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────────Reath side
「・・・・」
円滑な話し合いにより決定は下された、もはや何も言うまい、全てを溯夜さんに委ね、見張りと称し余すところなくシリアさんを視線でもって舐め回そうではないか。

「溯夜さんが、治療を行われた方がよろしいかと。」
「そ、そうか。それより大丈夫か?汗かいてるけど。」
どうやら白熱した討議は私の体にまで影響を及ぼしていたらしい、見てみると軽く汗をかいている。

「大丈夫です、えぇ、大丈夫ですとも。」
自分でも、もうダメかもしれないと思ってしまう。想像は空想を呼び空想は妄想を召喚する。
妄想は脳内ゆえに留まる事を知らず、無限に広がり、正常な部位を犯していく。
「だ、ダメですよっ!!」
「!!」
思わず口に出してしまった、何がダメって、私がダメですよ。すごくダメ。

「ど、どうした?やっぱりリースがやるほうが?」
“やる”だなんていわれたら、消えかかった炎の燻りを油田の中に投じるようなもの、冷静な部位がそうした未来を算出しているというのに、妄想は二百由旬を駆け抜ける。
「あ、あああ、あぁ!!」
「!?!?!」
また口に出てしまった、もうダメだ。

「リー・「なんでもないですなんでもないです!!」・・そ、そうか」
とりあえず、下手なことを考えるから妄想が走り出し、外部からの刺激でストッパーが破壊される。
なら、下手なことは考えず、全ての思考の矛先を安全な覗きをすることだけにむける。
「すいません。」
「い、いや、いいんだが」

「えーっとですね、マナ欠乏症の治療法ですが。」
不味い、治療法を考えるだけで妄想が再燃してしまう。
「えーっと・・・」

思考一番停止
二番停止
三番正常、思考継続
四番停止
五番停止

とりあえず、深呼吸をして、肺の妄想で穢れた空気を出し、新鮮な空気を吸入する。

「治療法ですが、えー、スピリット、この場合、エトランジェも含まれるんですが、とにかく!体がマナで構成されている存在、の体液の交換で可能、です。」
言葉は最後になると殆ど聞こえないのでは、というほど小さくなっている、やばい、これをまた言えなんていわれたら。今度は妄想で支配された脳がどんな電気信号を口に送るかわからない、想像もできない。

「・・・・あ〜、つまり、血とかそういったのを俺からシリアに渡せばいいのか?」
よかった、溯夜さんの耳が悪くなくて。

「はい、ですが血液だと、すぐにマナとなってしまいますので。」
「・・・・・。」
「えーっと。」
やばい、頭に血液が回ってくる、脳がヒートアップする、理性で妄想が抑えられなくなる、何とかして早急に伝えることを伝えなければ!!

「つまり血液の交換はシリアさんが気を失っている状態では出来ないので、必然的に。」
あぁ、レッドゾーン突入、臨界まであと20秒も持つまい。

「唾液や、その。」
唾液等と言葉を選んだというのに次の言葉がどうしても発することが出来ない、なんだ?潤滑油とか言うんですか?でも溯夜さんは男性ですから潤滑油じゃなくて、あぁ、ぁぁぁぁあああ〜〜〜!!?!?!?

「分かった、分かったから落ち着け。」
溯夜さんがギリギリの所で現実に引き戻してくれた、危うくハルマゲドンが起こるところでした。

「あ、ありがとうございます。」
「? つまり、俺がシリアにキスとか性交渉的な、というか性交渉だな、をすればいいんだな?」
「は、はいそうですっ!!分かりましたね?分かりましたよね?だったら私は見張りをしますから落ち着いて冷静に、事に及んでください!!」

溯夜さんが何をすればいいか理解したらすぐに逃げ出す、砂丘の上に逃げ、溯夜さんが見えないところにきたら、深呼吸。そして周りに少し気を配りながら、二人の様子に気を配る、その比3:7。もちろん7の注意力を二人に向ける。

「さぁ、譲ったんですから、シリアさんの赤裸々な素顔を見せてくださいよぉ〜。」
もう、隠すこともない。


────────Sakuya side
リースが疾風怒濤の勢いで離脱してから数秒ようやく運転を再開した脳みそでもって次、何をするか考える。
『いやいや、何をすればいいか何て分かっているでしょう。』
お前知ってたろ?
『はい、ですがこうしてリースに聞く方が面白いでしょう?』
まぁ、面白いが、不安にもなった。

『まぁ、大丈夫ですよ、それより。』
あ〜、アレだろ用は
『はい、接吻もしくは性交渉ですね。』
「前者だな。」
『おや?正当な理由があるのですよ? やりたい放題じゃないですか、年頃の健康な男児の台詞とは思えませんね?』

「・・・・いや、あのな。」
『不能ですか?』
「そんなわけあるかっ!!」

『なら、別に躊躇うことも無いのでは?』
リースもおかしければコイツもおかしい、シリアは絶体絶命なのに緊迫感のかけらも無い。

「とりあえず、性交渉はダメだ。」
『つまらない。』
「つまらなくて結構、んったく、さっさと始めますか。」
『まずはズボンと下着を脱いでですね。』
地面に胡坐をかいて座り込む。

『いきなり、って無視ですか。』
寝かしておいたシリアを抱き上げ、頭を組まれた足の上にのせる。

『こっちは真面目にレクチャーしていたんですが。』
洞窟で膝枕してもらったときの逆、今度は俺の脚が枕になっている。
「・・・・・・」
『どうしたのです? 残り時間はあと1時間程度ですよ?』
いや、その・・・・

『いまさらになって怖気づきましたか? 緊張感なんてまるでありはしませんが、放っておけばシリアは1時間後に死ぬんですよ?』
「っ!!」
『幽玄』の言葉を受けて、へたれた根性を奮い立たせる。

『そうです、そうです。お姫様を目覚めさせるのはやはり王子様のキスで無ければ嘘です。』
常套句だが、まぁ、この状況で言えば、仕方ないか。
俺の脚の上で、冷や汗をかき、息を弾ませている、シリアを抱え上げる。

えーっと、こういうのって目を瞑ってするのがルール(?)なのでそれに則り、目を瞑る。
暗転した視界には何も映さない、薄いまぶたでふさがれた視覚はたったそれだけで死に、触覚がシリアの重みを伝え、聴覚が息遣いと風の音を伝える。

腕に力を込めシリアの頭を引き寄せ────
『そうそう、言い忘れましたが、マナ欠乏症のスピリットは凄いですよ。』



────────reath side
「あぁ、ついにこの時が。」
予想通りの展開、隠し持った望遠鏡で視姦する。

視野が狭まる替わりに拡大された視界を得た私の双眸はシリアさんの顔を捉えて離さない。
シリアさんの顔と溯夜さんの顔が接近する、二人の距離が狭まるのに比例して望遠鏡を握る力が増えている。マナ欠乏症に陥ったスピリットがどれだけ貪欲にマナを欲するかも承知の上。直接もいいが、やはりこうして遠くから眺める方がいい、断然いい。

ついに二人の影は接触し、マナの受け渡しが始まる。
感じ取ることは出来ないが溯夜さんからシリアさんにマナが流れ込んでいるのだろう、昔習ったがああいった行為をすることで高いところにある水が低いところに流れるように、マナも流れ込んでいくと聞いた。

「キャー!!シリアさん〜〜!!」
腕は望遠鏡を眺めながら、陸に打ち上げられた魚のようにビチビチと跳ね回る、だが望遠鏡はシリアさんと溯夜さんを捕らえて離さず、常にレンズの中心に二人を納める。

これも昔一度だけマナ欠乏症に陥ったスピリットを他のスピリットが今の二人と同じ方法で治しているのを見たが。

「キャ〜〜〜!!そうですよ、そうっ!!」
歴史は繰り返す、何てすばらしい言葉なのだろうか。今、まさにシリアさんは、マナを求める本能の赴くがまま、溯夜さんに腕を回し、無意識とは言え自身を溯夜さんに押し付けている。

体の動きが激しくなっていく、魚のように跳ね回る動きはそのまま規模が巨大化する、体の上下はもはや直立したときの腰の高さを越えている、だが望遠鏡のレンズから二人を外すなどという愚行は犯さない、犯してはならない。

一度おどろき目を開いた溯夜さんもシリアさんに任せ再度目を閉じ、さらにシリアさんを抱き寄せる。
「ナイスですッ!!流石ですよ溯夜さん!!あなたはよく分かっていますっ!!」
ビチビチと跳ね回り、しかも空中で半回転捻りを入れるまでに私は狂っている。否、断じて狂ってなどはいない!!これは愛、そう、まさにこれこそ愛のなせる業、今まさに私のシリアさんに対する愛で私は自然の摂理、万有引力の壁を破る!!



大体5分ほどの時間がたっただろうか、増加の一途をたどっていた私の飛距離、および振幅数は一気にクールダウンする。
そしてすぐさま体を伏せ、今まで目標を外した事のない望遠鏡を構える。

「そろそろ、ですね。」
マナ欠乏症をこの方法で治療した場合、治療された側は何の兆候も見せずに目を覚ます、そして治療している側とどのような状況になっているか理解する、そしてそのあとは・・・・・

余談になるが、別に兆候は無いのだからそろそろ目を覚ますかどうかなんて分かりはしない、ただただ愛の力だ、侮りがたい。

風もやみ周囲は静寂に包まれる、辺りの音を支配しているのは私の荒い息遣いのみ。

二人は相変わらず口を付けたまま、むしろ私の知らないところで離れていては意味が無い、何のために溯夜さんに譲ったのか、全てはこの瞬間にかかっているのだ。

シリアさんの腕から力が僅かに抜ける、その僅かな差を見落とすほど曇った眼ではない。
シリアさんがゆっくりと目を開け、目が半分ほど開かれたところで、一気に見開かれる。

溯夜さんを突き飛ばし、手と足4足歩行で目は溯夜さんに向けたまま後退するシリアさん、そして一定の距離が取れたら今度は手を口元にやり、全てを理解する。

一気に、それはもう火にガソリンを7ガロン投げ入れたほどに爆発的に真っ赤になるシリアさん。

「ふぁ、かあいいよぅ」
真っ赤な顔でうつむくその姿は今までの悦の入った様子とは全く違い、全くもって非の打ち所無く可愛らしい。完璧だ、やっぱり私の読みは正しかった、溯夜さんあんた最高だぜ。

「普段の洗練されたシリアさんであってこそ、こういったときに萌えを誘うんですねぇ〜」
溯夜さんも起き上がり真っ赤な顔でシリアさんを見つめる。

「さぁ、ここからどういう風に二人の恋は燃え上がっていくのでしょうかっ!!」
こっちも勝手に燃え上がる、金属製の望遠鏡に指の型が残る程に力を込めていると。

「・・・・」
後ろ数mに敵の気配、ラキオスのスピリットがこっちにいるとは考えられないのでやはりマロリガンのものだろう。

ギリ・・・歯だけでなく空間さえも噛み砕いてしまいそうなほどの歯軋りをする。

こんな時に、これからって時に、なんてことだ。

二人は気付いていない、なんでもマナの交換を行った後はしばらくの間体内のマナが不安定になり周囲のマナが感じられなくなるらしい。

それでいい、下手に二人にこられてはやり場の無い怒りをぶつけられない、この体を破り内側から弾け出ようとする怒りを敵に向けれないではないか。

望遠鏡をしまい、剣を手に敵の下へ、溯夜さんとの約束では敵が出現すると知らせなければならないがそんなもの知らない。

◆◇◆◇◆◇◆

接近するに連れて敵の詳細が分かってくる、敵は3人、うち二人はスピリットだが一人は感じるマナの規模から言ってエトランジェだろう。

失敗した、敵にエトランジェがいるなんて想定していない。下手したら殺されてしまうかもしれない。
程なくマロリガンの3人組と接触する。

「で、ラキオスのスピリットがこんな所で何をやってるんだ?」
3人の真ん中で位置している大きく、太くて、逞しい剣を背負った男が聞いて来る、名前はミドリとかいったかな。

「帰りたくても帰れないんですよ、それにせっかくのいいところで水を差してくれて。」
3人は首を傾げるが、手は常に剣にかかっている。

「せっかく、せっかく、あそこまでこぎつけたのに。他人に譲るまでしたというのに。」
あ〜、思い出すだけで腹が立つ、剣が怒りに呼応して力を増すなら今の私に切れないものは無い。
だが、そんな都合のいい剣で無いということは百も承知。

「それで、お帰り願いたいのですけど?」
「おいおい、マロリガンの領内にラキオスのスピリットが侵入してて、しかも“帰れ”なんていわれて素直に帰るわけ無いだろ。」
当然の返事だろう、だが。

「勘違いしないでください。このまままっすぐ回れ右して帰るか、一騒動あったあと怪我して帰るか、どっちかを選べと聞いているんですよ。」
『最果』を構え、我が内に蠢く怒りを眼前の敵に向ける。

「へぇ、何をそんなに怒ってるのか気にはなるが、そっちがその気ならやらせてもらうぜ」
大きく太く逞しい剣を構えたエトランジェが剣を振り上げ宣言する。

「行きますよ。」
『最果』を下段に構える、目標はあくまでスピリット、エトランジェと真っ向に勝負して勝てると思うほど慢心してはいない。

ハイロゥを大きく唸らせ左翼のレッドスピリットに突進する、がエトランジェが反応し進路をふさいで来る。エトランジェには悪いがそれは百も承知、『最果』を地面に突き立てそれを軸に270度回転、音よりも速く進路を変え右翼のブルースピリットに切りかかる。

「あははははははははははははははははは!!!」

ハイロゥの爆発力と遠心力を利用した突撃の重みでブルースピリットの体を『最果』が抉り取る、そのまま敵と距離をとり───

「進路の限界、夜の終わり、全ては終わりへ向けて帰着する────」

「マナよ、渦巻く炎となりて────」

「エーテルシンクッ!!」

レッドスピリットの詠唱を止める、そのまま着地し二人と向き合う形になる。

「ふぅ、マロリガンのスピリットも案外たいしたこと無いですね。こんな簡単に殺されるようなスピリットでデオドガンを落としたんですか?」

こちらの余裕を見せ付けるために適当に嘘を吐く、はっきり言ってさっきは奇襲だったからこそ成功した一撃必殺。次からは守りに徹して二人が来るのを待たなければならない。

「言ってくれるな、仲間を殺されたからにはこっちも黙っちゃいられねぇよな。それに、まだ二人ほど居るみたいだしな。」
やっぱり気付いていたか、二人の気配はマナが乱れていることもあって普段の倍の距離でも認識可能だ、溯夜さんはエトランジェ、気付かないわけもないか。

「俺がこのスピリットを相手にする、お前は向こうの二人を頼む。」
わざわざ私の替わりに呼びに言ってくれるらしい、耐えるのも少しでいいかな?

レッドスピリットが私の脇を抜け砂丘を駆け上がる、もちろんこっちとしてはうれしい限りなので止めるなんてことはしない。

「止めないのか?」
「そっちこそ、二人居ると分かっているのにスピリット一人だけ向けさせるんですか?」
「あぁ、どうせ砂漠越えとマナ障壁で弱ってるんだろ?俺たちに反応したのがあんただけって所でまず怪しいからな。」
そういうことか、あと数分来るのが早ければ不意も打てただろうが。

「それじゃ。仇、討たしてもらうぜ」
双剣を回転させながら轟音轟かせ迫り来る業風、あんなのに巻き込まれたら骨も拾ってもらえないじゃないか。

「そんなの困りますよ、私だってまだ死にたくないんですよ?」
『最果』を構え攻撃をどのように受け流すか考える、だが捻じ狂う暴風には一縷の付け入る隙も見当たらない。結果、防護障壁を展開し、攻撃が当たる瞬間に身を斜め後ろに投げ出すなんて作戦も何も無い醜態をさらすことになった。

「あ、えほっ・・・げほっ!!」
かなり吹き飛ばされた、どうやら四肢はまだしっかりとつながっている、だが右足の骨は無残に砕け散ったようで、肉を突き破り骨が除いている。

「さっきので死なないなんてな」
とっさに『最果』を構え、荒れ狂う暴力に対抗する。だが、私の体は面白いように中空を舞い、地面に落ちる。

「はぁ、はぁ・・・・」
ここまで強いなんて予想外、エトランジェの存在だけで北方を統一したラキオスもようやく納得できる。

「ふぅ、ここまでだな。悪いが死んでもらうぜ」
腕を使って体を反転させると剣を構えたエトランジェの姿、それと満月。

「あれ?」
今日はまだ満月じゃない、はず。それにこっちは北向き、月は東と南の間に浮かんでいるはずだ。

「どうした、遺言も聞いてはやらないぞ」
あぁ、そうか。

「心なき 身にもあはれは 知られけり
  しぎ立つ沢の 秋の夕暮────」

あれは、月じゃない。

月だと思っていたのはマナの塊、月の形をとっているのは鳥の形をした白い濁流。

月から生まれるように押し寄せるとりの軍勢は────


────────Sakuya side
「さて、と。」
無数の鴫が碧を呑み終え、リースを回収する。

「大丈夫か?」
「はい、ありがとうございます。それよりシリアさんは?」
「あいつも大丈夫、ありがとうな。リースのおかげだ。」
リースを砂の上に下ろし、俺の攻撃を耐えてみせた碧と向き合う。

「やれやれ、アレを受けて無傷か。ちょっとショックだな。」
「まさか真下に仲間が居るのにあんな神剣魔法使うなんてな。」
あんなとは失礼だな、あの魔法は機動力が売りなんだがね。

「そういうお前は、味方を一人こっちに向けて見殺しにしてるのになんていい草だ。」
「・・・・殺したのか?」
「は?そりゃそうだろ、敵なんだから殺さないと。大体、戦争は殺し殺されるもんだろ?文句なんていくら言ってもいいけど俺は3μmも心を動かされんぞ。」

「・・・・・お前は味方が殺されても悔しくないのか?」
「そりゃあ、悔しいに決まってるじゃないか。けど、別に敵が悪いわけじゃない、それだけだ。」
「なら、ここで俺があだ討ちを決行しても」
「別にいいよ、それを返り討ちに出来なかったらそれは俺の責任だ。」
碧は『因果』を構え、俺は刀の『幽玄』を右手に持ち、両腕をだらりと下ろす。

「溯夜さん、大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ、相手が誰であろうとお前ら残して死ぬわけにもいかないからな。」
「シリアさんは、さっきから来ないんですけど?」
「ん?レッドスピリットはシリアに任せたからな、多分ゆっくりしてるんだろ。」
「そうですか、私も足が動けば・・・」
「あ〜、気にするな、直ったら働いてもらうさ。」
自分の折れた足を恨めしそうに、否、真実恨めしく睨みつけるリースをなだめ、目前の敵に視線を移す。

「せっかく俺が視線を外したのに待ってるなんて酔狂だな。」
「俺は騎士道精神に乗っ取って行動するんでね、不意打ちなんかはご法度なんだよ。」
「俺と正反対か〜」
「ちげいない───」
言葉をつむぎ終えるかどうかといったところで『因果』が発光し、マナを巻き込んだ暴力のうねりと化す。
直線的に迫り、まるで空間を削り取るように疾風怒涛の勢いで俺の領域に食い入る。

「高砂の 尾の上の桜 咲きにけり────」
『幽玄』に桜のコーティング、かつて龍の腹を穿ち、一撃の下に絶命させた魔槍。
  「外山の霞 立たずもあらなむ───。」
足元には桜のカタパルト、手には突撃を今か今かと待ちわびる殺意の具現。

「死ね───」

合図と同時に足元の桜が俺と槍を打ち出す、数瞬の間もなく、槍と削岩機は激突する。
削岩機と槍、小細工の無い正面からの鍔迫り合い。
削岩機が槍と俺を灰燼に帰すか、それとも槍と俺が削岩機を穿つか。
どちらか一方のみの選択肢、選択権は両者にある、故に両者とも選択権を持っていない。

ただ、己の剣でもって敵を屠る。それ以外の選択は無い。
一瞬は無限に、無限は刹那に、両者は均衡を保ち一歩も譲らない。

削岩機は勢いを止めず、俺の槍を削る。俺の槍は削られたところからマナを継ぎ足し補修する。
耳にはあらゆる音が届かない、周囲には轟音が鳴り響いているはずなのに耳はあらゆる音を感知しない。
もはや、剣と剣がぶつかっているというよりも、マナの塊とマナの塊がぶつかっているようなもの。
黄土色のマナと桜色のマナがぶつかり合っている。
刹那の攻防にも終わりが近づき、マナは弾け、目の前は真っ白になった。


────────reath side
唖然
溯夜さんが戦っているところは実際この砂漠でしか見たことが無い、それでも無傷しかも一撃でスピリットを倒す様は鬼神のごとき強さだった。

それではこの目の前の攻防は何なのだろう、溯夜さんは一撃離脱を旨とし、一撃必殺を美徳しているのは戦い方を見れば分かる。

だが目の前の戦いは離脱など考えていない、一撃必殺のみを考え、マナの量で敵を圧倒するための攻撃。
桃色の魔槍は黄土色の塊を貫こうとし、黄土色の塊は桃色の魔槍を削り取ろうとしている。

マナの量はスピリットでは抗いようも無い、もし私の足が完全でもあの二人の中に飛び込んだら、原初のレベルにまで分解されてしまうだろう。

自然と『最果』を握る手に力がこもる、ただの観戦で汗をかいている自分が居る。
シリアさんはまだ来ない、矢張り病み上がりだから休んでいるのだろうか。それさえもこの折れた足では確認できない。



「!!」
付近で土を踏みしめる音、シリアさんが来たのかと半分期待したが。
「あ」

「悪いな妖精よ、まだ『因果』の主には死んでもらっては困るのでな。」
細い神剣を喉元に突きつけられ・・・・・


To be continued

あとがき
リースは案の定ぶっ壊れました、何ていうか橙を前にした藍みたいに。
この話での最大の山場はやっぱりシリアを起こす所でしょうか?

花映塚体験版は2Pカラーが素敵ですね。


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