「じゃ、行って来るよ優菜」
「帰って……きて、くれる……よね?」
「もちろん」
「あれ……ソフィ」
「どうしたのキアラ?」
「あの女の人……誰?」
「あぁ、そういえばキアラにはまだ言ってなかったわね」
キアラが2人の様子を凝視する。
片方はユウキ、片方はユウナ。
「あれはユウナ様。ユウキ様と同じく、エトランジェなの」
「そうなの?じゃぁ、強い?」
「………う〜ん」
エリスもアイビスも顔を見合わせて、困ったような笑顔をした。
ソフィが、キアラに話す。
「ユウナ様は、戦えないの」
「え?だって、エトランジェ……?」
「ま、生まれたてのキアラにゃ、まだわからないな。だが、エトランジェも人だって、そういうことだよ」
「?アイビスお姉ちゃん、よくわからない………」
キアラは2人を見つめたまま、首を傾げてしまう。
それを見て、エリス、アイビス、ソフィは更に困ってしまう。
「ユート様やユウキ様たちは、ご自分の永遠神剣を持っていらっしゃるから戦えるの」
「じゃぁ、あのユウナ、様……は、持ってないの?」
まだ呼びなれないのか、様付けするところで一瞬つまるキアラ。
なんだか苦しい表情をする。
「ま、ユウキは魔法も使えるけどな。どしたキアラ?」
「ん………なんだか、ユウキ楽しそう………」
「そりゃ、そうだろうね。本人は否定してるけど、明らかに両想いだ」
「……?両想いって?」
「2人が、信じあい、愛し合ってる関係、のことかな?」
「………」
「キアラ?」
キアラは寂しい表情のまま、2人を見つめている。
それを見て、ソフィだけは悟った。
「キアラ」
「え?」
「キアラも、お兄ちゃんにとっては大切な存在なんだよ?」
「………」
「だから、取られた、なんて思っちゃだめだよ?」
「……!」
「ね?」
「……うん、ソフィ」
アダルト2人も悟ったようで、その2人の様子を優しい目で眺めていた。
「ここまでソフィが成長してたなんてね」
「これも、ユウキのおかげって?」
「かもしれない。でも、ユウキ様は本当に……スピリットに優しい」
「……かもな」
「いえ……優しすぎる……」
「……エリス、お前、難しいこと考えるなよ?」
「え?」
「自分はスピリットだから。とかそういうの。とりあえず、まずは素直になりゃいいんじゃね?」
「アイビス……」
バンバン!
アイビスはエリスの背中を叩き、先行したユウトら一向を追いかけた。
「……うん。生きて、帰れたら………でも、まずは……」
「お待たせ〜。じゃ、早速悠人達を追いかけようか?」
「ユウキ様」
「え?」
「あっちについたら、お話があります」
「……いいけど。なに?愛の告白?」
「……それじゃ、行くわよ?キアラ、ソフィ」
「うん!」
「いこ、ユウキ?」
「あ、ああ」
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「はい、リーザリオ到着〜、と」
俺たちは歩いてリーザリオについた。
ヨーティアのエーテルジャンプに比べたら遅くなったが、リーザリオには建設予定がないから仕方ない。
比較的ラキオスに近かったのが幸いした。
「さて、と。んで?話って?」
「はい。実は………」
「俺に、ラキオスに打ち解けろって?」
「!!」
エリスの顔がこわばった。
案の定………だ。
「正直言うと、もう少し厳しいです」
「と、言うと?」
「ユート様たちは、行く当てのない私たちを、あのイースペリアを滅ぼそうとした王に、必死に食い下がって、それで引き取ってくれたのですよ?」
「………」
「なのに、あなたの態度はなんです?それが恩人に対してすることですか?」
「………よ」
「え?」
―――うるさいんだよ
「ユウキ様………?」
「わかってんだよ……でもよ、俺だって………」
「え?」
「……帰るわ。なんだか、今日は早く寝たい」
「あ、その………ごめんなさい。言い過ぎました………」
俺の態度を感じて、なぜか謝って来るエリス。
おかしいんだ。
そういう、態度が………むかつく。
今の会話を今日子としたら、今日子は怒るだろう。
―――なんで何も言わないの!?一人でなんでも抱え込んでるつもり!?
ぶっちゃけ、そういわれたほうが良かった。
だって、そうすれば……甘えることができたから。
でも、そんな状況じゃない。
これから俺たちは、命をかけて門番を討ちにいくんだ。
―――甘えるな
「謝るな。その方が、かえってイライラする」
「………っ!」
「じゃ」
俺はエリスに背を向けて歩き出す。
もう、振り返らない。
振り返ると、何かを見せてしまいそうだ。
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そして、その夜だった―――
ザッ!
ザパァッ!!
悠人の求めの太刀が、黒いスピリットを打ち据え吹き飛ばす。
そして、ゆっくりとマナとなって消えていく………。
「夜に襲撃なんてな……!サーギオスってのは抜け目がないな!!」
「ボヤくな悠人!しっかし……!この数はしんどいぜ!」
「ちょっと光陰こそボヤいてるじゃない!!」
「そ、そうか!いけねぇ……俺としたことが」
焦る。
あの光陰ですら、この20体のスピリット相手には、余裕をなくしている。
当たり前だ。
あたりは真っ暗。
頼りになるのは、永遠神剣の反応だけ。
肉眼で仲間が確認できない。
おかげで、連携が取れない。
「目が慣れても暗いまま………こりゃなにかあるぜ!」
「そういえば祐樹は!?」
「あ?いないのか?」
「いない!!」
バッ!!
ブルースピリットの鋭い太刀をかわし、頬が切れた。
そこから溢れた血が、涙のようにアゴにつたり、地面に垂れた。
「求め!」
{解放……ヤツの永遠神剣の反応は……ここだ}
求めが悠人に直接場所を送り込んだ。
そこは、宿屋の屋上。
「ちっ!光陰今日子!しばらく頼んだぞ!!」
「おう!!」
「任せてっ!!」
悠人は、宿の屋上へと走り出した。
立ち塞がる気配はするが、無視してすり抜ける。
今は………一人でも多く、戦力が欲しい!
その想いを胸に…………