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「さぁ、今日もがんばってナンパするぞーっ!」
俺は町に繰り出した。
この世界に来て初めてのナンパだ。
「この世界の人は美人が多いし・・・むふふ。さぁて!がんばろうっと!!」
「ちょっと待って」
「え?」
突き付けられる剣。
「あなた、もしかして女を見つけてはすぐナンパするっていう噂の?」
「・・・」
俺はその剣の持ち主を見る。
可憐な女性・・・。
それが第一印象だった。
まァ・・・後で正反対だったと思い知らされるのだけど。
「は・・・」
(やば・・・)
その時、俺の中に何かが走った。
きっと・・・これが本気の一目惚れだったのだろう。
そして・・・
この時から、俺は運命というものについて考えるようになったんだろう・・・。
場所は変わって・・・燃え盛る町。
建物は崩れ、人は焼け、闇夜は真っ赤に染まる。
そんな中、目の前には一人、立っていた。
「頼む・・・スフィア、戻ってきてくれ・・・っ!!」
「ふふ・・・無駄よ。もう、この体も頂いちゃったしね〜」
ヒラヒラと手を振る。
その仕草が怒りを膨張させていく。
「シン・・・ッ!!貴様ァアァッ!!!」
{アス・・・}
「え・・・?」
突然女性の声が聞こえて、俺は飛び掛かろうとした勢いを止めた。
{お願・・・アス・・・私・・・消し・・・}
その声を聞いたとき、俺はどう思ったのだろう?
その瞬間・・・目が覚めたのでわからなかった・・・。
「・・・またイヤな夢か」
俺はぼやいて顔を洗い服を着る。
{どうした?}
「・・・別に」
相棒の剣を取った。
白い翼が手に触れてかゆくなる。
「さぁっ!今日もハリキってナンパしましょうかね!」
{・・・いい加減女遊びはやめたらどうだ?}
ハァ、とため息をつく剣。
口がないくせに。
「うっさい。エターナルって意外とやることねーんだよな」
{お前がしないだけだろ}
「ホンット、お前ってあーいえばこういう、ってタイプだよな」
{お前がもっとしっかりしてくれていれば良かったんだよ}
「その割に随分と俺と長く付き合ってるクセに。んじゃ・・・いくか!」
俺は町へと繰り出す。
そこでピタッと歩みを止めた。
「・・・変だな」
{・・・ああ}
なんだか妙な雰囲気がする。
こぅ・・・エターナル臭い(?)。
「俺以外にいるのか?いや・・・でも、なんか半端な雰囲気だな」
エターナルの雰囲気ほど痛くはないし、ミニオンよりは痛い雰囲気だ。
「・・・ちょっと見てくるか」
{おお!とうとうお前もやる気をだしたか!}
「休暇をジャマされちゃたまらないんでね」
{・・・休暇ではなく辺境調査だ}
俺はそれ以上剣のツッコミに答えず歩きだした。
「では・・・複製、頼む」
(ん・・・?)
俺は物陰に隠れて様子を見る。
そこには捕らえられた人々と、ロウ・エターナルがいた。
パァァアァッ!!
ロウのかざした剣がまばゆい光を放ち、いくつもの剣に別れる。
そして、それを無理遣り捕らえられた人にもたせる。
ゴォォオオォッ!!
(・・・)
一瞬で精神が飲まれたのがわかる。
おそらく・・・もう、彼らの人格は破壊されただろう。
{酷いことを・・・最近確立した半エターナルシステムか}
(・・・だな)
永遠神剣の中には、自分をいくつもの剣に別れさせる事ができる剣がある。
それと、エターナルの力を使った技術が半エターナルシステム。
システム、というが要は戦力確保だ。
エターナルでもない人に上位神剣をもたせて無理遣りエターナルにしてしまうというものだ。
もちろん、ちゃんとした契約ではないので本当のエターナルよりは劣る。
だが、ミニオンよりも遥かに早く確保できる上に強い。
心や人格を破壊され、神剣に操られる・・・という点ではミニオンと同じだ。
世渡りをしても記憶は消えない。
そんな利点からロウでは積極的に取り入れているという話だったけど・・・どうやら本当らしい。
ちなみに、カオスに協力する神剣はほとんどが自我が強いため複製ができない。
つまりは半エターナルシステムはカオスでは使われていない。
「・・・」
俺は黙ってその場を去る。
ブワァアァッ!!
桜吹雪が舞った。
「・・・春風はこんなに気持ちイイのに・・・桜も満開だってのに・・・」
俺は桜を見上げる。
その美しさにホケーッとしてしまう。
「・・・嵐の予感ってか?」
俺はそのまま桜吹雪の中に身を沈めていった・・・。
それは突然だった・・・。
なんの前触れもなく始まったクーデター・・・。
しかも・・・『カオス・エターナル』に対するクーデターだった。
ある世界がクーデターをはじめた途端、次々とカオス・エターナルに対して宣戦布告する世界があらわれる。
そして・・・カオス・エターナルが次々と殺されていく・・・。
そして、ついに・・・ローガスのいる世界と、辺境の世界以外は、全てロウ・エターナル側に乗っ取られたのだった・・・。
『永遠抗争』
〜Eternal Dispute〜
「全く・・・ふわぁあぁ」
俺は大きなあくびをして草の上に寝転がる。
(どうしたもんかね・・・)
なんだか知らないが、俺が辺境調査している間に、クーデターが起こったそうだ。
それも、ロウに影響された主要世界・・・。
実際無事なのは蓋されているファンタズマゴリアとマナがかなり希薄なハイペリア、俺がいるような辺境。
それにローガスのいるカオスの拠点。
情報が全く入ってこないから、これ以上の事は何もわからない。
まぁ、あの怪物ローガスの事だ。
ロウがいくら束になってかかっても、かなわないだろう。
リーダーが出てこない限りは。
「しかしなぁ・・・」
ボリボリ・・・
俺は寝そべりながら左手でポテチを食う。
「でやぁあぁっ!!」
キィンッ!
俺は斬り掛かってきたロウ・エターナルの神剣を右手で持った剣で止める。
クルッと回転させ、相手の神剣を地面に流し、すぐさま柄を手のひらに乗せて突き上げる!
ブシャァアァッ!!
剣が腹を貫き、力を込めるとマナへと還っていく・・・。
「おっとなしくしててくっれないかなぁ・・・っと」
ハッキリ言って、こういう風にいきなり襲われるのは迷惑だ。
そろそろこの世界も潮時か・・・。
ストレートに言うなら、もうどの世界にもカオス・エターナルの居場所はない。
というか・・・ローガスと俺以外に残っているのだろうか?
また昔に逆戻りか・・・。
{ダメだ。近隣の世界にも、カオスの反応はない}
「新星、まだ探してたのか?」
俺の剣、新星。
翼が生えているちょっと変わった剣だ。
真面目で堅くて相手するとヒジョ〜に疲れる。
そんな人間って一人はいるよね〜・・・人間じゃないけど。
{疲れるとはなんだ!?で、どうする?}
「まぁ、適当に世界を渡るよ。そのうち隠居できる世界も見つかるさ」
{隠居って・・・おまえ、ローガスの親友だろ?放っておくのか?}
明らかに不満そうな声。
仕方ないだろ・・・。
「大丈夫。ローガスならやられないさ。それより我が身がカワイイ」
{はぁ・・・}
「ため息つくな。大体、情報も入ってこないし、俺一人だけでローガスの所なんか行けないさ。
途中で他のロウに殺されるだけ。なら、ゆっくりまったり生活できる世界を探した方がよっぽど建設的だろ?」
{・・・まぁいい。そのうちそうも言わなくなるだろうしな。おまえは逃げ道がなくならないと何もしないのは知っていたし}
「む・・・」
微妙に刺のある言い方をする新星。
コイツはそういう嫌味な言い方をすることが多い。
「まぁいい・・・いくぞ、新星」
{おう}
長年・・・もはや年では表せない程の付き合いだけど。
そこから、これ以上言いあっても無駄だとお互いわかっている。
俺は門を開こうと力を込めた。
その瞬間・・・
ブワァァアァッ!!!
「・・・あれ?」
{む?}
俺は瞬時に目の前の門と距離を取る。
俺はまだ門を引き寄せていない。
つまり・・・これは別のエターナルが開いた門だ。
ロウの可能性もある・・・。
俺が身を引き締めて新星を構えた。
そこから出てきたのは・・・
傷だらけの二人の男と・・・
同じく傷だらけの三人の女だった・・・。