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第四話 異なる聖杯戦争








凛は一通り聞いて結論を出す。
「とにかく、敵に回ったのはアサシンのサーヴァント二人とキャスターとそのマスターテムオリン。それにタキオスだっけ?その五人で良い訳ね。それでキャスターのマスターがこれ以上勢力を増すのを阻止したいと」
時深がそれに答える。
「そうです。テムオリンの元に多くのサーヴァントを集わせては勝ち目が薄くなります。キャスターのサーヴァントは柳堂寺を神殿として魂を集めているので多くのサーヴァントを抱える事が出来るのです」
「それは柳堂寺からの反応を見て気づいてたけど……そういうわけね」
凛も柳堂寺の様子はおかしいと気づいていたのだがこれで真相が判明した。
キャスターのマスターはどうやら危険と言う事だ。
謎の事件が新都や此方で続いているのはキャスターの仕業と言うわけである。
「それにしても……どうして同じクラスの英霊が召喚される訳?それが納得いかないんだけど」
「……」
時深はそれについては語らなかった。
此処で語ってしまえば未来にどういう影響を及ぼすか分からない。
聖杯の本質に関する事だからである。
時深は聖杯と言うものがどういうものか分かっていたが、此処では言うべきではないと判断している。
テムオリンの目的も聖杯だからだ。
凛はとりあえずエターナルと言う言葉が関係していると言う事だけは分かった。
「じゃあ、此方もある程度の戦力を用意しないとキャスターのマスターには勝てないって訳ね。うんうん。それなら良い考えがあるわよ?」
「何か妙案でも?」
「うん。衛宮君よ。彼はセイバーのマスターらしいわ。その力を借りましょう。彼はお人よしだから直ぐ手伝ってくれるわ。それに条件だって悪くない。サーヴァントであるセイラの方も納得すると思うわ」
それにユウトが反応する。
「衛宮君が?ああ、何か違うと思ったらセイラさんはサーヴァントだったのか。衛宮君はマスター。なるほど。彼女も同じ理由で転校してきたのかな」
「貴方サーヴァントのくせに気が付かなかったの?貴方って意外と鈍感?」
「光陰にはいつもそんな事言われてたっけ」
そう言って昔を懐かしむような表情を見せるユウト。
彼も過去には何かあったらしい。
凛はそれについては今は触れない事にした。
「とにかく時深さんは待っててくれる?衛宮君を説得して連れてくるわ」
「そういう事でしたら。ではお願いできますか?遠坂凛さんでいいのですね?」
「凛でいいわよ。時深さん」
「では、凛さんお願いします」
「任せて」
凛はそう言うと時深に背を向けて歩き出す。
ユウトとアセリアもとりあえずそれに続いた。
昼休みが終わる前に衛宮士郎を説得して連れ出す。
人の良い彼は直ぐに手伝ってくれるだろう。
あの頑固そうなサーヴァントさえ納得してくれれば必ず協力をしてくれる。
そういう人だと衛宮士郎を認識していた。



士郎の教室に行くとそこは騒ぎでいっぱいだった。
「おい!高嶺君!あの巫女さんと知り合いなのか?」
校門前で時深と話しているのが目に入ったのだろう。
クラス中の質問がユウトとアセリアに集中する。
「あ、ああ。一応。そうなるかな?」
「紹介!紹介してよ高嶺君!」
そんな事を言われても困る。
やはり巫女さんと言う事がピンポイントなのか男子の殆どがユウトに詰め寄ってくる。
アセリアの方は……
「時深さんって高嶺君の何なの?アセリアさんはパートナー?」
すでに時深の名前を話してしまったらしい。
どうも素直にも問題があるが、一応任務を忘れていないのか、紹介に関しては駄目。とだけ言っていた。
女子の殆どが転校生高嶺悠人の女性関係を勘ぐって来る。
アセリアに時深。それにあの遠坂凛と一緒に暮らしていると言う。
「うわー。高嶺君って競争率凄く高い……」
などと女子が落胆している。
時深にせよ、アセリアにせよ、凛にせよ、かなりのレベルの高さだ。
これに囲まれるユウトは幸せ者なのかもしれない。
学校のアイドル凛に加えて新たなアイドルアセリア。それにこれに加えてセイラまで加わったらいかがなものか?
だがユウトはそれに関しては鈍感なのかあまり気にしていない様子だった。
エターナルになる前学校に通っていた時も、密かに人気があったことにまるで気がついていなかったユウトだから仕方が無い。
エターナルとして戦いを経験してきて男として成長した今でも鈍感は相変わらずの様子であった。
成長したユウトは目に見えて人気があるのであるが、どう対応していいのやら分からないユウトはとにかく質問攻めにあっていたのだが、凛はその事はとりあえずいいとして話を進めることにした。
「ちょっと……衛宮君を呼んでいただけないでしょうか?」
このクラスの一人に話し掛ける。
「は、はい」
学校のアイドルに話し掛けられてどきどきしながらもクラスの男子は従ってくれた。
凛にこう言った事を聞きたいのだが、日頃の行動から高嶺の花と言うイメージが強く、凛には質問してくる人間は少なかった。
これも日頃の行いの影響と言っていい。
雑踏とも言えるクラスの中から士郎とセイラが出てくる。
サーヴァントはやはりついてくるのだろう。凛をマスターだと知っているだけに。
それはそれで好都合なので凛はとりあえず、場所を変えて話すことにした。
「衛宮君。ちょっと話があるんですけど」
「お、おう」
先ほどのセイバーとの会話の時は話し口調が違ったが此方がいつもの凛だ。
何か釈然としないものを感じながらも士郎とセイラはついてくる。
階段の影になるところで、凛は止まって本題を切り出した。
「聖杯戦争のことなんだけど……」
やはりそうかと言う表情のセイラ。
士郎は黙って続きを聞いていた。凛の迫力に負けていたのである。
「単刀直入に言うわ。私に協力して欲しいの」
「え?」
呆然とする士郎と意外そうなセイラ。
あれほどの二人を擁しておきながら自分達の協力が必要なものか。
凛が状況を説明していくうちにセイラと士郎は真剣ながらその話に信憑性があることに気がついていた。
「なるほど……キャスターがですか」
セイラが納得したように呟く。
柳堂寺。
あそこはサーヴァントにとっては鬼門だ。
そこで魂を集めていると言うキャスターは確かに脅威かも知れない。
それにもうすでに五人が敵に回っていると言う。
ならばあの高嶺悠人とアセリアを従えていても、自分達の力が要ると言う事は納得できた。
「私のほうはあの高嶺悠人と協力できるならばするべきだと思います。イレギュラーとはいえ、聖杯戦争を勝ち抜くには心強い味方ですから。それに凛は魔術師として優秀そうだ。士郎の未熟さを補うにはちょうどいい」
セイラはとりあえず賛成のようだ。
「俺は当然協力するよ。遠坂。そんな奴はほうって置けない」
二人とも予想通り納得してくれた。
「そ、じゃあこれからは仲間と言う事で。士郎のような協力者だと安心するわ」
とりあえず、士郎とセイラと握手をする。
(うわ……これが遠坂の手か……)
などと、士郎はアイドルの凛にどきどきしている。
「じゃ、これからよろしく。早速なんだけど。今から仲間の捜索に行くの。付き合ってくれるわよね?」
などと笑顔で言う凛だが何故か迫力があった。
「お、おう」
今からとなれば早退しなければならない。だが、断ると何だか後が怖い感じがするのは気のせいか。
藤ねえには申し訳ないが、此処は緊急事態ということで手伝った方がいいだろう。
セイバーもそれには納得してくれたようだ。
ただでさえセイバーの事を納得させるのに時間が掛かったというのに士郎は少々不安だったが仕方ない。
「じゃあ、校門前に来て。私たちは私達で行くから」
とりあえず質問攻めにあっているユウトとアセリアに声を掛けてもらって連れ出す。
二人はようやく質問から解放されてふうとため息を付いていた。
一緒に行くとまた騒ぎが増えるだろう。
凛は先に時深のところに行くことにした。
アセリアとユウトが付いてくる。
それを見送ってから、セイバーに尋ねた。
「セイラ。どう思う?」
「いえ。分かりません。ですが今回の聖杯戦争は勝手が違うのは事実。高嶺悠人達に協力を仰ぐのは賢明かもしれません。私だけで勝ち抜くのは少し難しい」
士郎というマスターに呼ばれてセイバーは万全ではない。
前回の切嗣に呼ばれた時とは能力も劣る。
いかなセイバーでも協力者は必要と言えた。
「まあ、遠坂も行ったことだし……俺達も行くか」
クラスメートに早退する事を告げて、セイバーと共に校門前に向かう。
これから進むのは困難の道。
あのテムオリンを相手にしなければならないと言う事実を士郎は実感していなかった。




校門前。少し横にずれた場所で、時深が待っている。
「これで全員ですか?」
ユウトにアセリア、凛に士郎、それにセイラ。自分を合わせて六人だ。
それぞれで自己紹介を終えて、立っている。
(倉橋時深……時詠のトキミですか……彼女も違う存在のようですね……)
セイバーは時深を見てそんな事を考えている。
「時深。探すって言っても何処を探すんだ?手分けして探すのか?」
ユウトが時深に尋ねる。
「いえ、待ち合わせをしています。商店街に向かいましょう。そこで……エスペリアと合流します」
「エスペリア?何だ。すでに見つけてるのかよ。なら安心だな」
「それはそうなんですけどね」
時深はその目でこのエスペリアが敵に回るかもしれない事を確認している。
「オルファリルが何処にいるのか分かりません。それを探すのが今回の目的です」
「時深の目で分からないのかよ」
「いくつもの事象が重なっていますからね。私たちの行動次第で未来も変わってしまうのは知っているでしょう?オルファリルは行方不明です」
「エスペリア?オルファリル?誰?」
士郎が訳の分からない様子で尋ねる。
「私たちの仲間……ですが、今はサーヴァントですよ。貴方達からすれば敵になるかもしれない存在って所でしょうか」
時深の返答に凛が難しい顔をしている。
サーヴァントであるならばマスターの命令には逆らえない。
と言う事は仲間でありながら、敵に回る可能性だってあるのだ。
「オルファリルはキャスター。エスペリアはランサーです」
「え?真名言ってしまっていいの?」
凛が怪訝な顔をしている。
「真名は相手の力を計ることが出来るといいますが、この二人に心当たりは?」
士郎たちに尋ねるが無言で首を振る。
「まあそういうことです。真名は微妙に違いますが、名前は知って置いて貰った方が後々のために良いと思います」
敵に回るならばなおさらの事だ。
時深はそのことを考えて口にしていた。
「でも、セイバーにせよ、他のサーヴァントにせよ、二人づついるのかよ。どういう事なんだ?」
「イレギュラーですよ、シロウ。これらは皆高嶺悠人と同じでイレギュラーなのです。恐らくは英霊ではない」
「?、そうなのか?」
「ええ。二人とも私たちと同じエターナルです」
エターナルとは何なのか?
凛が尋ねたかったことだ。
ユウトが答えるには、『第三位以上の永遠神剣に認められた者で、神に近い存在』
と言う事だった。
「神?あんたって神だったの!?」
まさか神霊以上のものを召喚しているとは。永遠神剣のくだりは分からなかったがその存在には吃驚した。
「だから近いものだって。詳しくはこの世界では分からないじゃないかな」
ユウトの言葉にセイバーはやっぱりと言うような表情をしている。
この聖杯戦争に紛れ込んだイレギュラー。
そう言ったがその表現が正しい、この存在。
本来英霊しか呼ばれない聖杯戦争に介入してきたこの存在は一体何なのか?
エターナルと言う単語に疑問符を浮かべるセイバーと士郎と凛だった。
「セイラさん貴方に言っておきたいことがあります」
突然時深が口にした。
「貴方はエターナルに近い。剣を握ってから年を取らず、そして第三位以上の永遠神剣を所持している」
「!?」
セイバーが時深を睨む。自分の正体を知っているかのようなその言葉に。
「驚かないで下さい。私には時を読む目があるのです。だから貴方の事も分かる」
「……」
「ですが、貴方がエターナルでないのは、永遠神剣を『所有』しているだけで、『認識』されたわけではないからです。……いざと言う時は……剣の声を聞いてください。貴方の永遠神剣『約束』はそれに答えてくれるでしょう」
時深はセイラに小声でささやいた。
「……」
どうやらこの時深という存在は自分の事を完全に知っているようだ。
剣だけではなく、その真名まで。
永遠神剣という言葉は分からなかったが、エクスカリバーの事を第二位永遠神剣だという。
(……剣の声……か……)
セイバーは無言で見えない剣を思いながら時深の後に続いた。
(偉大なる十七本の神剣の内の一本。第二位永遠神剣『約束』……これが味方につけばこれ以上の事は無いのですが……)
時見の目にはその様子が映っている。
今からどう転ぶか分からない、テムオリンとの聖杯戦争に時深は思いを馳せた。
新たなエターナルの誕生。
それを夢見て。



商店街でエスペリアと合流する。
エスペリアはすでに到着していて、待っているようだった。
手には永遠神剣らしきものが包まれて握られている。
恐らくは『聖緑』だろう。
「エスペリア!」
ユウトが最初に声をかける。
「ユート様」
エスペリアが返事をして駆け寄ってくる。
だがその身体には微妙に血が付いているのに気がついた。
「ど、どうしたんだよ。エスペリア。戦闘したのか?」
ユウトの言葉に時深も先を促す。
「ええ、人気の無いところで襲われました。ランサーかと」
「ランサー?」
ランサーと言えばエスペリアと同じクラスだ。
「ええ、でも大丈夫です。自分で治療は済ませましたから」
「……」
セイバーがそれを見ている。
またも違う存在。ランサーだと言う彼女。
彼女は治癒の魔術を使えるのだとセイバーは心に止めておいた。
「マスターとして命令します。敵の正体は?」
「はぁ?マスター?」
時深が変な事を言い出した。
「言ってませんでしたっけ?私はサーヴァントではありませんが、マスターです。エスペリアの」
「な、なななな……」
聞いてない。全然聞いてない。
時深がマスター?
時深以外の全員が驚いている。前の存在も相まってそれは驚愕に値する事だった。
「……トキミがマスター……」
セイバーがその事をもっとも感じている。
トキミとエスペリア。この二人を相手にする事は自分達にはできない。
もしかすると凛と高嶺悠人とアセリアと同等と言えるその戦力に。
これほど戦力を持ってきてもキャスターは倒す事は難しいのか。
敵戦力は予想外に大きいようだった。
「時深さん。敵はランサー。正体はクーフーリン。ゲイボルク……第四位永遠神剣『刺心』を使われました。宝具ですね。心臓を確実に打ち抜いてくるようですが……私はかろうじて避けることが出来ました。治療も完了しています」
「ランサー……クーフーリン」
これなら聞いたことのある英霊だ。
凛はようやく聞いたその名にホッとする。
やっとまともな聖杯戦争のような気がしたからだ。
だがそれは大きな間違いである。
そのランサーを圧倒的な差で押さえつけて退かせた、しかも宝具を使われてもまだ平気な様子のエスペリア。
この存在が居るのである。
士郎が吃驚して目の前の緑の瞳をした少女を見つめている。
「とりあえず、エスペリアは無事なようで安心しました」
「はい。そうですね。時深さん。ですがオルファは見つかりませんでした」
「……時深もテムオリンに負けないようにやってるんだな……」
ユウトはエスペリアをサーヴァントにして従えていると言う時深を見て見直した。
「当たり前じゃないですか。ユウトさん。私はエターナルとしては先輩なんですからね」
「……ただ年を食ってるだけだと思うけど」
ボソリとユウトが呟くのを時深は聞き逃さなかった。
「ゆ!う!と!さん……何か言いましたか?」
こめかみに青筋が浮かんでいる。
「いや、別になんでもないんだ時深。落ち着け。とりあえず、時詠を下げてくれ」
「……」
ユウトの態度が納得いかなかったが時深はとりあえず時詠を元に戻した。
「あ、そうだ!これから聖杯戦争が危険だと言うのなら私も学校に通いましょうか?それならエスペリアも安心……」
「エスペリアも時深も学生って無理があるんじゃ……」
「何ですって!」
ユウトの言葉に時深は時詠を振り上げてゴツンとユウトの頭を叩いた。
「あたたたた……だって時深って何歳だと……」
「ユウトさんだって、二周期しか違わないじゃないですか!」
「……」
時深が自爆している。二周期と言えば何年だと思っているのか。
とりあえず、この二人は学生にしても通ると思うがまた学生達が騒ぐだけである。
そういう事を説明すると時深は何とか納得してくれた。
「そうですよねー。私みたいな可愛い子が入学すれば更に混乱しますよねー」
一転して上機嫌の時深だった。
それに時深達は外の対策をしておいてくれないと困る。
ただでさえ、オルファが居ないのだ。
商店街でくるくると回る巫女さん。
それをものめずらしそうに通行人が眺めていた。
ただでさえ目立つ集団なのにこれはいかがなものか?
と士郎は考えていたが回りの連中はあまり気にしていないようだった。
自分は違うのか?変なのか?
と考えてしまう士郎もやはり変なのか。
いや、変と自覚しているという事は変じゃないというではないか。
やっぱり自分は普通だ。
と思いながら一番普通そうなセイバーを眺めると、彼女はエスペリアのキズを見て複雑そうな顔をしていた。
自分でも自己治癒があるから回復はする。
だが治癒魔術が使えるわけではない。
あの傷は明らかに治癒魔術で直した跡だ。
(……敵に回すと手ごわい……)
セイバーは人知れずそう考えていた。
だが今は味方だ。これ以上心強い味方達は居ない。
「それで……ランサーのマスターはどうしたのですか?」
セイバーが尋ねるとエスペリアが返答してきた。
「居ませんでした。単独行動している様子です。それより……」
エスペリアは士郎と凛とセイラを知らない。
それぞれ軽く自己紹介を済ませる。
「よろしく。士郎さん」
ボッと赤くなる士郎。こんな美人にさん付けされるとは……。
「さっ、とりあえずオルファを探そうぜ」
仕切るユウトを皆が眺める。
「ところで……何でユート『様』なわけ?マスターでもないのに」
「……あの……凛?」
何故か凛がやきもちを焼いていた……。



マスターの元に帰るランサー。
その身体にはあちこち傷がついていた。
致命傷というわけではないが、同じ『槍』で此処までの傷を負うとは不覚。
槍ならば自分以上の使い手はいないと思っていたが、今回の聖杯戦争は違うようだ。
技量が同じぐらいならば、宝具の差がものをいう。
此方の宝具がかわされた。
それは事実だった。
ある程度幸運があればこの槍はかわす事が出来る。
因果を狂わせる魔槍でもそれを覆す幸運があればかわす事が出来る。
だが、こうも槍がかわされる事が多いのはどういう事か。
「おい、マスター。おかしいぜ、今回の聖杯戦争は。何でサーヴァントがクラスごとに二人もいたりするんだよ。今回の相手は同じランサーだったぜ!」
「……まだ聖杯戦争は始まっていないのだがな……」
「けっ、よく言うぜ、これだけサーヴァントを闊歩させて置きながら……」
「いや、事実だ。アーチャーが呼ばれていない。セイバー、ランサー、アーチャー、ライダー、アサシン、バーサーカー、キャスター。この数のクラスだけそろっていないのだ。本来ならば聖杯戦争は完全に始まったわけではない」
「だがよ……アーチャー無しでも聖杯戦争のマスターたちはそれぞれもう動いてるぜ」
「そのようだな……だが、開始の合図はまだ出していない。別にそれがどういう意味ももたない事は分かっているが」
「ならどうするつもりだ?俺以上のサーヴァントが山ほどいるぜ。今回は。キャスターのマスターがかなり力を増しているようだが。バーサーカーが可愛く見えるぜ」
「バーサーカー程の英霊ならばそうは破れはせんだろう。お前ももちろんそう簡単にはやられない。そうだな?」
その言葉にランサーは。
「へっ、当たり前だぜ。本気でやる事は禁じられているしな」
「……凛に電話を入れておくか。あれはまだ完全なマスターではない」
言峰はそのダイヤルを回して凛の家に連絡を入れたのであった。
(ギルガメッシュ……お前はどう動くのやら……)
待機命令をしているが素直にすべて従うほどの英霊ではない。
英雄王はいずれ動く。
今回の聖杯戦争。誰に傾くかは分からないが、以前のようには行かないようであった……。









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