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 注意:この作品を見る際には、<聖賢>=悠人   <永遠>=アセリアという擬人化をしてご覧になってください。




 ある世界の家の一室で二本の剣が立て掛けられている。
 見る人が見たら、その剣は喉から手が出るほど欲しい剣である。
 その二本とは、永遠神剣第二位の<聖賢>と第三位の<永遠>である。
(…暇だな)
(ええ…そうですね。この世界では、ロウ・エターナルが大きな活動をしていないようですから)
(だからといって、ただ待つだけというのは暇ではないか?)
(そうですか?)
 返ってきたのは意外な答えであった。
(私は今の平和な状況は嫌いではありません。<聖賢>もそうでしょう?)
(そりゃあ…平和な世界は望むものだが、部屋の中に置きっぱなしはやめて欲しい。外に出たい)
 この世界は平和であり、ロウ・エターナルの計画も早い段階で中止させた。
 今はその経過を見ているところである。
 マナの総量も薄く、治安もいい場所であり、普通に生活するにはいい場所である。
 そうなると、一つ問題が生まれる。
 剣を持って外出が出来ないということだ。
 そのため、神剣たちは家でお留守番をしていた。
(いいじゃないですか、たまには貴方と二人っきりというのは)
 <永遠>の言葉に<聖賢>は少し照れる。
 そのことに気づいた<永遠>はクスっと笑い、
(<聖賢>、知っていますか? 私たちは今回のように主が恋人や夫婦のことが多く、上位神剣の中で夫婦神剣と呼ぶ人が少なくないことも)
(知っているよ。……呼ばれるようになったのはいつ頃だったかな?)
(私は覚えていますよ)
 どこか遠くを見るように<永遠>は答えた。
(私の4代前からです。あなたからしたら、7代前で知ったけ?)
(あの時の事か………)
 二本はその時の主のことを思い出していた。
 
 その二人はお互いを大事にしあい、微笑ましい夫婦だった。
 悠人たち同様に、ロウの悪行を許せず、共にエターナルとして戦うことを決意し、試練を受けた。
 そして、妻は<聖賢>に、夫は<永遠>に選ばれた。

 カオスでもなかなかの実力を持っていた二人だった。
 だが、ある日別れの日が来た。
 <永遠>は今でもその光景を覚えている。
 多くのエターナル・ミニオンに囲まれながらも懸命に戦ったが、隙をつかれて<黒き刃のタキオス>の一撃で倒された妻の姿を。
 その後、<永遠>の主は狂ったようにタキオスを追った。
 端整であった顔立ちも復讐の思いで醜く変貌し、傷ついた肉体さえも無視し、目的を遂げようとした。
 しかし、その目的は遂げられずに終わった。
 妻のときの数倍のエターナル・ミニオンに囲まれ、タキオスだけでなく、テムオリンやメダリオといった他のエターナルを相手にしながら、たった一人で戦った。
 仲間のエターナルに救援を求めず、自らの手で復讐を遂げようとしたのだ。
 <聖賢>はそのことを知らない。また、知ろうとも思わない。
 <永遠>が話すのを、自分の主だった人が愛した人の最後は、<永遠>の口から聞きたかったからだ。

(あの時から、長い間別々だったな)
(ええ、そうですね。再会したのが、先代のときでしたね)
 当時の主が死亡し、他のエターナルが主となった。
 お互いの主が会う機会がなく、再会することはしばらくなかった。
 あれから数周期が経ち、二本が再会したのは偶然にも、先代のときであった。
 先代は付き合っていなかったが、任務を何度かこなすうちに恋愛感情が生まれ、愛するようになった。
 夫婦神剣と呼ばれる所以は、夫婦の持ち主というよりも、持ち主が付き合うことになることが多いことも含まれている。
(………そういえば)
 急に、辺りの空気が冷たくなった気がした。
(先代からでしたよね? 『夜のコネクディッドウィル』を使い始めたのは)
 ギクッ、と効果音が聞こえるような反応をする<聖賢>
 冷や汗が流れるかのように、マナがキラキラと散っていく。
(あ、あれはな、そう、長い夫婦関係の夜の営みをマンネリ化しないためで――――)
(いつ覚えたんですか? それで、その時の相手は誰ですか?)
 ギラリ、と鋭いプレッシャーが来た。
 まるで、喉元に刃物を突き立てられているような気分である。
(…………5代前で、相手は<聖緑>です)
(あんのアマぁ!)
 怒りをあらわにする<永遠>。
 その様子にガクガクブルブルの<聖賢>。
 主のへタレが移ったようである。
(そういえば)
 ゆらっ、とうつろな目つきで<聖賢>を見つめる<永遠>。
 サスペンスドラマで刺されるかのような状況だ。
(いつの間にか、世界100手や今回では、触手プレイなんか覚えているのはどういうことなんでしょうか?)
(………)
(黙秘権の行使ですか? 私の判断では黙秘は無条件で肯定と受け取らせていただきます)
(100手の方は、各世界を渡ったときに覚えました。触手の方は………<再生>と一緒にしました)
 自白。だが、この状況ではそうするしか選択肢は無かったといえる。
 それほどの状態だった。
 下手にしらを切ろうとすれば、エタニティリムーバーが待っている。
 人間の姿では正座して土下座でもしている雰囲気だった。
 <聖賢>の知識には、謝るという対応しか思いつかない。
 本当に智を司る神剣か?
(でも、仕方が無いじゃないか! 主の悠人が頼むんだから!!)
 しまいには主に責任をなすり付け始めた。
 しかし、悠人がバリエーションを増やそうと思い、<聖賢>に相談したのは事実なので始末に終えない。
 その上、<聖賢>のアドバイスによって、数少ない活動費でチャイナドレスを通販で購入したことは<永遠>には伝えられない。
(だからといって、教えるのですか貴方は!? 貴方はこれから<聖賢>ではなく、<性賢>と名乗ったらどうですか?)
(……<性賢>って)
(あなたにぴったりの名前ではないですか。淫らな行為に長けた神剣、永遠神剣第二位の<性賢>。ほうら、合っているじゃないですか)
 かなり怒っているのを感じている。
 もし、夫婦喧嘩が起きるのならば、この神剣は主を制止せずに、むしろ進んで戦闘を援助するだろう。
 始めから、エタニティ・リムーバーを打ちかねない。

(あの二人は、とても長く生きるんだ。日々の生活にずれが生じたら困るだろう)
(ですから……心配なんです)
 <永遠>がどこか遠くを、まるで過ぎ去った日々を思い出すかのように口を開いた。
 智を司る神剣として素晴らしい言い訳を考えていた<聖賢>にとって、<永遠>の様子はまったくの不意打ちであった。
(今の二人にはあの二人と同じ苦しみを味わって欲しくありません)
 今の二人ーーーー悠人とアセリア。そして、愛するものを残した女と残されて狂った男。二人はあまりに似ていた。 
 おそらく、片方が亡くなったとき、残った方は前の持ち主同様に狂うであろう。
 だからこそ、望むことがあった。
(消えなければいい。たとえ、それが永遠の苦痛だとしてもそれを共に歩んでくれる人がいるんだから。もしも――――)
(――――消えろとすれば、それは二人共に、お互いの手を離さずに消えられるように)
 それは願いだった。
 残される辛さを知っているからこその願いだった。
 叶わないで欲しく、また、叶って欲しい願い。
 矛盾している願い。
 だが、その願いを望む。
 その願いが叶わなかった人を知っているから。

 数日後、アセリアのサイズにあったチャイナドレスが届き、見事<聖賢>は<性賢>の称号を得ることになる。
 また、主の悠人も<性賢者ユウト>と名乗ることを矯正させられるのは、また別の話。




 後書き

 アセリアのチャイナドレスが見たいです!
 今回のネタは、<聖賢>と<永遠>が同じ時期に戦っていたという設定がゲーム内で語られていたので考えた話です。
 実際、一緒だったのは先代なんですが、先代では早すぎると思ったので、オリジナルで数世代前にしました。
 でも、エターナルって数えるぐらいしか死んでいないのに………。
 この設定だと死にすぎですね。
 <聖賢>は主(悠人)同様にヘタレです。

 この時、ユーフィはまだ居ません。
 ファンに殺されると思いますが、ユーフィは二人が「数をこなしたから出来た」と私は思っています。
 小説で、出生率が低いと書かれています。ですから、「下手な鉄砲数打って当たった」という理論が私にはあります。
 そのため、悠人は<聖賢>の手でありとあらゆるバリエーションを学んでいるんですよ!
 私のSSでユーフィが出るのは、しばらく先です。

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