…………………………………………………………………………………………………………………………………
「・・・あちゃぁ」
「まずいな・・・」
「逆境にこそ強さが求められる・・・」
「フォルク、今まさにその逆境・・・もといピンチ」
「カナリアもあまり逃避しない」
「全く・・・ピーチクパーチク烏合の衆なんですから」
おれ達が門を出ると、そこには数えきれない程のロウがいた。
ハッキリ言って・・・大ピンチ。
すると、ある一点から人がやってきた。
気迫が他のロウと全然違う・・・。
出てきたのは・・・
「タキオス・・・?」
「ユウトか・・・また会ったな」
黒き刃のタキオスだった。
相変わらずバカでかい剣を持っている。
「悪いが・・・ここで死んでもらうぞ」
タキオスは言葉少なく剣を構えた。
それと同時に、おれ達を取り囲むロウも一斉に剣を持つ。
「ユウト」
「ん?」
俺は小さい声でユウトに言う。
「俺がタキオスと戦う。おまえら全員で周りのロウを蹴散らしてくれ」
「バカ言うな。タキオスの相手は俺がする。おまえじゃ荷が重すぎる」
「いや・・・あいつ相手なら、きっと答えが見つかると思うんだ・・・」
「答え・・・?」
ユウトが怪訝な顔をする。
「だから・・・頼む。俺を守ろうとしなくていい。ユウト・・・一つだけ教えておく」
「ん?」
「自分にわかる範囲だけで相手の力を定めようとするな。これから、おれ達の予想を大幅に越えたロウも出てくると思う。
その時、パニックを起こさないためにも・・・そういう訓練をしておけ。
聖賢を持っているくせに、何でも自分の尺度で計ろうとするのはやめたほうがいい。いいな?」
「・・・ああ。わかった」
少し気に食わないようだが、それも仕方ない。
今後のユウトのためだ。
「タキオス・・・俺が相手するよ」
「!!おぬしは!!」
「え?タキオスが驚いてる・・・?」
「そんなにすごいヤツなのかアスナは?」
五人が怪訝な顔をするも、ロウとの戦闘が始まりそれどころではなくなる・・・。
「しかし・・・ユウキなんていう、なりたてのエターナルの配下になるなんて、おまえも落ちたねぇ」
俺はヘラヘラとタキオスに話し掛ける。
「ふっ・・・ユウキは俺を倒したヤツだからな」
「・・・なるほどね。んじゃぁ・・・今度は俺に寝返ってもらおうかな?」
暗に、おまえを倒す、と言う。
「ふふ・・・おまえとは一度でいいから本気で剣を交えてみたかったものだ。
知っていたか?俺がエターナルになって、まず憧れたのがおまえだったと」
「どうせなら綺麗な女性が良かったけど」
タキオスがフリフリたくさんつけた、いかにもな服を着てるのを想像してしまった・・・。
うぇぇ・・・泣きそう。
「ふふ・・・そう言うな。では・・・いくぞ!」
「一つ・・・いいか?」
俺はタキオスに質問する。
「なんだ?」
「人を斬る時・・・どう思う?」
「血が煮えたぎる・・・というのがしっくりくる」
「・・・そっか。俺と同じ・・・か」
「そうだな」
「なら・・・なんでおまえはそれを抑えられるんだ?」
「・・・強き者と戦う喜びが勝る・・・だからだ」
「・・・なるほどな。少しだけ・・・俺の血に勝てる気がするよ」
やっぱり・・・タキオスを相手にしてよかったかもしれない。
何かに支配されそうになったら・・・頼りになるのは自分の信念だけ・・・か。
「いくぞ!アスナッ!!」
「タキオスッ!俺はおまえを倒して・・・勝ってみせる!!いくぞ新星!!」
{ああ!支配されるなよ!?}
「心配するな・・・!今の俺なら、きっと血に勝てる気がする!今は・・・アイツら五人を守るために戦ってやるさ!」
俺はズバァッと新星を引き抜く。
白い翼から出た羽が宙に舞う。
「いくぞっ!空間を斬る!!」
タキオスの手から黒い球体が放たれた。
「でやあぁっ!」
俺は新星でそれを切り裂く。
「当たってやれるか!」
俺は一瞬でタキオスの懐に入る!
そのまま剣を跳ね上げた!
バシュッ!
「ちっ・・・軽かったか」
「甘いわっ!」
ギィィンッ!
タキオスの無我を新星で止める。
「くっ・・・重い・・・!」
質量だけではない。
腕力、速度、全てが剣にかかって俺を襲う。
「ぐぬぅぅ・・・!」
「ちっ・・・」
スッ・・・
俺は剣を斜めにして地面へ無我を流す。
バゴォオッ!
地面が衝撃でえぐれた。
「そこだっ!!」
「遅いぞアスナッ!!」
シュッ・・・!!
「っ!?」
ズブゥゥゥゥゥッッ!!!
気が付けば、無我が俺の脇腹を捉えていた。
ズザァァアァッ!
そのまま吹き飛ばされ地面を転がる・・・。
「ぐっ・・・いつつ・・・」
脇腹からどんどん血が流れ、マナへと還っていく・・・。
体が少しちぢこまってしまう。
「うぅおおぉぉおっ!!」
タキオスがオーラフォトンを展開した。
それはタキオスの肉体をさらに強靭な物へと変えていく・・・。
このままでは、今度斬られたら体が切断される!
「くそっ・・・!マナよ、オーラフォトンへと変われ!一気に決める・・・っ!」
俺はすかさずオーラフォトンを展開させようとマナを集める。
{アスナッ!!その技は危険だ!血に飲み込まれるぞ!?}
途端に新星から警告が来る。
だけど・・・
「タキオスに勝つにはこれしかない!それに・・・いつまでも血から逃げてるわけにはいかない!」
俺は地面にオーラフォトンを展開させた。
「我に究極の星を与えよ!ミニスタアァアァッ!!」
グォォオオォォッ!!
オーラフォトンが集結し、俺の体に爆発的な力を与えていく。
「ぐっ・・・うぉぉ!」
突然体が疼きだす。
それは、圧倒的な殺意。
体を衝動的に動かそうとする。
{アスナッ!耐えろ!ここで飲み込まれるな!!}
「当たり前だ・・・!!もぅ・・・無意味な殺しはしないって・・・決めたんだ!!」
スパアァアァンッ!!
光が弾ける。
その刹那、俺の体から疼きが消えた。
「いくぞタキオスッ!」
「こい!俺はただでは倒れんぞ!!」
「耐えられるなら・・・耐えてみせやがれ!!マナよ!我に従い、敵を撃て!!オーラフォトンスラアァァアァッシュッ!!!」
俺の振った新星から次々と巨大なオーラフォトンの刃が飛んでいく!
バシバシバシィイィィッ!!
それはタキオスの絶対防御壁に当たって砕け消える。
だが・・・
バリィィイィッ!!
「ぬっ・・・!?うぉぉおぉぉっ!!」
防御壁が崩れ、次々と巨大な刃がタキオスを切り刻む!
バシュッ!!
ズバアァアァッ!!
腕が落ち、足がもげ、タキオスの首が吹っ飛んだ!
「ハアァアァッ!!」
俺はジャンプして助走をつけ、タキオスを縦に切り裂く!
「トドメッ!!!!」
ズバアァアァッ!!
そのまま懐から横薙ぎにする!
ザパァアァッ・・・!
タキオスから鮮血が吹き出し、俺の新星と服を染める・・・。
「はぁあぁっ!!」
ザパァアァッ!!
聖賢を振りぬき、ロウを切り裂く。
キィンッ!
瞬時に体を反転させ、後方から来る敵の攻撃を防ぐ。
「ぐっ・・・」
聖賢を傾け剣を流し、その隙に聖賢を突き刺す。
「はぁ・・・はぁ・・・」
息を整える。
何体斬っただろうか?
数えきれない程・・・なのに、敵の陣形はまだ崩れない。
「ユウトッ!!」
フォルクの声ではっとしたときには遅かった。
「!?」
ザシュゥッ!!
隙を見せた途端、ロウがユウトの左腕を切り裂く!
「ぐああぁっ!!」
激痛につい倒れてしまうユウト。
ロウがトドメを刺そうと振りかぶる。
「ぐっ・・・!くそっ!」
ズガァアァッ!!
ロウの剣は地面を叩いた。
ユウトは転がり立ち上がる。
「くっ・・・片手じゃ使えない・・・!?聖賢!もっと力をかしてくれ!」
{むちゃを言うな。左腕が治る程回復はできん}
「くっ・・・!」
ユウトはついみんなを見る。
フォルクは傷こそ負っていないようだが、動きがだんだんと鈍くなってきている。
トキミは誰よりも多く相手をしている。
ヒカリは得意な神剣魔法が唱えられないせいで苦戦している。
カナリアも涼しい顔ができなくなっていた。
「くそっ・・・!」
{ユウトよ。苛立つな!冷静さを失い、死ぬだけだ}
「でも・・・!どうしろって・・・!」
「ぐっ・・・!」
ボタボタ・・・
さっき食らった左足の傷が深い。
血がとまらず、どんどん力が抜けていく・・・。
「くっ・・・超越、どうすればよい!?」
{どうしようもねぇんじゃねぇ?もうこりゃダメだわ}
いたっていい加減かつ諦めやすい超越に頼った自分がバカだったと思い、なんとか手はないかと考え直す。
キィンッ!!
その間にもロウが絶え間なく攻撃してくる。
流すだけで精一杯だ。
「どうすれば・・・!?」
{もっと気張れアホッ!}
いきなり栄光に怒鳴られる。
「目一杯気張ってるよ栄光!」
キィンッキインッ!!
バシュバシィッ!!
二人の剣を同時に流し、振り戻して切り裂く!
その振りの速さはおそらく音速に近い。
ロウは驚いた顔を張りつけたまま消えていく・・・。
「ふぅ」
{気を抜くなっ!まだ敵はわんさかいるんだぞ!}
「少しは黙って!こっちだって大変なんだから!!」
たまらず怒鳴り返すヒカリ。
なんだかどっちが永遠神剣なんだかわからない。
「せいやぁあぁっ!!」
栄光を地面に叩きつけ、オーラフォトンの衝撃波を生み出す!
ドガガガガアァッ!!!
「ぐおぉあぁっ!?」
衝撃波を食らったロウは足がもげる。
そのままヒカリは追撃に入った!
「でやぁっ!」
{トドメだっ!!}
「栄光、私の台詞取らないでっ!!」
バシュゥッ!!
ロウの背中に突きささり、突き抜け地面に刺さる栄光。
マナへと還っていくロウ・・・。
「はぁ・・・はぁ・・・」
{休憩してる暇なんてないぞ!もっと全力でやれ!目、覚めてんのか!?}
「栄光うるさい!!全力でやってるし、目も覚めてるよ!」
「くっ・・・」
チッ!
ロウの剣がカナリアの頬をかする。
ブシュッ!
直線に傷ができ、血が流れだす。
「どうしたどうした?」
「うるさいわね・・・っ!せいやぁあぁっ!!」
「ぬ・・・?」
余裕だったロウの顔が不思議な顔に変わる。
その瞬間、ロウがマナへと還っていく・・・。
「疲れる・・・わね・・・はぁ・・・」
「そこだあぁあぁっ!!」
キィンッ!!
続けてやってくるロウの剣を背光で防ぐ。
「ていっ、てやぁあぁっ!!」
軽く上に弾き、その隙にロウを切り裂く。
ブシャァアァッ・・・!!
「はぁ・・・キリがないわね・・・!」
ズシャアアァッ!!
「なっ・・・ぐぅっ!?」
突然背中に激痛が走る。
熱を持ったように痛み、体が痙攣してしまう。
「トドメッ!!」
キィンッ!!
「甘いわっ!まだ・・・やれる!」
剣を外し、大きく態勢を崩したロウの隙にカナリアが背光を突き刺す!
ブシャァアアァッ!!
頬にかかる血・・・マナへと還っていくロウ・・・。
「くっ・・・痛っ・・・」
「せいっ!そこっ!はいっ!!」
3体同時に相手にする。
右のロウを切り裂いて、左のロウの剣をよけ、正面のロウを蹴る。
そのまま剣を左のロウへ持っていき切り裂き、正面のロウに投げ付けて突き刺す。
えぐるように抜き、3体はほぼ同時にマナへと還っていく・・・。
「はぁっ・・・!」
あのトキミでさえ息が荒い。
「どうしましょう・・・時詠」
{本当に・・・どうしようも・・・}
時詠でさえ諦め気味。
だけど・・・諦めたらそこで全てがおわってしまう。
「どうしたら・・・!?」
その時、全員の頭に声が響く。
『そのままで聞いてくれ。今から、新星の一番強い魔法を使う。
威力がすさまじいから、俺が指示した時に、指定したポイントまで逃げてきてくれ』
「なんだ・・・?アスナの声・・・?」
『みんなが俺のことを信頼してないのは、よぉく知ってる』
「っ!知ってたのか・・・?」
『でもよ・・・理由なんかなくてもいいからさぁっ!!一度でいいからさぁっ!!
俺のこと・・・おまえらの底力・・・信じてみろよっ!!俺はお前らだけは裏切らないからさぁっ!!』
「・・・なんだかわかんないけど」
ユウトは不思議と自分の体に力が入るのを感じた。
「やってみるか・・・アスナ!」
フォルクは超越を握り締めた。
「アスナ・・・うん、信じてみるよ・・・私自身の力、アスナの力・・・!」
{あと、俺の力もな!}
「そうだね、栄光」
ヒカリは笑って頷く。
「仕方ないですね・・・やりましょう。アスナを信じて・・・!」
{・・・そうね}
「ぇ?めずらしいわね、あなたが喋るなんて」
{・・・いいじゃない}
背光から、どこかこそばゆく温かい気持ちが流れこんでくる。
「・・・惚れたんでしょう?」
{ば、馬鹿な事言わないの!}
ふふっ、と笑って、背光を握り締めるカナリア。
「ふふっ・・・ローガスさんの見立てはまちがってなかったんですね」
{そうみたいね}
「やりましょう、時詠。まだ、未来はおわってません!」
{ええ!}
トキミは構えた。
「「「「「でやぁああぁっ!!!」」」」」
5人はロウ・エターナルに斬り掛かっていく・・・。
{アスナ、いいのか?あの技を使うには、俺とかなり精神を同調させることになるぞ?}
「いいんだ。俺はおまえなんかに乗っ取られはしないし、この状況を打破するためには必要だしな」
俺は新星を地面に突き刺した。
半径40メートルにもおよぶ巨大な魔法陣が展開される。
{・・・なら、もう何も言わない。やろう、アスナ}
「ああ!永遠神剣第三位『新星』の主として命ずる。
マナ・・・。
ハル・ミホケイノ、ワ、テスト、タルム・ホロゥ。ハル・ヤトロゥ、ワ、ワトル、セィン、エナロス、ナ、イスカ・テスト。
(マナよ、我のために大地を壊せ、この地に運命の星を落とせ)
ハル・ウテオム、ワ、ミホク、セィン、ラナロサート、ナ、イハーテス、セィン、ラナテス
(全ての敵に全滅者の破壊を与えろ)
ハル・ナスロゥ、ワ、ナナヨク、セィン、エラノマ、シンセイ!
(新星!終わりの輝きを解放しろ!!)
あ・・・間違えたかな?」
雰囲気を出すために聖ヨト語を使ってみたが、どうも正しかった気がしない。
やっぱり普通の言葉でいこう。
「いまこそその名の力を発揮せよっ!!!メテオフォトンッッ!!!」
キィィッ!!
魔法陣が赤く光りだした。
空に黒く厚い雲が現われる。
「今だ!みんなここまで逃げてこい!!」
ダダダダアァアァッ!
みんなが一斉にこっちに走ってくる。
その瞬間、空が十字に割れた!
ドゴォォオォォッ!!!
その十字の中心から、巨大なオーラフォトンの塊が落ちてくる!
ドガァアァァアァッ!!!
次々と落下し、その下にいたロウを消し飛ばしていく!
ズガァアァアァァッ!!!
ズバァァァァァンッ!!!!
最後に巨大な塊が落ちると、その場が衝撃波と、オーラフォトンの光に包まれた。
視界が真っ白になり、何も確認できない。
そのまま俺達は光の中へと吸いこまれていく・・・。
……………………………………………………………………………………………………………
「・・・はっ」
俺が目を覚ますと、そこはどこかの部屋だった。
「気が付いた?」
すぐ隣でヒカリが笑っている。
「ここは?」
「名前は知らない。ロウがいないみたいだし、少し休んでるトコ」
「あぁ・・・あれ?戦闘は?」
「何言ってるの?あれだけ派手・・・というか、危ない魔法使っておいて」
呆れた、とつぶやくヒカリ。
あれ?
(記憶がすっぽ抜けてるな・・・まいったこれは)
あの魔法はどうも精神を同調させすぎるためか、記憶が残らない。
「あんな魔法初めてみたよ」
「そりゃそうだ。俺だって滅多に使わないし」
「あれだけの威力ならね。ロウが次々消し飛んでた・・・うん、すごかった・・・」
ヒカリが少し悲しそうに思い出している。
それはそうか・・・。
命を奪ったことに変わりはないのだから。
その命はほとんど・・・現地人。
それをロウは調達とかいってかき集めては捨て駒のように・・・!
「でも、ね?昨日、みんながアスナを連れていく事、認めてくれたよ?」
「え?ホント?」
俺は握り締めていた右手を開く。
「うん。アスナがいないとダメだって言ってた」
「やったね。これでヒカリやカナリアと一緒にいられる!」
「え?私?」
「だって、お茶の約束したしさ!それに、せっかく知り合った女ともうお別れなんてイヤだったし」
「・・・はぁ。軽いんだから」
「そんなことないぞ!ヒカリは結構本気かも」
「そういうところが軽いって言ってるの!全く・・・」
「はは。さて、と・・・」
俺はベッドから立ち上がる。
「さっそくいくか」
「もういいの?」
「ああ。休んでる暇はないしな。体は万全だし、早くヒカリとお茶したいしな」
「またそれ・・・もぅ」
アハハと二人で笑う。
ドアを開けると、そこにはユウト達が待っていた。
「じゃぁ、いこうか!」
「おう!」
「これから、よろしくお願いする、アスナ」
「アスナさん、よろしくお願いしますね?」
「アスナ、しっかり頼むわ」
「任せておけって!きっとなんとかなるよ!昨日もなんとかなったしさ!気楽にいこう、気楽に」
俺は満面の笑顔でそう言って、門を開いた。
そして、そこへすぐに飛び込んだのだった・・・。
「本当だな?」
そう言ってユウトは聖賢を構えた。
俺は新星をおさめる。
「あぁ。おまえがもし、『突き』だけで俺に傷を負わせられたら、聖賢の力をもっと引き出す方法を教えてやる」
「うし・・・いくぞ!!」
ユウトが聖賢で突いてくる・・・。
事の発端は数分前。
稽古をつけてほしいと言ってきたので、面倒だと答えたら、せめてアドバイスでも。
ということになったのだ。
タッ!!
俺はバック転して避ける。
「せやっ!!」
シュッ!
ユウトは次に俺の足を目掛けて突くが、俺が足を広げたせいでからぶる。
「でやぁああああぁっ!!!」
ユウトは速さの限り連続で聖賢で俺を突く!
ぐねっ!
ぐねぐねぐね!!
俺は右に左にと腰を曲げ、オマケで手を頭の上であわせる。
まるでダンスのように避ける。
「うぉぉおぉお!!」
「ぬぅおおおぉ!?」
ユウトが腹目掛けて突いてきたので、俺はどこからか取り出したグラサンをかけて上体を仰け反らし避ける。
マトリ・・・いや。
「はぁ・・・はぁ・・・おまえは雑技団かよ・・・」
息を切らし、両手両膝を地面についているユウト。
WINNER!!!
カンカンカンカンッ!!!
「もう少し頑張れよなユウト」
「くっ・・・なんでだ?」
「んじゃ、パワーアップはお預けな。俺は休むか・・・」
「アスナ〜?」
俺を呼ぶ女性の声!
俺はダッシュで俺を呼んだカナリアの所へいく。
「なに?デートのお誘い?いつでもオッケーだよ」
「そう?じゃぁお願い」
「え!?ホントに!?やった!!」
カナリアはクールというか・・・だから、受けてくれるとは思わなかった。
「じゃぁハイ」
俺はカナリアの神剣『背光』を渡される。
「・・・は?あ、永遠神剣の交換ごっこ?」
「アスナの頭を開けると温泉が出てきそうだわ・・・。違うわよ、デートはこの子と」
「・・・この子?ドコの子?」
俺はキョロキョロあたりを見回す。
カナリア以外に女性はいない。
「この子だってば」
カナリアはコンコンと背光を叩く。
「・・・」
「じゃ、よろしくね?」
カナリアは言うだけ言って去っていく。
ちなみに新星はカナリアに取られた。
(新星・・・羨ましいっ!)
俺はドバァァッと涙を流す。
{アスナさん・・・?}
「え?背光?」
初めて聞く背光の声。
綺麗でしとやかそうな声だ。
{なぜ、涙を?}
「あ、いや、なんでも。でも、デートって・・・」
{・・・}
なんだか照れのような温かい思考。
それだけで、追求するのは止めた。
野暮というやつだろう。
「んじゃ・・・背光とデートと行くか!」
{あ・・・はい!}
「へぇ、じゃぁ、カナリアとはその時に?」
{ええ}
カナリアと背光は結構最近契約したようだ。
となると、カナリアは結構新顔のエターナル。
(・・・)
だとしたら、少し不思議だ。
もし、俺が誰かに『俺』を迎えにいかせる、というのなら、俺は経験を積んだベテランを選ぶだろう。
そう、トキミのような。
ましてや、ローガスから推薦されてる人材だとしたらなおさらだ。
でも、ユウトはトキミと関わりがあるから仕方ないものの、カナリアは俺が知ってる限り、ユウトと知り合い以外に特にない。
ヒカリはあれでも結構中堅くらいのエターナルだ。
「・・・なにかあるのかな?」
{え?}
「いや、カナリアとユウキにさ」
{えぇと・・・それは・・・}
どうやら、知っているらしい。
「別に言わなくてもいいよ。カナリアも探られたら気持ち悪いだろうしさ」
{あ、はい}
キィン・・・
「?なにかきたのか?」
背光から、わずかなけはいを感じる。
その途端、通信が入る。
契約していなくても、精神を合わせれば携帯のように使える。
『トキミです。アスナさん?聞こえてます?』
「・・・ゲンザイ、コノエイエンシンケンハツカワレテオリマセン。
モウイチドデンワバンゴウ・・・あ、電話番号って言っちゃった。
エイエンシンケンヲゴカクニンシテカラ、オカケナオシクダサイ」
『ふざけてる場合じゃないんですよ!!』
俺のギャグは完璧スルーされた。
寂しくて視界が滲む。
「なに?」
その途端、目の前に数人のロウ・エターナルが現われた。
『ロウ・エターナルが来たんです!危険ですから戻ってきてください!』
「・・・はは。ちょぉっと遅かった・・・ね」
俺は背光を構える。
{アスナさん!戻りましょう!契約してないのですから加護はありません!普通の人間と同じ能力なんですよ!?}
背光が俺に戻るように叫ぶ。
だけど・・・逃げられないってば。
囲まれてるんだから。
「ふふ・・・追い詰めたぞ!」
ロウが不敵に笑う。
「鬼ごっこはよそでやってほしいんだけど」
「鬼ごっこではない。さぁ・・・死んでもらうぞ、アスナッ!」
どうやら俺の名前はロウにも知られているらしい。
キィンッ!!
「なっ・・・!?」
俺はロウの剣を受けとめる。
「うらぁあぁっ!」
キンッ!
ブズゥゥッ!!
ザザンッ!!!
俺はロウの剣を弾き飛ばし、突き刺した後切り上げる!
目の前のロウが驚愕の表情を浮かべながら消えていく・・・。
「なぜ・・・なぜだ!?なぜ契約していない神剣で・・・!?」
残り四人のロウがたじろぐ。
永遠神剣があるのとないのでは天地の差があるのは常識だ。
そう・・・常識は。
「悪いね。俺、普通の人間の頃からそこそこ強かったんだよ」
もちろん、それでも体の動きは相手が全然速い。
だけど、さんざん人を殺めた俺にはちょうどよいハンデだ。
「できれば見逃してくれると嬉しいんだけど」
{言って聞く相手なら・・・苦労してないですけど・・・}
「全くだ。背光もわかるようになってきたな」
{え?えぇ、まぁ・・・はい}
なんだか照れるような嬉しいような感情。
全く・・・素直で可愛すぎるぜ背光。
「ナメやがって・・・!くらえっ!!」
ロウが斬り掛かってくる!
キィンッ!!
「ちっ・・・重い・・・!」
背光がズルズルと下がっていく。
あまりに重いロウの剣劇。
いつもこんなので斬りあっていたのかと思い知らされる。
俺はすかさずバックステップを踏んだ。
すると、すぐ開いた間合いがロウに縮められる。
「くそっ!」
キィン!
突きできた相手の剣を弾き飛ばす。
俺は地面を蹴り上げる!
砂がロウの顔にかかり、視界を塞ぐ。
「だぁあぁっ!!」
俺はすかさず斬り掛かる。
背光が重たくてかなり力が必要だった。
「ぐっ・・・守れ神剣よ!」
パキィンッ!!
「なっ・・・くそっ!」
全力の太刀も軽く弾かれ、仕方なく距離を開ける。
(神剣持ってないだけで・・・こんなに違うのか)
はぁ、と息を整える。
キィンッ!!
「っ・・・!」
後ろからもロウが襲ってきた。
「ぐっ・・・!」
{アスナさん!!}
「え・・・?」
ブザァアァッ!!
俺の体に神剣が突きささる。
砂をかけたヤツでもなく、剣を受けたヤツでもない・・・三人目の攻撃。
「スターダストッ!!」
ドゴォォオォオッ!!
さらに4人目の神剣魔法。
しかも、最強魔法スターダスト。
空から矢がふってきて、俺に触れた途端に大爆発した!
ドゴォォオオォオッ・・・!!!!!
「ぐっ・・・熱・・・っ!!」
俺は焼けただれた両足と腹と左腕を見る。
どれもがとてつもない異臭を放っている上に、ピクリとも動かず、容赦ない熱による痛みで体が縮こまる。
「がばぁあぁっ!!」
口から全ての異物を吐き出す。
その途端、ふっと体の力が切れて、俺は地面に倒れる。
「はあ、はぁ・・・」
俺は目の前にある砂を見る。
というか・・・それさえぼんやりとしてきた。
{アスナさん!}
「ぐっ・・・はぁ・・・ダメ・・・か・・・」
体から容赦なく力が抜けていく。
もはや、指一本動かせない。
(しかし・・・随分と情けないところで死ぬんだな、俺は・・・)
自分の死が直視できない。
だんだんと意識が薄れてきた・・・。
体を構成しているマナが崩れていきそうなのを感じる。
「ごめん・・・」
誰に謝ったかなんてわからない。
ただ、それしか言えなかった。
{アスナさんってば!}
背光の声がうっすらと響く。
体がマナに還りだしたのを感じる。
(ごめん・・・)
………………………………………………………………………………………………………………
ダダダダダッ!!!
おれ達は急いでロウの反応を追い掛けた。
「なっ・・・!?」
「ウソであろう・・・!?」
「そんな!アスナッ!!」
俺達の目に飛び込んできたもの。
それは・・・背光を握り、倒れ、金色のマナに還りはじめているアスナだった。
「ユウト、ロウを頼みます!」
「おう!」
カナリアが急いでアスナに駆けていく。
おれ達は残りのロウに向かう。
(しかし・・・)
俺は体からイヤな汗が出るのを感じる。
コイツら・・・今までのよりも強い。
それなのに・・・途中で、一体反応が消えた。
つまり・・・アスナが『生身』で勝ったということ。
アイツの恐ろしさに震えた。
だけど・・・同時に、アスナを傷つけた事も許せなかった。
俺は聖賢にオーラを纏わせる!
「いくぞ聖賢・・・っ!!オーラフォトンバスタァァアァッ!!!」
アスナに教わり、新たに覚えた攻撃の型。
オーラフォトンブレードと同じように聖賢にオーラを集中させ、まず切り下ろし、懐から横薙ぎにして敵の背後へ回る。
そのあと背中から突き刺し、切り上げ、切り下ろす!
最後に横に聖賢を薙ぐ!!
バシャァアァッ!!
「ぐぅっ・・・!」
ロウが満足に声も出せないまま消えていく・・・。
「アスナッ!?」
俺はすぐにアスナのところへ駆け出した。
………………………………………………………………………………………………………………………………………
『ミニスター』
アスナのオーラフォトン技。一定範囲内の指定した人物の能力を全て倍、引き上げる。
攻撃も防御も抵抗も全て上がるため、一気に勝負をかけたい時に抜群の効果がある。
ただし、タイミングを間違えて一気に攻められない場合はピンチになる。
一定時間過ぎると疲労が3倍になって襲ってきて、素早い行動ができなくなるため。
『オーラフォトンスラッシュ』
アスナの攻撃技。オーラフォトンを剣に纏わせ、それを放ち攻撃する。
一個一個の刃の威力も半端ではないが、脅威なのはその数。その時のテンションによって上下するが、大体20個程度放つ。
そのため、大抵の場合は途中で防御が崩れる。そのため、必ず防御をさせない状態で数発食らわせることができる。
『メテオフォトン』
エターナルの中で危険視されている技。神剣の名前に『星』がつく場合は、これを使える可能性がある。
ただ、相当強力なエターナルでない限り制御ができず、この技のせいで何個も世界が破壊された。
宇宙空間にある特殊なマナを集めて固め、それを地上へと落とす魔法。
その威力は強力無比で、何もかもを吹き飛ばしてしまう。
『オーラフォトンバスター』
ユウトの攻撃技。アスナが暇つぶしに教えた型を利用している。
オーラフォトンブレードと同じように聖賢にオーラを集中させ、まず切り下ろし、懐から横薙ぎにして敵の背後へ回る。
そのあと背中から突き刺し、切り上げ、切り下ろし、最後に横に聖賢を薙ぐ。
オーラフォトンブレードよりHIT回数が多く、エターナルになってからの経験でオーラフォトンを節約できるようになった。
そのため行動がしやすくなっている。ただ、アスナが暇つぶしに教えた型なので、流れは良くても威力が高いかは定かではない。
とりあえずロウを一撃で仕留められるくらいの威力はあるようだが・・・。