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アサシン二人、佐々木小次郎とウルカに向かっていくユウト達。
だが、ユウトはセイバーに一言告げると一人、門へ逸早く向かっていった。
「セイラさん、アーチャー任せる!」
ユウトはそう言って自らのオーラフォトンを高めた。
(聖賢・・・・・・いけるな?)
『ユウトよ我の力しかと受け止めよ』
ユウトは聖賢の力を引き出すとその能力を高めてその言葉を発した。
永遠のオーラ。異世界への門をこじ開け、別世界から超絶的な力を導き出す、最強のオーラ。味方の行動回数を強制的に増加させるもの。
「マナよ、オーラと変われ。 我らに宿り、永久(とわ)に通じる活力を与えよ!エターナル!」
ユウトはその力を使って門を飛び越えて龍へと切りかかった。
「な!」
驚いたのは二人のアサシン。ウルカと佐々木小次郎だった。
正式なサーヴァントでないエターナルならば、確かに自然霊以外を排除するこの柳洞寺の結界は利かないだろう。
だが、それ以外にもキャスターとテムオリンで細工をしておいたのである。
それを超える力が聖賢者ユウトにはあったのだ。
その驚く二人――以外にもアーチャーとセイバーも驚いているが――を無視して再び『聖賢』の力を引き出し続ける。
「コネクティッドウィル!!!」
これは悠人の最上位アタックスキル。ラキオスに古くから伝わる剣技の型通りに繰り出すだけだが、オーラフォトンを刀身に集中させてあるため強力である。
テムオリンの呼び出した龍は非常に強力な龍。
それに狙いを定めることにしたのである。
それは守護者アシュギス。
アシュギスは存在自体が不安定な存在なので、この世界でもエターナルのように召還可能なラキオスの龍なのだ。
その一撃で龍の翼から尾までが吹き飛ぶ。
次に続くのはユウトのパートナー、アセリア。
流石にユウトの意図を理解していると言った所か。
ユウトの掛けたエターナルの効果がまだ持続しているので行動回数が増している。
。更に「永遠」とアセリアのシンクロは、エターナルの中でも最高クラスに位置している。第三位の剣ながら、第二位に匹敵する力を発揮できるのはそのためである。「永遠」の持つ能力「世界の外への門を開く力」を利用し、世界外へと敵を追放する。永遠神剣・天位「永劫」の力の一部を『永遠』を媒体にして発動させて行う究極攻撃。属性ダメージも付加されるため、その効果は絶大。
この世界にも凛のように五大元素を持っているものがいるように、属性というものが通用するのである。
「エタニティーリムーバー!!!」
この世界ではエターナルの必殺技は宝具を超える能力がある。
それを連発されては流石の守護者アシュギスも堪らない。
これで龍の半身以上が吹き飛んだ。
その時を見ていた時深が最後の攻撃を下す。
「この世の果て、時の果てへとこのものの存在を導きたまえ、そこにあるのは神の唄。貴方は時の狭間で散りなさい!」
この時のために持ってきた時深の二本目の永遠神剣『時果』の力。
その力は時詠よりも強力である。
「――!!!!」
龍――守護者アシュギスはエターナル三人の最大攻撃を三度受ければ流石に滅びる。
そしてマナの塵となって消えていくのだ。
だが、時深に取ってはこれも計算づく。
そのマナを利用して今度は『時逆』の力を使う。
「時よ、一時戻りたまえ、あの時、あの場所にある力を求めたまえ!」
時深の詠唱と共にその力付与されるのはセイバー。
この数十分だけはこのマナの力でセイバーは衛宮士郎が操るセイバーではなくなり、切嗣に使われていたときのセイバーの力を取り戻すのだ。
ユウトが掛けたエターナルの効果も相乗してあるのでセイバーの強さは並みのサーヴァントを遥かに超えている。
「これはありがたい!」
セイバーは得た力の強大さも予感の内にあったのか、アサシン、佐々木小次郎へと向かっていく。
だが、これでも、このセイバーでも凌ぐのがこの佐々木小次郎の恐ろしいところ。
バーサーカーの猛攻も耐え切った、魔人の力だった。
「くっ、きついなこれは、いやはやどうしたものか」
七尺三寸の『物干し竿』をセイバーの剣に合わせながらもしっかりと流れるような流麗な技でその力を凌ぎきった。
魔力放出しながら神速の攻撃を繰り返すセイバーに刀が持たないのではないかとは思われるが、この男の本質は敵の攻撃を見極める修羅の領域に達した無我である。
それでもセイバーの攻撃は続く。
だが、これでもまだ凌ぎきるのがアサシン、佐々木小次郎なのだった。
門番としてここにいる限りは敵を通さない。
その令呪が働いている限りはその命令を守り通す。
何事も楽しまずにはいられないこの男はそのセイバーの美しさすら甘美なものとして受け止めつづけるのであった。
そこでも戦況を見極める者が居る。
セイバーに続いたアーチャーである。
彼は接近戦はセイバーに任せるべきとその戦闘経験から判断して、宝具としての弓を構えた。
(アサシンか・・・・・・まあ、その縛りが在る限りはこれは避けられまいよ)
構えた弓に番えた宝具は赤原猟犬(フルンディング)。
標的主が狙いつづける限りその獲物を追いつづける魔剣である。
アサシンがその門に立ちつづける以上は絶対に避けられぬ一矢であった。




エターナルへと進化したエスペリアだが、救いたい、守りたいと想う心は変わらない。純粋な祈りは、『聖緑』の力を得て、さらに強いものとなった。天使の祈りを受けた部隊は、戦いを終えた時に傷を残していることはない。この時も同じで、時深、ユウト、アセリアの消費したマナを同時に補う神剣魔法であった。
「エンジェルプライヤー!!!」
これで時深達が消費したマナの力は戻った。
本当に恐ろしいのはこのエスペリアの力なのかもしれない。
そのエスペリアもすでに門を越えてキャスターとの戦闘に入っている。
上空に居るキャスターが連続でA+クラスの魔術を唱えているが、エスペリアは悠々と回避している。
並みのサーヴァントでは太刀打ちできない。ランサーのゲイボルグさえその防御、デボットブロックで回避したエスペリアである。
幸運のみでなく、敏捷性も抜群であった。
ただ、彼女は魔法抵抗は異常に低い。
だからキャスターの魔術はかわすしかない物であった。



だが、これだけやられて黙っているテムオリン陣営ではない。
ウルカはその令呪どおり、ユウトに向かって行き、タキオスは向かってきたアセリアの応戦に入っている。
すでに瞬時に戦いは続いているのだ。
一瞬一瞬。
時深の能力ではそれこそが戦いの行く末を見守る能力。
未来を見通す時見の目であった。
「ウルカ!」
ユウトは『聖賢』の力を最大にしてそのウルカの『深遠』に対抗する。
剣の腕ならウルカの方が上だが、オーラフォトンの能力や力はユウトの方が上だ。
互角の戦いが続く中、ユウトはウルカに呼びかける。
「ウルカ!戻ってこれないのか!君の意思でも令呪は弾き返せないのか!?」
ぎんとすばやく繰り広げられる、剣戟の嵐は『深遠の翼ウルカ』の最大攻撃、天壌無窮の太刀だ。
聖賢者ユウトと呼ばれるユウトでも、その音速を遥かに超え、光速に迫る連続攻撃は防御に廻るしかない。
オーラフォトンを全開にしてオーラフォトンバリアを張りながらダメージを最小限に抑えてウルカの攻撃を何とか剣で防ぎきる。
「戻れませぬ!手前に掛けられたのはテムオリンの『秩序』を通じて掛けられた魔力が通っておりまする。いくら手前の意思が強靭であったとしても抗いきれません。ユウト殿!ここは引いて下さい!龍を殺したぐらいではテムオリンは引き下がりませぬ」
それにもともと『深遠』は闇のオーラフォトンを宿す力である。
その為黒い闇に棲む魔女とも相性がいいのかも知れない。
だが、ユウトとてここで折れるわけにはいかない。
何とかエスペリアがウルカの令呪の主であるキャスターを倒しきってくれるところまではこのウルカを止めなければならない。
この作戦はこういう思惑もあって繰り広げられているのだ。
ただ、テムオリンを倒しに来ただけではない。
聖杯というものが何なのかは時深は教えてはくれなかったが、危険なものには違いない。
それを防ぐためにユウト達は来たのだから。



近くではタキオスとアセリアの戦いが続いている。
先ほどのエスペリアのエンジェルプライヤーでマナが補給されているのでまだまだ、最大攻撃を放つ余裕がある。
「エタニティリムーバー!!!」
再び開かれる永劫と永遠の扉。
だが、タキオスの絶対防御はそうやすやすとは破れないものだ。
「やるようになったな。あの小娘が・・・・・・だがこの程度で俺は倒れんぞ」
アセリアとタキオスの戦いはほぼ互角に思える。
剣技の、いや、剣数の多さはアセリアの方が勝っている。
しかし、タキオスの振り下ろす一撃の重さはアセリアのオーラフォトンバリアでは耐えられない。
行動回数がユウトのエターナルで増えている今、タキオスを押しているように見えるだけだ。
アセリアではタキオスを倒すことは4:6といった所か。
タキオスの闇の力はそれ程までに大きいのだ。
絶対防御はその名の通り、完全に次元を遮断して相手の攻撃を防ぎきる。
アセリアのエタニティリムーバーも似たような能力があるのでタキオスにダメージを与える事ができるのだが、それでもタキオスのオーラが続く限り、この攻撃を続けるのは少しマナが足りなそうであった。これでも時深は一番効果の高い方法を選んだつもりであった。絶対防御に対抗できるアセリアを。
宝具と同じで、エターナルの必殺技はこの世界ではマナの消費が激しい。
そして空中から吸収するマナとはいえ、有限。アセリアが吸収でき、体を維持できる範囲では有限なのである。
宝具と違うのは、サーヴァントの宝具は自らの魔力を消費するのだが、エターナルの必殺技は周りのマナを消費する。
そしてそれが循環している間にもマナは戦い続ける限り消費されるのだ。
結局はサーヴァントと同じで体内のマナがなくなったらこの世界から消滅する。
剣を持っている限りは、この世界から追放されるだけだが、その法則だけはこの世界でも変わらないのである。




「・・・・・・居ませんね。テムオリン」
龍を倒してすぐに、寺社に侵入した時深はテムオリンを見失っていた。
こちらの方に来たのは呼び出した後移動したのを見ていたので知っていたのだが、それにしても見つからない。
どうしたものか・・・・・・と考えたときに、時深の目に一つのイメージが浮かび上がった。
「しまった!士郎さん達が危ない!」
時深は緋袴と着物を振り乱しながらそのテムオリンの目的の場所に戻るのであった。




遠くから、セイバーとアサシンの攻防を見守る士郎と凛。
二人は後方支援担当なのだが、如何せんエターナル相手には心もとないとの事で、後ろから眺めているだけなのだが、セイバー達の戦いを見ていると何かしなければならないのではないかとイライラしながら凛は宝石を弄っていた。
これで一撃すれば、あのアサシンを倒せるのではないか?
だが、アーチャーが狙撃の準備に入っている。
その必要はなさそうなのである。
彼女のサーヴァントの事なので、見なくても情報はある程度は伝わるのだが。
アーチャーはどうやら宝具を放つようなので、少し離れた方がいい。
そう考えた凛は、士郎を促してセイバー達から離れるのであった。
「こっち来なさい。衛宮君!」
「お、おい。遠坂。セイバー達は」
「良いから早く!アーチャーが何をしようとしているか分からないぐらい未熟なの?貴方?」
「いや?何かあの矢には膨大な魔力が篭っているのは流石に分かる。でもセイバーがあのままじゃ巻き込まれるんじゃないか?」
凛はその発言に怒りを撒き散らして士郎に怒鳴りつけた。
「馬鹿!あんたそれでもセイバーのマスター!?今の状態のセイバーならアーチャーが狙撃した瞬間を狙って離脱できるわよこのあんぽんたん!」
「!?」
戦闘時の凛がいつもの優等生ではないのは感じていたがこの言葉で完全に気が付いた。
士郎の普段の凛は「普段の凛」ではないのだ。
情けなくも従う士郎はそれが正しいと判断したからだ。
自分の能力は残念ながら強化しかない。
それではあのセイバー達を支援するのは到底不可能だ。
強化は物質の強度を高めるもの。
プラスチックを鉄の棒に変えるぐらいのことができるぐらいで後方支援に向いた能力ではない。
それより上の能力を持っているであろう凛がそう言っているのだから下がるしかないとあくまで自分の意志で士郎は判断したのだ。
そこにふと現れるのは黒い、いや、白い衣なのに黒く見えただけだ。
小柄な女の子と言った容姿の存在が、圧倒的な魔力を纏って杖を構えている。
永遠神剣は剣の形だけではないという。
それにこの魔力。
明らかにエターナルだと二人は判断した。
「下がって!士郎!」
凛は虎の子の宝石十個。それも全て。
しかも中には禁術である相乗まで乗せた一撃を放つことにした。
五大元素(アベレージワン)の凛は地水火風空の全ての魔術が使える。
それが単純にして万能と呼ばれる、遠坂家に伝わる「流動」の力だからだ。
「一番、二番・・・・・・以下全元素塵と習え!灰に習え!」
凛の魔術が発動したとたん周囲が輝く。
完全に命中である。
これならばいかなエターナルとはいえ消えるのではないかというほどの大魔力。
凛は消えて欲しいと願いながら周囲が元に戻るのを見るのだった。




(まあ、セイバーごと撃ってもかまわんだろうよ。消えたとて凛の勝ちは変わらんからな。この矢で今のセイバーが殺せるとは思わんが)
アーチャーはそう言いながら最後の一矢を放った。
赤原猟犬(フルンディング)は狙撃主の狙いどおりにアサシンへと吸い込まれていく。
だが、直感――未来予知に近い直感を持つセイバーは即座に距離を取って回避したのであった。
吸い込まれる宝具の矢。いや、剣か。
宝具を投影したアーチャーの矢は間違いなく標的に命中するだろう。
それをアサシンは。
「ふっ、流石にこの布陣ではきつかったか。まあ、好敵手に出会えた事で満足するとしよう。キャスター。済まないが役割は果たせぬよ。はは、まあ、これも世の理だろうて」
命中する瞬間、アサシンはそう言って笑うと爆発による滅びを受け入れたのであった。
アサシンが現界して数日。
それだけがアサシンのこの世界での寿命であった。
仮初の命では在ったものの、ランサー、バーサーカー等の敵と戦えただけでよしとしよう。
(まあお前のことは忘れることはあるまいて、セイバー)
あの魔力の美しき猛り、まさに剣の英霊にふさわしい能力と剣技と力を兼ね添えた英霊。
どこの英霊かは分からないが、さぞ名の通った英霊だったのだろう。
アサシンはそう考えながらも意識は闇の底に沈んでいった。
「やったか」
「そのようですね」
アーチャーとセイバーはお互いの成果を確認する。
確かにアサシンは倒した。
これで柳洞寺内部に入れるはず。そしてテムオリンもそこに・・・・・・。
「!」
セイバーもアーチャーもそこで気が付いたのであった。
戦いに夢中になりすぎた事を。
あまりに時深の作戦どおりに行き過ぎていたので緊張が弛緩していたのかもしれない。
「まずい!士郎が!」
「ちぃ!流石はエターナルというわけか、瞬間移動など御手のものなのだな!」
アーチャーは自らの失態に毒づきながら、下方で起こっている閃光の方向へ走り出すのであった。
セイバーはすでに先に行っている。
現在では敏捷性はセイバーの方が上なのだ。
それでも追いつけない・・・・・・。
セイバーの直感はそう判断していたのだった。
(シロウ、令呪を!)
セイバーがそう思った時にはもう遅いことなのであった。




キャスターの空中からの攻撃をかわしながら機会を伺うエスペリア。
彼女はキャスターには相性はそれ程良くないものの、負けない自信があったのである、。
そして、今が最高のタイミングを計った必殺の時。
「もう迷いません……。 精霊光が照らす彼方へ!」
荒々しい天変地異の力を刀身に乗せ、敵を貫くエスペリア最高のアタックスキル。属性効果が付き、相手が強ければ強い程、強力な対HP効果が高くなる。
「ネイチャーフォース!!!」
『聖緑』にオーラフォトンを込めて最大の攻撃を解き放った。
本来『聖緑』は大型の槍で投槍には向いては居ない。
そしてそういう用途も込められては居ないのだが、空中に居るキャスターを狙い撃ちにするにはこれしかなかった。
だから彼女はこの強大なオーラフォトンを纏った大型の槍を解き放つ。
空中に居るただの的に向かって。
魔力量ではキャスターの溜め込んだ量の方が上だが、基本的な能力の殆どで勝っているエスペリアである。
この機会を逃す手は無かった。
そして、まさか、キャスターの方もあの大型の槍を投げてくるとは思わなかったのか、避けることもできずに魔力とオーラフォトンを撒き散らして落ちてくる。
「ぐっ・・・・・・かはっ・・・・・・」
キャスターはローブの下で血をだらだらと地面に撒き散らしながらかろうじて立っている状況だった。
だが、エスペリアの武器も拾いに行かなければ無いものだ。
それゆえか、エスペリアは基本的能力で勝っている故か、キャスターに不用意に近づいてしまったのだ。
本人はこのまま魔法か何かでとどめを・・・・・・とでも思ったのだろう。
だが、エスペリアには癒しの力しかないはずである。
何故気づかなかったのか。
しかし、サーヴァントには宝具がある。
事前に聞いていたのに、意外な苦戦をしていたエスペリアは完全に油断していた。
ふっと思ったときには。
なぜか、キャスターが歪な短剣を自らの胸に突き立てていた。
武器も無いのになぜ近寄ろうと思ったのか。
余力がないと何故思い込んだのか。
それがわからないままエスペリアの意識は深淵に沈んだ。
「ふっ・・・・・・何とかこの演技も成功したかしら?」
キャスターにすればこの油断を待っていたのである。
もちろん魔術で葬れるならそれでいい。
だが、テムオリンから受けた命令はエスペリアの捕獲であった。
これでまた、キャスターの手駒が増えたわけである。
流石に裏切りの魔女。
人を欺くことには長けていた。
エスペリアは知らず知らずの内に洗脳の魔術を受けていたのである。
対魔力の低いエスペリアには何とか成功したのであった。
受けたのはもちろん『破戒すべき全ての符』。
この世のあらゆる法則を裏切る、解呪の呪い。
ルールブレイカーであった・・・・・・・。






士郎とて令呪の使用をして、セイバーを呼ぼうと、凛も令呪を使用してアーチャーをもしくは聖賢者ユウトを呼ぼうとしたのである。
しかし、セイバーとアーチャーは交戦中。
それも呼んでも歯が立ちそうに無い相手。
肝心の対抗できそうな聖賢者ユウトは交戦中ということで無意識に令呪に抗ったのだ。
そうエターナルは何とか絶対命令権に打ち勝つ事ができるのである。
完全なサーヴァントではないエターナルは何とか意思を集中すれば三回の絶対命令権に耐えうる、もしくは弾いてしまうほどの力を持っているのである。
ウルカもキャスターがあれほど魔力を蓄えていなければ逆らえたかもしれない。
だが、テムオリンがその上に着いてしまった今となっては完全に不可能だ。
そして、テムオリンがユウトの令呪を狙わないのはユウトを従えられない。
あるいは、門を使って時深がこの世界から出してしまう。
だから、聖賢者ユウトは殺せと命じたのだ。
本当に倒すべきはこのテムオリンだったわけである。
それは時深も承知していたのだが、今回は相手が上を行っていた。
龍を囮にして、味方を囮にしてテムオリンだけが目的を果たすためにここに来た。
そう、味方にも言っていない。
彼女の目的とは今、セイバーのマスターの令呪を手にする事だったのだ。
敵を欺くならまず味方からとは良く言ったものだ。
士郎は武器が無いし、凛は宝石を全て使ってしまった。
そう、あの宝石すべてを使った凛の魔術は完全に効かなかったのである。
それでも少しはダメージを与えたかもしれない。
だが、かすり傷ほどだ。
テムオリンほどのエターナルならば数分で治癒してしまうほどの・・・・・・。
「ふふふ、アーチャーのマスター。人の身ならまあまあの魔術でしたわ。誉めて差し上げます。まあ、貴方に用は無いのですけどね。用があるのはセイバーのマスター。ええと・・・・・・お名前は何でしたっけ?」
艶然と微笑みながらテムオリンは士郎に話し掛けた。
逆らっても無意味と判断したのか、士郎も凛も無抵抗だ。
もしかしたら助けが来るかも・・・・・・。
そう願うしかない。
この強大なエターナルに対抗できる誰かが。
だが、その全員が全て、戦闘中。
もしくは間に合わない。
全てはテムオリンの思うが侭であった。
「衛宮士郎」
最後だけはきっちり締めようと、士郎は口調だけははっきりとその名を口にした。
凛は隣で様子を見守るだけだ。
テムオリンはゆっくり、すばやく近づいてくるが、士郎達には何の術も無い。
向こうの用件が何であれ、聞くしかないのだ。
だが、士郎は凛だけは助けようと今まで使っていなかった魔術回路まで、命まで総動員して抵抗しようと思っていた。
だが、運といえるのだろうか?
向こうの要望は士郎の希望を叶えるものであった。
「セイバーのマスター。令呪をこちらに譲っていただければ、隣のお嬢さんは助けて差し上げますわ?どうかしら?」
迷う必要も無い質問だ。
これで凛が助かるのなら嘘でもそれにすがりたい。
士郎はそう考えていた。
いや、もともと人を信じやすい人間なのだが。
だから士郎の答えは決まっていた。
「持っていけ」
黙って右手の令呪をテムオリンに捧げる。
セイバーとの契約を裏切ることになろうとも、凛の命には変えられない。
これだけは正しいと認識できる事実であった。
「ふふ。物分りがよろしくて嬉しいですわ。では、できるだけ苦痛を与えずに取って差し上げますね?」
テムオリンはそう言うと、士郎に近づいて令呪の刻印が宿っている右手に手を添える。
そして・・・・・・笑ったまま士郎の右手を引きちぎった!
「ぎががぎがががががああああああああ――」
あまりの痛みに耐え切れず膝をついて暴れる士郎。
「士郎!」
そばに居た凛が、応急手当でもしようというのか、無力なまま士郎に近づいて止血をしようとしている。
「ふふふ・・・・・・ではさようならセイバーのマスター。約束は守って差し上げますわ。ごきげんよう」
そう言ってテムオリンは立ち去ったのであった。
駆けつけてくるセイバーとアーチャー。
だが、もうそのセイバーはすぐに居なくなる。
士郎はそう思いながら意識を閉じた。