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明朝。

俺は裏庭にいた。

ヨーティアの発明が深夜に完成して、中庭に設置してある。

中枢には俺の神剣が使われていて、ほんの数秒だけ蓋の一部を開く。

もしも、天文学的数値の確率でロウが侵入してくれば、すぐに撃退できるように俺はこの世界にとどまる。

そして・・・

 

「ん・・・」

 

エターナル候補・・・アセリア、エスペリア、オルファ、ウルカ・・・今日子。

 

「いいんだな?」

「うん・・・光陰とも、話をつけてきたから」

 

「そうか。んじゃ、オルファ以外はこれからある『門』の前に送る。

そこの門をくぐるか触れるかすると、その瞬間全ての人間から忘れ去られる。

引き返したいなら、そこをくぐらないで、待っているんだ。

中に入れば、試練が始まる。

アセリアは『永遠』に、エスペリアは『聖緑』に、ウルカは『深遠』に、

今日子はちょっと特殊で、中立の『依存』ってヤツを説得してくれ。

その場で依存って呼び掛ければ出てくるようにしておいたから。んじゃ・・・ヨーティア、いいか?」

 

 

「オーケーだ。いつもできな」

「よし・・・永遠神剣第三位『祈り』の主として命ずる。この者達を導きたまえ!」

 

キィィンッ!!

オーラフォトンが四人を包み込む。

 

スパァァアァンッ!!

 

四人は一筋の線となって消えた。

 

「んじゃ・・・オルファか」

「オルファはなんでみんなと仲間外れなのぉ!?」

「まぁそう怒るな。オルファの神剣はあそこじゃないんだ」

 

「え?」

「レスティーナ女王に許可は取っておいた。シュンと戦った場所は覚えてるな?」

「うん!」

 

「そこへ行くんだ。

もちろん、途中で何かに襲われるかもしれないけど、それがオルファの試練としよう。そこで『再生』をとってくるんだ」

 

「・・・わかった!」

 

オルファは走っていく。

途中まではお付きをつけておいたけど・・・。

 

「さぁ・・・がんばりたまえよ、諸君。フォッフォッフォ・・・」

 

俺は館へと戻っていくのだった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか・・・」

 

 

カオス残存戦力リーダー、ラクセルは唸る。

ラクセル・・・あの、ラクセルである。

てっきり消えたかと思ったら、ひょっこり現われてカオスに入ってきた。

ロウだったこともあって、最初は信頼されてなかったが、精力的に働く姿を見て、この人の元でカオスは一致団結している。

 

まぁ・・・ユウキが消えなかったのだから、ラクセルがいても不思議じゃない。

剣は『果て』ではなく永遠神剣第二位『明王』だ。

元々の力もすごくて、おそらくカオス・エターナル10本の指に入るだろう。

そのラクセルでさえ・・・トキミの未来では、頼ったらカオスは滅んだ。

トキミの未来は、全てカオス・エターナルの全滅で終わる。

 

このままいけば・・・何をしても、確実に滅んでしまう。

それゆえに、唸るしかなかった。

 

 

「・・・」

 

トキミは申し訳なさそうにうつむいている。

唯一の希望だったアスナは消え、新星は真っ黒。

手段がなかった・・・。

あるのは、少しずつ迫る全滅のみ。

それゆえに、カオス・エターナルの士気は極めて低い。

 

 

「あのローガスが勧めてくれたから・・・もしかしたら、と思ったんだがな・・・」

「ええ・・・」

「・・・圧倒的な数の差。味方の世界は皆無。逃げ道もなければ生きる未来もない・・・か」

 

曇った空から雷が落ちる。

 

「行くか」

 

ラクセルは剣を取る。

 

「ラクセルさん・・・」

 

「俺は、ユウキを止めるためにカオスに入った。そのためには、この体を捧げる。

悔しいけど・・・俺は戦い以外、知らないんだ。それに・・・ここで、尻尾を巻いたら情けなくてな。

やっぱり・・・死ぬまで、俺の魂は真っすぐでいてほしい。だから・・・いくさ。たとえ、どんな未来が待っていようともな!」

 

 

「・・・ふふ、付き合いますよ」

「トキミ・・・」

「トキミだけじゃないさ」

 

ユウトが壁にもたれかかっていた。

 

「ここでいかなければ・・・後悔するだろうからな。俺もついていく」

「俺も行かせてもらう」

「フォルク・・・」

「私も!!」

「ヒカリまで・・・」

「何も、あなた一人が背負う必要はないわ」

「カナリア・・・」

 

ラクセルは頼もしい仲間に目が滲んだ。

 

 

「さぁ、行って一矢報いましょう!」

「ついでに・・・ロウにオレ達の力を見せ付けてやろうぜ!!」

 

 

集まった戦力が、自分たちで自分たちを鼓舞するように叫ぶ。

 

「ホラ、ラクセルさん」

 

バンッ!とラクセルの背中を押すトキミ。

 

「・・・我々は、これから決戦の地、ル・ナに赴く!!奮起せよ!!これが我々の戦いだ!!いくぞ!!」

 

ウォォォオオォッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「連れてきたよ〜!」

「サンキュー、オルファ」

 

俺はエターナルになった『再生の炎オルファリル』にみんなを迎えにいってもらった。

俺が移動すると、また一からやりなおしになるからだ。

 

「ん・・・ただいま」

「おう。永遠の戦いへよく来てくれた。『永遠のアセリア』」

「これから、よろしくお願いします」

 

エスペリアは丁寧にお辞儀してくれた。

 

「ああ、こちらこそな。『聖緑のエスペリア』」

「これから、お世話になります」

 

ウルカも軽くお辞儀してきた。

 

「おう、『深遠の翼ウルカ』」

「んじゃ・・・パパッとユウを追い掛けましょうか!」

「俺に挨拶しやがれ」

「わかったわよ・・・。よろしくね」

 

「ああ、『紫電のキョウコ』・・・。

さて、みんなエターナルになっちゃったわけだけど・・・これからは、永遠に戦いの日々だ。

いつか消える時のためだけに戦う存在となる。

だけど・・・それも、それぞれだ。

だから、俺にはみんながエターナルとしても目標を早く見付けてくれると嬉しい。

永遠の戦いによく来てくれた。俺はみんなを歓迎するよ。それじゃ・・・いこう!」

 

 

俺はヨーティアの機械を作動させ、門を開く。

そこに、次々と飛び込んでいくアセリア達。

その目には、きっとユウトしか映っていないのだろう。

ふっ・・・と笑って、俺は門に飛び込んだ。

 

目的地は、ル・ナ。

なぜなら、ヨーティアの蓋を開く所から引き寄せられる門がそこ行きしかないから。

そして、合流地点へと向かう予定だ。

さぁて・・・いきますか!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ・・・!」

 

ボガァアァッ!!

 

『うぐぁぁあぁあぁッッッ!!!!』

 

あちこちで神剣魔法が飛びかう。

そのたびに、一人、また一人とカオスやロウが消えていく・・・。

数で圧倒的不利な上に、個々の能力も微妙に相手が上だ・・・。

刻一刻と迫る全滅・・・。

 

「くっそぉぉぉおおぉぉっ!!!」

 

ユウトはがむしゃらに剣を振るう。

 

バシュゥッ!

 

次々とロウを斬り伏せるが、体はズタボロ。

限界に近いのは明らかだった。

 

キィン!!

 

聖賢が報告してきた。

 

{新たなエターナルの反応だ}

「マジか・・・!?」

 

待機している間は腕を下げる。

 

{ああ・・・ん・・・?この反応は・・・?}

「どうした・・・?」

{いや・・・}

 

「ユウト!何ボーッとしてるの!?」

「あ、あぁ!悪い!!」

 

今の状況を忘れていた。

まだ、終わりじゃないんだ!!

ユウトは再び聖賢を構えて斬り掛かるのだった・・・。

 

キィンッ!

 

新星の錆が取れていく。

それに気付くものはいなかった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「くっ・・・もう戦っていたのか!!」

 

こうしている間に次々消えていく反応・・・。

 

「これが・・・現状なのですか!?」

 

あまりの戦闘の激しさに驚いて固まるみんな。

 

「そうだ、エスペリア。この中に・・・ユウトがいる」

「ん・・・感じる。聖賢・・・」

 

アセリアが呟く。

 

「よし!その反応を頼りにして、合流しよう!!」

 

俺が一歩踏み出す。

 

ゴォォォッ!!

 

すると、突然目の前に門が開く。

 

「!?」

 

ヒュゥゥッ・・・!

カランッ!

 

中から出てきたのは、新星だった。

 

「新星!」

「それなぁに?」

「俺の神剣だよオルファ。新星?」

{よく・・・死なないでいてくれたな!}

 

歓喜の感情が流れこんでくる。

 

「ああ・・・新星と背光のおかげだよ」

{そうか・・・。それで、ソイツらは?}

「新しいエターナル。詳しい事情はあとだ」

 

{・・・そうだな。では、祈りと俺をあわせろ}

{よろしく}

 

祈りは瞬時に眠りについた。

おい・・・

 

「こうか?」

 

ピカァァアァッ!!

 

突然祈りと新星が輝きだした。

俺は眩しくて目を閉じる・・・。

 

 

「・・・ん?」

 

光がおさまり目を開けると、なんだか不思議な感じがする祈りがあった。

 

{俺は永遠神剣第三位改『新星』。これからよろしく頼むぞ?アスナ}

「?何かかわったのか・・・?」

{ああ。おまえが・・・あの時、血に勝ったからな。背光の力も少しもらえたから・・・ようやく真の力がだせる!}

 

「よくわかんないけど頼もしいな!んじゃ・・・いくぜ?新星!」

{ああ!!オレ達の強さを見せ付けてやるんだ!!!}

 

「いくぞみんな!!」

 

「ん・・・!」

「はい!!」

「いっくよー!!」

「いきます!!」

「そっちこそ遅れないでよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユウトさん!」

「え・・・?」

 

トキミがいきなり近付いてきた。

なんだかものすごい希望に満ちあふれている。

 

「どうした!?」

「実は・・・未来が見えないんです!」

 

「・・・は?」

 

「だから、未来が見えないんです!!」

「・・・あ!それって・・・!?」

 

ユウトもピンときたようだ。

 

「もしかしたら・・・きたのかもしれません!」

「アイツ・・・よぉし!!」

 

ユウトは聖賢に力を込めた。

精神が復活したおかげなのか、傷が一気にふさがっていく。

 

「みなさん!勝機はあります!!未来は私達を見捨ててはいないんです!!!いきましょう!!!!」

 

トキミが高らかに叫んだ。

 

ウォォオォォォッ!!!

 

カオスの叫びが聞こえる。

それだけで士気が跳ね上がったのを感じる。

 

「ここで勝って、ローガスさんと合流するんです!!いきます!!!」

 

カオス全員の動きが倍以上に変わる。

その異常事態にロウは次々負けていく・・・。

 

「でやぁあぁぁ!!」

 

ユウトはロウを切り裂いた!

 

「ふぅ・・・」

{!ユウト!!}

「え・・・?」

 

ユウトが一瞬だけ気を抜いた瞬間、ロウが真後ろから襲ってきた!

 

「マナよ・・・!」

「間に合うものかぁぁあぁっ!!」

「!!」

 

喉元に迫るロウの神剣。

ユウトが目を閉じる・・・。

(あれ?)

 

訪れるはずだった終わりがなかなかこなくて、ユウトは目をあける。

 

「な・・・!?」

 

そこには、青紫の髪をした・・・見覚えのある後ろ姿があった。

そいつは、ロウの剣を青い刀身が目立つ剣で止めていた。

 

「ア・・・ア!?」

 

『ユート・・・任せろ』

 

『私達に・・・』

 

「!?」

 

別の声がして振り向く。

そこにも見覚えのある笑顔・・・。

 

『いきましょう!アセリア殿!』

 

「!?!?」

 

さらに別の声。

また振り向くと、またまた見慣れた構え。

 

『いっくよ〜!マナよ、無形の力となれ!迅く、彼の者どもを薙ぎ倒せ!!イグニッションッ!!!』

 

「!?!?!!!!」

 

更に聞き慣れた明るい声。

目が飛び出しそうなくらい見開いているのがわかる。

 

(な、なんで・・・!?)

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁあぁ!!」

 

{ホラ!もっときりきり俺を振れッ!!}

 

「うるさい栄光!」

 

バシャァアァッ!!

 

胴体を引き裂かれマナへ還るロウ。

 

「うあぁあぁっ!!」

 

「なっ・・・!?」

 

{ヒカリッ!!}

 

バシャァッ!!!

 

「きゃぁあぁっ!!」

 

足元を深く切り裂かれ、倒れこんでしまうヒカリ。

 

{くっ・・・!}

 

「う・・・いた・・・っ!」

 

{立てヒカリ!!死ぬぞ!!}

 

「足が・・・死んでる・・・!」

 

ヒカリの足はもはや皮でつながっている状態だ。

歩くどころか立つことさえできない。

そこから大量のマナが流れだし、容赦なくヒカリを死の淵へ追いやっていく・・・。

 

「くっ・・・いや・・・死にたくない・・・!」

 

{ヒカリッ!!}

 

「死ねっ!!カオスッ!!」

 

ブシャァァアァッ!!!

 

 

 

『ヒカリを殺させはしない。だって・・・まだデートしてないしなぁ!!』

 

 

 

「・・・え!?」

 

聞き慣れたお茶らけた声・・・。

ロウを切り裂き、そこに立っている男・・・。

 

『新星よ!全ての者に命の加護と癒しをッッッ!!!カタストロフィーッ!!

 

剣を地面に突き刺すと、戦場目一杯に広がるオーラフォトン。

それは、明らかに尋常なレベルではない。

全てのカオスの傷を癒し、加護を与えて防御を堅くする・・・。

 

「あ・・・あ・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで・・・アセリア達が!?」

 

ユウトはようやくそれを口にだせた。

もちろん、嬉しいがそれ以上に驚いた。

 

「ん・・・ユートを助けにきた」

 

「それに・・・ユウト様は私達にとって、大切な存在なんです」

 

「そうだよパパ。だから・・・」

 

「これからは、一緒に戦わせていただきます故・・・」

 

「なんでもかんでも一人で抱え込まないの!」

 

「今日子まで!?」

 

最後の一人は意外中の意外。

 

「おまえ・・・光陰は!?」

 

エターナルになれば・・・そう言い掛けたが、今日子が両手で止めた。

 

「アタシは、ユウの隣にいたい。隣で、ハリセンで叩いたり、雷落としたり」

 

「・・・おい」

 

「一緒に、いろんなことを経験していきたい。だから、ここにいるの!!いくよ、ユウッ!!!しゃべってる暇ないでしょ!?」

 

「あ・・・ああ!!頼んだぞ今日子!!」

 

ユウトはエスペリアに治してもらった体を敵陣へと切り込ませていく!

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ・・・アスナ・・・!?」

 

「よう、おまっとさん」

 

俺は人差し指と中指をあわせてデコにもっていった。

 

「な、なんで・・・?」

 

「なんでって・・・そりゃ、ヒカリに会いにきたんだ」

 

「・・・え?」

 

「ヒカリ、相変わらず綺麗だ」

 

「なっ・・・!?」

 

こんな状況なのに一気に顔を赤くするヒカリ。

 

「まぁ詳しい話は後でデートでもしながらしますかね。今は・・・ローガス助けるんだろ?」

 

俺はヒカリに手を差し出した。

それを取って立ち上がるヒカリ。

 

「うん!」

 

『ふふ・・・大した自信ですわね』

 

「ん?この声は・・・」

 

俺は声の主に振り向く。

そこには年増がいた。

 

「テムオリン・・・か」

 

「お久しぶりですわね、アスナさん?年増、というのはいい加減やめてくれませんかしら?」

 

「そのうちね。久しぶりだな。どのくらいだっけ?」

 

「数えるのもやめてしまうほどですわ。あの時私のお誘いを受けておけば良かったものを」

 

「お誘い・・・って?」

 

「ああ、コイツにロウにこないかって言われたんだ」

 

「え!?」

 

「でもまぁ・・・俺はツルペタに興味はないし?

どうせだったらもっと成長してからエターナルになればよかったのになぁ、テムオリン。

おまえ結構美人になりそうだったのに。

ま、そうだったとしても、カオスにはヒカリみたいな女性がたくさんいるから断っただろうけどな!」

 

俺がヘラっと笑うと、テムオリンの気迫が増していく・・・。

 

 

「ふふ・・・その決断、後悔させてあげますわ!」

 

 

テムオリンが秩序を持ちオーラフォトンを展開させた。

 

ビリビリッ!!

 

途端に空気が震えだし、プレッシャーがオレ達に襲いかかる。

 

「うっ・・・」

 

その迫力に気圧され、栄光が下がっていくヒカリ。

テムオリンはそのナリにたいしてかなりの実力を持っている。

並大抵のエターナルではかなわない程の。

 

「え・・・?」

 

そんな張り詰めた空気の中、俺は新星を抜いて構えた。

 

「テムオリン・・・ここに出てこなければ、やられなかったのにな」

 

新星にオーラを宿らせる。

 

ボワァアァッ!!

 

「なっ・・・!」

 

テムオリンの気迫が消え、代わりに新星から放たれるオーラフォトンがその場を制する。

 

「その力は・・・!?」

 

「すご・・・」

 

ヒカリはつい呟いてしまう。

その力は、第三位のものではなかった。

体が痛くなるような威圧感。

感じる力・・・その全てが、目の前の秩序さえ上回っていた。

 

「どこでそんな力を・・・!?」

 

目の前に存在する大きな力に、恐れを感じ顔を歪ませるテムオリン。

信じられない、と顔を振っていた。

 

「はは・・・新星。これが・・・おまえの新しい力か」

 

{ああ・・・どうだ?使いこなせるか?}

 

「もちろん・・・。やってみせる!」

 

グワァアァッ!!

 

新星の翼が輝きだす。

ふっ・・・

 

「え?」

 

{これは・・・!?}

 

突然、栄光を通じてヒカリの力が俺に流れこんでくる・・・。

いや、ヒカリだけではない。

その場にいるカオス全員から力が流れこんできていた。

だが、力が抜き取られた感じはしない。

力を共有してる・・・そんな不思議な感覚がする。

 

「うそ・・・ありえませんわ・・・!」

 

「テムオリン!おまえはここで完全に消滅しろっ!!」

 

俺は新星を振りかぶる。

刀身からはオーラがあふれだしていた。

 

「くっ・・・秩序よ!彼の者に究極の破壊を与えよ!!」

 

キィィッ・・・!

 

秩序からものすごい力を感じる。

 

「いきなさい!!」

 

グワアァァッ・・・!!

 

一筋の光が空へと登った。

その瞬間・・・!

 

ドガドガドガァァァッ!!

 

次々と俺の頭上に光の矢が降り注ぐ!

地面に落ちるとそれは爆発し俺を巻き込んでいく!

 

「あ・・・アスナァアァッ!!!」

 

ズガァアァァッ!!

 

あまりの規模の大きさにヒカリはつい叫んでしまう。

だが・・・なぜか、死んだと思えなかった。

これだけの攻撃をくらえば、ひとたまりもない・・・そのはずなのに・・・。

 

ヒュゥゥ・・・!!

 

その場は荒れ果て、爆発で植物は全て吹っ飛んだようだ。

クレーターと焼け焦げた地面しかない・・・。

 

「・・・」

 

「なっ・・・!?」

 

テムオリンはその場で傷ひとつおっていない俺に驚いていた。

全力の一撃を無傷で耐えてしまった。

 

(なんつーか・・・強すぎないか?)

 

俺は新星にそう問いかけるも、ふっと笑われてしまった。

 

「むぅ・・・」

 

俺は頭をポリポリ掻く。

 

今まで俺はこれほどまでに力を持ったことがない。

だから・・・なんというか、もう予想できる決着をいちいちつけるのが非常に・・・面倒だった。

 

さっきまでの熱が一気に冷めていく。

だって、負けるわけないじゃん。

シュンと光陰たちの戦いの時のようなものだ。

これでは戦いにさえならない。

それほどまでに俺の体は力であふれている。

それにたいしてテムオリンはさっきの一撃でかなり消耗していた。

 

「・・・なぁテムオリン」

 

「・・・」

 

 

「オレ達と来ないか?」

 

 

「「・・・は?」」

 

テムオリンとヒカリが同時に抜けた声をだしてしまう。

 

「いや、なんつーかさぁ・・・俺がテムオリンを倒す理由がないし」

 

「い、いやだって!テムオリンは世界を壊そうとしてるロウなんだよ!?」

 

ヒカリに怒られるが、それでもなぜか倒す気になれない。

 

「うぅん・・・」

 

「・・・」

 

俺は頭を掻きながらテムオリンを見る。

その瞳はなぜかゆれている気がした。

 

「なぁテムオリン。永遠神剣を一本に回帰させるためにロウはいるんだよな?」

「そうですわ・・・それが?」

「だったらさ・・・ロウに未来はないんだぜ?」

「なんですって・・・?」

 

テムオリンの表情が変わる。

 

「永遠神剣第一位・・・その、最初の一本は、全ての世界の源・・・つまり、それは同時にオレ達の元とも言える。

となれば・・・その最後の一本になったとき、全部の世界はなくなるし、オレ達の体もその神剣のマナになるだけだ。

つまり、おまえらは死ぬために戦っているんだぜ?」

 

「どういう・・・ことですの・・・?」

 

テムオリンはよくわからないようで、首を傾げている。

ヒカリも同じだった。

 

「うぅん・・・つまりな?

最終的な一本になるためには、全世界・・・そう、ひとつのもれもなく、全世界をマナにして・・・

その後、オレ達エターナルもその神剣のマナの一部にならないといけない・・・。

というか、そうしないと最後の一本にはならないんだ。

だってそうだろ?オレ達も、どの世界も、その一本の剣から生まれたのだから。

何一つ欠ける事無く、全てがひとつにならないと、その最後の一本にはならない」

 

 

「そんな・・・そんなはずは・・・!」

 

 

「事実さ。

まぁ、一本の永遠神剣が全てを生み出した・・・ってのは、俺とローガスとそちらさんのリーダーしか知らなかっただろうけどさ。

だから、ローガスはロウを止めようとしてるんだよ」

 

 

「じゃぁ・・・私達のしてきたことは・・・」

 

 

「自分の寿命を短くするだけ・・・っつうことだ。

それに気付いて、止めようとしてくれる永遠神剣・・・。

逆に、全てをひとつにしてしまいたい。あわよくば、自分こそが全ての創始者になる、そう思ってる永遠神剣・・・。

それがエターナルの戦いなんだ。

どっちがオレ達のような生きている者にとって嬉しいか・・・わかるだろ?

そう考えれば、本能的には一本になりたがる剣の方が多いから、ロウの勢力の方が上ってのもわかるだろ?」

 

 

「そ、そんな・・・」

 

 

ヒカリもテムオリンも何かに打ちのめされたかのように動かない・・・。

 

「だから・・・さ。テムオリンも来いよ」

 

俺はテムオリンに手を差し出す。

 

「永遠神剣を手伝おう・・・なんてもう思ってないだろ?なら、オレ達と一緒に来て・・・ユウキを止めてほしい」

 

「・・・」

 

そぉっとだが、確実に近付いてくるテムオリンの手。

ピクッとテムオリンの手がとまる。

 

「・・・な?」

 

俺はテムオリンに微笑みかける。

すると、テムオリンは照れたかのように頬を赤くして、俺の手に自分の手を重ねたのだった・・・。

 

 

「え・・・きゃぁあぁっ!!」

 

突然テムオリンが絶叫した。

 

「これは・・・!」

 

キキキィンッ!!

 

手に持っている秩序がすごい光を放っていた。

 

「ちっ・・・!テムオリン!!飲み込まれるな!!!」

「う・・・あぁ・・?!!」

 

突然頭を抱えて膝をつくテムオリン。

このままではまずい!!

 

「秩序!やめるんだ!!」

 

 

{うるさい・・・!このまま何も知らないでロウとしていれば良かったものを・・・!!}

 

 

初めて聞く秩序の声。

俺に対してかなりの憎悪が感じられる。

 

「やめろ!!彼女はもう、ロウじゃないんだぞ!」

{それが迷惑だから強制しておるのだ。たかだか第三位の小僧に負けおってからに}

「負けただと?違う!テムオリンは負けたわけじゃない!」

 

むかつく・・・秩序に対して憎しみがどんどん沸き上がってくる。

 

「ふ・・・ふふ」

 

テムオリンがふらっと立ち上がる。

 

「くっ・・・テムオリン!負けるな!!」

「無駄だ。もう、この体は頂いた」

「秩序ぉぉぉっ・・・!!」

 

俺は新星を構えた。

まだ、さっきの力が残っている。

 

(新星、やるぞ!)

{無理を言うな。秩序程のヤツにそのような甘い考えが通るわけないだろう}

 

(ユウトだってやれた!なら・・・この力、全部使って打ち砕いてみせる!!新星、秩序の精神だけを狙うぞ!!いいな!?)

{・・・はぁ。わかった。おまえはそういうやつだったもんな}

 

新星は軽くため息をついて、俺に力を与えてくれる。

 

 

「砕け散れ秩序ッ!!!」

 

 

俺は新星を振りかぶる!

 

「くらうがいい!!」

 

秩序が無数の剣を出現させる。

 

「ハァアアァッ!!」

 

 

キンキンキンキィンッ!!

バギャァァァッ!

 

俺は一振りで全てを新星で砕く。

 

 

「俺を・・・信じるんだ!テムオリンッ!!!」

 

タンッ・・・!!

 

「なっ・・・!」

 

目の前にあるのは、テムオリンでありテムオリンでない驚いた顔。

 

「懐・・・取ったぞ!!」

 

俺は力を最小限に抑えて振りかぶる。

 

「消えろ秩序ォォオォォッ!!」

 

シュッ!!

 

俺は新星が秩序に当たる瞬間に力を全て解放した!

 

 

バキャァアァッ!!!!

 

 

「ぐっ・・・う・・・」

 

俺は軽く欠ける秩序を見る。

あれだけの力を込めて欠けただけ・・・なら、きっと!

 

{さすがだ・・・まさか、おまえがこれほどの事ができるなんてな・・・}

「ってことは・・・!?」

{ああ。秩序は完璧に斬られた。二度と意識は戻らぬだろうな・・・。それに、テムオリンの意識も無事だ}

 

「っしゃぁあぁっ!!!」

 

俺はついガッツポーズをしてしまう。

俺は倒れているテムオリンを抱き起こす。傷も負わせていないし、無事なはずだ。

 

「テムオリン?起きてくれ」

 

ペチペチとテムオリンの顔を叩く。

しかし、起きる気配がない。

「・・・やるか」

 

{ちょっと待て!!そればかりはやめておけ!ペドと言われるぞ!!}

 

俺の思考を読み取ったのか、すぐさま新星が忠告してくる。

だが、俺は気にしない。

 

「んじゃ・・・目覚めのキスといきましょうか?」

 

俺は目を閉じてテムオリンに顔を近付けていく・・・。

 

 

ムギュッ・・・!!

 

 

「・・・」

「・・・ペド」

「がはぁっ!」

 

おでこをヒカリに止められ、俺がヒカリを向いた瞬間にそう言われた。

 

「じゃぁヒカリに」

 

俺はヒカリの腕を掴む。

 

「へ?」

 

ドサァアァッ!!

 

「ぐぼぁぁっ!!」

 

軽く投げられ俺は地面に叩きつけられた。

 

{アホが・・・}

 

「まったく・・・これだけすごいことしても、やっぱりアスナはアスナなんだから・・・」

 

{本当だな・・・それがいいんだが}

 

「・・・そうだね」

 

 

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永遠神剣第二位『明王』

ラクセルの新しい永遠神剣。前の神剣『果て』はユウキとの戦いで崩れ去ったと思われる。

第二位なだけに実力は相当な物だと想定されるが、このご時世、残存戦力をまとめるので精一杯なため、

誰も使った所を見たことがない。

 

 

異世界『ル・ナ』

ローガスが守っている拠点に一番近い世界。ここを拠点にして、ロウはローガスに攻めこんでいた。

マナも大量にあり、エターナル同士の戦いの場所としては向いているといえる。

 

 

アスナ支援技『カタストロフィー』

何気なく光陰から教わった事を応用したオーラフォトン。

回復を主にして、その場全員の体に薄いオーラフォトンを纏わせて防御を跳ね上げる。

その範囲は限定されることがなく、最大で世界の隅々まで展開できる・・・らしい。

 

 

永遠神剣第三位改『新星』

アスナの新しい(?)永遠神剣。背光と新星の力が合わさった『祈り』と、元の『新星』が一つになった。

アスナがトラウマを一応は克服したため、今までとは比にならない程の能力を持つ。

味方の神剣の数だけ力が増すという異常な能力を持ち、その力は無限大。