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「せいやぁぁっ!!!!」

 

「甘いわッ!!!」

 

バキィィッ!!

 

二本の剣が重なる。

片方の剣はすごく細身なのに対し、もう片方はとても大きい剣だった。

ならば細身の剣が折れてもおかしくない。

 

「タキオスッ!ここで決着をつけるっ!!!」

 

女の子・・・まだ17歳くらいだろうか?その子が高らかに叫ぶと、細身の剣がオーラに包まれた。

 

「こい!若く・・・エターナル至高の戦士、ユウナ!!!」

 

タキオスと言われている男は剣を構える。

お互いの緊張が限界まで高まり・・・

 

 

『オーラフォトン・・・』

 

女の子が何かを言いかけたその時・・・

 

 

ブワァァァァッ!!!

 

 

「!?」

 

「な・・・!?」

 

二人が眩しい光に巻き込まれていく・・・。

 

 

ズドォォォォォッ!!!

 

 

それは濁流のような勢いで、二人を飲み込んだのだった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『若きエターナルの詩』

〜果ての存在の向こう〜

 

 

 

 

 

 

 

「・・・」

 

俺はボーッと席に座っていた。

女子は部活の話とか、メールとかそういう話をしている。

男子は部活の用意をしながら雑談している。

 

そんな中・・・さっきも言ったが、2度言うほど、俺は一人ボーッとしていた。

 

別に友達がいないとかではない・・・。

だが、気付けば話している、というような友達はいなかった。

自分から話し掛けなければあまり話さない程度の関係だ。

 

自分から話さなければ友達はできない・・・。

 

だが、俺はそれが非常に面倒だった。

ちょっと寂しいと思ったりするけど、正直それでも動きたくなかった。

別にクラスに嫌われているわけでもないようだが、あれだろう。

『悪いヤツではない』程度の存在。

うん、それがぴったりくる。

別にとりたてて会話をしなくてはいけないこともない。

 

こういう冷めた考えが友達を少なくしているのだろうけど。

 

どうせあと1年半くらいの高校生活・・・

こうやって過ごしてしまうのもいいかもしれない。

 

大学にいったら新しい友達を見付ければいい。

サークルにも入ってみたいし・・・。

 

ガラガラッ!!

 

担任が教室に入ってきた。

帰りのホームルームが始まる・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

この学校は全寮制。だから、帰るといってもすぐ傍の寮にだ。

部活をやっている生徒も多い。

ただ、俺のクラスはちょっと変わっていた。

 

この学校・・・魔法などの特殊能力を持った奴らが集まる科がある。

 

それが、俺のクラスだ。

表向きは科学専攻科となっているが、実際はかなり違う。

本当の理由を知らないで受験した生徒は落とされて、残るのは能力者だけだ。

俺の家族は先祖代々、由緒正しき(以下省略)の魔法使いの一家で、俺はここを受けることを強制された。

とりたてて受けたい学校もなかったので、それで良かった。

 

今こうして通学路(敷地内)の桜道を歩いていると、自然と心が和む。

こうやって俺は平和な毎日を過ごしていく・・・。

そして、人生を全うするのだろう。

 

そう・・・思っていた。

 

だけど・・・この出会いが・・・俺を、未知の世界へに容赦なく巻き込んでいくとは・・・この時は微塵にも思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・」

 

ブギュッ・・・!

 

「・・・なんだ?」

 

俺がそんな思索をして歩いていると、突然足の下から変な擬音がした。

視線を足元に向ける・・・。

 

「うわぁっ!!」

 

つい引いてしまう。

そこには美少女が倒れていた。

 

ただ・・・抜いたままの剣を持って。

 

「・・・」

 

俺はついマジマジと見てしまう。

綺麗な顔立ちはいい・・・それはいい。

だが、剣というミスマッチはどうだろう?

細身で少女の身丈程ありそうな長い剣・・・。

 

しかも、それを抜いたままというのは・・・。

 

「そうだ!こういう時は辺りを見まわせば選択肢が出てくるハズ・・・!そう、それがセオリーッ!」

 

俺はキョロキョロ見まわすと、案の定出て来た。

ふたつの選択肢が浮かぶ・・・。

 

1、何事もなかったかのように知らんぷり

2、保健室に運ぶ

3、ここに書けないような事をする

4、剣を奪う

5、・・・

 

「ってふたつじゃねーだろ!!」

 

自分で頼っておきながら大声で否定してしまう。

大体こんな選択肢をプレイヤーに任せられるかッ!?いや、任せられない!!

 

・・・プレイヤー?

 

幸いといっていいか、ここにはこの子と俺以外いなかった。

だから、俺に訝しげな視線を向けるヤツはいない。

 

(ふむ・・・4は論外として、残り三つでどれを選ぶか・・・だな)

 

別に武器マニアでもないのに剣を奪ってもしょうがない。

むしろ、この世界では銃刀法違反?みたいな物で捕まりそうだ。

 

文字違うかもな・・・。

じゃなくて!

 

「でもま・・・初経験が見知らぬ女性でしかも強○ってのもな。だから3もなしと」

 

俺はとんでもない事を考えていたのかもしれないと思いながら、残りふたつどっちにするか迷う。

よく見るとこの子の服装はかなり変わっている。

だからかもしれないが・・・俺の本能が何かを警告していた。

 

この子と関わると、ロクでもないことになるんじゃないか?・・・と。

 

でも・・・

 

「ま、仕方ないか」

 

このまま見捨てていくのもイヤなので、俺は剣を持ち、少女を背負って保健室へと向かう・・・。

 

「で、どうですか?」

 

「体温も平常。外傷もないし、ただの貧血か何かでしょうね」

 

先生がそう言った。最初は驚かれたが、事情を説明すると手慣れた様子で看病してくれた。

 

「じゃ、俺はこれで・・・」

 

「・・・ん」

 

少女が目を覚ましたようで、俺は歩みを止めた。

 

「あら、大丈夫?」

 

「ここは・・・」

 

少女は目をシパシパしながら、あたりを見まわす。

 

「あなたは倒れてたらしいわよ?それで、そこの子につれてきてもらったの」

 

「倒れてた・・・?」

 

{ええ。大丈夫?ユウナ}

 

「!?」

 

俺は突然あらぬ方向からの声に驚く。

 

「先生、誰かいるんですか?」

 

「え?」

 

「え?だって今・・・」

 

先生は聞こえなかったようだ。

空耳なのか・・・?

 

「うん、大丈夫・・・ただ、なんだか頭がボーッとする」

 

「そう。しばらく休めば大丈夫だと思うわ」

 

{まったく・・・テムオリンもやってくれるわね}

 

「テムオリン・・・?」

 

少女が変な言葉を発する。

 

「テムオリン?何、それ?」

 

先生はそう聞くが・・・俺は聞かなかった。

また・・・あの声が聞こえたから。

どこだ?どこから・・・?

 

{・・・もしかして、覚えてないの?}

 

「うん・・・私は一体・・・?」

 

{テムオリンにジャマされて、タキオスと散々になっちゃったのよ}

 

「タキオス・・・?」

 

「ね、ねぇ、大丈夫?」

 

先生が様子の異常を感じたのか、少女に訪ねる。

気付くのが遅い・・・。

俺はさっきから聞こえるこの声の主を探していた。

女が見ている先は・・・

 

「剣?」

 

まさか・・・いや、でも物に霊が取りついたりするのは別におかしくはない。

あ、いや、十分おかしいのだが・・・。

 

「・・・」

 

俺はその剣を睨み付ける。

すると、すぐさま返事がきた。

 

{なぁに?あの目・・・もしかして、私に気付いてるの?}

 

「・・・やっぱりか」

 

{!!}

 

剣が息を呑むのがわかった。息をしてるかはしらないけど。

さっきから聞こえる声の主は・・・コイツか。

 

「悪霊か?相当強いようだな・・・」

 

剣から感じる存在感は圧倒的なものだった。

きっと虎やチーターなんかよりずっと強い。

 

{悪霊なんかじゃないわ。失礼ね}

 

(なら、おまえは一体なんだ?)

 

俺は心で会話する。こういう手のヤツはこうして会話ができる。

 

{会話の仕方もしってる・・・何者?}

 

(俺が聞いてるんだ。答えろ。こたえによっては破壊する)

 

そういう仕事もいくつか受けてきた。

・・・不可能ではないと思う。

少女が食われてしまうかもしれないし・・・。

 

{壊す?無理よ。それより・・・永遠神剣って知ってる?}

 

(・・・少しならな)

 

意志を持った剣だとか、それに絡んでいろいろ組織が存在するとか、その程度は。

詳しい事は、俺の一家で取り扱ったことがないのでわからない。

 

(まさか、おまえが?)

 

{ええ。そうよ。私は・・・本当なら永遠神剣第二位『救世』なんだけど、

今はちょっと力が封じられてて永遠神剣第四位『解放』よ}

 

(力が封じられている?どうかしたのか?)

 

{あぁ、事情をある程度知ってる人だと話が楽ね。実はちょっとある敵と戦っててね。そこで・・・ね}

 

(なるほど・・・そこで何かやられたってわけか。ってことは、彼女の記憶がないのも?)

 

{ええ・・・きっとそう}

 

(・・・これからどうするんだ?)

 

{・・・そうね。まずは記憶が戻るまで休養ってところかしら}

 

(そっか。まぁ、がんばれよ)

 

やることも決まっているなら俺が口をだす必要もない。

それに、随分この解放とやらはしっかりしているようだ。

これなら大丈夫だろう。

 

 

・・・帰って寝よう。

 

 

{あぁ、でもちょっとまって}

 

振り向きざまに呼び止められた。

 

(ん?)

 

{実は、家とか生活のアテがないのよ}

 

(なんで?)

 

{異世界から飛ばされてきたんだもの}

 

・・・それなら当然だろうな。

 

(・・・で?)

 

嫌な予感がするも、ここまで言わせてしまったらもう止まらない。

俺は自分で自分の墓を掘ってしまったようだ・・・。

 

{彼女のこと・・・しばらく助けてくれない?}

 

やはりそうきたか・・・。

 

(ムチャ言うなって。俺の部屋は一人の部屋だけど、男子寮だし、なによりこの子はこの学校の生徒じゃないだろう)

 

食堂とかに行けば一発でバレる。

抜き打ちの部屋点検なんかもあるから、そこでバレたら俺は退学かもしれない。

そうすれば俺の将来の人生パーになってしまう。

 

そんなのゴメンだ。

 

俺には俺なりの人生プランってやつが・・・

 

{あるの?}

ないけど・・・。

いや、でも俺なりに考えた高校生活を・・・

 

{考えてたの?}

考えてないけど・・・!

 

(うがーっ!!!)

 

なんだか見きられているようで悔しい。

 

{なら、このまま彼女を放り出すつもり?}

 

(あのなぁ・・・)

 

俺はついこめかみをキリキリしてしまう。

 

{要は、この子がこの学校の生徒だと思われればいいのね?}

 

(まぁ・・・そうだけど)

 

{なら、私と契約して}

 

(・・・は?)

 

{そうして、この学校に関連する人間と資料を全て書き替えるのよ。

私の力なら不可能じゃないわ。記憶を全て消してしまうよりはるかにマシだからね}

 

(・・・いや、契約ってなに?)

 

{説明するのはもはやめんどうよ。簡単に言えば・・・}

 

契約の内容について聞いた。

だけど・・・

 

(おまえは彼女の剣だろう?)

 

{記憶が戻ればね。だから、今は契約とかなかったことになってるの。んで、どう?}

 

(・・・わかったよ)

 

俺は解放に押し負け、契約することにした。

そして・・・彼女の存在は学校の中に溶け込んだ。

相当疲弊したが・・・。

ただ、物質的な問題で、やはり彼女は俺の部屋に住むことになる。

そこらへんの記憶は曖昧にしておいたが。

まぁ・・・剣がここにあるのだし、あまり記憶喪失の子を突き放すのもかわいそうだったしな。