激しい砂煙が舞い上がる！

それと同時に、巨体が倒れたことによる風圧が俺たちに襲い掛かる！

「グッ………」

「はぁ……はぁ……」

「疲れた……よぉ………」

全身傷だらけで、俺たちはなんとか立っていた。

ガーリオンはソフィに切り裂かれた傷から大量の血を流している。

片目はリリィの魔法により潰れ、爪は俺の障壁によってボロボロだ。

「ガーリオン……なぁ、なんで俺たちは戦ったんだよ……」

【汝は……戦う意味を知っているのか……？】

「はぁ……？」

【ならば……お前はなぜサーギオスと戦う……？】

「それは……」

【サーギオスにとってみれば、侵略されているのだ。お前が最も嫌う、悲しむ人たちが増えるという事態になるぞ】

「……」

【お前は優しすぎる。スピリットに対しても、人間に対しても。それは、悪だ】

「……」

俺は仰向けに倒れた。

ガーリオンの頭の近くで、大の字になる。

【お前の優しさは……悪だ。誰かを傷つけるための優しさでしかない……捨てるのだ】

「え？」

【そうしなければ……お前が死ぬだけだ。その自己欺瞞を取り払え……自分を解放しろ……】

「……たとえ、今の俺が自己欺瞞で固められた俺だとしても………」

―――俺は、今の俺に誇りを持つよ。

―――だから……俺は、今は今のままでいいって、思う。

【……ふっ、そうか……】

「あぁ………」

【もうすぐ……我も消える……か】

「……ガーリオン」

【なんだ？ユウキ……】

「サンキュー、お前は、俺の友人だ」

【………なら、友人として……頼む】

「なんだ？」

―――もう一度、あの詩を……

―――今度は、悲しくない詩を……謳ってはくれぬだろうか……？

「……リリ、終幕を謳おう」

「わかった」

「ソフィ、お前もだ」

「え？え？私知らないよ！？」

「神剣を通じて教えた。自然に言葉が出るよ。俺を信じて」

「……うん！」

―――貴方

―――私は貴方、貴方は私

―――それが世界、それが全て

―――私は思う

―――本当に愛するとは、どういうことなのか

―――本当に守るとは、どういうことなのか

―――それを教えてくれた貴方

―――無の海で私を見つけてくれた

―――故郷のように暖かい貴方

―――貴方のためなら私は謳える

―――それが私の定めで使命

―――だけどお願い貴方だけは共にいて

―――優しい音色を紡ぐから

―――もう平気、どこまでもいける

―――私は永遠にどこまでもいける

―――世界の全てに詩を届ける

―――人は想いを伝えて詩を捧げる

―――いとしき人へと、心繋ぐ詩を

―――貴方

―――願わくばこの刻よ永遠なれ

―――あぁ、この刻を止める鍵はいずこ

―――ねえ貴方、どこへいくの

―――私はどこまでもついていく

―――自由を見せた貴方はどこへいくの

―――翼を広げてあなたは笑う

―――私は気づいた

―――貴方はあなたが私のために

―――刻は過ぎ、貴方は私と共に自由を帰る

―――わかってるこれが永遠ではないこと

―――もう怖くない、過去は切り離した

―――わずかな自由がいとしかった

―――人間の季節は終わりを告げ

―――私と貴方は運命をたどる

―――ありがとう

―――貴方は幻の人

―――私はもう大丈夫

―――星空に響け私の詩よ

―――蒼天から私を見つめる貴方に届け

―――届くまで私は謳い続ける

―――貴方のことが世界で一番大切だから……

【ユウキよ……その詩は……？】

「空を奏でよ、最終幕。さっき俺が謳ったのが第１幕でリリィが謳ったのは第２幕」

【そうか……美しい詩だな……】

「メロディーがあると、もっと綺麗な詩だ。あと、俺が謳わなければ」

【ふふ……私の最後には勿体無いくらいの詩だ……】

「……かもな」

【友人ユウキよ……】

「友人をつけるな。呼び捨てにしろよな」

【……お前の詩、広めるといい】

「え？」

【私ですら何かを感じたのだ……もしかしたら、世界を繋ぐ詩になるかもしれん……】

「……うん」

【それでは……私は逝くとしよう】

「ガーリオン！」

【なんだ……？】

―――お前がこの詩を聞いてくれて、嬉しかったよ……

そうして、坑道の龍は姿を消した。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「さすがに庇いきれませんよ？エトランジェユウキ」

「はい！ホンットすいませんした！！！」

レスティーナに頭を下げた。

そりゃもう、地面に頭をこすり付けて土下座。

「もういいです。下がりなさい」

「はい！」

俺はキリッとした態度で謁見を終わらせた。

まぁ、どうやら俺も少しは成長したみたいで………

「あ、祐樹、どうだった？」

「悠人か。ま、わかるとおり一時間ガミガミガミガミ。ガミガミオバサンかよ！って感じ」

「それ、本人の目の前で言ってみればいいんじゃないか？」

「勘弁してよ。それと悠人」

「ん？」

「ありがとな。それと、これからよろしく頼む」

「あ、ああ！」

「挨拶するのは悠だけなの？」

「今日子に光陰？そういえば、お前たちにも世話になったようななってないような……」

「あのねぇ、傷だらけで戻ってきたアンタたちを介抱したのは誰だっけ？」

「エスペリアにニムだろ？それにハリオンもろもろのグリーンスピリットたちです」

「うぐっ……そこはフツー【ありがとう】って言うもんでしょ！？」

「まぁまぁ今日子。俺たちだって祐樹に借りがあったんだしさ。これでチャラってことで、いいよな？祐樹」

「もちろんだ光陰」

「しっかし驚いたぜ。お前とソフィとキアラだっけ？３人でドラゴン倒しちまうんだからな」

またそれだ。

ラキオスに帰ってくると、まずは傷に驚かれた。

エスペリア達に治療してもらいながら、龍を倒したことを言うとまた驚かれた。

それと、みんなに説明するのが面倒だそうで、リリィはキアラ、ということになっている。

「エリスとアイビスだっけ？２人も相当心配してたからな。大目玉は覚悟しとけよ？」

「あ、あぁ……」

それを言わないで欲しかった。

そうすれば晴れやかな気分でお説教タイムを迎えられたのに……。

仕方ないので、俺は幕舎へと行く。

「祐樹、変わったな」

「ああ、なんだか、なんかうまくいえないけど、すごくイイヤツになった」

「なんだそれ？」

「悠、それ、頭の悪さを実証してるわよ」

「し、仕方ないだろ！うまくいえないんだから」

「ま、気持ちはわかるけどね。じゃ、アタシたちも報告しましょ」

「ああ、そうだな」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「はてさて……」

「ごくっ……」

「なんで２人ともそんな緊張してるの？」

一人だけ場の空気を読めないバカ（リリィ）がいた。

これから怒られるというのに、誰が緊張せずにいられようか！いやいない！（反語）

「あ〜……失礼します……」

「します……」

「？しまっす♪」

俺たちはお説教ルームに足を踏み入れた。

なるべく反省してます、とアピールするように小さくなりながら。

「……うひゃぁ」

仁王立ちでエリスが立っていた。

少し胸を突き出している。

かなり怒っているようだ。

威圧感が半端ない。

アイビスは黙って目を閉じている。

机の上に座り、まるで嵐の前の静けさというか………。

「あ、あの〜……つかぬことをお伺いしますが」

「なんでしょうか？」

「怒ってます？」

「当然です！！」

「……」

並みの怒りではない。

俺たちはそれだけで立ちすくんだ。

―――天国のサードガラハムが笑ってるよ〜

｛ふふ……早く来るんだユウキ。我はお前を待っているぞ？食い散らかされると、ドッグフードみたいになるぞ｝

「って妄想の中でくらいもっと良いこと言えよ！！」

「は？いきなり何を言うのですか」

「あ、いや……」

イカン。

妄想の中に突っ込んでしまった。

「じゃぁ、ソフィとキアラ……もといリリィはアイビス、お願い」

「ふあっ……あ、なんだ？」

「寝てたのかよオイ」

静かなのもそのはず。

寝ててうるさいヤツなんていない。

「ソフィとリリィをお願い」

「あいよ。しっかりとな」

「………」

一応、エリスとアイビスにはリリィのことを話した。

その結果、普通はキアラとしよう、ということになったのだけど。

さぁ、問題です。

問

これから相川祐樹はどうなるでしょう？

次から選べ

Ａ、原型もわからないほど殴られる（後が醜いな

Ｂ、チェーンソー（！？）で五体バラバラにされて埋められる（その前にマナになるって

Ｃ、サーギオスに一人で突撃させられる。もちろん素手で（さらば優菜、俺は星になる……

Ｄ、抱きしめられてサバ折り（……これがいいなぁ

Ｅ、三途の川をバタフライで泳ぐ（おばあちゃん、今いくよ……

「Ｄよ」

「え！？マジ！？……って、え？」

「なんであなたはいっつもそうなんですか！」

「？？」

よ、よくわからない展開になってきたぞ？

「なんで……そうやって一人で……あなたは何様ですか！！」

「……すいません」

「一歩間違えればあなただけじゃなく！あの２人も死んでいた！違います！？」

「……はい、そうです……」

「そうやって一人でいつもいっつもいっつも！！！」

「ひゃ………！」

殴られる、と思って俺は首を縮めて目を閉じた。

反射的にやるようになってしまった。

―――アレ？

そぉっと目をあけると、俯いてブツブツ何かを言っているエリスがいた。

「？」

「なんで……いつもいつもいつもいつも………」

「エリス？」

「私はあなたのなんですか……？」

「え？」

「なんで私に言ってくれないんですか……なんで苦しいって！言ってくれなかったんですか！！」

「……ごめん」

「私がスピリットだからですか？」

「ち、違うってば！」

「………」

「………だって、みんな苦しいじゃんか」

「……」

そう、今は戦争中。

俺だけが苦しいんじゃない。

俺は、悲劇のキャラになるのが大嫌いだ。

だから、平気な顔してなんでもやろうって、思ってた。

「今更……なんでそんなこと言うんですか……」

「……え？」

「誰にだって、命より大切なものがあるんですよ！！」

「………」

「私にとって……あなたはそれくらい大事なのに……なんで……そんなこと言うのよ………」

「……悪い」

「………」

「え？」

エリスがそっと俺の頬に手を当てた。

ふっと、間近で目が合う。

「バカ」

「……！」

そのままエリスの顔は近づいてきて………

横にそれた。

「ぎゃっ！！うぎゃ……！ぐ、ぐるじ………！」

「Ｄ…って言ったはずですよ」

「んな……！今のシチュでごれは……っ！！うぎゃぁっ！」

ボキボキボキッ！！！

あ、骨が………

「今回は、これで許してあげます……おやすみなさい」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「……」

イロイロなことがあった。

走馬灯のように駆け巡った思い出たち。

「ユウキ？どうしたの？」

「優菜……ちょっと、昔のことをね」

俺たちは今、世界を襲ってきているロウエターナルをあと一歩で追い出せるところまで来た。

白い法皇とも、決着をつける。

「どんなこと？」

「今、ラキオスを守っている元イースペリアのスピリットたちのこと」

「それって、ソフィ達？」

「そ」

今、俺はエターナルとなった。

だから、ソフィ達は俺のことを覚えていないだろう。

全て、これはなかったことになっている。

悲しいけれど、仕方ない。

だから、俺は謳う。

それは、力となってくれる。

「優菜」

「え？」

「今度、詩、聞いてくれよ。覚えたら、一緒に謳おうぜ」

「うん、いいよ！」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

Ｆ・Ｓの大筋はこれで終わりとなります。

ただ、Ｆ・Ｓ自体としては終わりがありません。

それだと締まりがないと思ったので、一区切りです。

若きエターナルの詩

さて、本編で【詩】があったでしょうか？

答えは我ながら、ＮＯです。

そこで、【詩】というものをどう表現するか……。

心に響く、何かをくれる、そんな詩。

それをコンセプトに生み出したのが【空を奏でよ】でした。

これで、【あぁ、だからこんな題名なのか】とわかってもらえれば幸いです。

残念ながら、曲を作れるほどの才はないので、詩（うた）というより詩（し）ですね。

幕それぞれでいろいろ違いますし。

読者にお任せということになってしまうのですが、壮大な音楽でも聴きながら読まれると、なんとなく雰囲気がつかめるのではないでしょうか？

一応、空を奏でよ（解説）を書きますが、感じたことを大事にしたい方は、読まれないほうがよいかな？と思います。

意見、感想をいくらでもお待ちしております。

辛口な感想でも大歓迎なので。

それでは♪