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 ガロ・リキュア暦10年
王城にて、5歳ぐらいの少女が泣きながら歩いていた。
少女の右手にはお弁当の入ったバックがある。少女は王城にいる父親に、忘れた弁当を届けにきたのだ。
 少し前に、衛兵に道を聞いたのだが、間違えてしまった。つまり、少女は道に迷ってしまったのだ。
 少女は歩いていると、一枚の絵画を見つけた。
 その絵に描かれている人物を見て、少女は驚いた。
 その絵に描かれていた人物は――――
「――――光陰おじさんたちだ」
 何度か会ったことのある人たちがその絵には描かれている。
 少女は知らないのだが、この絵はある英雄たちの絵だった。
 少女は自分が迷子になったことを忘れてその絵に見入っていた。
 それから、何十分経ったのだろうか。
 背後からコツ、コツと足音がする。
 振り向くと、そこには少女の見知った人物がいた。
「セラスおじさんだぁ」
「こんにちわ」
 30代近くなる男性は、少女に声をかけると、しゃがみこんで少女と目線を同じにする。
「今日は、どうしたんだい? ここには一人で来たのかい?」
「うん、私一人で来たの。お父さんがお弁当を忘れたから・・・・でも、・・・・場所・・・・わからなくて」
 自分が迷子だったことを思い出し、涙ぐんできた。
 少女の不安を察したセラスは、少女の頭を撫でながら、
「それじゃあ、一緒にお父さんのお仕事部屋に行こうか? お父さんお腹すかしているぞ」
「うん、そうだね」
 セラスは少女と手をつなぎながら父親の仕事部屋に向かった。

 歩いている最中、思い出したように少女は「ねぇ」とセラスに声をかけた。
「ん、なんだい?」
「さっき置いてあった絵、どうして、光陰おじさんとかハリオンおばさんがでていたの?」
「ああ、あの絵か。あの絵はね、この王国ができるときの戦争で頑張った人たちにありがとうってことで描かれた絵なんだよ」
「ふーん」
「でもね、あの絵に描かれてないけど、とても頑張った人がいるんだ。とてもとっても皆の為に頑張った人がね」
 セラスはどこか遠くを見るような目をした。
「その人って今、どこにいるの?」
「遠いところだよ。ここからじゃあ、何日経っても行けないところだ」
「じゃあ、その人なんていう名前なの?」
「名前か、あいつの名前は―――」

その人物は誰よりもラスフォルトのために行動し、
永遠真剣<禍根>と共に戦場を駆け抜け、
そして、共に戦ったラキオス妖精部隊の一人と結婚した
一人の人間
その名は

禍根のファルス















 この作品を見る上で、いくつかの設定と注意事項をお伝えします。

@ この作品は、アセリアルートが本編となっています。
アセリアルートが嫌い、ヒロインはアセリア以外じゃないと駄目という方はすまないですがご遠慮ください。

A この作品には、本来名前しかない技術者や訓練士が多数登場します。例として、上記にセラス・セッカが登場しています。
ミューラー・セフィスも登場するので、スピたんの存在は忘れておいてください。性格は勿論、設定に大きな違いがでるので。

B この物語は第一章「皮肉な話」
       第二章「怒り」
       第三章「過去と未来」
       第四章「兄の思い、弟の誓い」
       第五章「形を変えた約束」の構成で展開します。

C タイトルに禍根のファルスと書かれてありますが、実際に主人公のファルスが<禍根>を手に入れるのは後半です。
ファルスが<禍根>を持っていない詐欺だ! と思わないでください。
何故、持ってないかといいますと、ファルスはエトランジェでもスピリットでもなく、ただの人間です。
それなら、どうして永遠真剣が使えるんだ? と思われるでしょうが、ある人物が言った理論を拡大解釈することによって、<禍根>を扱えることにしました。
  

 では、キャラクターの設定にはいります。

●ファルス・ロンド
 今作品の主人公。ファンタズゴマリアでは珍しく、スピリット差別をしない。スピリットの補給部隊の隊長を務めている。腹違いの兄が居たが、ソーマ・ル・ソーマに殺された。そのため、復讐を果たそうとスピリット以上の力を求めている。兄の死後から鍛えているため、戦闘能力は高い。剣の技術だけならばアセリアよりも上である。
また、へタレエトランジェ同様に女性の気持ちには鈍感である。
「――――これが、神断の太刀だ」
「来たのがアセリアたちでなくて良かった。――――わかりますか? あなたになら、勝てるということですよ、ユートさん」

●セラス・セッカ
 ファルスの親友であり、上記のプロローグにも出ていた。ファルス同様にスピリット差別をしない。ラキオスで訓練士をしている。ファルスとは、幼いときからの付き合いであり、へタレエトランジュとロリコンエトランジェの様な関係である。女たらしで有名で、スピリットにも手を出しているのではないかという噂がある。
一応、ラキオスでは貴族に位置する家庭の出身。
「この――――馬鹿野郎が」
「スピリットを異性として好きになるって言うのも、セリアから見たら妖精趣味にはいるのかな?」

●バトランド
 ファルスの学生時代の同期。技術者として生活しているが、実はお菓子職人になりたいと思っており、技術者の仕事そっちのけでお菓子屋でアルバイトしている。
そのお菓子屋には、ハリオンがよく来ている。だが、スピリットというか、あまり他人と関わりを持とうとしない。友人のファルスとセラス、そしてアルバイト先の店長には心を開いている。
「だからさぁ、長期保存できるお菓子を作るのって、大変なんだよ」
「今度、店開くんだけど・・・・そこで、一緒に働かないか?」

●アナムス・タンジェルト
 ラキオスの第二近衛隊隊長。学生時代ファルスをライバル視しており、現在も続いている。元々、スピリットを蔑視していたが、ファルスがスピリットに対して好印象を持っていることを知ってから、よりスピリットに当たるようになった。
ラキオスで有名貴族の息子である。
「ファルス、わかったか? 俺様は近衛隊隊長、それに比べて、お前はただの犯罪者だ」
「スピリットなんざ、人の姿をした家畜じゃないか。家畜に可哀相だとか思うのか?」

●ロイ・ファウンド
 ファルスの部下。ファルスが学生時代に打ち立てた記録に憧れ、ファルスと同じ隊に入隊した。スピリットを蔑視しており、ファルスがなぜスピリットを評価しているのかを疑問視している。年齢はネリーたち年少組みと大差ない。そのためか、ニムンストールと張り合うことが多い。
「ファルスさん・・・・虫だけは、どうか、虫だけは勘弁してください」
「ニム、僕たちも頑張ろうな」

●フィル・ブルースピリット
 イースペリアのスピリットで、妖精部隊に属さずにアズマリアの護衛をしている。ファルスに好意を抱いているが・・・・。
「途中までなら、私のウィング・ハイロゥで送りますよ」
「ファルス様、お元気で」

●先生
 ファルスの剣の師匠。兄が殺された直後のファルスと出会い、剣を教えた。自分の名前を教えずに去っていったため、ファルスは先生と呼んでいる。テムオリンや時深の存在を知っているのだが、自分で何か行動を起こそうとはしない。
ファルスに対エターナル技の神断の太刀を教えた。
「とうとう始まるか・・・・これは、テムオリンの狙い通りに行きそうだねぇ」
「私はさ、世界がどうなってもいいんだよ。無事なら短い間だけどクフォーデといれる。――――阻止できなくでも、クフォーデと一緒に死ねるなら本望だからさ」






後書き

 つたない文章ですいませんが、禍根のファルスというシリーズを始めさせていただきます。連載のペースとかかなり遅いでしょうが、じっくりと楽しんでくれると幸いです。
この作品は、あえて人間を主役にしました。それは、人間はスピリットに勝てるのかということを考えてみたところ、スピリットと人間の差は真剣魔法の有無もありますが、一番は真剣による肉体強化が大きな差になると結論付けました。キャラ設定の部分で「剣の技術だけならばアセリアより上」というのは、そのためです。
そこで、<禍根>なら、人間が使っても、肉体強化ぐらいならできるのではないかと思い、この作品が生まれました。小説版の設定ならば、もう一本、<禍根>はあるんじゃないかという考えも誕生の理由のひとつです
長くなりましたが、最後にもう一度、禍根のファルスをお楽しみください。

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