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深夜・・・・・。

どうして、こんなに時間が掛かってしまったのだろう・・・?

震える手で、そんな事を思っていた。
本当は心の中で泣きたい気分だ・・・。


今日も日記を書いている・・・でも、二日目でこんなに悲しい事を書くことになるなんて・・・
いや、本当は悲しいのは自分自身の事だからなのかもしれない・・・

新しい事は・・・楽しい事ばかりじゃないね・・・・
そんな事を思った一日だった。

「生まれて31日目・・・『新』が『常』に変わる時」


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今日は朝から、良い天気♪

いつもも通りの訓練から始める。
また、アイスバニッシャーの練習だ。

えっと・・・・昨日は木を燃やしてしまったから・・・・うん!・・ここならいいよね♪

家から離れて広い庭の中心に向かい

そして、また一から練習を始めた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

もう何度目か、わからないくらい失敗を重ねた時、家からあの馬鹿が出てくるのに気がついた。
手には『無知』様が握られている。

「よう!アリス!朝から毎日熱心だな!!」

そんな言葉を掛けられても私は気にせず練習を続ける。

「おいおい・・・・何も無視しなくてもいいだろうに・・・」
「―――――うるさいですね・・・なにか用でも??」
「おっ、やっと返事したか」
本当はしたくない・・・と内心で思っていた。

「まあ・・・今日はちょっとな『無知』から話があるらしい」
「『無知』様がですか???」
なんだろう?・・・お話ならお昼時にでも伺うのに。
普段は昼の時間は『無知』様に色々な事を教えていただいている。
いつもわからない事が多いけれど・・・でも、楽しいことには、変わりないから。
それに、なんだかお話しているだけで安心できる声色なんだよね♪

『おはよう。アリスよ』
「はい!おはようございます!!『無知』様!」
『ふふ・・・朝から元気が良いな・・・』

そんないつものやりとりなんだけど・・・・
今日はなにか引っ掛かる物を感じた。

・・・・・・・・・そうか・・・・

少しだけ理解したと思う。
あの声だ・・・・私に申し訳ないと思っている時に感じる声色・・・・あの声

「アリス・・・・黙って聞いてくれ」

先に言葉を出したのはあの馬鹿だった。
そんな事に驚く前に、この馬鹿の真剣な眼差しの方が驚いた・・・そして、なんだか怖い・・・

『アリスよ・・・汝は今日から戦闘訓練に入る――いいな』

えっ・・・・・・・・・・

今、なんて言ったのだろうか・・・・・??

「アリス、これから先は戦えなくては生きれない・・・・わかるか?」

え・・・・・・・・・・・ちょっと・・・・・まってよ・・・・・・・なに・・・・・・・・・それ・・・・・・・・・・

『殺すも、殺されるも等価値となる世界に入る・・・・と言う意味だ・・・・アリスよ』

私が困惑するのを見越したような言動・・・・
用意していたかのような言葉・・・

そして・・・・・・私に対する初めての押し付け・・・・

そんな言葉に私は感情的になっていたのかもしれない・・・

「ど・・う・・して??――――――っっ!!どうしてですか!!!??」

気がつけば叫んでいた・・・

「私は、役に立ちませんか?!家の家事も!お仕事も!出来る事は何でもします!!!だから―――戦いだけは、嫌なんです・・・・・」


本当は戦うことが嫌なのではない・・・・嫌なのは・・・・・


「血」・・・・を見るから・・・・


私が生まれた時・・・・そこは・・・・血の海だった・・・・・・・・


ある夜の世界・・・あの馬鹿と『無知』様が戦っている最中・・・その中で私は生まれた・・・・・・
そして、血が降り、血が海のように流れ出す時を見ることが初めての「新しい」ことだった・・・・

そのとき以来私は血を見る事が・・・・・・・・・嫌に・・・・

『これは強制だ!別に我を恨んで貰っても構わん。だが変更はせぬ・・・いいな!!』

初めてのきつい口調・・・私は、驚きと悲しみで心が痛い・・・・

『なお訓練は昼過ぎより始める・・・・わかったな』
そんな言葉は、もう私には届いていなかった。

「アリス・・・・すまない・・・」
あの馬鹿の、この言葉を受け止める事程度しか今の私には・・出来ない・・・・

そして・・・なにも考える事が出来ずに訓練時間が来てしまった・・・・


―――――――――――――――――


『では、始める。・・・・だがその前に・・・逃げてもいいのだぞ??』
「俺達は無理強いはしない・・・って言っても強制してる奴が言う言葉じゃないな・・・はは・・・」

訓練が始まる前にあの馬鹿と『無知』様はそんな事を言った・・・・
でも、私にはわかるんだ・・・

「逃げたら・・・殺すつもりなのですね・・・・」

『・・・・うむ・・・・そうだな』
「・・・・・ああ・・・・」
わかりきった返答・・・なぜなら・・・・それほどまでに『無知』様とあの馬鹿の真剣さが滲みでているから・・・
今までとは比べ物にならないくらいの真剣さ・・・

『わかった・・・・そこまで、理解しておるなら・・・・・良いだろう・・・・では・・・始め』待ってください!!!」

慌てて『無知』様の言葉を切った。
そして・・・・

「せめて・・・せめて教えていただけませんか?・・・・・・私が生まれた時の事を・・・・」
「いつもの」質問を私は言葉に選んだ・・・・

『・・・・・・・・・・・・・言いたい事はそれだけか?』
「アリス・・・・・・悪いが・・・・・それは言えない」
それは「いつもの」返答だった・・・・

「ですが!!――――「黙れ!!!」
つっっっっ・・・・・・・・・!!!!!!!

私は硬直していた・・・・
あの馬鹿が・・・・・本当に殺意の塊みたいな顔で怒鳴るなんて・・・
常にある余裕なんてない・・・・

「ふう・・・悪いが今はこれだけしか言えない・・・・・俺達はお前に死んで欲しくない――いいか」

そして顔を少し緩めそんな事を言った。

わからないけど・・・・わかる気がする・・・・そんな真剣さがあった・・・・・だから私は・・・

「わかりました・・・・」
そう答えるしかなかった・・・

『話は纏まったな・・・では説明する。・・・今回は時期は早いが実戦から行う。相手は我が造り出した眷属・・・つまりはミニオンだ。
このミニオンを倒す事・・・それだけだ』

「・・・・・・はい・・・」

『案ずるな・・・汝の相手はあくまで低級ミニオンだ・・・ほとんどエーテルは使ってはいない。汝が勝てぬ相手ではないだろう』
「アリス・・・今回はあくまで相手を倒すことだ・・・・それ以外は考える必要はない、いいな」

「勝てる」と言われる戦いでも・・やっぱり嫌な気分しか無かった・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


そんな事を考えて、どれ位時間がたったのだろう・・・・・

気づけば私の目の前には黒の特性を持つミニオンがいた。
そして・・・もう言葉は要らないのか『無知』様もあの馬鹿も一切言葉を発さなかった・・・

目の前のミニオンも自分が成すべき事がわかるのか、当たり前のように神剣を構えている。

殺すのか・・・私を・・・
そう思った・・・・

そして・・・・私が「今」考え始めていることに後で絶望することになる・・・・













直立・・・構え・・・・・・・・・狙いは・・・私の首・・・・

間合い・・・・およそ5歩・・・・

剣速・・・・相手に分あり・・・腕力・・・・相手に分あり・・・・・武器射程・・・・・私に分あり・・・

神剣魔法発動・・・時間なし・・・・・

なら・・・攻撃行動を最適化・・・・・複合攻撃により対処・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・消すのみ・・・・



この思考までに、一体どの程度掛かったのか・・・・・
私は知らずに驚くべきスピードで計算していた・・・・


そして・・・相手は私がこの自分の思考の異常さに気づく前に動いた・・・

一歩目を確認・・・・

「最大魔力で足元に氷床展開・・・・・」

二歩目確認・・・・

「行動指定なし・・・」

三歩目を確認・・・

「斬撃体勢に移行・・・・」

四歩目を確認・・・

「武器射程を利用し、迎撃――横に一閃」

相手・・・行動予測通りに上方跳躍・・・

「最速で炎を足元に射出・・・」

相手・・・落下速度に乗せ、斬り降ろし体勢に移行開始・・・

「相手の体勢変更完了前に神剣を離し、急激な上昇気流に乗り奇襲・・・」

終わり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

最後に神剣を離し・・・跳び上がって相手の胸に砲弾の如き「膝蹴り」を叩き込んでいた。


そして骨が砕ける音が響いた・・・



――――――――――――――――――――


『やはり・・・・・な』
「・・・・・ああ・・・」


――――――――――――――――――――



どれほどの時がたったのだろう・・・・・・・
太陽は傾き始めてから・・・随分時間が経っている。
それでも私はその場に立ち尽くしていた・・・・
何も考えることもない・・・・
でも・・・・一つだけ『無知』様に聞きたい事があった・・・・
その感情のためか、力が抜けてしまっていた私を奮い立たせてくれた・・・・・・

「ねえ・・・『無知』様・・・・これも・・・「新しい」こと・・・なの・・・・???」

だた言葉を繋げただけの質問・・・・

『逃げたいか・・・・?汝は今つらい感情と言うものを新しい形で受け止めている』

「逃げてしまってもいいのかな・・・・?」

『先に言うが―――逃げる事も、向かう事も、価値は同じだ・・・汝が逃げるのならそれもよい』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

『我は一生懸命にこの新しい感情に立ち向かえなどど言うつもりも毛頭ない・・・なぜかは――いや・・・・今はいいだろう」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

『恨むか・・・このような仕打ちをした・・・我を・・・・?」

「・・・・いいえ・・・・昨日の質問の意味が少し解かりましたから・・・・・」

『そうか・・・・・ならば、良い・・・・・「よくやった」などとは言わぬぞ・・・それも今の我には押し付けでしかないからな・・・』

「はい・・・わかっております・・・」

『では、帰ろう―――我らの家に』


その後、私はその場に残されていた『無知』様を持って・・・家に帰った・・・・
でも、私は知っている・・・あの馬鹿も、心配なのかずっと聞いていた事を・・・・

ふふ・・・・少しは元気になったかな・・・・・・・・カラ元気だけどね・・・・・



家に帰ってからは何時も通りの夕食に、何時も通りの会話。
あの馬鹿がふざけて、『無知』様と私が一蹴する・・・・
そんないつもの光景があった・・・・
あの馬鹿も・・・ワザとふざけてたのは多分・・・・優しさなのかな・・・・
ふふ・・・・唯一今日の「嬉しい」・・・「新しさ」だった・・・

そして夕食の最後に気になって尋ねた事があった。

「怖くないのですか・・・・・?―――あんな私を見てしまって・・・・」

心配そうに聞くと、ニヤリと笑ったあと急に真面目になり、あの馬鹿にこんな事を言われた・・・・

「いいんだよ・・・アリスが変わっても。・・・それなら俺達が受け入れる・・・例えどんなになってもな。
だが、これだけは言っておく。自分の存在や力、それにいままでの行い、それを他人の責任に押し付けて生きるなよ・・・・
お前を造ったのは確かに俺達だ。言い訳も無い・・・恨んでくれても構わない。けどな、もしこれから先も生きていたいのなら、
お前はお前の意思で生きる道を見付けて・・・それに疲れたら何時でも戻って来い。それくらいの責任位取るさ・・・・」

まあ・・お前がずっとここに居るならば全く関係ない話だがな・・・っはは!!

そんな事を言い残して去っていった。

そして・・・少しだけ楽になった私が居た。


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深夜


やっと、鼓動が収まった私は落ち着きを取り戻していた・・・・
でも・・・・私は忘れないだろう・・・・、
今の自分の事を・・・・今日の戦いと・・・『無知』様とあの馬鹿の解かりにくい優しさ
そして・・・・・「自分の中のなにかを」・・・・・

昨日の『無知』様の質問の意味をもう一度考えて見る・・・・・

『新しい事は無限にあるのに、詰まらないことは数えるほどしかない・・・・・』

『無知』様・・・今私は少しだけ理解しました・・・・

新しい事は、楽しい事ばかりじゃないことに・・・・

「わからない」からこそ「楽しく」て「苦しい」のだと・・・

でも・・・お許しください・・・・

これ以上変わりたくないんです・・・・・

これ以上変わって行く事が怖くて仕方が無いんです・・・

あの力に気づいてしまう事が「新しい」ことならば・・・・

あの力を使う事が「新」から「常」になるのならば・・・・

私は・・・・「不変」でありたい・・・・

そう願います。

「願わくば・・・不変の日々を私に・・・」

「31日目・・・・終わり」




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番外編

『日記の端その2――「引越し当初」――』


古いエーテル冷蔵庫を見ている、一人と一本(笑)

「なあ・・・これ・・・なんに見える?」
『・・・・・さあな・・・・多分だが・・・・牛肉の化石か・・・・?』
「日付は―――うぁああ!!!一周期以上も前じゃねーか!!」
『なに・・・?まことか??!!!』
「おいおい・・・どこだよ・・・日付が「昭○」位でがたがた言ってる連中はよ――これの方がよっぽど「学会発表」もんだろうが!!!」
『ところで「昭○」・・・とは何時だ???』
「いや・・・知らん・・・・」


終了・・・・・

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