………………………………………………………………………………………………………………

 

「いいか?ヘリオン。女性たるものお茶をたてたりできることは当り前だ。で、料理以外に何かできるか?」

 

「え?えぇと・・・」

 

モジモジ悩むヘリオン。

 

「あぁ!かわいそうに・・・。戦いばかりでそんな暇なかったんだね?よし!ここは俺が一つ教えてあげよう!」

 

「え?何をですか?」

 

「人のハメ方」

 

「・・・え、遠慮します」

 

「いやいや!これ絶対楽しいから!試しに・・・おっ!いいとこにニム発見!!」

 

俺はダダダと走って行く。

 

「ニムッ!ニムニム!大変だ!」

 

「どうしたの?アスナ」

 

「ホラこれ見ろ!」

 

俺は手鏡をかざしてニムに見せる。

すると、そこには髪が真っ白になったニム。

 

「え、えぇ!?なにコレ!?」

 

「大変だ!どうするニム!?この若さで髪が真っ白だ!」

 

「いやぁぁっ!アスナなんとかしてっ!!」

 

髪をペタペタ触るニム。

 

「と、これが基本だ」

 

俺はヘリオンに手鏡を見せる。

鏡には真っ白なニムの髪型が書かれていた。

ちょうど鏡を見せると髪にかぶるように。

 

「ぷっ!くくくっ・・・あーっはっはっはっ!!ニムだっせーっ!こんな子供だましにひっかかってやんの!!」

 

「〜〜〜ッッッ!!!!」

 

真っ赤になるニムの顔。

一方俺は腹が痛くて痛くて地面を転がっていた。

 

「いひひっ!死ぬ死ぬ腹痛くて死んじゃう〜〜〜ッ!!!」

 

「そのまま死ねーーーーッッッ!!!超むかつく!」

 

ビシュビシュッ!

振られる神剣をひょいひょいっと避ける。

 

「どうだ〜ヘリオン!?これが人をハメた時の快感ってヤツだぁよ!」

 

「い、いいです・・・。なんだか大変な事になりそうですから・・・」

 

「遠慮するなって。なら、他にもあるぞ!?ニム、ニムニム」

 

俺を追いかけてきているニムを留める。

 

「今度はなに!?」

 

「コレ見ろよ。ニムの十年後の姿だよ」

 

俺は写真をピッと見せた。

そこには髪が長くツインテールをしていて、ちょっと目つきが悪く、ナイスバディな緑髪の女性がいた。

 

「え?コレ・・・ホントに?」

 

「うんうん。マジマジ大マジ」

 

「・・・こんな人にニムが・・・」

 

「ぷっ・・・!大嘘だぴょ〜んっ!!」

 

俺は写真を指でこする。

すると髪や目つきがかわっていく・・・。

そしてそれはハリオンになった。

 

「あ〜っはっはっはっ!!ま〜たひっかかってやんの!!や〜いや〜いっ!!腹割れそうっ!いひゃひゃっ!!」

 

「超超むかつくっ!!!ここで消えろーーーーっっっ!!!」

 

「未来なんてわかるわけねーだろうが!!まぁた子供だましにひっかっかっちゃってっ!ニムってホント面白いよなーっ!!」

 

そう言いながら逃げ出す俺。

後ろには神剣をブンブン振りまわすニム。

顔はものっすごい真っ赤だ。40度越えていそうなくらい。

 

「どうだぁヘリオン?一度やるとクセになるぜぇ!?」

 

「く、クセにしたくなんかないですっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁアスナ」

 

「うん?どうした光陰に今日子・・・?」

 

さらに後ろにはなぜかアセリアにウルカ、オルファにエスペリア。

さらにはレスティーナまでいた。

 

「おいおい、なんだこれ?」

 

「聞きたいことがあるんだ。謁見の間まできてくれ」

 

「・・・ああ」

 

たぶん・・・アレだろうな。

俺はそう覚悟して歩きだした。

 

 

 

「話ってのは・・・シュンのことだ」

 

「シュン・・・ね」

 

俺は呟く。

 

(はぁ・・・やっぱり、違和感残るよなぁ・・・)

 

つくづく、記憶ってのはいい加減だと思う。

 

「んで?」

 

「シュンを倒した・・・それは、誰だ?」

 

「おまえらだろ?」

 

「違う。たしかに、オレ達もいた・・・。だけど、オレ達だけであれだけ強かったエターナルを倒せたとは思えない」

 

信じきった目。

こうなってしまっては、バレてるのと同義だ。

だけど・・・

 

「そんなの知らないさ。あれだろ?心の力が勝ったってやつだ」

 

「アスナ、真剣に答えて」

 

今日子のイヤな目。

 

「アタシ達は・・・知りたいの。その『誰か』の事を」

 

「ダメだ」

 

「アスナ!!」

 

「聞いてなんになる?何もできない。

感謝の言葉も、相手の声を聞くこともできないんだぞ?興味本位とか、勝手な義務感はやめてくれ」

 

「そんなつもりじゃ・・・!」

 

 

「エターナルは、どこの世界にもいることができる。

でも、どこの世界も故郷にはならないんだ。だから、君達が知った所で何もできないだろう?」

 

 

「・・・では、質問を変えます」

 

レスティーナが少し熱くなった場に冷や風を通す。

 

「その方は、今どうしているのですか?」

 

「・・・それならいっか。そうだな・・・まずは、今のエターナルの社会を話すよ」

 

「はい」

 

全員がスッと椅子に座る。

 

「まず、最近・・・まぁ、もう半年前くらいかな・・・。ある世界が、クーデターを起こしたんだ」

 

「クーデター?」

 

「そう。『カオス・エターナル』に対してね」

 

「え!?」

 

場が騒然とする。

 

 

「ロウが仕組んだと思う。

たぶん、全ての世界を破壊するためには、まずカオスを全滅させたほうが手っ取りばやいって思ったんだろうね」

 

 

「おいおい・・・で、クーデターはどうなったんだ?」

 

 

「もちろん、今もつづいてる・・・でも、カオスはほとんど壊滅状態だ。

ほとんどの世界がロウに支配されて、カオスと敵対してるからね」

 

 

「じゃぁ・・・その人は・・・?」

 

「まさか・・・お亡くなりに?」

 

「はは。しぶとく生きてると思うよ。アイツは」

 

「良かった・・・」

 

「はい、俺が話せるのはここまで。他に質問は?」

 

「ん・・・」

 

「はい、アセリア」

 

「名前・・・」

 

「名前か・・・今は、聖賢者ユウトっていう」

 

「ユウト・・・日本人か?」

 

「・・・高嶺悠人。それが、前の名前だ」

 

「高嶺・・・?」

 

「まさか・・・ね?」

 

俺は椅子から立ち上がる。

 

 

「これ以上は悪いけど話せない。

君達は、この世界で生きていけばいいんだ。これ以上知ってはいけない。いや・・・知る必要がない」

 

 

「そんな・・・」

 

強く言う。

ここで、情けはいらない。

今、カオスは大ピンチだ。

そこで・・・コイツらが・・・

 

 

「なら・・・エターナルになる」

 

 

そう、こう言うと困るから。

って・・・

 

「あ、アセリア・・・?」

 

「エターナルになれば、その人を思い出せる・・・違うか?」

 

「いや、違わないけど。って、ダメ!!絶対にダメ!!」

 

「ぶぅ〜!なんでぇ!?」

 

オルファがすさまじいブーイングをかけてくる。

 

 

「いいか!?その人は、この世界が平和になるため・・・

そしてなにより、おまえら全員がもう戦わなくて済むようにエターナルになったんだぞ!希望を繋ぐ力になる・・・そう言っていた!」

 

 

「・・・」

 

「それなのに、あいつの覚悟を無駄にするつもりか?ここでおまえらが出ていけば、ユウトが守ったこの国はどうなる?」

 

 

「誰かが守る側につかなくてはいけなくて・・・それが自分ならば、俺はなりたい。

エターナルになって、みんなを守りたかったんだ・・・ユウトはそう言ってた。

なのに、今出ていって、またアイツに無理をさせるつもりか?」

 

 

「そんなつもりは・・・」

 

「そういうことだ。諦めるんだな」

 

俺はツカツカ歩きだす。

 

「そうじゃない・・・」

 

アセリアの声に歩みを止めてしまう。

 

 

「きっと・・・その人は私に大切なものをくれた。

ユート・・・その名前を言うだけですごく温かい気持ちになる。だから・・・私は、その人と一緒にいたい」

 

 

「アセリア・・・」

 

「私も同じ気持ちです」

 

「エスペリアまで・・・」

 

「オルファも!」

 

「手前も何か運命を感じます。行かなければいけない・・・。決して、軽い気持ちではありません」

 

「アスナ・・・お願い、聞かせて」

 

「オレ達は、知る必要があると思うぜ?」

 

「ええ。この気持ちに整理をつけるために」

 

「・・・はぁ」

 

俺は手を顔にあててしまう。

もう・・・どうにでもなれ。

こういう雰囲気が大嫌いだ。

 

「わかったよ・・・とりあえずエスペリア」

 

「はい?」

 

「お茶の用意をしてくれ。なるべくたくさんな。長い話になるから」

 

「あ、はい!」

 

 

 

 

「さてと・・・まずは、お茶を一口飲んでくれ。落ち着けるためだ」

 

全員が軽くお茶を飲む。

それを見届けてから、一息おいて俺は話しだした。

 

「まず・・・ユウト、高嶺悠人という人がどういう人なのかから説明するよ」

 

「ん・・・」

 

 

「アイツは、ハイペリア・・・日本からきた、この世界でいうエトランジェだ。

そいつは、光陰と今日子、瞬・・・佳織ちゃんを巻き込んで、この世界にやってきた」

 

 

「ってことは・・・」

 

「ああ。ユウトは高嶺佳織の義理の兄だ。ユウトは両親を一度亡くしているからな」

 

「やっぱり・・・そうなんだ・・・」

 

「つまり!光陰と今日子の幼なじみでもある」

 

「そうだよな。佳織ちゃんの兄貴なら・・・」

 

「んで、ユウトはラキオスで半強制的に求めを持って戦わされ、まず北方五国を統一した」

 

「となると・・・」

 

「次は、マロリガン。そこで、ユウトは空虚の精神を断ち切って、今日子を助けた」

 

「え?」

 

「今日子を助けたのは、そのユウトってやつなのか・・・」

 

「ああ。随分必死だったそうだ。よっぽど今日子を殺したくなかったんだろうな」

 

なんだか照れてしまう今日子。

 

「んで・・・マロリガンとおわったら、次はいよいよシュンの帝国。そこで、ユウトはシュンを倒すも、求めを砕かれた」

 

「求めを!?」

 

「じゃぁ・・・佳織ちゃんのあの破片はそのときの・・・」

 

 

「んで、その時シュンはエターナルになった。そこへ現われたエターナルがトキミ。

こいつはユウトを遥か昔からストーカーしてた女で、今はユウトの恋人・・・じゃないかもしれないけど。

イマイチ怪しいんだよな。それでユウトは助かった。もちろん、この時みんなはコテンパンにやられたはずだ」

 

 

「あぁ・・・歯がたたなかったのを覚えてるさ」

 

俺は一口お茶を飲む。

 

 

「んで、神剣を砕かれたユウトはみんなを・・・

ファンタズマゴリアを救うために、エターナルになって新しい神剣を得ることを決意した・・・」

 

「一人で・・・?」

 

「そうだ。まぁ・・・みんなはユウトの事を大好きで、ユウトもみんなのことを優劣とか考えないで好きだったみたいだしな。

だからこそ、絶対に守りたかったんだろうな・・・」

 

「わ、私達が・・・!?」

 

派手に赤面するエスペリア。

それが・・・好きだったって証拠なんだよ。

 

「アセリアが言ってたろ?名前を言うだけで温かい・・・って。あれは、当然なんだよ」

 

「・・・え?」

 

「記憶がなくなっても、培われた感情は消えない。

それが・・・強ければ強いほどな。ま・・・そういう事もひっくるめて、エターナルになるのは大変なんだよ」

 

「・・・」

 

「んで、エターナルになって戻ってきたユウトはシュンを倒した。めでたしめでたし。

その後、トキミと・・・まぁプラスαと異世界へ・・・ってわけ」

 

「・・・そうでしたか」

 

なんだか、納得という顔をしているみんな。

ラクセルとかいうヤツがいたらしいが、そこらは端折る。

 

「んで、話を戻すけど・・・エターナルになるのはダメだ」

 

「え・・・?」

 

 

「この中でエターナルになれるのは・・・アセリア、エスペリア、オルファ、ウルカ、今日子・・・この五人だ。

だけど・・・今エターナルになるといきなり苛酷な戦いになる。

俺の見立てでは、即戦力になるのはオルファ・・・ギリで今日子とウルカだ。

アセリアとエスペリアは・・・悪いが、死ぬためにエターナルになるようなものだと思う。

強い力を持つことはできる・・・でも、今のエターナル社会では生きていけない。

エターナルの戦いにすぐ順応できないヤツは生き残れない・・・そんな戦いをやってるんだ。今は」

 

 

「・・・」

 

 

「だから、俺は全員エターナルになるのは反対だ。エターナルはエターナルに任せておくんだ。

それに、ユウトだってみんなに来てもらうことを望んでない」

 

 

「・・・それでも」

 

「・・・」

 

「たとえ、死ににいくようなものだとしても・・・ユートが望んでいなくても、私はエターナルになりたい。ユートと一緒にいたい」

 

「・・・はぁ」

 

俺はため息をつく。

 

(やっぱり・・・こうなるんだよなぁ・・・)

 

あのユウトを見たときから感じていた。

コイツは、そういう魅力がある・・・一種のカリスマとも言えるが、ちょっと別の物。

力になりたいと思わせるような人柄・・・少し違うな。

友人として欲しいタイプ、そういうことだ。

 

「どうしても・・・か?」

 

「ん・・・」

 

「当然です」

 

「オルファもいく!」

 

「手前も・・・ユウト殿を追い掛けたいと思います」

 

 

 

「私は・・・」

 

「今日子、おまえは今答えるな」

 

「え・・・?」

 

「ワケは・・・わかるだろう?」

 

俺はチラッと光陰を見る。

 

「・・・ありがと」

「それに、ヨーティアが蓋をこじ開ける物を発明してくれないと神剣に会いにいけないしな。じゃ、解散解散!」

 

俺はパンパンと手を鳴らして散らせたのだった・・・。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「光陰・・・」

「・・・どうするんだ?今日子」

 

光陰は今日子を真っすぐ見つめる。

 

「・・・あたしは」

「ああ・・・」

 

「・・・あたしは、ユウを追い掛けたい!それで・・・一発殴ってやりたい!」

「・・・はぁ?」

 

「だって、話聞いてて・・・一人でなんでも抱え込むし、いつも自分を殺してるし・・・。

きっと、そんなユウにはあたしが必要だと思うの。あたし・・・岬今日子っていう人間が。きっと・・・これは自惚れじゃないと思う」

 

「・・・」

「だから・・・ごめん、光陰。あたし・・・ユウを追い掛ける」

「・・・行ってこいよ」

「え・・・?」

 

「俺はおまえが本当にやりたいことを止めてまで一緒にいたくはないし、そんな今日子に惚れたわけでもねぇ。

岬今日子という、元気で明るくてハリセンでぶっ叩いて・・・そういう今日子が好きなんだよ。

だから・・・行ってこい。そして・・・遠慮なくユウトを叩いてこい」

 

 

「・・・うん!いってくる!!」