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「はは・・・」
俺は中庭である男と対峙していた。
正直・・・勝てる気がしない。
ダラダラと冷や汗がとどまることを知らない。
「お前がカオスの希望・・・アスナだな?」
「そうだよ・・・黒幕さんのユウキ」
まさか、こんなところで出くわすとは思わなかった。
でも・・・ちょうど良い。
聞きたいことがある。
「お前は、何をするつもりだ?全世界を巻き込んでこんなことして・・・」
「・・・まずは、エターナルを殺すこと」
「それだったら、別に世界を巻き込まなくても・・・」
「違う。エターナルで、全面戦争を起こす必要があったんだよ」
「なに・・・?」
どういう意味だ?
まさか・・・!
薄々感じていた。
もし、俺がカオスの希望になるのなら・・・最初から全戦力で俺を叩けば良かった。
でも、そうしないで・・・まぁ俺消えたんだけどさ。
それはつまり・・・
「お前は・・・まさか、エターナルをカオス・ロウ関係なく減らすために・・・?」
そう言うと、ユウキはふっと笑った。
まるで悪意を感じさせないほほ笑み。
「そういうこと」
「なんでそんなことするんだ?無駄に犠牲をだすことになんの意味がある?」
俺は新星を握り締めた。
「あるさ。今は・・・大量のマナが必要なんだ。
しかも、世界を壊さないで・・・。そうしたら、エターナルのマナを使うしかないだろう?」
「マナで・・・何をするつもりだ?」
「そうだな・・・」
思索するように空を見上げるユウキ。
「お前には教えてやるか。俺は『ゲート・フリーズ』を起こすつもりだ」
「ゲート・フリーズ・・・?」
聞いたことのない単語。
「それはいったい・・・?」
「・・・俺はエターナルが憎い」
「なっ・・・!?」
「世界に介入して、好き勝手にかき回す。しかも、ばかなエターナルは自分が神だなんだと勘違いしている。
カオスにも同じ事が言える。全世界を在るがままに戻す・・・?はっ、よく言うよな?
それならなんでどうこう建前を気にしてロウを直接狙ってこないんだ?
そういういい加減な精神が全世界を混乱させているんじゃないか!!」
「それはアンタもそうだろう?全世界に勝手に介入してカオスに対してクーデターを起こさせるなんて?どこも違わないじゃないか」
「そうだ・・・だが、それももうすぐ終わる。ゲート・フリーズさえ起こればな」
「・・・だから、それって何?」
「エターナルの戦いは終わりの兆しが見えない・・・なら、戦えなくしてしまえばいいんだ」
「・・・」
「全ての門を破壊し、凍らせ、使えなくする。それがゲート・フリーズだ。
そうすれば、エターナルは強制的に世界に干渉できなくなる。
そうすれば、どの世界も干渉されなかった、在るがままの姿になる・・・そう思わないか?」
ユウキが同意を求めるようにふってきた。
確かに・・・強制的に渡りができなくなれば、エターナル同士の戦いはなくなる。
でも・・・
「それって、本当の在るがまま・・・になるのか?」
「なに・・・?」
「だってさ。オレ達はかならずどこかの世界にはいるわけだろ?そうなれば、エターナルはその世界で永遠に生きることになる。
そうなったら・・・エターナルが支配してしまう世界とかでてくるんじゃないか?」
「・・・わかってないな」
「え・・・?」
「エターナルなど、ゲート・フリーズに必要なマナになってもらうだけだ。
つまり・・・エターナルはカオス・ロウ関係なく全滅させる」
「な・・・!?だから・・・こんな戦いを起こしたのか・・・!」
「俺は最後の一本の永遠神剣に戻す事も反対だし、だからといってのうのうとエターナルをのさばらせるつもりもない。
今の俺なら、きっと運命も宿命も倒せる。そのために・・・俺はこの力を得たんだ」
ユウキは心を持つ。
ブワァアァッ!!
身がさけるようなプレッシャーが俺を襲う。
「・・・俺はやられない」
俺はそれでも体を無理遣り動かす。
負けてたまるか・・・!
「確かに、エターナルという存在は世界のためには消えた方がいいと思う。
でも・・・エターナルにも、俺は守りたい存在がいるんだ。何も消す必要はない。
エターナルでなくなればいいだけなんだ。だから・・・そんなゲート・フリーズとかいう物のマナになるなんてまっぴらだ!
おまえは確かにすごい。理想も高いし、力もある・・・。でも、そんな自分勝手な行動で、俺は消されたくない。
全世界のためだからって・・・エターナルが犠牲になるのは間違いだ!
エターナルが永遠の命を得るのは、その命で世界を導くためだ!
カオスは在るべき姿へ・・・ロウは原初の剣『天地』へ・・・。
それなのに、そんな身勝手な理想で命を簡単に消させはしない!
エターナルにも生きる権利はある!!誰かを愛し、手を取り合って生きる権利が!」
「そうだな・・・でも、そういう事を好き勝手に言っているから!世界が混乱するんだ!!
俺だって全世界を守りたい・・・でも、そういう好き勝手に言うエターナルがいすぎるから!!
俺は全てを守るためにはこれしかない、そう思ってる!!」
「守る・・・?」
俺はユウキを見る。
どこか心を持つ手が震えている気がする。
「俺は・・・どの世界も失いたくない、傷つけたくない。
だけど・・・!エターナルがいる限り、必ずどこかの世界は犠牲になっていく。
今までどれだけの世界が犠牲になった?これからどれだけの世界が犠牲になっていく?
それが俺はイヤだ!!なら、世界が元の姿であるには・・・エターナルを犠牲にするしかないだろ!?」
「・・・そんなの違う!」
「なんで・・・?」
「今はユウキの方法しかないのかもしれない・・・。でも、それは今は、の話だ!
トキミでさえまだ見れない未来・・・そこに、あるかもしれないじゃないか!
全世界が、エターナルから解放されている未来が・・・あるかもしれないだろ?諦めるなよ」
「・・・そう言ってる限り、絶対にその未来は訪れない。
ひとつ聞くけど・・・じゃぁ、アンタら全員、エターナルをやめられるのか?」
「え・・・?」
「全世界を解放したあと、それだけ強力な力を、迷わず捨てることができるのか?」
「・・・」
俺はできる。
でも・・・エターナル全員がそう思ってるのか?
「ファンタズマゴリア・・・あそこは最後にどうしたか・・・覚えてるだろ?」
「・・・ああ」
確か・・・抗マナに変えてエーテル技術を封印・・・
あ!!
俺の悟った顔を見てユウキは続ける。
「どうだ?確かに、おまえみたいなヤツは躊躇なく捨てられると思う。だけど・・・それは全員じゃないはずだ。
最後にレスティーナは、強制的にエーテル技術を奪った・・・そうだろう?
そして、おまえは行ってきたはずだ。どうだった?エーテル技術のないファンタズマゴリアは?本当の平和だったか?」
「それは・・・」
違った。
まだ・・・ゲリラ組織が反抗していた。
「カオスが勝ったとする。そうしたら、今度はカオスの中で分裂が起き、また戦いが始まる。
そうして結局エターナルが消えることはない。そうじゃないか?だから、トキミでさえその未来が見えないんだろう?」
「・・・」
何も言えなかった。
全てがうまくいったように見えたファンタズマゴリアでさえ・・・未だ根強く反抗があったのだから。
「アスナ・・・俺は俺のやり方で世界を守る。だから・・・止めたければ、俺を倒してみろ。
理屈じゃない・・・。俺は俺の信じる物を突き通すまでだ。それがおまえらにとって悪だろうと、そんなの関係ない」
「・・・っ!」
その言葉・・・ユウトが言っていた。
ユウキが一番よく言っていた言葉・・・。
たとえ、全員がそれを悪だと判断しても、自分の中では正義・・・。
一見ただの言い訳だが、それはだれにでもある感情だ。
自分の信じるものが悪だ、とされたら・・・誰だって納得できない。
でも、そのうちそれを悪だと思ってしまう。
だけど・・・それがユウキにはない。
自分の信じるものは最後まで信じぬく。
その理屈じゃない意志の強さが・・・第二位で最下位を破る力となったんだろう。
「いくぞアスナッ!!シンッ!力をくれ!」
{はい!いくよ?ユウキッ!!}
「くっ・・・やるぞ新星!」
{ああ!}
俺は新星を握り締めた。
タッ・・・!!
「!?」
「永劫心眼の太刀ッッ!!」
突然懐にユウキが現われた。
目を閉じて剣に手をかけている。
「マズッ!はぁぁ!!」
キンキンキキキキンッ!!
「ちっ・・・!やるな!」
俺は瞬時にバリアを展開して、ユウキのまるで見えない太刀を防いだ。
「速いっ・・・!」
{あ、あぁ・・・バリアがなければ今ので決まっていたな・・・}
「油断してんじゃねぇぞ!!」
また気が付けば懐にいた。
でも・・・!
「二度目はくらわないっ!」
キィンッ!
「なっ・・・!?」
ユウキの剣がぬかれる前に剣をぶつけて止める。
「ぐぐ・・・!」
「ちっ・・・!」
バッと距離を取るユウキ。
「一度で太刀筋を見切られるなんてな・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・!」
息が荒い。
大して動いたわけじゃない・・・。
ただ、このユウキのプレッシャーの中で動くのはかなり精神を消耗する。
「今度は俺だ・・・!うぉぉぉ!!」
俺は新星にオーラを宿らせた。
限界ギリギリまでマナをかきあつめる。
「ふっ・・・!」
「!?」
突然ユウキが消える。
「ここだァアァっ!!」
「ぁあぁっ!!?」
ブザァアァッ!!
ユウキの剣が俺を貫く。
「ぐっ・・・うあっ・・・!」
ビシュッ!
鋭くぬかれるユウキの剣。
そのとたん、俺の体から一気にマナが抜けていく・・・。
「アスナッ!!」
「っ・・・!」
ユウキが離れる。
「大丈夫か!?エスペリアっ!」
「はい!アースプライヤーッ!!」
フワァァアァッ・・・
俺の傷が治っていく。
「ぐっ・・・サンキュ・・・」
俺は貫かれた部分を抑えながら立ち上がる。
まだ、痛みが引かない・・・。
「ユウキッ!!なんで・・・!」
ユウトはユウキに訴えかける。
「ユウト、オレ達は確かに仲間だった。でも・・・俺はエターナルになって新しい目標を見付けた。
だから・・・俺は俺のやり方で世界を守る!!」
「だからって・・・!誰かを傷つけた上の何かに意味なんてあるのかよ!?」
「じゃぁ、おまえはファンタズマゴリアのガロ・リキュアは意味がないとでも?」
「ぅ・・・」
簡単にいいくるめられてしまうユウト。
「あれだけじゃない。どの世界も、何かの犠牲の上にたっていることは事実だ。
でも・・・それでも、俺は犠牲を出してでも得たい物があるから戦う。
それだけだ!!そして・・・そのためにはおまえらがジャマなんだ!!」
「っ・・・!?ウソ・・・でしょ・・・?ちょっと・・神剣に飲み込まれたの!?」
キョウコが信じられない、と『心』をにらむ。
だが、支配されていないことぐらい、わかっていた。
「逆に・・・おまえらがローガスを裏切ってこっちにつくか?それはできないだろう?」
「でも・・・!」
「きっとおまえはこう思う・・・本当にこのやり方しかないのか?ってな。だから・・・ジャマなんだ!!」
「ユウト・・・もう、アイツに何を言っても無駄だ」
「アスナ・・・!でも!!」
「アイツは・・・絶対に崩れない。それだけの強さと力を持っている。
だから・・・オレ達にできるのは、アイツを止めてエターナルを守るだけだ」
「どういうことだ・・・?」
「アイツは・・・カオスもロウも合わせてエターナルを全滅させて、そのマナで世界を守ろうとしているんだ。
だから・・・俺はエターナルを守るために戦う。おまえらを・・・失いたくないからな」
「そんな・・・アイツが・・・!?」
ユウトが持っている聖賢が震える。
「だから・・・俺はアイツを倒す」
「アスナッ・・・!助けてくれよ・・・!!あいつ・・・だって、俺の・・・」
「・・・」
俺は黙って新星を構えた。
ユウト達から力が流れてこない。
だけど・・・やるしかない。
ここで殺されてやるわけにはいかないんだ。
「いくぞユウキッ!!でやぁあぁっ!!」
「その程度で俺を倒すつもりか!?」
キィンッ!!
「なっ・・・!?くそぉぉぉおぉっ!!」
片手で止められてしまう。
俺は新星にオーラを宿らせた。
「っ!?」
シュバァアァッ!!
そのオーラは俺とユウキを包み込む。
「へっ・・・外がダメなら中からやるまでだ!!」
キィィィッ・・・!
オーラがとてつもなく大きく膨らんでいく。
ドガァアァァアァッ!!
オーラが爆発し、周辺にあるもの全てを吹き飛ばす!
あまりの爆発の大きさに爆風で木は倒れ、地面は禿げる・・・。
「ぐっ・・・だめ・・・か?」
「いつつ・・・」
「ぐっ・・・やっぱり・・・か」
ユウキは頭から軽く出血しているも、軽傷だった。
「全力・・・出したんだけど・・・ね」
「まさか・・・第三位にここまでやられるとはね・・・。でも、もう終わりだ・・・。おまえら全員消し飛ばす!!」
ユウキは心を地面に突き刺した。
途端にオレ達全員を囲むくらいに大きなオーラフォトンが展開した!
「!マズい!!みんな!全員一点に集まるんだ!!全力で防御しろ!!」
俺は叫んで全員を集めた。
それぞれが防御のオーラフォトンを展開する!
「ぐっ・・・新星!もっとだ!!これじゃ耐えられないぞ!!」
ユウト達が全力で防御してないのがわかる。
心に、打ってこないんじゃないか?という気持ちが残っているんだろう。
そんなことすれば・・・オレ達が消えるのに。
信じたい一心で・・・。
その気持ちがわかるからこそ、俺は何も言わないで防御に専念する。
{全力を出しているさ!!あいつが強すぎるんだ!!}
(新星!俺の体のマナを限界まで抜き取っていい!!俺が消滅しなければな!!いくぞ!!)
{カタストロフィィィィッ!!!}
俺はギリギリで抵抗と防御を跳ねあげるオーラフォトンを展開する。
「アスナッ!ここで消えろォォォオォォッ!!!オーラフォトンシィィィンッッッ!!!」
キィィッ!
空間が膨張しはじめる。
今までに感じたことのない、張り詰めた空気。
キィィンッ!
目の前が真っ白になった。
その途端・・・
ズガズガズガガァアアァッ!!!
「ぐおぁぉぉあああぁ!!?」
俺の体に何かが襲いかかる!
ズガズガガァアァンッ!!!
「ぐっぼぁっ・・・!!」
何かが俺を打ち付け、体から一気に力が抜けていく・・・。
(消え・・・る・・・?)
ドガァアァアァッ!!!
最後の爆発で、俺は意識を失った・・・。
「・・・終わりか」
ユウキは呟く。
目の前には、だんだんとマナに還りはじめているアスナ達。
一番ヒドイのはアスナだ。
体が既に半分消えかかっている。
「あの爆発をここまで耐えたのか・・・予想以上だな」
今までこの技で体が残っていた者はいなかった。
{そうね・・・。でも、いいの?}
心がユウキに問い掛ける。
その一言に、どれだけの意味が込められているのだろう・・・?
「いいんだ。さて・・・カナリアを連れていくか」
{・・・いいの?}
「・・・ああ。きっと、コイツは必要になる」
カナリアに剣を向ける。
するとカナリアが光りだし、消える。
{・・・かわったのね、あなたも}
「はは・・・愛想つかしたか?」
{うぅん・・・あなたがやりたい道だって、わかってるから。だから、わたしはそれに付き合うわ}
「ありがとう・・・シン。じゃぁ・・・やるか。永遠神剣第一位『心』の主として命ずる。この者たちのマナを・・・」
キィンッ!!
「!?」
突然心の警告が来てユウキは身構える。
あまりに大きな力・・・。
おそらく、心と同等!
「来た・・・!」
シュンッ・・・!
突然現われた人。
何かの力なのだろう。
「・・・」
「何を・・・って言うのは、もう言わないよ?」
「ユウナ・・・」
永遠神剣最上位『想い』を持つ、カオスを代表する強さのエターナル・・・『折れぬ想いユウナ』。
「想い・・・この人達を治して」
想いをアスナ達に向ける。
すると、パァァっと光りだし、傷をみるみる治していく。
「どいてくれ。俺はコイツらを殺さないといけないんだ」
「・・・イヤよ。絶対にどかない」
「ユウナ・・・!わかってくれ!」
「今のあなたなんかわかりたくないわ。平気で人を殺せるようになったあなたなんか」
「・・・なら、力ずくでもいかせてもらうからな」
ユウキは心を構えた。
「今のあなたなんかに負けない。もう・・・気持ちの整理はついた。
あなたがエターナル全てを消すというのなら、私は全力で止めるだけ」
ユウナも静かに想いを構えた。
二人の力は互角・・・ピリピリ静電気さえ起こりそうな空気は容赦なく二人を攻め立てる。
「や・・・めろ・・・」
「!?」
「アスナ・・・?」
ユウナは立ち上がるアスナに驚く。
傷を治したとはいえ、たてるはずがない。
死にかけていたのだから・・・。
「ユウ・・・キ。俺は・・・おまえを・・・倒すッ!!!」
アスナは新星を握り締めた。
その目は戦闘意欲を失っていない。
何が彼をここまで突き動かしているのだろう?
「体力は尽きているはず・・・なんでたてるんだ!?」
ユウキが珍しく狼狽する。
「・・・あなたも、前はこういうことをさんざんやったくせに」
「え・・・?」
「不変の存在ユウキは・・・至高の心ユウキよりも強かったよ?今の・・・アスナみたいに」
「そんなことない。俺はこの力を手に入れて、格段に強くなった」
「・・・もぅ、わからないのね・・・?」
ユウナの持つ想いが震える。
それを見て、完全に我を見失うユウキ。
「ぐっ・・・ここは一旦引く!」
ゴォォッ・・・!!
門の中に身を投げるユウキ。
門が閉じると、アスナが倒れた・・・。
パスッ・・・
アスナを受けとめるユウナ。
「・・・ユウキ。あなたは・・・」・・・
「う・・・」
俺は目を覚ます。
体がどうも浮くように軽い。
「あ・・・アスナッ!!」
ガバッ!
と俺にとびついてくるヒカリ。
目には涙が溜まっていた。
シュッ・・・
ドサァッ!!!
「え・・・?」
俺は抱き留めようとするも、ヒカリは俺を通り抜けて壁に激突した。
「ど・・・どうなって・・・?」
「当たり前だろう?アスナ」
「え?」
いきなりローガスに当たり前だ、と言われた。
なんで・・・?
「本当なら君達は消えていてもおかしくない状況だったんだ。ユウキのオーラフォトンシンにやられてね」
「あぁ・・・」
今でも覚えている。
圧倒的な力。
全力の防御もたやすく破られた。
「しかも・・・ユウト達の防御はいい加減で、アスナは自分の体のマナをぎりぎりまで使ったんだろう?
それなら半透明になってしまってもおかしくないねぇ」
ローガスはうんうんと頷く。
「・・・だからだよ」
「・・・え?」
罪悪感で俯いていたユウト達に、真面目な顔で言うローガス。
「君達はまだユウキに対して剣を向けられない。そうすれば、アスナが無理する・・・それが僕はイヤなんだ」
「ローガス・・・」
その目には、親友を心から心配する・・・そんな強い気持ちが表れていた。
「今回はユウナがきてくれたからいいものの、もしあそこで来てなかったら、君達のせいでアスナは死ぬことになってたんだぞ?」
「うっ・・・」
「君達が、いい加減な戦いをしたせいでアスナが死ぬ。君達が殺したも同然だよ。
だから、僕はアスナをそのチームから外すんだ。
アスナのチームはアスナ、ユウナ、ヒカリ、フォルク、テムオリン。それ以外はトキミのチームだ、いいね?」
「そんな・・・!」
「いいね?」
「・・・わかりました」
トキミがそう言って部屋を出ていく。
それに従いユウト達も出ていき、部屋にはアスナとローガスだけになる。
「ピリピリして、どうした?」
「・・・ごめん」
「・・・」
「僕は・・・アスナを失いたくないんだ」
「ローガス・・・」
「だって!ずっとずっと前から一緒に生きてきたんだよ!?なのに・・・!」
「はぁ・・・」
俺はローガスの頭をポンと叩く。
一回目ですり抜けてしまった。
「俺は死なない。今回だって、ちゃんと生きてみせた。だから、大丈夫だ」
「・・・信じて、いいんだね?」
「おう」
「・・・わかった」
「さぁて・・・俺ももう一休みするかな」
俺はあくびをしながら部屋を出ようとする。
「アスナッ!」
「うん・・・?」
「カナリアは・・・どうするんだ?」
「・・・君の口から言ってくれ。俺は・・・助けだすだけだからな」
俺はニッとローガスに笑って部屋を出た・・・。
「ふぅ・・・どうだ?治ったか?」
{まぁ大体はな}
俺の体にマナが戻ってくる。
すると、突然体がだるくなりはじめた。
「な、なんだ・・・?」
頭がグラグラして、体のあちこちに痛みが走る。
{体が元に戻ったことで、前の戦いの痛みが戻ってきたんだろう。まったく・・・全治一週間とはな}
「いつつ・・・」
俺はそのままベッドに倒れる。
「マズいなぁ・・・これじゃヒカリとデートできないや」
{おまえ・・・こんなときにまで女かよ}
はぁ・・・とため息をつく新星。
「せめてお見舞いにきてくれないかなぁ?回れドアノブ!」
ガチャ!
「お?」
言った瞬間にドアノブが回った。
もしかして・・・!!
「おっす」
「・・・」
「な、なんでそんな残念そうな顔してるんだ?」
{放っておけ。どうせ女がきてくれないかなぁ、などと考えていたのだろうから}
「・・・聖賢、呪ってやる」
おまえみたいのがいるから・・・。
「んで、何用?」
「・・・カナリアの事、聞いたぞ」
「あぁ・・・」
「だから・・・」
ユウトは何か決意した目で俺を見る。
「俺を連れていってくれ・・・か?」
「・・・そうだ。カナリアを・・・助けにいくんだろう?」
「そりゃもちろん。約束したしね」
カナリアはこういう事態を予想していたのだろう。
なぜユウキがさらったのかはわからない・・・。
でも、カナリアは俺に助けてほしい。
それだけだ。
その事実だけわかっていれば、俺の動く理由は十分。
それに・・・
「囚われのお姫さまを救い出した後、王子とお姫さまは結ばれるのがセオリー。ならば、いくしかあるまい!」
「だんだん・・・おまえというヤツがどういうヤツかわかってきたよ」
ユウトは軽く笑った。
この作戦・・・決して成功率は高くない。
でも・・・なぜか不思議とやれる気がする。
「そういう気を起こさせてくれるヤツなんだよな、おまえは・・・さ」
「は?」
一人で納得するユウト。
なんだ?
「自己完結はやめろよな。さて・・・俺はヒカリとユウナを連れていく。おまえは?」
「え・・・?」
「え・・・?じゃねぇだろ?おまえ、まさか俺と二人きりの愛の逃避行でもするつもりだったのか?うわ、身の危険」
俺は自分を抱く。
「い、イヤイヤ!!逃避行はしねぇよ!!でも・・・みんなも?」
「・・・ユウト、おまえさんざん言われてきたんじゃないのか?一人でなんでもやるなって」
「う・・・」
図星のようだ。
「仲間を信頼して、背中を任せる。それは巻き込んでるわけじゃない。
それに・・・カナリアを助けだしたいのは俺とおまえだけじゃない。
おまえはもっとそういうのを勉強するべきだ。まったく・・・聖賢、教育がなってないぞ」
{すまぬ。以後気をつけよう}
「・・・なんで俺がこんなに言われなくちゃいけないんだ・・・?」
ユウトが半泣きになる。
でも、あいにくそれに付き合ってる暇はないんだ。
「で?誰?おまえはジゴロだからよりどりみどりだよな」
「だ、誰がだ!そうだな・・・アセリアとキョウコ。うん、あの二人にお願いしよう」
「ほほぉ・・・」
「・・・なんだ?イヤな笑いしやがって」
「うっしっしっしっし・・・」
「こ、このやろう・・・」・・・
「アスナさん、いますか?」
「あいてるよ」
俺は声の主を部屋に入れる。
入ってきたのはトキミだった。
「どうしたの?」
「カナリアの事・・・です」
「・・・聞かせてくれ」
「はい、実は・・・」・・・
「じゃぁ・・・行ってくるよローガス」
俺はローガスに背を向け、門を開く。
「じゃぁ・・・みんないくぞ!!」
オレ達は次々と門に身を投げた・・・。
「そういえば、アセリアとキョウコはよく来てくれたな」
「ん・・・カナリアは・・・仲間」
「そうそう。それに・・・アイツが何を考えているか、ぶん殴ってでも聞き出さないと気が済まないし」
「いや、だからゲート・フリーズ起こそうとしてるんだって」
「それに・・・やっぱり、あいつ仲間だったから・・・」
キョウコが淋しそうな顔をする。
やはり、仲間に剣を向ける覚悟はすぐにはつかないのだろう。
「そういえばアスナ、キョウコとユウナとアセリアに手出さないんだな?」
「バカ言え。俺は最初から負ける勝負はしないつもりだ。
アセリアとキョウコはずいぶんとユウトにベタぼれだし、ユウナはユウキの恋人だしな。
あ、でも心配するなよ?俺の目にはヒカリしか映ってないんだから」
「心配なんてしないよ!もうどっかの女に引っ掛かって呪われちゃえ!」
ヒカリがぷいっと顔を背ける。
「恥ずかしがって、かわいいなぁもう!」
「ア・ス・ナァ・・・!!」
ゴゴゴ・・・とイヤな音がする。
ヒカリから。
「じょ、冗談だって。だから剣をおさめておさめて。な?」
「ふんだ。そうやって女ばっかり追い掛けて、楽しいの?」
「そりゃ楽しいさぁ。
だって、男と会話してるよりなんというか、華があるんだよ。ユウトと話してるとどんどんテンション下がっちゃうし」
「ほっとけ。つうかだったら喋るな」
「ユウトはあれだよな。夜の腰使いばかり軽いタイプだろ?」
「・・・は?あ・・・何言ってやがるこのヤロウ!!」
ザッ!
ベィィィンッ!!!
「ぐっ・・・いっつー・・・」
聖賢で頭を殴られた。
「なんてことしやがる!」
「ユート、夜の腰使いってなんだ?」
「なんでもない!アセリアは気にするな!!」
「ユ・ウゥ?ちょぉっといい?」
ぐいっとユウトの耳をひっぱるキョウコ。
「いたた!ちぎれるちぎれる!!あれはアスナの冗談・・・!」
「でも、トキミと一緒の部屋にいること多いよな?しかも夜」
「ばっ・・・!おまえそれ秘密っつったろ!?」
あ・・・とユウトは口を塞ぐももう遅い。
アセリアとキョウコにズルズル引きずられていくユウト。
その後は推して知るべし。
「まったく・・・ジゴロは大変だよな」
「あはは・・・アスナ、いいの?これから大事な勝負前なのに」
ユウナは呆れたように首を振る。
ギャァァアァッ!!!という断末魔が聞こえるも無視。
自業自得。
惚れられた女のケツはおまえが持て。
あ、いや、セクハラ的な意味じゃなくて。
それに・・・光陰から頼まれたしな。
たまにガス抜きさせてやってくれ、って。
「・・・」
「ヒカリ」
俺はヒカリの肩に手を置く。
「リラックスリラックス。肩に力が入ってちゃ、実力は出せないよ?」
「でも・・・」
カナリアの事がよほど心配なのだろう。
ずっと進行方向の先にあるものを見ている。
「焦らなくても、大丈夫。オレ達は絶対にカナリアを助けだせるって」
「・・・あはは。その自信はいったいどこからくるの?」
「お、やっと笑ったな?」
「あ・・・」
自分でも今気付いたようだ。
「ヒカリはそうやって笑ってればいいんだ。なんのためにオレ達がいるんだ?」
「・・・うん、そうだね!」
「お待たせ〜」
ローストエターナルとなったユウトを引きずりながらキョウコとアセリアがでてきた。
「じゃぁ・・・いくか!お姫さまを助けに!
俺が勇者で、ユウナがバトルマスター、ヒカリが魔法剣士でユウトが村人、アセリアが青魔法使いでキョウコが黒魔法使いね」
「ちょっとまて!俺だけおかしいだろ!?」
「そうか?必ず門の近くにいて、村の名前を教えてくれる重要な役割なんだけど。じゃぁ・・・ヘタレ?」
「オイ・・・もういい。さっさといくぞ!」
ユウトが痺れをきらしてさっさと歩きだす。
「じゃぁやりま・・・」
「マナよ、オーラの奔流となれ・・・彼の者に究極の破壊を与えよ!!」
「待った!それはまずい!それだけはまずい!!じゃぁナイト!
うん!これなら問題ない!夜・・・の意味もあるけど。まさにやらナイト?なんちって」
『オーラフォトンノヴァッッッ!!!!!』
キィィッ!!
「へっ!俺だって!トキミ直伝!すーぱーあまてらす光線ッッッ!!」
『アイスバニッシャーッッ!!!』
シュゥゥゥ・・・!
マナがいきなり散っていく・・・。
え?つうかなんでアセリアはバニッシュしてるの?
「な・・・トキミ!最強の技じゃなかったのか・・・!?あ・・・」
足元からオーラが俺にむかってきた。
ドガァアァアァ!!!
「ぐおぉぁぉあぁぁ!?」
「アスナ・・・大丈夫?」
「ははは・・・」
俺はみっともなくヒカリに介護されていた。
手加減してくれたとはいえ、あの技はつらい・・・。
ちょっとからかいすぎたか。
「ねぇアスナ・・・いい加減にしなよ?」
「あはは・・・いいんだって」
「・・・本当のねらいはわかってるけど」
「え?」
「ユウトはなんでもため込みやすいから・・・でしょ?」
「そんなわけあるかよ。俺はおもしろい事しかしないんだ」
「それって、微妙にこたえになってないよね」
「・・・そうか?まぁいいじゃん!」
俺はバッと立ち上がる。
「今度こそ、本当にいこう。みんなでカナリアを助けだす。そして・・・七人で帰ろうな」
「おう!」
「やっぱりそれが一番よね」
「うん!がんばろうね、アスナ!」
「やってやろうじゃないの!」
「ん・・・任せろ」
頼もしい仲間。
誰一人気負った様子はない。
これならいける!
俺は心の底から確信した。
ザッ・・・!
オレ達は進んでいく。
カナリアを・・・絶対に助けるんだ。
それが・・・俺の約束だしね。
オレ達は、大きな城の前に辿り着いたのだった・・・。
…………………………………………………………………………………………………………………………………………
ユウキ支援技『オーラフォトンシン』
シンを得て、更に強力になったオーラフォトン。
ユウキの魔力を混ぜて使用するため抵抗がきかない。大量のマナを使い、大規模な爆発を起こす。
『ゲート・フリーズ』
門を全て破壊し、凍らせ2度と使えなくするという作戦。そのためにエターナルを殺し、マナを集めていた。
最も単純だが、それゆえにハタ迷惑な作戦。
エターナルを全滅させるなら門を破壊しなくても、という疑問が残る作戦。
それにユウキが気づかないのは・・・。