作者のページに戻る


 むかーし、むかし。

 あるところに悠人とアセリアが住んでいました。

 アセリアは川へ料理の練習を。悠人は巻き込まれないように山へ逃げ出してしまいました。

 アセリアが川で環境汚染をしていると、川上から、どんぶらこ、どんぶらこ――と大きな大きな桃が流れてきました。

 彼女は悠人と一緒に食べようと思って桃を拾い、家に持って帰りました。

 家に帰ったアセリアは、悠人の見ている前でまな板を取り出し、その上に桃を置くと、永遠神剣を抜いて構えます。心なしか桃が震えて後退ったように見
えましたが、彼女は落ち着いて永遠神剣を振るい、真横から桃を真っ二つにしました。

 丁度真ん中で地面と水平に叩き切られた桃を開けると、桃の中には空洞があり、その上半分に小さな女の子がしがみ付いていました。

 二人にはやんちゃ盛りの子供が既に一人いましたが、優しい二人は桃の中から出てきた女の子にウルカという名前を付けて、大切に大切に育てました。

   ***

 すくすくと育ったウルカは、ある日、鬼ヶ島の鬼達が村の人を困らせていると聞きました。

現場に駆けつけてみると、大切な畑を荒らされたヘリオンに泣き付かれ、田んぼを荒らされたナナルウは悲しみの為か微動だにしていませんでした。

村長であるエスペリアの頼みで、心優しいウルカは鬼退治に行く事を決めました。

 出発のその日。ウルカは悠人とアセリアに挨拶を済ませ、悠人から一振りの永遠神剣を。アセリアからお馴染みのきびだんごを受け取って、鬼退治に出かけました。

 しばらく歩くと、ウルカは何故か、犬耳、犬しっぽ、そして首輪の三大装備を身に付けたネリー&シアーに出会いました。

 ウルカは尋ねます。

「……何故、そのような格好でここへ?」
「ネリーも鬼退治するのーっ!」
「……シアーも、鬼退治……」

 元気よく答えた二人を、ウルカは鬼退治の仲間に決めました。そして腰につけたきびだんごの存在を思い出しました。

「それはそうと、アセリア殿が作って下さったきびだんご、食べてみませぬか?」

 二人は硬直して、元気よく首を横に振りました。遠慮せずに、と勧めるウルカを、急ごうよ、と急かします。

 三人がしばし歩くと、今度はオルファリルに出会いました。

 ウルカが尋ねる前に、オルファリルは元気よく、

「鬼退治ー! オルファも鬼退治ー!」

 といって仲間に加わりました。ウルカは同じようにきびだんごを勧めましたが、ネリー&シアーからの口添えにより首を横へ力一杯振りました。

 四人がしばし歩くと、今度は何やら色とりどりの羽根を身体中にくっ付けられ、何だかとても嫌そうな顔をしているニムントールに出会いました。

 ウルカが話し掛ける前に、きびだんごを片手ににじり寄るネリーの交渉(?)の成果によって、ニムントールも仲間に加わりました。

 五人は船で、悪名高い鬼ヶ島に渡ります。

 黒雲立ち込める鬼ヶ島では、巨大な扉が五人を待ち受けていました。

 ニムントールが羽ばたいて扉を超えようとしますが、なにしろ急ごしらえの翼の為、万有引力の法則に引かれてなかなか上手くいきません。そこでウルカは悠人から受け取った永遠神剣を使って、扉を一刀の元に一刀両断しました。

 中に踏み込むと、待ち構えていたセリア青鬼やヒミカ赤鬼、ハリオン緑鬼が襲い掛かってきました。

 ウルカとその仲間達は襲い来る鬼達を千切っては投げ、千切っては投げ、蹴散らしていきます。

 そんな中、彼女達の耳に、世にも恐ろしい高笑いが響き渡りました。

「悠人さんは預かりました! 彼の命が惜しければ、大人しく縛られなさい!」

 ――見れば、一段高い所で悪の親玉であるトキミ大鬼が、簀巻きにされて吊るされた悠人をバックに高笑いをしていました。

 トキミ大鬼がそんな約束を守るとは思えませんでしたが、悠人の命を無駄にする訳にもいきません。ウルカとその仲間達は大人しくお縄に就きました。

 彼女達を捕らえたトキミ大鬼は、配下のテムオリン大鬼やタキオス大鬼に命じて宴の準備を進めます。

 ――このまま食べられる訳にはいかない。そう考えたネリー達は、ウルカが持っている最終兵器の存在を思い出しました。

 一芝居打って、ウルカが持っている「それ」を手に入れたニムントールは、食べる振りをして鬼達の大鍋の中にそれを一個だけ投げ入れました。

 そしていよいよ宴の時間です。まず鬼達は大鍋でスープを作り、皆で分けて食べました。するとどうでしょう。スープを口に入れた瞬間、鬼達は悶絶しはじめ、一人残らず倒れてしまいました。

 ――そう。ニムントールが投げ入れたのは、アセリアが作ったきびだんごでした。流石の効力に、彼女達は食べなくて良かった、と溜息だか何だかよく分からない息を吐きました。

 隠し持っていた小刀で縄を切ったウルカ達は、鬼達が皆、気絶している間に財宝を探し出し、逃げ出しました。

 そして村に持って帰り、皆で仲良く分けた、との事です。

 ――めでたし、めでたし(笑)。

作者のページに戻る