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はぁ・・・・・今日も一日が終わる・・・・・・

そして寝る前に、ふとカレンダーを見た。
数えてみる・・・
28、29、30・・・・そうか。今日で私が生まれて30日目だったんだ・・・・
どうだろう?この30日・・・長かったかな?短かったかな?
生まれてまだ、あまり経たないからわからない・・・・けれど・・・
今の自分は少し幸せかななんて・・・そう思える。
なぜなら・・・退屈に思える事が生まれてから一度も無いと思えるから。
全てが新しいものだった・・・・何もかも・・・
だから、今の気持ちを少しでも残して置きたい・・・・

昼間に馬鹿主人に聞いたら、日記でも書いたらどうだ?と言われた。

だから・・・・

うん。日記を書こう!
今の自分がここにいる証として。
自分が今まで生きて来た足跡として。
・・・・・いつまでも残ればいいな・・・・

机を探してみる・・・・・手頃な大きさの青い表紙のノートがあった。
えっと・・・・これにしよう♪

では表紙に名前を書いて・・・っと。
     「アリスの日記」

うん♪これでいいよね。
では、今日からはじめよっと♪

えっと「生まれてから、30日目・・・はじまりのページ」




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今の私の家は二階建ての古い家。
馬鹿主人と世界を適当に周っていたら偶然古い空き家を見付けて勝手に住み始めた。
木で出来ていて、今にも火がついたら燃えてしまいそうで心配なのだけど・・・・
でも・・・私はこの家を気に入っている。庭もあるしね♪


今日も朝から神剣の「風邪」を持って庭で訓練♪
でも・・・庭というには余りにも殺風景なのだけど・・・
なぜかは・・・後で、説明っと・・・(汗)

訓練と言っても私は一度も出来ない「アイス・バニッシャー」を今日も庭で練習中・・・なのだけど・・・・

「マナの振動を凍結させよ・・・って・・・きゃあぁ!!」

・・・・・・・また、青いファイヤー・ボールが、出来てしまった・・・・
それが、適当な木に当たり、炎上した・・・・
あちゃぁ・・・・・・また、失敗かぁ・・・・っと・・・お水、お水!!

「おいおい・・・また庭を焼け野原にする気か??」

そんな声が、木に水をかけ終わった私に届いた。

「頼むから、家「には」火をつけるなよ。やっと見付けた家が一ヶ月足らずで炎上じゃ洒落にならないからな」

そんな声を聞き、少し不機嫌になった私はこう答えた。

「だったら働きもしない「あなた」が、「的」にでもなってくれるんですか?」

そう不機嫌な気持ちを込めて言っても、この男は笑ったままこう言い返す・・・

「別にいいが、それで俺が吹っ飛び家に突っ込んで炎上したら本末転倒だろ・・・な?」

そう言いつつ・・・はっはっは!と笑いを浮かべて家に戻ってしまった・・・・

全く・・・この男には何時もこんな感じであしらわれてしまう。
この男一体何者なのかしら・・・・生活に付き合って、もう結構経つけど・・・・
「馬鹿」「変人」「犯罪者」「芸人」「エターナル」
それくらいしかわからない・・・・
本名を聞いても「売れない芸人が、名乗ってもな・・・」としか答えてくれない。
そしてやっと教えてくれた名前が「S(エス)」だった。
最初はふざけた名前だ!!と思った。
だってシークレットって事さ!!なんて言うんだもの。
でも・・・別に嫌いじゃない名前だと思う・・・・と言うか・・・
その前にこんな主人は「馬鹿」で十分だと思うから・・・関係ないか。

それじゃ燃やしてしまった木を片付けてっと・・・・
次は「クロン」のお世話しないと。

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「おはよう♪クロン!」

リビングに入った私は古いソファの上で寝ている、「狼」に挨拶した。

「ワン!!!」

コレだけ聞くと、狼じゃなくて・・・「犬」だよね・・・・
この狼は「クロン」って言って、私が飼っている。
大人の狼の半分位の大きさで耳が垂れてて可愛いの♪
因みに『エーテル体』で出来ているらしく、餌はいらないって譲っていただいた方が言ってた。
その方の話ではこの狼自体が4、5位神剣くらいの力があって、私より強いのだって。
すごいね・・・・傍から見れば小さい狼なのに・・・

「ワン♪」
「わっ!ち、ちょっと?!いきなり肩に乗らないでよ!!」

この通り、いつも肩に乗ってくるんだよね。
まあ、思ってるより軽いからいいんだけど。


「さてと、朝食の準備しなきゃ!」
キッチンに入り、エプロンを掛けて朝食の準備をした。
家の生活が筆舌し難いくらい苦しいので、朝食もあまり豪勢にはいかない。
適当に野菜炒めとオムレツを作り、あの馬鹿を呼ぼうとした・・・
その時、その馬鹿が丁度よく入ってきた。
顔にはまた、ロクでもないことを考えていそうな表情があった。

「なあ・・・アリス」

「・・・・・・・・・・なんですか?」

たっぷり、間を置いてから渋々返事をした。

「仕事が見付かったんだ」

え・・・・・・・

私には何を言っているのかが、最初わからなかった。
この馬鹿は、私に働かせて生活しているのだ!!
つまり、エーテルと金貨などの生活費は私が稼いでいるわけ。
普段は家でごろごろしているだけなので、この言葉を聞いた時は最初、本当に何を言っているのかが私には理解できなかった。
そしてやっと現状が理解できた私は答えを返す。
「本当ですか???」
これで少しは生活が楽になると思っていた私は次の言葉で絶句することになる・・・・

「とりあえず「窃盗」と「強盗」の仕事なら幾らでもあるって、この「求人エターナル」にあってな・・・窃盗でエーテル盗めば
しばらくは、生活はどうにでもなるし、こっちの「強盗」は協力者参加で報酬もでるらしい・・・って聞いてるのか、アリス??」

呆然としていた私は、返事をするのも忘れていた。

「まあいい・・・・で、聞きたいんだが、この二つの仕事ならどっちがいいと思う。
俺的には鍵開けが楽な「エーテル金庫窃盗」が一押しなんだが・・・・一応アリスの意見でいいから、聞かせてくれよ?」

ふう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

こ・・・この・・・男は・・・・・全く・・・・いつも・・・・いつも!!!!



「真面目に働け!!!この馬鹿!!!」

その場に置いてあった「風邪」で、ブルーファイヤー・ボールをこの馬鹿にお見舞いした。
そのままキッチンの外まで吹っ飛んで行ったが、10秒もしない内に戻って来た・・・・
全身火傷してるのに気にする様子もない・・・呆れた頑丈さだ・・・・

「まあまあ、そう言うだろうと思って今度は真面目に持ってきたさ。・・・・・『廃品回収』だ!」

そう言われた私はすぐにある可能性にたどり着く。
私の経験から察するに。

「・・・・・・・・・詳しくは「エーテル結晶体の不法回収」と続けたら・・・・殺しますよ・・・・」

今の気温はどの位でしょうか??
私には氷点下まで下がった声色で耳に流し込んだと思うのですが。
なのに・・・この男は・・・

「流石!!鋭いじゃないか!!だったら説明なんて不要だよな!」

なんて言ってきやがりました・・・・



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朝食を終えた私は、リビングで「家計簿」をつけていた。
これをつけるのも、私の仕事。
えっと・・・・「食費」がこれだけで・・・「エーテル変換電気」がこれだけ使ってるし・・・
私の自分の「維持エーテル」が、これ位かな???
んと・・・・計算、計算・・・・・・・・・・・・・・ってえええええ!?!?!?
どうしよう・・・・このままじゃ、電気関係が使えなくなるかもしれない・・・・よし!!!
こうなったら、あの馬鹿の食費を削ってやる!!
そんな、事を考えていると、近くのタンスに立て掛けてある「神剣」から声がした。

『アリスよ』

突然聞こえた声に私はハッとして後ろを振り返った。

「『無知』様でしたか・・・」

この神剣は永遠神剣第三位「無知」様

あの馬鹿が契約した神剣。
でもなぜこれほどの方が、あの馬鹿なんかを認めたのかわからない。
性格は、最初は威厳のある方だなと思っていたのですが・・・・
詳しい事はのちほど・・・・
博識である事と、自分の教えには絶対の自信があると仰っていた。
それでも、自分の考えを強制はしない・・・それが、自分の有り方だそうだ。
私も、以前お話を聞いた事があった。
でも、難しくて半分も理解できなかったな・・・・
その中でも・・・最後に言われた言葉だけは今も心に残っている・・・・・

『汝・・・知をしるからこそ、馬鹿となれ』

この言葉だけは、頭から離れる事は無かった。

そんな、事を考えていると、ボーっとしてたのかもう一度呼びかけられた。

『アリスよ・・・!』
「あっ!はい!すいません・・・!!」

私は慌てて返事を返した。ちょっと怒られるかなっと思ったけど・・・・

『いや・・よい。それよりもだ、あの「馬鹿」はどうした??』
「ああ、あの「馬鹿」でしたらキッチンで「ウェルダン」になっていますが」

・・・読んで字の如くな返答をした私であった。

『・・・・そうか。ところで、何時も迷惑を掛けるな・・・・』

少し申し訳なさそうな声色でそう仰った。

「いえ。別に迷惑だとは思っていませんよ・・・新しいことばかりで楽しいものです」
本心で言ったつもりだ。

『そうか、なら我の退屈しのぎに付き合ってくれ・・・一つ問うぞ・・・「新しい事は無限にあるが、詰まらない事は数えるほどしかない・・・」
この意味がわかるか?』

いきなりの問いかけを受けた私は戸惑っていた・・・
新しい事は今の自分にとっては全てだ、それ以外は無いと思う。

「わかりません・・・・今の私は新しい事ばかりで詰まらない事がありませんから・・・」

そんな返答しか返せなかった。落胆されてしまう、とも思ったけど・・・予想外な言葉が返ってきた。

『ふふ。いいのだ!それで』
「えっ・・・・・・!」
『今、汝は「知」を知ることに向かっている・・・その返答が答えだ』
「はぁ・・・・」

一体何が聞きたかったのか全くわからなかったけど、満足はしてくださったらしい。

『気にすることは無い、今の答えでも汝にとっては及第点だ』
「私は何もわかっていないと思いますが・・・・」
『いや、「わからない」「詰まらない事が無い」この二つが出ただけでも我は満足だ』

ん・・・・やっぱり仰った言葉の意味は私にはわからなかった・・・

『はは、これだけでも我が契約者よりもずっとマシだぞ』
最後にはそんな事まで言われてしまった。

『では・・・我はまた眠る・・・』
「あ・・・はい!ご苦労様でした!!」

『ふははは!』

あれ・・・私、変な事言ったかな???

『いや、我らが苦労を掛けてるのは汝であろう?それなのに「ご苦労様」とは・・・な』
「はぁ・・・・変でしたか・・・?」
『十分な』

こんなやり取りを繰り返している私は『無知』様の事が好きなのだろうと思う。
そんな気分になったひと時だった・・・。
って・・・・家計簿付け忘れたのは後で気づいたのだけど・・・・


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深夜。


気づいた時には、もう時計は深夜の時間を指していた。
あっ!このままじゃ・・・睡眠不足になっちゃうね・・・
今日はここまでにしよっかな。
ふう・・・・最初だから結構疲れちゃった・・・
でも、日記もなかなか楽しいね♪
明日も頑張って書こう。

ふあぁぁぁ〜

・・・・・・・・・っとあくびが出てきたことだし・・・
そろそろ寝よっと。


ではでは・・・・おやすみなさい♪

「願わくば明日も新しい事ばかりでありますように・・・・」

「30日目・・・・終わり」

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番外編

『日記の端その1・・・無知な問答・・・「以下略」について』


「なあ、『無知』??・・・・「以下略」ってどういう時に使うんだ???」
『・・・お主のその問いぐらい下らないものを「以下略」と言うのだ・・・』
「はあ??意味わからないんだけど・・・」
『・・・・・・・・つまり、一度した事などを再度する時に面倒になるから次からは「以下略」と言うわけだ』
「なるほどな・・・・・納得!」
『と言うか・・・その程度も知らんのか・・・・』
「で、早速使ってみてもいいか???」
『まあ・・構わぬが・・・・・』
「では行くぞ!!・・・・・・・・・なあ『無知』、今日さ!!・・・・「以下略」・・・・」
『・・・・・・・・・・・・・・貴様死にたいのか!?』
「なんでだよ!!あってるだろ!!」
『まだしてもいない事に「以下略」使ったらわからんだろうが!!!!!!この馬鹿!!!』

終了・・・

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