ!!」

 

俺は涙を拭って剣を構えた。

瞬時にオレ達はオーラフォトンを展開する。

 

「この女がどうなってもいいの!?」

 

 

「シンッ!俺は人質を助け、かつおまえを倒せるように格好良くできてない。

それだけの強さもない。だけど・・・このチャンスを逃がす余裕さえなくなった。

スフィアがいたから・・・俺は、スフィアがいたから・・・

おまえを封印するっ!!それだけだっ!!この世から消え去れシンッッッ!!!」

 

 

自分でもよくわからない理屈。

でも、こうするしかない。

これがスフィアの望んだ事なのだから・・・!

そして・・・背中に背負った、この世界の人々の希望なのだから!!

 

 

(アスナ)

 

 

おそらく最後になるであろう最愛の人の声・・・。

俺は頭に焼き付けようと集中する。

絶対に・・・忘れないように。

いつまでも覚えていられるように・・・!

強く、強く願った。

 

 

―――――――。)

 

 

「スフィアアァアァッッッ!!」

 

 

キンキンキンキィィンッ!!!

 

 

オーラフォトンが急激に小さくなりシンを取り込んでいく。

 

「うあぁあぁっっ!!!」

 

パァァアァ・・・

 

オーラフォトンがシンを包みこんで消え去った・・・。

そして・・・同時にスフィアの体がマナへとかえっていく・・・。

 

「スフィアッ!!!」

 

俺は留めようと手を取る。

が・・・その手はすり抜けた。

 

「スフィアッ!!」

「・・・」

「ッ!?」

 

微笑んだ・・・?

 

俺がもう一度見ると・・・

そこには、燃え盛る街しかなかった。

 

 

…………………………………………………………………………………………………………………………

「スピリット・オブ・ネレイ」

アスナ最終支援技。『ネレイ』というのは召喚する精霊の名前。

精霊というのは、どこの世界、どこの門にも存在しない・・・全く別の世界にいる力を司る存在のこと。

『ネレイ』はその精霊の中でも上位に位置する精霊で、その力はエターナルでさえも簡単に葬り去れる。

ただ、精霊という存在は自ら戦う事はなく、自分が認めた人間に呼び出される時だけ力を発揮する。

元々この技はスフィアが使えたものだが、スフィアに教わってアスナが使えるようになった。

しかし、スフィアが亡くなったため、現在この類の技を使えるのはアスナしかいない。

 

精霊を呼び出す事は結構簡単だが、精霊は体を持たないため、使用者の身体のマナを使用することになる。

力が半端ではないため、引きぬかれるマナも半端ではない。

そのため、並のエターナルが使うと体を全て持っていかれて消えてしまう。

今回は詠唱省略で使用したため本来の威力の半分程度だった。

 

 

永遠神剣第一位『心』

通称シン。ユウキと契約するのも、『心』の計画のうちだった。

シンは何十週期も前からカオスやロウのエターナルを操り行動していた。

それに気づいたアスナ達が追っかけてきていると感じたシンは、作戦をたてた。

それはある『守護者』の魂をつかった計画・・・。

テムオリンの計画に上乗せして、気づかれないように進めて来た。

魂を2つにわけ、その片方を更に2つにし、三つの魂を作る。

それが、ラクセル、アルメリア、ユウキだった。ラクセルは『果て』を持たされファンタズマゴリアへ。

ユウキはハイペリアで過ごし、アルメリアはスピリットとしてファンタズマゴリアで生きていた。

そして、ユウキとアルメリアが一つになると自動的にシンと出会い契約するようにしていた。

その後、ラクセルと裏切ったユウキがユウト達を消してラクセルとユウキはシンと共に・・・。

 

しかし・・・その計画にも歪みが生じる。

シンの分身『不変』がユウキにシンの手下である、という記憶を戻さず、ラクセルを倒してしまった。

そして、その時にラクセルも記憶を取り戻し、逆に反発するようになった。

そのため、シンは計画を変更してユウキ一人を操り全世界を滅ぼすことにした。

 

 

『カタストロフ・クェイク』

マナを『再生』の比ではないくらいに集め、人為的にビッグバンを起こす作戦。

単純に全世界を壊し、そのマナを全て取りこんで永遠神剣第一位『天地』にもどる。

エターナルも永遠神剣も全てマナとなってしまうので、成功すれば、もれがないため確実に『天地』になれる。