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「ん・・・?」
俺は気が付けば自分の部屋にいた。
いつもの寮・・・。
「・・・ん?」
一体・・・俺はどうして寝てたんだ?
あれ?
なんで寝てた事に疑問を持つんだ?
別に普通に寝てただけじゃないか・・・。
「ふわぁぁぁぁ」
俺は大きなあくびをした。
いつもより目覚めが早く、ゆっくりと学校の準備をする・・・。
「おーい!祐樹?」
「ああ、待ってくれ!」
俺はドアを開ける。
そこには、雄司と愛香がいた。
「あれ?佐倉は?」
「は?佐倉?」
俺はいきなりワケのわからない質問をされて困る。
「佐倉だよ佐倉」
「佐倉さん、お休みですか?」
「いや・・・だから佐倉って?」
「ふざけんなって。佐倉優菜だよ!いんだろ?」
雄司は俺の部屋に入る。
そして、使われていない奥の部屋をあける。
すると、そこには当然何もなかった。
「あれ?なんで・・・」
「祐樹さん、佐倉はどうしたのですか?」
「いや・・・だから佐倉って誰だよ?俺の部屋は前々から一人だろ?」
「なっ・・・おまえ!!」
ガシッ!!
俺は壁におしつけられる。
「どうしちゃったんだよ!!佐倉を忘れたのか!?」
「だから佐倉って誰だよ!!知らないんだからしょうがないだろ!?なんで怒ってるんだよ!!」
「ゆ、雄司さん!祐樹さん!」
「・・・ちっ!俺は先に行くからな!」
「勝手にしろよ!」
俺は怒鳴り返した。
「祐樹さん・・・」
「愛香も佐倉がどうとか言うのかよ?」
「本当に・・・何も覚えてないんですね?」
「・・・ああ」
見つめられて、少し恥ずかしいけどちゃんと答えた。
「そう・・・ですか。どうして・・・いなくなってしまったんでしょうね・・・?」
「・・・俺、今日休むよ」
「え?」
「頼む」
「・・・はい」
深く追求せずに、微笑んで頼みを受けてくれた。
愛香は静かに部屋をでていく・・・。
「佐倉優菜って・・・誰だよ」
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「それでは、あなたが・・・」
「はい、初めての自己紹介になりますね。エターナルのユウナ・・・
『救世主ユウナ』と『万物の記憶ユウナ』です。使い分けるのも面倒なので、ユウナでいいです」
「では・・・ユウナ。敵は一体何がねらいなのでしょうか?」
ファンタズマゴリアでは、今あちこちでエターナルミニオンが出現している。
その力に、はっきり言って劣勢だ。
(まぁ・・・時深と悠人がいなくなっちゃったからだけど)
悠人がエターナルになると決めたため、それを導くために時深もついていった。
だから、既にみんなの中に悠人と時深の記憶はない。
(そして・・・祐樹も)
自分でしたことなのに、悲しみが心を押し潰す。
祐樹の記憶を消し、元の世界に送った・・・。
「おそらく、この世界をマナ化することでしょう」
「マナ化?非常に気になる単語だねぇ」
ヨーティアが興味津々といった感じで聞き入っている。
「簡単に言えば、この世界の全てのマナを一本の神剣に集め、暴走させて、この世界を全てマナに還してしまおうということです。
そうなれば、もちろん誰一人として生き残ることはできませんし、この世界自体も消え去ります」
「そんなことを・・・」
「でも・・・私がいるかぎり、そんなことはさせません。そのためにも・・・力を貸してほしいのです」
「いえ・・・本来、私達が力を貸してほしいのでしょう。だからこそ、お願いします・・・この世界を、救っていただけますか?」
「・・・はい!」
私は力強く答えた。
絶対に・・・この世界をけさせはしない。
(タキオス・・・テムオリン!絶対に倒してあげるから!!)
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「はい、計測終わり。数値測定不能」
俺の目の前では、なにやら血圧計みたいなものがプスプスと黒煙をこれでもか、というくらい吐き出していた。
と、いっても、この光景はすでに見慣れている。
これは俺のクラスだけが受ける健康診断みたいなもので、特殊能力の力を計測するものだ。
大抵は魔力を計る。
んで・・・なんで俺の場合はこんなことになるのかというと・・・。
「全く・・・おまえはいつでもやってくれるな」
後ろの順番待ちのクラスメートが呟く。
「しかたないだろ」
魔力とはもう、完璧に遺伝の物なので、俺にはどうしようもない・・・。
俺の魔力は測定値限界を遥かに突破し、一度も正確に計れたことがない。
それだけ俺の体には魔力がある・・・ということだ。
(まぁ・・・世界的に有名な家だしな)
わざわざヨーロッパとかから客がくるくらいだ。
そういえば・・・
(昨日、変な剣を預けられたんだっけか)
家から急に帰ってきてほしいというので帰ってみれば、なんでも遺跡から発掘された剣をあずかってほしいとのこと。
どうやら悪霊が憑いているらしく、家族で一番力がある俺が封印をしないといけないとか・・・。
ちゃちゃっといい加減に封印して学校に戻ってきた、というわけだ。
「と、いうわけで・・・じゃぁ次!」
新しい計測道具が机に置かれ、俺はすごすごと退散した。
(ったく・・・)
俺は部屋でゴロゴロしていた。
あの朝・・・雄司と喧嘩してから、雄司と愛香とは会ってなかった。
(佐倉優菜・・・ねぇ)
未だに少しも思い出せない。
というか、本当にいたのか?と疑いたくなる。
俺はなんとなく奥の部屋のドアをあける・・・。
そこにはやはり何もなかった。
いつも、当然だ、で済んでいたのに、今ではなぜか淋しい感じがする。
俺はまたベッドに転がる。
「う〜・・・」
俺は小さくなって両足を抱えた。
「なんだってんだよ・・・」
本当なら、気にしなければいいだけなのに・・・それを、どこか・・・自分ではわからない部分で否定していた。
というか・・・そうやって、気にしなくなるのがなぜか恐かった。
そんな自分をバカにしながら、俺は軽く笑った。
キィンッ!!
「っ!?」
俺は突然胸が熱くなるのを感じた。
(こ、これは・・・!?)
俺の体に今まで感じたことがない程の力が流れこんでくる。
「いや・・・」
俺は、これをどこかで経験した覚えがあった。
「・・・」
俺はためしに背中に力を入れた。
ブワアァッ!!
すると、突然白い翼が現れた。
「なっ・・・!」
グォォォッ!!
と頭に記憶の濁流が流れてくる。
それが俺の頭の中で、まるでパズルのように組み合わさっていく・・・。
「・・・佐倉・・優菜・・・!」
(全て思い出した!俺は・・・メリアと一つになって・・・シュンと戦って・・・)
そこで、倒れたはずだ・・・。
なんで俺はこの世界に戻ってきてるんだ!?
シュンとはまだ決着がついてないのに・・・!
それに、タキオスともテムオリンとも・・・!!
なんで忘れていたんだろう!?
いや・・・確か・・・
『バイバイ・・・祐樹君・・・』
(っ!!優菜か!)
俺の記憶を消し、この世界に送り返したのだろう。
「くっ・・・」
気が付けば解放もいない。
おそらく優菜が記憶を取り戻したから・・・。
「・・・そうだ!なら・・・」
俺は新しい剣に覚えがある・・・!
昨日あずかった・・・あの剣!
俺はたまらず部屋を飛び出した・・・。
「おい!」
{ぅん・・・?}
俺は昨日自分で適当に作った封印を壊して剣に話し掛ける。
{あれ・・・?もしかして、私の事・・わかるの?}
「ったりめーだ!そうじゃなきゃ話すわけねーだろ!」
{ふぅん・・・?それで、何のよう?}
なんだかいい加減な女性の声。
「おまえ・・・永遠神剣だよな?」
{まぁね。それで?}
「なら・・・ユウナを知ってるだろ?」
{あぁ・・・有名だからね。カオスの最高の戦士だとかなんとか}
「頼む!俺をそこに連れていってくれ!」
{あなたが・・・?ははっ、バカじゃないの?}
俺の言葉に、ありえない、と笑いだす剣。
「なっ!俺は真剣に・・・」
{あなたねぇ、剣も持たないあなたが彼女のトコロに行ってどうするの?}
「それは・・・」
たしかに、ユウナは記憶を取り戻した。
それに、あの鬼神のような強さも見た・・・。
{ハッキリ言うわ。あなたは、今の彼女にとって邪魔よ?}
「っ!!」
神剣の言葉が、俺の心を突き刺した。
{あなたは一生この世界で暮らす運命よ。諦めなさい}
「でも・・・」
ユウナを諦められない・・・。
きっと、これは・・・責任とかそういう感情じゃなくて・・・俺は・・・
{くどいわ}
「・・・」
俺はその言葉の後、剣の言葉を聞くことはなかった・・・。
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「さぁ、いきましょう」
私が先頭に立って進む。
途中でエターナルになったユウトを加えて、準備万端。
「そうだな・・・ここで、終わらせるんだ」
ユウトは聖賢を握り締めた。
「まぁ、そんなに緊張しないで」
{そうそう、リラックスリラックス}
私と救世の声に、不満そうに呟くユウト。
「なんでそんなに余裕なんだ?」
「余裕じゃないけど・・・私は信じてるから。救世と記憶を」
「・・・そうですかぃ」
「ハァァッ!」
私は救世を切り上げて、流れを殺さず切り下ろす!
ブシャァァッ!!
かかってきたエターナルミニオンはマナへと還っていく・・・。
ここまで戦うと、精神の疲労のせいで疲れが取れない。
「ふふっ・・・ようやく来たようだねぇ」
「そうみたいですね」
一組の男女が待ち構えていた。
女性の方はあきらかに・・・だ。
男の方は、見た目は好青年だが、どこか冷たい。
「ロウ・エターナルか・・・」
「アタシは不浄のミトセマール・・・たっぷりかわいがってあげるよぉ」
鞭型の永遠神剣のようだ。
それをピシッと床に叩きつけて鳴らす。
「水月の双剣メダリオ・・・以後お見知りおきを」
軽く会釈して、二本の剣を取り出すメダリオ。
「ユウト、あなたはミトセマールをお願い」
「わかった・・・気をつけろよ?」
「私を誰だと思ってるんだか・・・いくよ!救世!!」
{いこう!ユウナ!}
キィンッ!
キィンッ!
私は二本の剣を簡単に流す。
二本同時に来たときは無理せずに避ける。
「どうしました?避けてばかりでは勝てませんよ?」
「舐めないでよね?テムオリンの部下がどれくらいなのか見たくてね」
その余裕の言葉にメダリオは顔をひきつらせる。
「その余裕・・・あの世で後悔してもらいましょう!!」
メダリオにマナが収束していく・・・!
「これは・・・っ!」
あまりに強い力・・・純粋に破壊のみを求めた力だ。
私はそれを感じ取ってすぐさまとびすさった!
ドゴォォォォッ!!!
私のいた場所に濁流が発生して、その床を削り取った。
当たればひとたまりもなかっただろう。
「避けられましたか・・・」
「今度はこっちの番!救世!お願い!!」
{いくわよ!}
私はオーラフォトンを展開した。
それはメダリオを包み込み、身動きを封じた。
「なっ・・・これは・・・!?」
驚くメダリオの顔。
勝負あった・・・。
その顔がそう物語っていた。
「マナよ・・・私に従い、敵を無にせしめよ!!!オーラフォトンメシアッッッッ!!!」
キィィィッ!!!
スパァンッスパパパァンッ!!!
オーラの矢がメダリオを射抜く。
すると、そこに大穴ができ、メダリオのマナが流れだす。
「ぐっ・・・がはっ・・・!」
「これで・・・フィニッシュッ!!」
パチッ!!
ドゴォォォォッ!!!
私が指を鳴らすと、メダリオをとらえていたオーラフォトンが爆発した!
「ぐぉぉぉっ!!まさ・・・か・・・」
メダリオの体が消えていく・・・。
「ま・・・余裕よね」
私はそう呟いて、同じくミトセマールを倒したユウトに向いた・・・。
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「・・・」
俺は雄司の部屋の前で固まっていた。
以前の事を謝るだけでなく・・・相談もしたかった。
だが・・・どうも決意ができずにノックができないでいた。
すると・・・
「祐樹?」
中から、雄司が顔をだした。
「あっ・・・」
「・・・なんだよ?」
いささか不機嫌な声。
まだ、怒っているのだろう・・・。
そりゃぁ・・・友達を忘れた、なんて言えばそうもなるか・・・。
「ごめん雄司!俺・・・思い出したんだ」
「・・・え?」
いきなり謝る俺に惚ける雄司。
「ユウナ・・・思い出したんだよ、俺・・・」
「・・・そっか、良かったな」
さっきまでと違って優しい声・・・。
「でも・・・」
「でも?」
「もう・・・二度と会えないんだよ・・・!」
俺は、悔しくて涙がでるのを止められなかった・・・。
落ち着いた頃に、雄司の部屋で俺は座っていた。
「で・・・そのファンタジーを俺に信じろ、と」
「・・・」
俺は黙って頷いた。
雄司に全てを話したのだ・・・。
ファンタズマゴリアの事・・・ユウナがエターナルだったこと・・・。
「まぁ・・・そうなら、おまえが無断で一ヵ月も休んだワケもわかるが・・・佐倉がねぇ・・・」
まだ半信半疑、といったところだろう。
たしかに、実際体験しなければ信じられないことだらけだ。
「・・・おまえはどうしたいんだ?」
「俺は、ユウナの傍にいきたい・・・でも」
「・・・唯一の剣もそれを拒む、と」
「・・・というか、俺が弱いからなんだよ・・・」
「・・・」
俺の声を聞いて黙る雄司。
「俺が・・・強ければ、ユウナの邪魔にはならない・・・そうなれば、あの剣だって俺を送ってくれたはずなんだ・・・」
「・・・もし、俺がその剣だったとしたら・・・俺は絶対におまえを送らないな。例え強くても・・・だ」
「え・・・?」
俺は雄司の言葉の意味がわからず顔をあげる。
そこには、にらみつけるような鋭い目で俺を見ている雄司がいた。
「弱い・・・ってのは、おまえの意志のことだろう」
「意志・・・?」
「本来のおまえは、喜怒哀楽が激しくて・・・それが今はどうだ?脆くて、弱くて、情けなくて・・・」
「・・・」
「たった一回拒否されただけで、こんなにも崩れるおまえなんか、絶対に佐倉の傍にはいないほうがいい」
「・・・」
「なぁ祐樹・・・おまえの惚れた女は、今どこにいるんだ?」
「っ!」
「少なくとも・・・おまえの心にはいないだろ?なら・・・男なら・・・
おまえなら、いつものおまえなら、何をするかわかるだろう?その足はなんのためについてる?」
「・・・そうだな・・・」
俺は自分の顔を鏡で見た。
昨日より・・・元気に見える。
「雄司・・・」
「うん?」
「サンキュ・・・」
「・・・祐樹、おまえは・・・エターナルってのになるのか?」
「・・・ああ。もし、そうしないとユウナに会えないなら、俺はエターナルになるさ」
「・・・よし、行ってこい!」
俺の背中をバンッと叩く雄司。
「おまえにはいろいろ世話になったからな。おまえにはそのわがままを言える権利がある」
「・・・雄司」
「うん?」
「おまえはやっぱり、俺の最高の親友だよ」
「ふっ・・・」
俺は部屋を飛びだした。
(そうだ・・・ユウナのトコロへ行くんだ!絶対に!)
俺は再び剣に会いにきた。
「オイ、目を覚ませ」
{・・・またアンタ?}
うんざりしたような声が聞こえる。
「言いたいことはわかるだろ?」
{だから・・・イヤだっつってんでしょ?}
「そうはいかない」
{・・・?}
昨日とは違う。
俺は・・・絶対に行くんだ!
「俺は、絶対にユウナの隣へ行く。おまえに何度拒否されようと諦めない。絶対にだ!」
{だから・・・あんたは弱いって・・・。迷惑なのよ}
「だったら、俺はいくらでも強くなってやる!ユウナに見合うように強くなる!絶対にだ!だから・・・俺を送ってほしい!」
{・・・あのねぇ、一時の感情で、ここでの生活を全て捨てるつもり?}
「一時なんかじゃない!」
{!!}
「俺のこの心は、絶対に永遠の物だ。
それを、おまえごときに否定なんかさせない!俺は、永遠にユウナの傍にいたいんだッッッッ!!!」
{・・・}
「・・・頼む!」
俺は頭を下げた。
{ダメよ}
「え・・・?」
{その感情自体が一時の物じゃない。人間の心なんてうつりやすいものだって事くらい知ってるわ。
それなのに、あなたみたいな人を、はいそうですか、と送るわけにはいかないわよ}
「なら・・・どうすれば俺を送ってくれる!?」
{なら・・・私に勝ってみせなさい。私をごとき扱いした人間なんて初めてだしね}
「・・・」
{ヘタをすれば、あんたは死ぬわ。それでも・・・握る覚悟がある?}
「あるさ!一つだけ言っておく!俺はユウナがいなければ死んでると同じなんだ!わかったかっ!!」
俺は躊躇せずに剣を握った。
すぐに意識が闇へと落ちていく・・・。
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『オーラフォトンメシア』
ユウナが使える数少ないオーラフォトン技のうちの一つ。相手の体を囲うようにオーラフォトンを展開させて束縛する。
そのあとオーラフォトンの無数の矢が相手を射抜く技。矢の数はいくらでも増やせるはずだが、練習しなかったために
ユウナは巨大な一本しかだせない。