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エクの月 黒いつつの日 ヘリヤの道
────────Sakuya side
目の前には高嶺に気を取られ背後が疎かになっている岬の背中。
その隣にはでかい剣を担いだ碧。

岬のマナ量には驚かされるが背後を疎かにするあたり戦闘慣れはしていないのだろう。
『幽玄』を神速の勢いで振りぬく、が。
ギンッ!!

「ちっ」
俺の剣は碧のでかい剣で止められた。
が、すぐに2撃目を入れる、2合3合をあわせるがどれもこれも止められる、だがここまでは予定通り。


「無限軌道(インフィニティクライシス)」
砂の中から無数のナイフが飛び出る、碧達と同じようにこっちも気配を消して砂の中にナイフを仕込んでおいた。


今まではシリアの巻き添えを食らわないように離脱していたが。
「ちっ!!」
碧の歪な顔が見える、それもそうだろう無数のナイフが飛んできたかと思ったら、直線の軌道なのにまるで俺を避けるようにナイフが自分に向かって飛んでいるのだから。

実際には俺が器用に全て避けているだけに過ぎない、だが碧にしてみればこの無数のナイフを後ろを見ずに避けている時点で異常だろう。

徐々に碧のオーラに歪が出来る、予想よりも高い強度を持っている。
「くそっ、居ないと思ったら。」
「さっきから悪態をついてばっかりだな。」
岬の方はシリアが押さえ込んでいるだろう、あの大振りの魔法にとって、マシンガンのように打ち出されるナイフとの相性は最悪だろう。

「お前が、イースペリアのエトランジェか。」
ナイフの数が少なくなる、もともと多くは設置してなかった、だが碧の体には既に両手では数えることが出来ないほどのナイフが刺さっている。

「そうだ、これで予想が確信に変わったか?」
腕を振る速度を上げる、秒間二桁近い斬撃が碧を襲う。
さっきから防戦一方の碧を見ると、守りのオーラも薄くなってきている、オーラの上からでも斬撃が入っている。

「くそっ、思わぬ伏兵って奴だな。」
「お前と殺しあうのは高嶺じゃなくて俺だ。そうそう、大統領から話は聞いてるだろ?答えを聞かせてもらおうか。」
ナイフは弾切れ、そしてシリアは岬を押さえ込んでいる。

「“親友と殺しあうのは楽しみか?”って奴か?」
「そう」
既に碧の体は傷だらけだが、どれもこれも致命傷にはならない。

「やめろ、黒霧!!」
高嶺が叫ぶ。
「・・・・やれやれ、隊長命令じゃ仕方ないな。」
「そうね、仕方ないわ。」
最初の打ち合わせどおり、高嶺の制止と同時にシリアがこっちに跳んでくる。

「最初から本気でやりあうつもりはなかったんだろ?」
「存外に弱かったら殺してたさ」
シリアを抱えて、岩場を飛び降り高嶺のところに戻る。


着地と同時に


「黒霧!どうして光陰を攻撃した!?」
「それで、碧、質問の答えを聞かせてもらおうか。」
高嶺の言葉を無視し、シリアを下ろして岩場を見上げる。

「いいぜ、悠人と殺しあうのはなかなかに楽しみだ。だが、今はそのときじゃない。」
「なっ!!」
碧の言葉に高嶺がうろたえる。

「そっか、まぁ、楽しみは後に取っておくもんだな。」
「そういうことだ」
岬を見てみると、岬も所々ナイフが刺さっている。

「ちゃんと、手は抜いたんだ。」
「ここでは殺さないんでしょ?」
「まぁね、楽しみは後に取っておくもんだからな。」
状況が理解できない高嶺を置いて碧は話を続ける。

「ふぅ、イースペリアのエトランジェが思った以上に好戦的で焦ったぜ。」
碧が馬鹿でかい剣を担いで喋る。
「大きな剣ね。」
「まぁ!!何て、太くて、逞しい。」
ドゴッ!!
「黙れ」
殴られた。

「何で攻撃して来るんだよ!?」
高嶺が必死に碧達に怒鳴る。
「そんなの見りゃ分かるだろ、お前も俺も今日子も黒霧も、似たような剣を持っている。」
碧が順番に剣を眺め見る。別に似てないと思うけどね・・・

「それに俺にもいろいろと都合が有ってな。」
「都合ってなんだよ、っ今日子!!どうして何も言わないんだよ!?」
「お前もその剣をもって今まで戦って来たなら分かるだろ?」
俺にはさっぱりわからないが。

『シリアがこの前神剣に呑まれてしまったでしょう、それと同様に彼女も神剣に呑まれてしまったのですよ。恐らく。』
「まさか・・・・」
高嶺は気付いたのであろう、顔面蒼白で岬を見ている。

「で、でも!!俺たちの中にも神剣に呑まれてから元に戻ったスピリットだって。」
「シリアの事だな」
「わたしの事ね」
碧が僅かながらにも反応を示す。

「・・・・興味深い話だけどな、悪いが悠人、俺たちに殺されてくれ。」
そういうと碧の剣に膨大なマナがあつまる。
「永遠神剣第5位『因果』の主、コウインの名において命ずる──────」
「春風の 花を散らすと 見る夢は────
   冷めても胸の さわぐなりけり────」

一瞬で八節を取り、矢を放つ

碧のオーラと俺の魔弾は空中で激突し、爆音と砂塵を生む。

そんな轟音が鳴り響く中

「じゃあな悠人、俺たちの防衛線を突破できるかな?」
碧の声はよく響いた。



「ちっ、あれでも相殺が限界か。」
「驚きね」
砂塵が晴れると既に岩場に碧達の姿はなかった。

「くそっ・・・今日子!!光陰!!」
遮蔽物のない砂漠では高嶺の声は遠くまで響いただろう。

──────────────────────

同日 ヘリヤの道
「黒霧っ!どうして二人を攻撃した!?」
マロリガンのエトランジェからの宣戦布告を受けた数分後、皆を落ち着けてから高嶺が食って掛かってくる。

「どうしてって、敵だからだろう?」
「っ!!」
「いいか?あの二人がお前の親友だろうがそれはお前の都合だ、俺はそんな物知らない。」
「ふざけるなっ!!だからって同じっ!!」
「同じ、なんだ?同郷の民とでも言うつもりか?ならお前の秋月に対する憎悪は何だ?」
「っ───」
「いいか、ここは戦場でお前は国の命運を握る軍の隊長だ。」
胸倉を掴む高嶺の手を払いのけ、立ち上がる。

「この前国に協力すると宣言した以上、その役目は果たせ。」
「なら、お前だって、レスティーナに協力するって言っておきながらラキオスにきて最初は自分のことだけじゃなかったか。」
「そうだな、でもあの時俺は、協力するのは自分の用事が済んでからって言ったろ?」
『あげ足取り。』

「だからって」
高嶺が再度俺の胸倉を掴もうとする、それをバックステップでかわし。

「いいか、お前にとってあの二人は大切だろう、なら選ぶんだな。」
高嶺を見据えて、言いつける。

「ここで皆に三行半叩きつけて、さっきの二人を追うか、二人はとりあえず保留にするか。」
『保留とは曖昧ですね。』
「俺は・・・・」
高嶺が下を向き、本気で悩んでいる、どうにも難しい問題だったか。

「まぁ、答えは保留でいいだろ。どうせ、ここで三行半叩きつけても、ラキオスのエトランジェで居てもどのみちあの二人は追いかけるんだ。目的は違えどな、そこでまた考えればいい。」
高嶺がこっちを向き、なんとも言えない表情をする。


「やれやれ、それより、このまま進軍するのか?」
「する、あの二人に追いついてもう一度話をする。」
「そうか、だが今日はもうダメだな、皆疲れてる。」
周りを見渡しても皆、地面に座り込んでいる、今まで負けしらずだったラキオススピリット隊にとって始めての圧倒的敗北だろう。
「そうだな、今日は休んで、明日からにしよう。」

──────────────────────

コサトの月 青よっつの日 早朝 ヘリヤの道
「そろそろ、スレギトだな。」
「そうだな、あ〜眠い。」
スレギトを目の前にしての部隊再編、スレギトはマロリガン攻略の重要な拠点のため、ここでミスを犯すわけには行かないとの事。

「で、どうするんだ?」
いつの間にかエスペリアに連れてこられ高嶺の部隊構成の手伝いをさせられるようになった。

「う〜ん、スレギトをどれだけの戦力で守っているか分からないことには。部隊をどういう風に運営していいかも分からない。」
高嶺は本気で悩んでいるようだが、やはりあの二人のことが尾を引いていることは明らかだ。

「・・・・なら、俺とシリアとリースで斥候として先行するから、敵の戦力と大まかな地形が分かったら報告する。その後、総攻撃でどうだ?」
「だけど何があるか分からない場所で孤立させるわけにも。」
「確かに、な。敵はエトランジェが二人、何処で投入してくるかは分からないが。」
高嶺が沈黙する、どうせ二人の事を思い出しているんだろう。

「問題はスレギトで迎え撃ってくるか、それまでの道のりで迎え撃ってくるか、もしくは、迎え撃ってこないか、の三つしかない。なら33%に賭けてみてもいいんじゃないか?それにこの作戦が失敗しても、実質ラキオスには何の被害もない、死ぬのは俺とシリアとリース、もともとイースペリアの連中だからな。」
「そんなのダメだ!!」
机を叩き、怒鳴りつけてくる。

「俺は誰も死なせない。」
まっすぐだな、嫌になるくらい。
「わかったよ、死なないって、俺が死ぬぶんにはいいけど他の二人に死んでもらったら俺も安らかに眠れそうにないし。けど、他にマシな手が有るわけでもない、全員で固まっていけば全体の生存確率は上がるだろう、だが逆に消耗させられて撃退させられるかもしれない、ここまで来て引き返すのは癪だしな。」
『ここまであっさり過ぎましたからね、このあたりで何かあると考えるのが妥当でしょう。』

高嶺が本気で悩んでいる、これくらい悩んで勉強すれば成績も上がったろうに。
「・・・・分かった、黒霧とリースとシリアさんに大体半時ほど先行してもらう、けど何か有ったらすぐに引き返してくれ。」
「了解隊長。」

◆◇◆◇◆◇◆

同日 夜 スレギト、ミエーユ間の道
「ここまでは順調、か。」
敵の襲撃も少なかったおかげで3人とも怪我はしていない。

「けど、不気味ね。」
「確かにな、あの大統領がここまでぬるい防衛線を張るとも思えないし、碧の言っていた“俺たちの防衛線を突破できるかな?”も矛盾してくるな。」
「や、やっぱり何かあるんですかねぇ?」
「あるんだろうなぁ」
太陽も沈み、昼間の暑さも失せ始めた午後8時ごろ、少し涼しい空気が砂漠に満ちている。

「居心地もいいし、いまなら昼間の力と比べたら5割増しかしらね。」
「それだったらお前手抜きしすぎ。」
「私はいっぱいっぱいだったんですけどねぇ。」
シリアの言葉に俺が皮肉を返し、リースが苦笑いを浮かべながら付いてくる。既にお決まりのパターンとなっていて、これでいよいよ二桁目に突入する。

「リースも実戦経験が今までなかったにしてはよくやってるよ。」
「そうですか?でもお二人に任せてだけじゃダメですから。一生懸命頑張らないと。」
そういって拳を握り、気合を入れる。

余談だがリースは結構強い、だが自分の戦闘が終わるとシリアを尊敬を今にも越えそうな眼で見ている、ちょっと危ない気がしないでもない。先程の戦闘で「はぅ、シリアさん格好いぃぃ。」ともらしたのを俺は聞き逃していない。なんか女学院っぽく見える。

「しかし、静かだな。」
とりあえずリースの行動は見てみぬふりをすることに決める。
『まぁ、スピリットには殿方が居ませんから』
だから無視するって決めたのに。

「あれ、なんですかね?」
リースが真上を指差す。
「ん?オーロラ?」
砂漠なのに?ここってそんなに寒かったっけ?

『・・溯夜、早急にこの場を離脱してください。』

「は?」
『はやくっ!!』
『幽玄』がここまで取り乱すのも珍しいし、ただことでは無さ───

ゾクッ───

「っ!!」
「どうしたの?」
少し前を行くシリアが首だけこっちに向けている。

先程の悪寒はイースペリアで感じたものと酷似している、まさかこんな所で?

『もう、時間がありません!!』
言い終わると同時に周囲の希薄だったマナがついに完全に零になる。

次の瞬間───

「ぐっ・・・・」
暴風が吹き荒れ、砂塵を起こす、だが普通の暴風ではなく、確実にこっちにダメージが来ている。

「マナよ我に従え、結晶となりて、我らを守護する盾となれ────」

リースの防御魔法でダメージが緩和され───

「っ!!シリアっ!!」
リースの腕を引っ張って、全く防御魔法が使えないシリアの下に走る、シリアは嵐で体を引き裂かれ、辛うじて地面に立っている程度。

嵐が邪魔をしてなかなか前に進めない、防御の魔法をリースが展開してはいるが、前に進むには逆に邪魔になっている。

「ぐ、くそっ!!」
シリアの足が地面を離れる、今まではそのまま地面に舞い戻っていた足も今度は戻らない。

ギリギリで服の端を掴み、引き寄せる。


近くに見えた岩場にシリアを抱えリースを横につけて走り

「世の中に たえてさくらの なかりせば────
   春の心は のどけからまし────」

岩に『幽玄』で傷を付け結界を張る、強度だけはリースの防御魔法よりも高いつもりだ。



結界の外は相変わらず削岩機のような嵐が吹き荒れている、シリアも全身傷だらけ

「くそっ、なんだんだよあれ。」
結界の外に比べると中はいたって平穏を保っている、音は結界を伝ってくる嵐の音とシリアの荒い息ぐらい。

『マナ消失を応用して起こす防衛装置か何かでしょう。』
「アレがあるからマロリガンの攻撃が緩かったのか。」

「あの」
「ん?」
「シ、シリアさん大丈夫なんですか?」
腕の中のシリアを見ると、息遣いはさっきよりも荒くなり、傷口からはマナが流出している。

「大丈夫そうにないな。」
だが、ここにグリースピリットは居ない。

『シリアは大丈夫です、治そうと思えば治せます。治さなければ死にますが、因みに2時間ほどしか余裕はありませんね。』
「・・・前言撤回、大丈夫らしい。」
「本当ですか!?」

『治療のためにもこの嵐の中から脱しないといけませんね。』
この結界の中だとダメなのか?
『少し、ダメですね、下手すると結界が破れてしまいます。』
リースの魔法は?
『彼女の障壁では長時間もつことが出来ません、どうもこの嵐は定期的に威力が弱まっていますから、その時を見計らって脱出するしかないですね。』

確かに結界を通じて伝わってくる嵐の音は周期的に小さくなっている、だがその時間も決して長くはない。

『時間は短くても大丈夫ですよ、もともとこの嵐は長さは広いですが、幅はそんなにありません。それにここは嵐の端に位置していますし、まぁマロリガン側ですが。』
「贅沢は言ってられないか。」
「溯夜さん?」
「リース」
リースに向きなおし、真面目な顔をする。

「は、はい。」
「シリアは見ての通り怪我をしている。」
「はい」
「治すためにはこの嵐の中から脱出しないとダメらしい。」
「はぁ」
「だが、俺の結界は移動が出来ない、リースの魔法は防御力が小さい。」
「そうなんですか」

「で、シリアもあと2時間もしたら手遅れになる。」
「っ、だったら」
「そ、すぐにでも脱出しないとダメだな。けど、シリアを治すための条件を満たした上で脱出するためにはマロリガン側、ようは敵地に出ることになる。」
「そんなの、関係ないですよ、ほら溯夜さん。出発しますよ。」
リースは立ち上がり今までにない気合を見せて立ち上がる。

『頼もしいですねぇ。』
頼もしいが、「シリアさん今私が助けますよっ!!」なんて聞こえてきたらなぁ。
『美しき師弟愛ではないですか。』
一方的だな。


シリアを背中に背負い、嵐の弱まるタイミングを読む。

「リース、3,2,1,0で結界を解くからすぐに防御の障壁を張ってくれ、あとはまっすぐ走るだけだ。」
「はいっ!!」

うわぉ、すげぇ気合

「それじゃ、行くぞ。」
リースのどんと来い、見たいな雰囲気を感じ取り。

「3」「マナよ、我に従え───」

「2」「結晶となりて───」

「1」「我らを守護する盾となれ───」

「0」「ウォーターシールド!!」

──────────────────────

────────Yuto side
「・・・・・。」
「ユート様」
「黒霧たちは?」
エスペリアは横に首を振る。

「・・・・くそっ」
「まだ、嵐の中か」
「もしくはマロリガン側に・・・」
エスペリアの言葉を引き継いで答えを出す。

「ユート様、ここに居ても何にもなりません、ここは一度ランサに帰った方が。」
「けど」
「サクヤ様は弱くなどありません、きっと大丈夫です。」
確かに黒霧は強いが。

「サクヤ様のお言葉を借りるようですが、ユート様、貴方は私たちの隊長です、然るべき態度と行動がなければ皆も付いては来ませんし、何よりカオリ様を助けることも出来ません。」
「っ!!」
佳織、その言葉を聞くだけで引き返そうとする卑怯な自分に気付いてはいる、だけど。

「一度、ランサまで撤退する。」
「わかりました。」
もう一度荒れ狂う嵐の壁を見て、ランサにむけて走り出した。

──────────────────────


────────Sakuya side
「ふぅ。」
何とか嵐も抜け、山といっても違えないほどの高さの砂丘の麓に腰を下ろす。

で、どうやったら治せるんだ?
『シリアはいわゆるマナ欠乏症という状態ですね。簡単な話マナが不足しているのですから他所から持ってきて足してやればいいのですよ。』
それって、別にあの結界の中でも出来たんじゃあ。

『いえ、あの結界の中では回復の効率が悪いんですよ。他所から、つまり貴方かリースのどちらかになりますが、どちらかのマナをシリアに移すことでシリアの応急手当とするわけです。』
つまり、俺かリース、どちらかのマナは減ってしまうわけだ。

『そうです、まぁさほど多くの量は必要としませんが。』
そうかい。

「あの、溯夜さん、シリアさんは。」
『そうですね、治療をするとしましょうか。方法は・・・・リースに聞いてください。』

は?

『早く。』
ちょっと、いや、かなり釈然としないがとりあえず

「リース、マナ欠乏症ってどうやって治すんだ?」
「ぇ?え? マナ、欠乏症、ですか?」
「あぁ、ってどうした?」
かなり顔が真っ赤になっているリースは、俺とは目を合わせずにあちこちを見ながら、「えっと」「そ、それは」とか言っている。

『質問を変えましょうか、治療は貴方かリースどちらがやったらいいか、聞いてください。』
「なぁ、リース、その治療って、俺とリースどっちがやるべきなんだ?」


────────reath side
「なぁ、リース、その治療って、俺とリースどっちがやるべきなんだ?」
え?
その質問を受けて一気にクールダウンする頭脳。

マナ欠乏症の治療はまぁ、知ってはいるし、難しくはない、やること自体は。



議長「えー、これから第13回リース脳内会議を始めます。」

議員A「今回の議題は、マナ欠乏症のシリアさんに、私と溯夜さんのどちらで治療を施すか、です。」

議員C「治療の方法は分かりきっていることですね。」

議員B「それはもう全員が知っています。」

議員D「ここは、自分で治療を引き受けるべきでは?」

議員A「確かにこれはまたとないチャンスだが。」

議員B「この機会を逃せば正当な理由を持って事をなすことは至難の業ですぞ?」

議員C「だが、溯夜さんに任せて遠目からその様子を見るというのも。」

議員D「確かに魅力的な提案ではある、だが、しかし!!自らでやってこそではないか?」

議員B「そうだ、このまたとないチャンスを拒否する理由など何処に有ろうか?いや、ない!!」

議会はかなりのヒートアップを見せている。
議員の発言も一歩引いてみればたじたじだ。



「なぁ、リース、シリアの反応って俺とリースが治療を施したのでは違うのか?」
「っ!!」



議員C「ぎ、議長!!」

議長「なんですか?」

議員C「議会内に侵入者です!!」

議長「なんだと!?」

侵入者「ハイジョスル」

侵入者は両手に持った斧を振り回し、議員Bと議員Dを薙ぎ殺す。
侵入者「ケッテイハ サクヤニマカセセイカンスル ダ」
侵入者は血に濡れた斧を振り、議長を脅す。

議長「わ、分かった、その決定に従おう。」

議員A「いいのですか議長!!ここはあくまで話し合いをする場、武力に屈するべきでは」

侵入者「ハイジョハイジョハイジョ」

議員A「うわあぁぁあぁぁあぁ!!」

一瞬にして議会内は血の海となり、血に溺れる議長と議員C

侵入者「イギハ?」
議長&議員C「「ない」」



To be continued

あとがき
はい、上記の通り溯夜とシリアとリースはマナ障壁の向こう側に置き去りです。
でもってシリアさん大ピンチです。リースも何かと修羅場のようです。

天零萃夢かっこいいよ・・・


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