「じゃあ、これから…頑張ってください」
「ああ、行ってくる」
「ん、大丈夫だ」
「では、行ってまいります」
「ファルス様〜、帰ってきたら、ネネの実のパイをよろしくね」
オルファの言葉である。
それに、つい、ファルスは苦笑し、
「ああ、友達に皆の分のパイを用意しといてもらうよ」
それが、見送りの言葉になった。
ラキオス城の正門前でファルスは悠人たちを送ったのだ。
魔龍退治という壮大な任務の見送りをしたのだった。
禍根のファルス 第五話
ファルスは四人を見送った後、訓練所に向かった。
本日は久しぶりに第二詰め所のスピリットとの訓練に参加する。
ここしばらくは、悠人たち第一詰め所の方にばかり参加していた。
そのため、セリアやヘリオン、ナナルゥとは会ったが、ヒミカたちとは親書を届ける任務以来会っていなかったからだ。
悠人たちのことは心配である。
だが、第二詰め所の皆に会うのが久しぶりだという喜びの気持ちもあった。
ガシィ、ブン、ザッ、武器が交差する音や振られる音、突かれる音が聞こえる。
訓練所に到着すると、既に訓練が行われていた。
「皆、早いねぇ」
辺りを見回すと、4つの班に分かれて訓練が行われている。
ヘリオンとファーレーンは一緒に居合いの訓練を。
セリアはネリーとシアーの基礎訓練として、三人で訓練場の端で走り込みを。
ヒミカとハリオン、ナナルゥはセラスを加えた四人で模擬線を。
同じく、ニムンストールは同い年ぐらいの少年と模擬線をしていた。
――――スピリットと共に訓練するなんて、いったい誰だ?
少年を見ていて気づく。
あの少年はどこかで見たことがある。
ここ最近の記憶を思い出して照合する。
「――――ロイか」
名前を呼ばれた少年は、呼んだ方向に振り向く。
自分の名前を呼んだ相手が憧れの人物だということに気づき、嬉しさに頬が緩む。
だが、次の瞬間にその表情は苦悶の表情へと変化した。
「ふふーん、余所見なんかするからだよ」
ニムンストールの突きがロイの腹部に直撃したのだ。
ロイがファルスの方に振り向いた一瞬の隙、その点をついたニムンストールの勝ちであった。
「…この…ヤロウ…」
「やめろロイ。今のはお前が悪い」
しゃがみ込んで腹部を抑えながら、目の前のニムンストールを睨み付けるロイ。
そんなロイの肩にポン、と手を置いてファルスはロイを静止した。
戦場では隙を見せた者が死亡する。
そのため、ロイの行動を責めはしても、ニムンストールのことを責めることは出来ない。
「ふん、素直に負けたって事を認めるんだね」
「――――言っておくが、ロイの余所見がなければ、負けていたのはニムだからな」
「ニムっていうな! ファルスの馬鹿」
ニムンストールは顔を真っ赤にしてファーレーンの方まで歩いていった。
残されたファルスとロイ。
ファルスはロイに向き合った。
訪ねたいことがあるからだ。
それは――――。
「どうして、スピリットの皆と訓練をするようにしたんだ?」
「…ファルスさんの言ったことを理解したかったからです」
迷いのない目をしていた。
それを行えば自分の望んでいたものが手にいれられると信じて疑わない目だった。
「ファルスさんの言ったことを理解するには、スピリットたちと一緒に訓練すればわかると思いました」
ファルスは知らずのうちに優しい笑みを浮かべていた。
「それで、何かわかったか?」
「ええ。スピリットも人間と大して変わらないと思いました。それが答えかわかりませんが、そう感じました」
ファルスの手がロイの頭に置かれる。
ファルスはロイの頭を撫で始めた。
ロイはそれを恥ずかしい反面、嬉しくも感じていた。
「俺もそう思う。……そうあるべきなんだと思う」
ロイはその言葉で、ファルスが望んだ答えに、望む世界がわかった。
スピリットと人間が対等の立場で生活できる世界。
それを望んでいることを感じた。
ファルスに頭を撫でられている中、ロイはある感情があった。
「ただ……」
「ただ?」
同時にファルスの撫でる手が止まる。
「ニムンストールがムカつきます」
苦笑するしかなかった。
個人的な好き嫌いに対し、どうこう言えるわけもなかった。
しかし、彼は気づかなかった。
その嫌う理由が同属嫌悪的なものだということを。
セラスはファルスが来たことに気づくと、全員の練習を止めた。
「数分の休憩! 終わったら、各自模擬戦を開始する」
「誰とやるんですか?」
ヘリオンの問い。
模擬戦は相手との組み合わせも戦う上で重要なものである。
戦いにくい相手とやって弱点の克服に努めたり、戦いやすい相手とやって自信をつける。
勿論、自分より上の相手とやることによって、実力をあげるというのが一番の目的である。
セラスがファルスを見る。
「今日は久しぶりにファルスが来ているから」
嫌な予感がした。
このような嫌な予感は大抵的中することをファルスは知っていた。
「まず、ファルス対セリアとヒミカ」
二人がファルスに対して視線を向ける。
ヒミカはともかく、セリアは明らかに敵意を出している。
――――やっぱ、前回のことを根に持っているのかなぁ?
ちょうど、前回と同じ組み合わせだし、と思った。
「次に、ファルス対ネリー、シアー、ハリオン」
「――――待て!」
止めるしかなかった。
連戦の上、1対3。
嫌がらせともいえる組み合わせだった。
「どうした?」
「どうしたじゃないだろ! 何で連戦の上、1対3なんだよ」
「たまにはいいだろ?」
「よくない!」
セリアとヒミカのコンビ戦の後に、連戦で1対3というのは流石に体が持ちそうもなかった。
実際、初戦のコンビ戦で負ける可能性もある。
前回は何とか勝利できたが、今回はそうともいえない。
「せめて、連戦じゃなく間を空けてくれよ」
ファルスの願い。
だが、その願いは予想もしない言葉で返された。
「だって、その後にファーレーンとニムンストールのコンビ、ヘリオンとナナルゥのコンビ戦の計4戦を続けてやるんだよ」
「……何だよ。それ……」
シャレにならなかった。
1対1ならともかく、1対多数が4戦。
いつ負けてもおかしくない内容である。
「まあ、とりあえず第一戦目を開始するぞ!」
セラスの発言と共に、ファルスとセリアたちが訓練所の中心へと歩き始める。
お互いに、訓練士の考えたプログラムには出来るだけ逆らわないようにしているからだ。
セリアたちはスピリットだから、ファルスは訓練に参加させてもらっているという点があるからだ。
中心につくと、お互いに戦闘態勢を取り、
「始め!」
その言葉と共に、戦闘が開始された。
ファルスの正面にはヒミカがいる。
セリアはファルスの周囲を旋回している。
ファルスは二人の行動を見ていた。
出来るだけ、二人の行動を見てから、次の行動に移ることを思考しているからだ。
ファルスが様子を見ていると、先にヒミカが動いた。
ビュン、ビュン、
ヒミカの流れるような双剣の動き。
それをファルスは受けようとはせず、避けることに専念していた。
そんなファルスの右側面から、セリアが迫ってくる。
ファルスはヒミカの攻撃を避けながら、セリアの横薙ぎの太刀を、自分の体勢を大きく下に崩すことによって回避した。
そのまま、ファルスは後転をし、距離をとった。
「これで!」
ブン、ブン、ブン、右、左、右、左とヒミカの左右のコンビネーションを何とか避ける。
コンビネーションの合間に攻撃をしようとしても、セリアのカバーが入る。
双剣は攻撃力が高い反面、大きな隙が出来やすい。
その隙を狙おうとしても、側面からのセリアのカバーによってそれが阻まれる。
セリアとヒミカのコンビネーションは完成させられていると言ってもいい。
ブン、ヒミカの左の一振りを回避する。
ヒミカはそのまま、慣性に沿って回転をし、裏拳のように右の剣戟が来る。
しかし、慣性に沿って放たれるスピードがのった一撃も、ファルスの居合いの方が速かった。
「……!」
ヒミカの喉もとにファルスの木刀が向けられている。
寸止めさせられている。
「はい、ヒミカは終了、と」
冷静に試合を観戦しているセラスは、ヒミカの終了を言い渡した。
周りの皆は、三人――――ここからは、二人になったが――――の戦いを固唾を呑んで見ていた。
「くっ!」
セリアの呻き。
それはファルスのプレッシャーによるものかはわからない。
だが、彼女がそれを漏らしたという事実しかわかることはなかった。
数撃、攻撃が交わされた。
セリアが剣を袈裟懸けに構える。
セリアの必殺の一撃が来ることを、ロイ以外の人間は気づいた。
ファルスはセリアの構えに対し、居合いの構えを取る。
「はぁぁあ!」
セリアの渾身の一振り。
しかし、その一振りはファルスに届かなかった。
ガシャアーン
セリアの模擬刀が地面に落ちた。
ヒミカの時同様、セリアの首筋には木刀が向けられている。
一瞬の出来事だった。
セリアの一撃がファルスに当たる直前、ファルスの居合いがセリアの模擬刀を持つ手を狙った。
居合いの勢いを殺さず、ファルスはそのまま一歩踏み出し、セリアの首筋に木刀を向けた。
セラスも知らないことだが、この技は、ファルスが剣の先生から教えてもらった技である。
その技の名は「神断の太刀」という名前だ。
「はい、セリアも終了。それじゃあ、次の試合に行くよ」
「本当に連戦かよ!」
結局、ファルスはそのまま連続で二試合行った。
三試合目が終わり、四試合目が始まろうとしたとき、
どーん、と地面が揺れた。
そして、サード・ガラハムが住むといわれる洞窟の方面から大きな光の柱が生まれる。
「いったい…何が起きたんだ?」
その様子を見ていたナナルゥがポツンと口を開いた。
「おそらく……魔龍が倒された模様です」と。
ファルスは颯爽と荷物をしまい出す。
「みんな、すまないが俺は今日の練習をこれで終わりにする」
「ああ、お疲れさん」
「お疲れ様で〜す」
ファルスは走って訓練場を出る。
その様子を見ていたセラスは、
「じゃあ、こっちも今日の練習は終了ってことで」
「えっ」
次の訓練を始めようとしたヒミカだ。
セリアも突然のことで呆気に取られている。
ネリーやシアーは「わーい」と喜んでいる。
ファーレーンも驚いている。だが、ファーレーンに抱きついているニムンストールは早めに終わって嬉しそうだ。
ハリオンは――――いつものスマイルを振りまいている。
ヘリオンは終了ということに「あわわっ」と驚いている。
ナナルゥはいつもどおり――――ではなく、ファルスが出て行った方向をずっと見ていた。
――――流石、年下キラーのファルスだな。ナナルゥに手を出してしまったか。
「あの…どうして、練習を終了するんですか?」
セラスの隣にいたロイの質問だ。
ロイも驚いている。
通常、訓練はあと数時間は行う。
それなのに、昼になって少し時間が経ったぐらいで終了というのは早すぎる。
人間を基準としても、まだやる時間である。
スピリットは戦うことが現在のところ仕事である。
そのため、ここで終了というのは考えられなかった。
そんな疑問に対し、セラスはあっけらかんと。
「これから用事があるから」
と、個人的な用件を答えた。
この場にいる大半が「ハァ」とため息を漏らした。
セラスはロイの肩を掴み、
「お前も参加するんだぞ」
「えっ!?」
同時刻、マロリガン共和国のヒエレン・シレタのある一室に老人と若い女性の二人がいる。
二人の年齢を考えると、二人は親子か祖父と孫である。
だが、二人の関係はその様なものではなかった。
恋人である。
おおよそ年の離れたカップルと見られるが、実のところそれは異なる――――いや、正確には年齢差はとてつもなく離れている。その差を生み出しているのは、老人の方ではなく女性の方だからだ。
女性は空を見ていた。
空に光の柱が消えたとき、女性は何かを思い出したかのように老人に話しかけた。
「クフォーデ、少しいい?」
「? 何だ、いつもならワシの都合などおかまいなしに話しかけるというのに」
老人は読んでいた書物を閉じ、女性の方に体を向けた。
女性は妖艶な笑みを浮かべ、
「皮肉な話を思い出したんだ。それで、クフォーデの意見を聞きたくてね」
「ふん、どんな話だ」
「話は3つ。1つはある兄弟の話さ。あるとき妹が死んでしまうような大きな怪我を負いました。お兄さんは妹が死なないように一生懸命祈りました。祈りは通じてある契約をしたことによって妹の命は助かりました。――――ですが、その契約はお兄さんだけでなく、妹まで含まれていました。その結果、妹まで苦しむことになりました」
それは、義妹に依存しているあるエトランジェのこと。
「2つ目はある少年の話。その少年はいい家柄のため、周囲の人間は少年自身を見ないで、その背景である家のことを見ていました。ある日、家ではなく少年自身を見てくれる少女が現れました。少年は少女が好きになり、少女を手に入れるのために力を求めました。そして、少年は力を手に入れました。――――その力は少年自身を隠していた、少年が嫌っていた力だと知らずに。少女はそんな力を望まないからこそ、少年を見ていたというのに」
それは、一人の少女に依存しているエトランジェのこと。
「3つ目はある剣士の話。その剣士は剣の才能があり、歴史に名を残すほどの実力を持っている。だが、スピリットがいるこの世界では、その剣士の存在は影を潜めてしまった。しかし、その剣士はスピリット以上の力を手に入れるために力を磨いた。――――スピリットがいるから歴史に名を残せないが、いなければその才能を開花させることはなかった」
それは、ある一人の剣士のこと。
老人は女性の話
「……つまり、前提が問題となり、その結果があるということか?」
女性は笑みを浮かべる。
「正解さ。だってそうでしょう? 契約という前提がなければ、妹は傷つかなかった。力を求めるという前提がなければ、少女は少年を嫌わなかった。スピリットがいなければその剣士は」
「――――だが、妹は生きている」
女性の言葉を遮って、老人は口を開いた。
「妹は傷つくことになってしまったが、生きてはいる。少女に嫌われたとしても、少年は間違いに気づけばいい。剣士も歴史に名を残せないが、――――その力で大事なものを守れればいい」
「……そうだね。ありがとう、クフォーデ。私はその答えが聞きたかったんだ」
女性は笑顔を浮かべた。
先ほどとは違う爽やかな笑顔を。
――――ファルス、あなたはその力で大事なものを守りなさい。道を間違えずに。
それは願い。
数日前に再開した少年に向けた願い。
師として弟子に向けた願いであった。
悠人たちはラキオスまでの街道を歩いていた。
アセリアたちはサード・ガラハムに受けた傷が深く、歩くのもつらい状態だった。
傷が浅い悠人も神剣の力を使った影響で、肉体が疲労昏倍していた。
今、悠人は負傷しているエスペリアの肩を借りて歩いている。
「あっ、」
悠人が疲労のあまり、体勢を崩す。
肩を貸していたエスペリアが、それにつられて転びそうになる。
がし、と何者かが抱き止めたため、二人が転ぶことはなかった。
二人を抱き止めた相手、それは――――。
「――――ファルス!?」
アセリアが驚愕の表情を見せた。
それは、二人が転ぶのを止めたのがファルスだったからだ。
ファルスは息をハァハァと切らせており、衣服も汗や土で汚れている。
彼の性格からして、走ってここまで来たのは明白だった。
「……大丈夫ですか? 皆さん」
逆に、お前が大丈夫か、と聞きたくなる状態であるが、四人はファルスの問いに頷いた。
四人が頷いたので、「ふぅ」と安堵の溜息を漏らすファルスであった。
ファルスが四人を自分の目で見回すと、悠人の状態に気づいた。
「ユートさん、どうぞ」
ファルスは悠人の目の前で背中を向けてしゃがみ込んだ。
悠人はそれが、ファルスが抱っこして悠人を連れて行くことがわかった。
だが、それを皆が見ている前でやるのは嫌だった。
この時、悠人の頭の中にはサード・ガラハムの言葉も、<求め>の影響もなかった。
疲れている肉体と、この年でおんぶされるという状況を天秤にかけることしか頭になかった。
――――正直、疲れている。だが、この年でおんぶか? 今いる皆に見られるだけでなく、最悪、町にいる連中や佳織に見られる可能性もあるんだよな……。
長い思考の末、出た答えは――――。
「いや、いい。肩だけ貸してくれ。しばらくすれば体力も回復する」
おんぶを選ばない方向だった。
悠人の答え通りに、ファルスは肩を貸す。
悠人はファルスが走ってきたため、多少の発汗による生暖かさを感じていた。
「………」
らキオスまでの道中、悠人は自分から口を開かなかった。
自分たちが行った魔龍退治が正しかったのかどうか考えていたからだ。
だが、オルファはいつも通り、相手を殺したことの罪悪感を感じていない。
アセリアもそうだ。
エスペリアは…それが正しいとは思っていないが、スピリットだからということで考えるのをやめていた。
館に到着し、先にアセリアたちを休ませると、悠人はファルスに話をした。
「……今回の戦いには、どんな意味があったかがわからないんだ。本当に…あの魔龍は――――サード・ガラハムは倒されるべき存在だったのか?」
その答えをファルスは知っている。
その答えはおそらく、今後の戦いの理由でもある。
それは――――
「………サード・ガラハムは殺されるような危険なモノではありません」
救いでもあり、絶望的な事実。
「殺す理由は一つ、それで大量のマナが手に入るからです。マナのためだけに、今回の戦闘がありました」
――――そして、それはこれからも続く。
確信に近い予感。
それを悠人に伝えるのは、まだ酷な話だった。
数日後、悠人と佳織は一時的ではあるが、再会を果たした。
今、王間には悠人と佳織しかいない。
レスティーナが見ているはずだったが、気を利かして二人っきりにしたのだ。
今、彼女は廊下のドアに寄りかかっている。
――――何を、やっているんですかね。私は………。
レスティーナは自分が行っている偽善に胸が痛んだ。
戦いの褒美として義妹と再会させる。
その行為がどのようなものか理解しているからだ。
「こんにちわ」
見知った人物が来た。
その人物を見たレスティーナは、つい眉をひそめた。
ひそめられた本人は、その理由がわからないが、とりあえず隣に来た。
「再会…させたんですか」
「…ええ」
沈黙。
それから、二人はお互いに口を開かなかった。
数分が経った。
時間が来てしまった。
これから、もう一度あの義兄弟を別れさせなくてはいけない。
胸が痛む。
レスティーナのドアに掛ける手が震える。
「――――なあ」
隣にいる男性が声をかけてきた。
突然のことで、驚く。
「戦いは終わりではないよな」
「ええ、むしろこれから始まります」
男に言った言葉で彼女は理解した。
力を持たない自分では、何も出来ないことに。
彼女はドアを開けた。
それしかできることがないから。
男――――ファルスもレスティーナを見送ることしか出来なかった。
後書き
今回で第一章は終了!
<禍根のファルス>と言っておきながら、未だ<禍根>すら持っていない作品であります。
今後も続きますが、見てくれている皆様にお礼を。
六話から第二章に入ります。
人間同士の戦闘や、設定で書かれていたあのファルスの台詞も出ます。
お楽しみにしてください。
あと、ファルスの「神断の太刀」は相手の武器を持つ方の手首を居合いで斬り落とし、そのまま相手を斬りつける技です。
私は神剣の加護は、使用者が神剣を持っていない限り発動しないのではないかと考えました。(PS2版のハリオンとの買い物イベントで、「神剣を持っていってくださ〜い」と言っていましたし。あと、アセリアの個別イベントで<求め>を持っていない時、悠人はただの人間で神剣の力を使えませんでしたから)その考えから、神剣を持つ手を切り落とせば、持っていない間はスピリットはただの女の子です。
神剣の力で障壁を張られるより先に相手を殺す技、それがファルスの「神断の太刀」です。
ちなみに、「技をする前に障壁を張られたらどうするんだ?」という意見もあるでしょうから、その補足を。
永遠のアセリアのアタッカーやサポーターは、相手の攻撃を防御しません。
それは、攻撃や魔法を使う場合、障壁を作れないのではないかと考えました。
ですから、瞬時に防御との切り替えを行わなくていけません。
「神断の太刀」は相手の攻撃を受ける直前に相手の手首を斬る「後の先」の技でもあり、攻撃と防御の切り替えを行わさせません。
という設定です。