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不明 部屋


「う・・・ぅ・・」

 日差しを受け、隼人は目を覚ました
(変な夢を見ていたな)

『おはようございます隼人』
「・・・あぁ、おはよう心中」

 心中の挨拶に、夢では無い事を実感する隼人

「・・・とりあえず、今までの事を整理するか」

 そう言うと隼人は、今に至るまでの事を考えた

 (光に巻き込まれて、気付いたら知らない世界だった 永遠神剣って言う剣を握ってて、名前が心中って言うらしい まぁ、言葉も解らないこの世界では、心中だけが頼りだ
 で、高嶺を見つけたと思ったら、隣にスピリットって言う少女がいて、 この館まで連れて来てくれて、緑色のスピリットの子がこの部屋まで案内してくれた それから・・・寝たのか)

 隣を見ると高嶺はまだ寝ているようだった

 「はぁ、これからどうなんだよ・・・」

 コンコン
 これからの事を考えていると、ドアをノックする音
 「はい」
 ドアが開き、そこには昨日部屋に案内してくれた緑色の少女

 『おはようございます』
 「あ、昨日はありがとう」

 そう言って頭を下げた隼人
 そうすると彼女はニコリと微笑む
 (かわいい子だなぁ)

 『そちらの方は大丈夫ですか?』
 「え・・・と・・・・」
 (心中なんて言ってるんだ?)
 慌てて心中に聞く隼人

 『そちらの方は大丈夫ですかって心配してますよ』
 「あぁ、なるほど」
 「大丈夫ですよって、言葉が通じないんだよな」
 「えーと・・・」

 悩んだあげく隼人は高嶺を指差しガッツポーズをした
 「OK・・・通じるかな?」

 と、その時
 「う・・・ん・・・」
 どうやら高嶺も目が覚めたようだ

 『目が覚めましたか?』
 「えっ?え?」

 『体のほうは大丈夫ですか?』
 「えっ?え?」

 突然の出来事に高嶺も困惑している
 (当然だよな)
「ここ、どこかな?あと・・・君は、だれ?」
『??』
 高嶺の質問に少女は首を傾げた

『今はゆっくりとお休みください』
『ご用があればこのベルを鳴らしてくださいませ』

 そう言って彼女はペコリと頭を下げると部屋を出て行った
 (なんだって?)
『今はゆっくり休んで下さい、用があればベルと鳴らして下さいだそうです』
 (そっか)

「なんて言ったんだ??」
 その時高嶺が呟く、こちらにはまだ気付いてないらしい。

「ゆっくり休めとさ」
 隼人は高嶺に向かって言った
 そうすると高嶺は驚いた様に

「えっ?え?」
 隼人の存在に気付いた高嶺は

「・・・神崎か?」
 と呟いた
「あぁ、そうだよ」
「・・・なんだここは?」

「異世界らしい」
「異世界!?」
「あぁ、覚えてないのか?」
「光に包まれて、気付いたら森みたいな所に居たのは覚えてるけど・・・」
「あぁ、俺も同じだ」
「そうなのか?」

「で、他には?」
「・・・綺麗な少女に助けられた・・・」
「青色の子か?」
「そうだ、知ってるのか?」
「彼女がここに連れて来てくれた」
「そうなのか・・・」

 高嶺は辺りを見回し考え込んで

「なぁ神崎、ここはどこなんだ?」
「だから異世界だって」
「言葉も違う地球とは違う世界らしい」

「異世界・・・そんな馬鹿な・・・」
「まぁ現実を受け入れろ」
 取り乱す高嶺に隼人が落ち着いて言う
「言葉も違う、この部屋だって俺らの世界とは違う」

「・・・・・」

「なんでそんなに落ち着いていられるんだ?」
「それは、このかた・・・」
『隼人私の事は言わないで下さい』

 心中の事を言おうとした瞬間、心中それを静止する
(なんでだ心中?)
『言い忘れてましたが、私の事は隼人にしか見えません』
「えっ?」
 驚く隼人

『私の能力ですが、力を多少しか使ってない間は、姿を消す事が出来ます』
『もちろん戦闘なので力を使えば見えますが、使ってない間は隼人にしか見えません』
『今、言うと面倒な事になりそうなので言わないで下さい』
『あとですね、私の力でこの世界の言葉も分かる様にしますね ですが、まだ聞くだけで喋ら無い様にして下さい』
(わかった)

 心中の申し出に素直に従う隼人

「どうしたんだ、突然黙り込んで?」
「えっ・・・あ・・・まぁあれだ、落ち着かないといけないだろ。この場合」

 下手な嘘で誤魔化す

「・・・・そうだ佳織は」
「佳織?」

 高嶺は表情を険しくして叫んだ

「佳織はいないのか神崎!?」
「見てない、俺とお前だけだ」
「そうなのか・・・」

 項垂れる高嶺

「本当に佳織ちゃんの事心配してんだな」
 そう言うと高嶺は大声で

「あたりまえだ!」
「って、佳織の事知ってるのか!?」
「知ってるも何も、秋月からよく聞かされたよ」
「瞬からだと・・・」

 高嶺が隼人をキリッと睨む
 そんな事お構い無しに隼人が

「あぁ、秋月はお前の悪口ばっか言ってたな」
「佳織はアイツと居れば不幸になるとかな」
「まぁ似た者同士だな」

 そう言った瞬間隼人の襟を高嶺が掴んだ。

「俺はアイツとは違う」
 襟を掴まれた隼人であったが冷静に

「まぁ待て、俺が言ったのは二人とも佳織ちゃんの事、大切に思ってるんだな、ってことだ」
「アイツに佳織は渡せない!」
「渡すとかとか、渡さないとかは、お前らの気持ちだろ」
「大事なのは佳織ちゃんの気持ちだ」
「今お前の傍にいるってことは、佳織ちゃんがお前の傍に居たいってことだろ?」
「そうじゃなきゃ、秋月の所行ってるだろ?」
「それでいいじゃないか」

 そう言うと隼人は高嶺の手を払いのけた

「す、すまん神崎」
 冷静になった高嶺が隼人に謝る

「まぁ別にいいさ、その気持ち解んなくもないからな・・・」
 そう言うと隼人は寂しそうな目をする

「あ、それと俺の事は隼人って呼んでくれ」
「あぁ、解った隼人 俺の事も悠人って呼んでくれ」
「あぁ、悠人 とりあえずは大人しくして様子を見よう」
 そう言うと二人は握手をした


 それから三日後


「どけっ!」
「待ってください!!まだ安静にしてなければならない状態です!!」
「うるさい!陛下がお呼びなのだ!スピリットごときが我々の仕事の邪魔をするなっ!!」

 突然、部屋の外から怒声が響いてきた。

「何だ?」
 隼人と悠人揃って目を覚ます
 程なく、扉が勢いよく開かれて、数人の男が部屋になだれ込んできた。

「何だ何だ?」
 突然の訪問者に二人は困惑した
「貴様ら!!陛下がお呼びだ!!」

 男の一人が叫ぶと、突然闘護の腕を掴んだ。

「陛下だと・・・王か?」

 もう一人の男が悠人の腕を掴む

「何だよ、お前ら・・・?」
「早く起きろと言っているんだ!」

 そう言うと男は悠人を殴りつける

「お待ちください!」
「その方はこちらの言葉がわからないのです」
「だからどうしたというのだ。解らないならば身体で解らせてやるまでだ」

 少女が何かを訴えるが、兵士は意に介そうとしない様子だ。

「やめてくださいませっ!」
「離せ!汚らわしい手で触れるな!!」

 止めようとした少女の手を、嫌悪の表情でふりほどく。

「キャッ!」
「チッ!」

 その時だった隼人の何かが切れた。

「いいかげんにしろ!!」

 そう言い放った瞬間、隼人は男達を睨み付けた。
 男達は隼人のあまりの気迫にたじろぐ

「悠人、こいつら俺らをどっかに連れて行く気だ」
「そうなのか?」
「あぁ、とりあえずあの子にも迷惑掛かりそうだから付いていくぞ」 そう言い少女を見る隼人
「わかったよ・・・・」

 納得はしていない悠人だが、隼人に従い立つ

「来い!!」

 その様子を見ていた男達はそう言い歩き出す
 隼人と悠人は黙って男達に付いて行った



謁見の間


 男達に引きずられるようにして歩かされ、大きな部屋に入った途端、頭を押さえつけられて地面に倒された

「何だよ、ここ?」
 隼人と悠人は周囲を見回した

「漸く来たか」
 声の主を隼人が見ると王冠をかぶって玉座に座っている初老の男
 横には同い年くらいの少女
(ふ〜ん・・・あれが王様とお姫様か・・・)

「佳織!?」
 その時、突然隣にいた悠人が叫んだ

「お兄ちゃん!!」
 声の方向を見ると、そこには後ろ手を鎖で繋がれた佳織がいた

「佳織っ!なんだよ、どうしたんだよ!なんでここに!!」
「お兄ちゃん!お兄ちゃんっっ!!」

 悠人の元に駆け寄ろうとする佳織であったが、男に取り押さえられる

「やあぁーっ!お兄ちゃぁんっ!!」

 その瞬間悠人が、押さえ込んでいた男を吹き飛ばした

「佳織!!」

 そのまま悠人は佳織に駆け寄ろうとした。
 しかし、二人を囲んでいた沢山の兵士が再び悠人を取り押さえる。

「ぐぅ!?」
「お兄ちゃんっ!!」
「悠人!」

「さすがエトランジェだな・・・剣を持たずにこの力か」
 王がゆっくりと呟く。
「・・・」

 姫は黙ったまま悠人をジッと見つめている。

「離してやれ」

 王の言葉に、周囲の兵士がざわめく

「し、しかし、陛下・・・危険なのでは」
「大丈夫だ・・・大丈夫なのだよ」

 兵士はあからさまに動揺しているのに、王は妙に落ち着いている

「佳織!!」

 束縛が解けた瞬間、悠人が佳織の方へ走り寄る。

「お兄ちゃん!!」

 だがその時

「かお・・がっ!?」
「お兄ちゃん!?」

 悠人は苦しそうにうめく

「ぐ・・・・ぐぅ・・・ぁ・・・!」

 初老の男はニヤニヤと満足そうに笑っている

「かお・・りぃ・・・」

 悠人は床を這い蹲って佳織に近づこうとする。

「ほう・・・なかなか見上げたものだ。よほど娘が、大切なようだな・・・」
「ハァ・・ハァ・・!!」

 しかし、少しだけ進んだ瞬間、悠人の身体が沈む。

「くく・・・これがエトランジェなのだ・・・・・我々には逆らえないのだよ」
 (エトランジェだと?今悠人はどうなってるんだ心中)
 心中に尋ねる隼人

『エトランジェとは、貴方と悠人の事です』
『エトランジェは強制力に遭い王には逆らえません』
『逆らおうとすると悠人みたくなってしまいます』
(俺もなのか?)

『いえ、強制力が掛かるのは 求め、誓い、空虚、因果と呼ばれる4本の持ち主だけです』
(じゃあ俺は自由なんだな?)
『はい。でも、ここは逆らわないほうがいいかも知れませんよ』
(どうしてだ!)

『切り札は取って置いたほうがいいですから』
『ここは従って起きましょう』
(・・・わかった。だがこのまま大人しく従う気は無い!!)

『えっ!?』

 そう言うと隼人は王の方へ向かい歩き始めた

「愚かな!」

 ニヤニヤしていた王だったが、次第に驚愕に変わっていく

「馬鹿な!!何故誓約が聞かん!!」
「そ、そのエトランジェを止めろ!!」

 王の叫び声に、兵士達が騒然とする
 王の目の前まで来た隼人は

「俺には誓約は聞かん。お前を殺す事も出来る」

 殺気立ちながら王を睨む隼人

「ヒィ!?何故喋れるのだ?」
「そんな事はどうでもいい、俺はお前を殺す事が出来る。だが、俺らはこの世界のことを知らない」
「元の世界に戻る方法も分からない今、3人で逃げるのもキツイだろう」
「だから、今はお前らに従ってやる ただしその子に傷でも負わしたら皆殺しだ」

 そう言うと隼人は、悠人の位置に戻る

「悠人、佳織ちゃん」

 二人に呼びかける隼人

「今はこいつ等に従うしかない」
「な・・にぃ・・?」

 隼人の言葉に悠人と佳織は目を丸くした。

「ここが別の世界である以上危険な事は出来ない」
「今のところ、俺らに危害を加えるつもりは無いらしいしな」

 隼人が周囲を見回すと、隼人の視線に皆が恐怖している

(ふ〜ん、王女様だけは違うみたいだなぁ)
「そんな事言ってられるかぁ。佳織が捕まってるんだぞ!!」
「やめとけ!王に逆らえば、またさっきみたくなるぞ」
「ぐ・・・・」
「大丈夫だ。チャンスを見て佳織ちゃんを助けてここから逃げる」
「それまでの辛抱だ・・・」

 隼人の言葉に二人は沈黙する

「・・・わかりました」
「・・・わかった」

 悠人と佳織が同時に呟いた

「佳織待ってろよ。必ず助ける」
「うん・・・」

「王よ我らは貴方に従いましょう」

 しかし王は呆然としている その時

「この者達を取り押さえなさい」

 王の隣の王女が叫ぶ

「しかしレスティーナ様」

 困惑する兵士

「この者は我らに従うと言っているのです。いいから早くしなさい!!」

 レスティーナと呼ばれた王女が怒鳴ると兵士達は二人を取り押さえた


「陛下。このエトランジェ達はどういたしましょう?」

 取り押さえられた闘護、悠人を見ながら兵士の一人が言った。

「ス、スピリット共の館にでも放り込んでおけ!!下賤なもの同士、勝手にするだろう!」

 王は動揺した口調で叫んだ。

「・・・ならばエスペリアにでも世話をさせましょう」
「そうしておけ。あの無骨な剣はまだ近づけるなよ」
「は、早く行け!」
「ハッ」

 隼人と悠人は、そのまま兵士達に引きずられて謁見の間から出て行った

「はぁはぁ・・・何故、あのエトランジェには制約がかからん!?」

 王が悔しそうに叫んだ。

「それに何故言葉が喋れるのだぁ!?」
「ですが、あの者はこちらに従うと言っています。それに人質がいる分こちらのほうが有利です」
「う・・・うむ・・・」
「それよりも、この娘ですが・・・」

 姫は大人しくしている佳織を見た。

「!?」

 姫の視線に、佳織はビクリと身を竦ませた。

「この娘は私に預けていただけないでしょうか?」
「ん?どうした?」
「戯れ相手がちょうど欲しかったところなのです。この娘もエトランジェ。ならばハイペリアの話しも聞けるでしょう。エトランジェの制約は、王族にしか効かないと聞きます」

 姫は王を見た。

「私が常に監視していましょう」
「ふむ・・・・・なるほど。それも良いかもしれんな」
「ありがとうございます」
「王女として、間違いを起こさぬように」
「はい・・・承知しています。父様」

 姫は周りにいる兵士を見た。

「誰か、この娘を私の寝室の隣に」
「そこは、殿下の客室では?」

 兵士の一人が尋ねた。

「良い。目に見える範囲においておきたい。しかし、しっかりとした鍵と、武器になるようなものは外しておくように」
「ハッ!」
「もの好きなことだ」

 王は呆れた口調で呟いた。

「ハイペリアのことには興味があります」
「ふむ・・・・・ほどほどにな・・・・・。剣を持たぬとはいえエトランジェだ」
「・・・はい」
「来い!!」

 兵士の一人が佳織を拘束する鎖を引っ張る

「キャッ・・・!!」

 佳織は転びそうになるが、必死で体勢を立て直す

「さっさと来い!!」

 兵士の乱暴な力に振り回されながらも、佳織は唇を真一文字に結んで耐える

「お兄ちゃん・・・私負けないから・・・」


「スピリット、エトランジェ・・・。天が我等に力を与えているのだな」
「・・・・・」
「いつまでも落ちぶれた小国でいるつもりはない・・・」
「どうなさるおつもりですか?」
「古豪の力というものを見せてやるのだ。歴史のない国々に大きな顔をされたくないっ!」
「戦、ですか・・・」
「龍の同盟も、所詮は我が国に頼ってのもの。もうすぐだ・・・・・」
「・・・・・」



不明 部屋

 兵士達は隼人と悠人を部屋に押し込むと、そそくさと出て行った

「隼人!!」

 悠人が睨んで叫ぶ

「あれでよかったのか?」
「あぁ、もしだ。佳織ちゃんを救出したとして、それからどうする?」
「まぁ、俺はここの言葉は喋れるが、どうやって生きていく?」
「どうやって元の世界に戻る?」

 悠人は沈黙する

「情報が足りなさ過ぎる」
「悠人、今お前に足りないのは冷静さだ」
「あそこで暴れたら佳織ちゃんにも危害が加えられたかも知れない」

 隼人が言い終わると悠人が呟く

「・・・そこまで考えてたのか。悪かったよ」
「いいさ、悠人も気持ちも痛いほど分かるからな」
「・・・・・」
「で、なんで喋れるんだ?」

 素朴な疑問

「あ・・・まぁそのことについては、いずれ話す」

 その時、トントン ドアが開き少女が

『御飯が出来ましたよ』
「あぁ、わかった今行く」
「悠人、この話は一時中断だ 飯だってさ」
「・・・・わかった」

 そう言い部屋から出て行く3人
(やっぱり長くなりそうだなぁ)

 
     
                                         続く
 

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