……………………………………………………………………………………………………………
「アスナ様〜?」
「ん?」
突然こども達に話し掛けられた。
確か・・・ネリー、シアー、オルファの三人組だ。
「どうしたんだ?」
「遊ぼ?」
「遊ぶ・・・か。そうだな。よし、いこう!」
「やった〜!」
「じゃあじゃあ、鬼ごっこがいい!」
「鬼ごっこ・・・って」
「カオリに教わったんだ!あ、カオリっていうのはね?」
「オルファ、説明してくれなくていい。わかってるから、さ」
「え?アスナお兄ちゃん、カオリの事知ってるの!?」
「佳織ちゃんとは・・・そうだな。実際に会ったことはないんだけどさ」
「そうなんだ〜」
「それより、鬼ごっこだろ?」
「うん!じゃぁ、アスナ様が鬼〜」
「おに〜」
「ふふ、俺から逃げられると思うなよ?」
「じゃぁ、五分たったら探してね!範囲は、このスピリットの館!」
ダダダダッと去っていく三人。
(・・・まァ鬼ごっことかくれんぼの勘違いくらいは許してやるか)
俺はおとなしく食卓で五分待つことにした・・・。
「何やってるんだ?」
「あぁ、光陰と今日子」
「どうしたの?食卓でじっとしてるなんて」
「ん・・・今、オルファ達とおにごっこ中」
「なに!?なんでそんな楽しいイベントに俺を混ぜないんだ!?というか・・・鬼ごっことかくれんぼは違うぞ」
光陰がいきなりくってかかってくる。
「光陰」
「ん?」
俺は光陰の腕を掴んで、振りかぶる。
オーラフォトンを展開させた今日子が外へのドアをあけた。
「一度死んでこぉぉぉい!!!」
バシュゥゥッ!!!
「うおぉぉぉ!?」
光陰がドアを通って外へ飛んでいく。
そこに、追い掛けるように今日子のライトニングブラストが通った。
ピカァッ!!
ズガズガガアァァアァンッ!!!
「さて、探しはじめるか」
俺はまずキッチンに入る。
カチャカチャ・・・
ひとつずつ棚を開けていく。
「いないな・・・」
俺は最後に、大きな鍋とかが入っている戸棚をあける。
そこには、鍋が並んでいるだけ。
「・・・次いこう」
俺がトビラをバタンと閉めた。
俺は次へいこうと歩きだす。
「・・・まさかな」
俺はすかさず戻りもう一度開ける。
「・・・」
俺はズルズルと鍋を引き摺り出す。
異様に重たい。
まさかと思って俺はフタをあけた。
「あ・・・」
「オルファみーっけ!」
なんということでしょう。
あのオルファが大きな鍋に入っているではありませんか。
「・・・アフビフォだな」
「え?」
「いや、なんでもない。よし、次いこう」
「うん!」
オルファがくっついてくる。
俺は次に風呂場を探す。
キョロキョロと探す。
(ちっ・・・今はだれも入っていないのか)
そうすれば・・・
ガラガラ!!
「きゃぁ!!」
「ち、違うんだ!ごめん!かくれんぼしてて!」
「いいから出ていって!!」
「みたいなハプニングがあったのになぁ」
「アスナお兄ちゃん。一人でなにやってるの?」
「いや、何、男の妄想ってやつさ。さて・・・」
ガラガラ!!
「・・・うん?」
よく目をこらすと、ブクブクと気泡が・・・。
「・・・あ」
俺は思いついて釣り竿をもってくる。
エサはお菓子。
俺はそぉっと風呂の、気泡がたっているところにエサを入れていく。
グッ!
突然竿がひっぱられた!
すごい力だ!
「負けるかぁあぁぁっ!!」
これこそ釣りの醍醐味。
俺はぐぃぃぃいっと竿をひっぱる!
ザパアァァァッ!!!
「釣れたあぁぁ!!」
「あぁぁぁぁ!!」
ビチビチと跳ねるシアー。
「うぅ・・・痛いよぉ・・・」
あまり痛くないように改造した釣り針に、ひかっかって痛めたところをさするシアー。
「ごめんな。ホラ」
俺はオーラフォトンを展開して傷を治してやる。
「いやぁ、すごいフィッシングだった」
「シアーすごかったよ!?こう、ザパァァンッ!って感じで」
オルファが興奮しながらジェスチャーをつけてシアーに伝える。
「というか、風呂に入ってきたお菓子を口で食べるなんてシアーもシアーだ」
「だって・・・おいしそうだったんだもん」
俺は濡れているシアーにタオルをかけてやる。
「脱衣所で着替えてきな。待ってるから」
「・・・うん!」
「さて、後はネリーだけだな」
「ネリーどこだろう?」
「だろう〜?」
「見当はついてる」
あのネリーのことだ。
きっと・・・くーるだとか言って、あそこにいるはずだ。
あのくーるを根本的に間違ってるヤツはなんとかならないのかねぇ。
俺は再びキッチンに入る。
迷わず、冷凍庫みたいなところを開ける。
ゴトッ!!
「・・・見付けた」
ブルブル固まっているネリーが落ちた。
「これはくーるっつうよりフリーズって感じだな」
「オルファ、一発かましてくれ」
「え?いいの?」
「大丈夫・・・ヒートフロアを手加減してな?」
「うん!」
ドガァアァッ!!!
オルファの魔法で復活したネリー。
「さぁて・・・じゃ、次は最初にみつかった・・・」
カーンカーンカーンッ!!!
突然鐘がなる。
「敵襲!?」
「アスナお兄ちゃん!続きは後でね!?」
ダダダッといそいで出ていく三人。
さすがはシュンとの戦いを勝っただけのことはある。
俺はキッチンで軽食をつくり、ハーブティーを煎れて午後のうららかなひとときを過ごすことに決めた・・・。
パキッ!!
コップが割れた。
「・・・」
俺は新星を持って立ち上がる。
イヤな予感がする。
俺は急いでオルファ達を追いかけた!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ズゴォォオォッッ!!!!
突然爆発し、地面を吹き飛ばす。
「な、なにアレ!?」
3人の少女が見た物。
それは丸い形をした物・・・。
スピリットを戦わせなくなったことにより生まれた科学の産物・・・。
爆弾だった。
魔法と違い、戦い方がわからない3人はオロオロするばかりだった。
「ど、どーするの!?」
「なんとかしなくちゃ・・・」
「セリアお姉ちゃん達が来てくれるよ!それまでがんばろっ!!」
だが・・・3人は知らなかった。
同時に別の所で起きたテロに、セリア達が行っていることを。
カランッ・・・!
「え・・・?」
ボガァアァアァッッ!!!
「きゃぁぁあぁッ!!!」
「シアーッ!!!」
「大丈夫!?」
「熱い・・・熱いよぉ・・・っ!」
シアーの足はやけただれ、腕は吹き飛んでいた。
息が荒く、熱い熱いとうわ言のように呟き続ける。
「許さないんだから・・・っ!!覚悟っ!!」
「ダメッ!ネリーっ!!行っちゃダメっ!!」
オルファの静止も聞かず、飛び出して行くネリー。
ボガァァアアァッ!!!
そこに、2つ目の爆弾が落ちた。
ズザァアァァアッ!!!!
ネリーが吹き飛ばされてきた。
ほとんどが焼け焦げて、苦しそうだ。
「ネリーッ!!」
「はぁ・・・はぁ・・・」
「どうすればいいの・・・?誰か・・・」
スッ・・・
「あ・・・っ!」
オルファの顔が恐怖で歪む。
ガシッ!!!
ネリーを踏みつけるテロリスト。
「たかだかスピリットが人間に歯向かってんじゃねぇぞこのやろう」
今更時代錯誤なセリフを吐く。
だが、テロリストにとっては当り前なのだろう。
ザッ!!
「痛ッ・・・!離してっ!!」
オルファの髪を掴み持ち上げる。
「おーおー、いきがっちゃって。そういうヤツを殺すのが俺は大好きさ」
「っ・・・!」
「俺達はこんな不便な生活はいらねぇ。絶対にあの頃の生活を取り戻してやる」
『おーおー、面白い事やってるねぇ?俺も混ぜてくれないかな?』
「・・・アスナお兄ちゃ・・・?」
「なんだお前は!?」
「そーさねー・・・ここは『貴様らに名乗る名前はないっ!!』とでも言うか」
「なんだ・・・?邪魔すんのかよ?」
「勝利のために手段を選ばぬ下劣な輩よ。その行いを恥と知れ。人それを・・・『外道』と言うっ!!」
ビシッ!
人差し指でテロリストを指す。
「生意気いいやがって・・・!」
「今日の俺は午後のうららかなひとときを邪魔されて腹たってんだ。五体満足で帰れると思うなよ・・・?三下ぁッ!!!」
「やれるもんならやってみやがれ・・・!」
カラッ!!
小さい塊を投げつけてくる。
「アスナお兄ちゃん!気をつけて・・・っ!!」
「そんなアンティークボムで俺を倒そうってか?よいっと!」
俺は衝撃を与えないように掴む。
「返す」
スッ!
俺は爆弾をすべて投げ返す。
「げっ・・・!」
しまった!オルファとかいるじゃねぇか!!
「守れ新星っ!俺のケツをぬぐえ!!」
{てめっ!そういう言い方しかできねーのか!!貸しにしておくからなっ!!}
ボガァアァァアッ!!!
「ぎゃぁぁあっ!!!」
テロリストの悲鳴がエコーする。
「ふい・・・危ない危ない」
俺は急いでオルファ達にかけよる。
「えと・・・こうだ」
俺はオーラフォトンを展開した。
マナが活性化し、酷い怪我をした二人を癒していく・・・。
「やっぱ難しいわ。一応応急処置はしたから、エスペリアんとこでもいくか」
「うんっ!助けてくれてありがとう♪ネリーもシアーも助かって・・・ほんと恐かったよぉ・・・」
「いや、なに・・・お礼はキス・・・じゃなくて何にしよーか」
いつものくせでキスと言ってしまった。
う〜ん・・・何がいいかな〜・・・。
と考えていると、ぐいっと体が引っ張られた。
「おっ・・・?」
頬に温かな感触。
「これでいいの?」
「・・・ま、いっか」
俺はそのままネリーとシアーを連れていった。
そして・・・
光陰に怒られた。
あれはむしろやつあたりだったな。
「お、セリアにハリオンじゃん」
俺が庭で優雅に休んでいると二人が通りかかった。
「あ、アスナ様」
「どう?セリアとハリオンも一緒に」
「せっかくですけど〜、これから夕飯の買い出しに行かないといけないんですよ〜」
間延びした声。
むぅ・・・。
この人の話術はすごい。下手すれば死ぬまで続くかもな。
「そうなんだ?残念。ここの食材使って試しにお菓子作ったんだけど」
俺はパクッとまた一つお菓子を口に運ぶ。
確かハイペリアの八つ橋とかいうお菓子だ。
「じゃぁハリオン、行きま・・・」
ズルズル・・・
セリアは見事にハリオンに引きずられていた。
ハイロゥまで展開してる。
「・・・ハリオン?何をしてるの?」
「少しくらい遅れても平気ですよ〜?」
「ちょ、ハリオン!」
「お、そーだろそーだろ?はいそこへ」
俺はお菓子を並べてある向こう側を指す。
ハリオンは満面の笑顔で座り、対照的にセリアは憮然とした態度で座った。
「はぁ・・・おいしいです〜♪」
八つ橋とやらを食べてうっとりしているハリオン。
嗚呼・・・間延び度200%限界突破その他あと2,3個修飾語がつきそうだ。
「・・・」
「ちょっとハリオン・・・もう食べてるの!?」
「いいんだよセリア。はい、これセリアの分」
俺はセリアにお茶と八つ橋を渡す。
それをじっと見つめて、しばらくしてから手にとった。
「くく・・・セリア動物みたいだな!」
俺はこらえきれずに笑ってしまう。
「なっ・・・!」
「なんか、毒がないかどうか見定めしてる動物みたいだったよ」
「っ・・・そんなつもりでは・・・」
気を悪くしたと思ったのか、かしこまるセリア。
「いーんだよ別に。セリアがいるからきちっとするし。だけどさ、セリアもたまには肩の力を抜く時があってもいーんじゃない?」
「・・・もしかして、そのためにコレを?」
じっと俺の瞳を射抜くセリア。
う・・・その綺麗な顔で見つめないで・・・。
ってなに考えてんだ俺。
「そんなわけないだろ?コレはあくまで俺の気晴らし。
あ〜、もしかしてセリアちゃんは何か期待しちゃったりなんかしてるのかな〜?」
「っ!き、期待なんかしてないわ!」
「おっ!やったーっ!!」
作戦成功!!
「え?え?」
おろおろするセリア。
これが人をハメた時の快感だよなぁ♪
「実はハリオンにさ、せっかく平和がきたってのにセリアだけ楽しんだ事がないって聞いてさ」
「・・・」
「それで、セリアにタメ口をさせようってことになって!その名も『愛と勇気だけが友達じゃ寂しいよ』作戦!!」
「・・・」
「あ、怒った?」
セリアがずっと黙っている。
すると、突然セリアが噴き出した。
「あはは・・・っ!なに?その作戦名!?」
「なっ!笑う事ないだろ!?」
「あー、スッキリした。久しぶりに笑った気がします」
「いや、いちいちです、ます口調に戻さないでいいから。せっかくの作戦が無意味になっちまう」
「・・・このお菓子もう一つもらっていいかしら?」
俺には答えず八つ橋をねだるセリア。
「・・・待て。そーだなー。セリア、君は友人に心配をかけたあげく、俺の作戦名をばかにした。これは重大な罪だ」
「え?」
「と、いうわけで♪俺にキスしたらもう一個八つ橋食べてもい〜ぞ〜♪」
「なっ!!そんなことできないわよ!!」
「なら八つ橋は諦めるんだな。あー、んまいんまい。な?ハリオン?」
「はい〜♪」
さっきからずっと傍観してたハリオンに振る。
見ると八つ橋がかなり減っている。
傍観してる間・・・ずっと食べてたなハリオン・・・。
というわけで八つ橋の残りはかなり少ない。
「さぁどうする〜♪」
「ぐっ・・・卑怯者・・・!」
「キスのためなら俺はどんなことだってしよう!特にセリアみたいな綺麗な人とのキスだったらな!」
「っ・・・!」
「あ、照れた?照れてるね〜?」
頬を真っ赤に染めちゃって。
可愛いなぁもう!
「残り2つ!さぁどうするセリア〜?」
「・・・わ、わかったわよ!」
ぐいっ!
ボギャッ!!!
「うぎゃっ!!・・・」
無理やり首を持ってかれた。
一瞬で意識が飛ぶ・・・。
頬にあたった感触は悪くなかった。
――――はずなのに、起きたら俺はそれを覚えてなかった・・・。
「不思議よね〜・・・」
「いきなりなんだなんの脈絡もナシに?」
今日子と光陰が庭を眺めながらつぶやく。
庭にはアスナとヒミカとナナルゥとファーレーンが気晴らしなのか、稽古をしていた。
いつものヒミカならそりゃもう死に物狂いでやり、ナナルゥとファーレーンは命令をこなすだけなのに
アスナとの稽古では微笑みさえ見せた。しかも、あの極度のあがり症のファーレーンが仮面ナシでだ。
だが、稽古自体の効率は無駄がなく、コレ以上ないというくらいの成果をあげている。
「あれ見りゃわかるでしょ?光陰も」
「アスナか?んまぁ・・・そうだな。不思議なヤツっつったらそうだな」
「小さい子達だけでなく好かれるし、あのセリアとかまでよ?」
「う〜ん・・・掴み所がないんだよな。だから、どうしてあんなに人の心に温かさをくれるのかわからないってか?」
「そうなのよ!」
ブンブンと大きく手を振るアスナ。
どうやらこっちに気づいたみたいだ。
今日子は軽く返す。今日子にしては珍しい返し方だ。
「別に怪しいわけじゃないんだけどね・・・」
「俺は信用してるけどな。それに今更この世界に何かしようっていうつもりもないみたいだし」
「そりゃ・・・そうなんだけど」
「ホラ、思い出せよ、アレ。アスナが資料室にいたときのこと」
「わかってるわよ・・・」
………………………………………………………………………………………………………………
「ふぅん・・・これが永遠戦争ねぇ・・・」
「どうよ?」
「光陰か。うん・・・まぁ・・・ね」
いいよどむアスナ。
「特にスピリット達の扱い酷いモンだよな・・・」
「街を、国を、人間を守るタメにその命を散らせて行くだけの存在・・・か」
「これも作戦のウチだったなんて、信じられないぜ。よくこんなことするよな」
「・・・そうだな。ところで、これを書いたのは誰だ?」
「ん?それ?・・・俺だけど」
「光陰・・・か。お前がどんなタイプかわかった気がするよ」
「ほほぅ・・・ぜひ、そのタイプとやらを聞きたいんだが」
「大切な物のためには、全力で戦い躊躇わない。だけど、そうしてるのはただの強がりで実際はそこまで強くない。そんなタイプ」
「・・・」
意外とあたっている。
それがわかるから、光陰は何も言わない。
「俺だったら、記録に『こんなに悲しすぎることはないだろう』とか書かないからな」
「・・・どういう意味だ?」
「う〜ん・・・今更言ってもアレだけどさ。俺は、スピリットを酷く扱った人間を非難する気にはなれないよ」
「どうしてだ?」
「俺は、他人を非難するくらいだったら、その時間さえスピリットを守るために戦ってたよ。
もちろん、それは相手のスピリットを殺すことになるけどな」
「・・・」
「いくら訴えても、俺やお前みたいな存在じゃ、当時はスピリットと同じ扱いだろ?
自分の立場をわきまえ、己のなすべきことを尽くす。それ以外はそれ以外の担当に任せる。それだけさ」
「・・・お前って結構現実主義者か?」
「道具でもいい。いつ消えてもいい存在でもいい。でも、俺にとってはそうでなければ・・・
俺はソイツらを死なせないためだけに戦った。それを他人に押しつけようなんて思わないよ」
「それって、つまりはスピリットは道具的な扱いのままでも良かった・・・ってことだよな?」
「光陰、冷静に装うのはやめたらどうだ?」
「・・・じゃぁ言わせてもらう」
グイッ!
アスナの胸倉を掴み、軽々と持ち上げる。
「レスティーナや俺達がしたことは、無意味だってことだよな?お前がいいたのは!」
「・・・無意味じゃないし、今のこの世界を否定する気もないよ。だって、それがこの世界の選んだことだから」
「じゃぁなんでそんなことを言う?」
「男だったらその生き様で語れ。そういうことだよ」
「・・・?」
「誰かに『この子達にそんな扱いをしないでください!』と訴えている間に『この子達』はどんどん死んでいく。
なら、俺なら『この子達』を守ることに専念した、そう言ったんだ。戦争が終わればいくらでも時間はあったんだからな」
「・・・」
「俺はこの世界を否定するつもりもないし、お前らのしたことを否定する気もない。
でも・・・『人は何かの犠牲なしには生きられない』っていうのを否定したがる人間の性ってヤツがどうも嫌いなんだ」
「・・・」
「スピリットがどんな酷い扱いを受けようと、生きぬかなくちゃ人間と共存するチャンスはまわってこない。
そのチャンスを与えるために、戦争を終わらせる事だけに集中すりゃあ良かったんじゃねぇか?そう言いたかったんだ」
「・・・なるほどな」
光陰が胸倉から手を離す。
「住民から酷い扱いを受けても、その傷を癒すことはできる。だけど、死んだら終わり。
ま〜なんだ、こういう俺も結構大切な物を両手からこぼしてきたからな」
「そうなのか?」
「イヤなもんだぜ?大切な物が両手から落ちていく瞬間は。まるで自分が真っ二つに斬られたかのように動けなくなるんだ。
そして・・・気づくんだ。それがどれだけ大切な物だったかってね。ホンット・・・イヤになる」
「・・・」
「だから、俺はこの世界をどうこうするつもりはないよ。だけど、このままここにいるってつもりもないし。
アイツらを・・・死なせるつもりもねーしな」
だから・・・早く戻らないと。
アスナはそう呟く。
そこで光陰は気づいた。
あのアスナが・・・本当はすごく焦っていることに。
自分がどれだけバカな事で試してしまったのか・・・。