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「はぁ・・・」

 

「・・・どうしたの?」

 

ついため息をついてしまい、優菜が心配そうに俺を見た。

 

「いや・・・さ。ここって俺のいた世界じゃないんだよなって・・・」

 

「うん・・・」

 

つい忘れがちになってしまう。

あまりに生活ができているので、実感がわかないのだ。

 

「今思うと、向こうでやりたいことって結構あったんだよな」

 

「何・・・?」

 

興味があるのか、いつもより明るい顔で聞いてくる優菜。

 

「例えば・・・『スター・魚ーズ、エピソードVシラスの復讐』見たかったし、予約してたCDとかもあったんだよ。そう思うと、ちょっと残念かな」

 

「へぇ・・・」

 

「そういえば・・・今日新しいスピリットがくるとか言ってたけど、まだなのかな?」

 

「うん・・・遅いね」

 

俺はイースペリアのスピリット隊隊長をやらされている。

ラキオスと正式に戦争になってしまったためだろう。

ラキオスよりスピリットの数は多いが、強さで負けている。

 

 

 

 

『すいませーん』

 

「おっ、噂をすれば影・・・かな?」

 

俺は玄関へ向かうのだった・・・。

 

 

 

「君が?」

 

「はい!」

 

後ろで束ねられた綺麗な銀髪・・・雰囲気はブラックスピリットに似ているのだが、どうも違う気がする。

 

「アルメリア・ナチュラルスピリットです!よろしくお願いします!」

 

「・・・ナチュナルスピリット?」

 

聞き慣れない単語だ。

てっきり、スピリットは何色かを持っているものだと思っていたが・・・。

 

「え、えっと・・・私はなぜか生まれた時から色を持っていなくて・・・」

 

「まぁいいけど。なんて呼べばいいのかな?」

 

「メリアです。メリアと呼んでください、ユウキ様」

 

体がかゆくなる。

どうも様付けは俺に似合わないが・・・。

 

「メリアね。知ってるだろうけど、俺は相川祐樹。まぁ呼び方はそれでいいや。これからよろしくな」

 

俺は手を出す。

すると、困りながらも握手してくれた。

 

「部屋は二階の一番奥な。俺は階段上ってすぐの部屋だから」

 

「はい!」

 

元気な声で返事してくれる。

どうやら、神剣に取り込まれていないようだ。

 

「さてと・・・俺は悪いけど訓練の時間だから」

 

「はい!お気を付けて!」

 

俺はメリアの声に見送られながら訓練場へ向かう。

 

 

 

 

 

ドサッ!

 

「っつはぁ・・・!」

 

俺は疲れてそのまま床に倒れた。

どうも強くなった気がしない。

というか・・・

 

(強くなりたくないんだ・・・きっと)

 

さらに言えば、戦いたくない・・・だろう。

誰かの命を奪うなんて行為、進んでできそうもない・・・。

 

だけど、ヤラなければ優菜に危険が及ぶ。

そうすれば解放が怒り狂うのは目に見えている。

もちろん・・・俺も怒り狂うだろうが。

いくら訓練で強くても、この力をそのまま実践で出せるか・・・俺は不安だった。

 

(サーギオスのヤツに・・・ラキオスの悠人達・・・はぁ)

 

中途半端に挑めば負ける相手たちを思い浮べる。

それぞれが、それぞれの思いを持って戦ってる・・・。

 

(なら・・・)

 

俺は両手を握り締めた。

俺だって・・・負けられない。

いい加減、ウジウジするのはやめるべきだ。

俺は・・・斬る。

斬ってみせる!

 

 

敵をじゃない・・・

 

 

(まずは、ラキオス王の野望をだ!!)

 

俺は両拳を天井に突き上げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

俺とメリアはラキオスに来ていた。

ラキオスはイースペリア以外の北方五国を統一したため、サーギオス、マロリガンについでの国となっていた。

そこで、和平を結ぶための第一歩として親書を届けにきたのだ。

 

(それにしても・・・)

 

「ふふ〜〜ん♪」

 

やたら嬉しそうなメリア。

そういう俺も、なぜか嬉しい。

特になにかあったわけでもないのに、なぜかメリアといると心が落ち着く。

 

なんだか不思議だった。

 

 

(それにしても・・・)

 

 

チラっと見ると、人々が目を背ける。

さっきから、居心地の悪い視線をくらいつづけていた。

おれ達がイースペリアの者だから・・・というわけではない。

そんなのアイツらが知るワケがない。

となると・・・

 

 

(エトランジェだからか)

 

 

服装は制服・・・この世界では異色の服だ。

それでエトランジェとわかるのだろう。

あと・・・腰から下げてる解放も原因だ。

 

{はぁ・・・いやになっちゃうわね}

 

(まったくだ・・・)

 

 

 

 

キィィィンッ!!

 

 

 

 

(!!なにすんだ解放!!)

 

話している途中でいきなり警告が響いた。

 

{敵よ!}

 

(はぁ・・・!?)

 

集中すると、西の方に神剣の反応が多数ある。

 

(でも・・・俺が助けてやる義理もないし)

 

「ユウキ様!」

 

「ん?」

 

「大変です!西の方でスピリットが!」

 

必死になって訴えるメリア。

何を言いたいのかわかる。

 

「助けにいきましょう!」

 

「・・・はいはい」

 

「やる気を出しましょう!ここで助ければポイント稼げますよ?」

 

「結構・・・打算的だな、メリア」

 

俺はメリアの顔を見て、止めても無駄だと悟った。

その瞬間、おれ達は西へと走りだした・・・。

 

 

 

「ん?」

 

俺は敵の動きが妙な事に気付く。

向こうもおれ達の反応はわかるはずなのに・・・

 

「城に向かってる?」

 

「もしかしたら、王が狙いなんじゃないですか!?」

 

「メリアの言うとおりかもな。このままだと・・・マズイかもしれない」

 

王がやられれば、ラキオスには混乱が生じる。

その隙にどこかの国が占領してきたら、きっとラキオスはつぶれる。

別に俺はそれでもかまわないが・・・そうすれば、イースペリアはどうしようもなくなり、あっという間に負けるだろう。

そうなれば、エトランジェの優菜に何か危害が及ぶかもしれない。

それは避けたい。

だからこそ、ラキオスは今の勢力程度で止まっていてほしいのだが。

 

「間に合うか・・・!?」

 

反応はとっくに城内に入っていた。

 

ビキィィィンッ!!

 

「ぐおっ!?」

 

俺はついうめいてしまう。

今までで一番辛い警告が来た。

そして、今度はどうしてかすぐにわかった。

一番強い反応・・・これは!

 

「アイツかっ!!」

 

真っ黒な服のスピリット・・・イースペリアにマナ消失を起こさせようとした張本人!

 

「メリアッ!そのままラキオスのスピリット達と合流しろ!」

 

「え?ユウキ様は・・・?」

 

「俺は・・・決着をつける!」

 

アイツとはまだ二回目・・・だが、それでもあの態度が非常に嫌いだった。

まるで、自分こそが一番辛い、みたいな顔・・・

 

(あれ?辛い?)

 

どうして辛いのだろうか・・・?

 

(・・・まぁいい!)

 

そんなの、本人に聞けば済む・・・。

 

 

 

 

 

「来たか・・・」

 

ソイツは、まるで俺を待っていたかのようにそう言った。

 

(いや・・・実際待っていたんだろうな)

 

「待たせたな」

 

「・・・いざ、尋常に勝負!」

 

「勝ったら・・・その自分が一番辛いって顔をやめてもらうぜ?むかつくんだよ・・・。

自分をそうやって見限って、一線を越えた先の自分の可能性を捨てていくヤツは・・・!!」

 

俺は解放を構えた。

隅々まで力が行き渡り・・・体が浮いてしまうんじゃないかという程軽く感じた。

 

「月輪の太刀ッ!」

 

ソイツが斬り掛かってきた。

一瞬で目の前に現れる!

 

(はやいっ!!)

 

俺は、ソイツが剣をぬく前に剣をぶつけた。

 

「ッ!!」

 

ギギギギ・・・!!

解放が、鞘から抜けきれていない敵の剣を押さえ付けていた。

 

バッ!

すぐさまソイツは間合いを取る。

 

「まさか・・・手前が抜刀できないとは・・・」

 

やたら驚いている。

それ以上に・・・歓喜の表情が表にでていた。

 

「おまえ・・・名前は?」

 

「・・・ウルカ。ウルカ・ブラックスピリット」

 

「ウルカ・・・か。今度はこっちの番だ!!」

 

シュンッ!!

 

「ッ!!手前と同じ・・・!?」

 

俺は一瞬で間合いを詰めて、抜刀した。

 

(決めるっ!!!)

 

キィンッ!

パキパキパキィンッ!!!

 

「っ・・・!そう簡単には決まらないか!」

 

俺の剣はすべてウルカに弾かれた。

 

(結構いけると思ったんだけどな・・・!)

 

解放はどうやら素早い攻撃が得意のようで、俺の太刀は並のヤツらには負けないと思っていた。

 

「でも・・・こっちが本命だっ!!」

 

「ッ!!?」

 

俺は左手から生まれている火球をウルカに向けた。

ウルカはまだ剣をおさめることもできていない。

 

「ブレイズファイヤーッ!!」

 

「く・・・ッ!!」

 

剣でとっさに俺の魔法を防ごうとする。

だが・・・焼け石に水というやつだ。

 

ズドォォォォッ!!

 

火球は火の濁流となり、ウルカを飲み込んだ!

 

「ぬあぁっ!!」