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第三話 時深とテムオリン






昼休み。
ユウトの元に向かおうとした凛だったが、様子がおかしい。
男子達が騒いでいるのだ。
「おい!巫女さんだってよ!しかも可愛い!」
「ホントかよ!見に行こうぜ」
「何か誰か待ってるみたいだぜ、こっからも見える」
「嘘!どれどれ!」
などと、男子達は校門前を窓から眺めている。
「ホントだ!すげえ!本物だぜ!やっぱ巫女さんはいいな……男のロマンだぜ」
凛はその言動には賛同しかねたが、窓の外を眺めると確かに巫女だ。
何故こんなところに居るのか分からないが。
この辺りに神社なんかあったっけ?
お寺なら柳堂寺があるけど……。
とりあえずユウトの教室に向かう凛。
そこでは慌てた様子でアセリアとユウトが出てきていた。
「ちょっと、高嶺君。話があるんだけど」
「すまない凛。後にしてくれないか。騒ぎが大きくなりそうで……」
「騒ぎって何かまたしたわけ?転校初日から目立ってしょうがないんだけど」
「違う。俺達じゃない。時深だ」
「時深?」
「ん、時深。門の前に居る」
アセリアがユウトの代わりに端的に説明する。
「門の前ってあの巫女さん?知り合いなの?」
「ああ、一応。何か用があるみたいだから行かないと」
「ちょっと、貴方達がいったら騒ぎが更に大きくなるわよ?」
「でも何もしない方が大きくなるって。時深の奴俺達を待ってるみたいだから。先生達も何かしら出てくると面倒だ」
これだけの騒ぎになるとあの巫女さんに先生達が詰問に行くだろう。
「それもそうか。何だか分からないけど、知り合いなのね?私も貴方に用があるの。行っても良い?」
「凛も?ああ、構わないけど。多分わからない話じゃないかな」
「私の用件は貴方にあるのよ。巫女さんはどうでもいいわ」
「分かった。じゃあ来てくれ」
凛とユウトとアセリアは門の前の傍迷惑な巫女さん……倉橋時深に会いに行く。
時深には時見の能力があるのでこのことを予見しているのだろうが、迷惑には違いない。
ユウトとアセリアは時深は……全く。
と思いながら門の前へと向かった。
隣では何だか分からないが微妙な表情をしている凛。
嫌な予感がするのである。
そしてその予感は当たるのであった。
教室ではセイラと士郎がその言葉に聞き耳を立てていた……。




「時深!」
早速門の前の時深の声を掛けるユウト。
「来ましたね。悠人さん」
微笑を浮かべながらも真剣な表情を崩さない時深がそこにいた。
「お前もこの世界に来てたのか」
「ええもちろん……この世界には……テムオリンとタキオスが確認されましたから」
「な!テムオリンとタキオス!?」
驚くユウトと真剣な表情で聞くアセリア。それと何だか分からない凛。
「ええ、緊急事態です。こうした接触をして申し訳ないんですが……伝えておかなければ。早々に」
「テムオリンとタキオスの事か?」
「はい。それで敵が動いたのです。先手を取られたといっていいでしょう」
「時見の目を持っていながら何してたんだよ」
「そ、そんなこと言われても世界の門を開くにはいくつか条件が居るのは知っているでしょう?悠人さんも」
「それはそうだけど……」
「この世界では召喚と言う形で門が複数回開かれました。テムオリン達はそれに乗じて現れたようです」
「確かに俺達もそう言った形できたんだけれど……時深もサーヴァントなのか?」
「違います。テムオリン達も違う方法で来ました……ですが……テムオリンはマスターになってしまったのです」
「マスター?誰の?」
ユウトが尋ねる。その顔に緊張は無かった。サーヴァントなら別にテムオリン達ほど手ごわくは無いだろう。そういう考えであったのだ。
「キャスター。そして……間接的に……」
名前を告げる。
そのことを聞いてユウト達は仰天した。
そんな事があるのだろうか。
確かに自分達と同じように派遣されてきた人物。
それがサーヴァントになり、まさかテムオリンがマスターになってしまったとは……。
信じられないユウトはもう一度尋ねた。
「マスターって……キャスターにサーヴァントが持てるのか?」
「彼女は魔術師である事を利用してサーヴァントでありながらサーヴァントとして彼女を呼び寄せました。門を開いて入った彼女はそのままキャスターのサーヴァントとして……」
「……」
「いいですか?悠人さん。緊急事態の意味が分かりましたか?敵は……テムオリン達……それと……」
「深遠の翼ウルカ……」
その名を呟く。
カオス・エターナルであるはずの彼女がロウ・エターナル側に回ってしまった。
この世界のシステム。令呪と言うものがあればテムオリン達はウルカを従えられるだろう。
「ちょ、ちょっと……誰よそれ?何のサーヴァント?」
凛が途中で割り込んでくる。聖杯戦争に関係あることなので凛は興味があった。
「アサシンのサーヴァント……ウルカともう一人の英霊です」
「はあ?アサシンまで二人いるの?」
凛は全く話についていけていない。何だか分からないが、知り合いであるウルカという人物が敵に回ってしまったと言う事だけだ。それとアサシンのサーヴァントであると言う事。
それにもう一人正規の英霊らしきものが居るらしい。それもアサシンらしい。
ユウト達は何故目立ってまで時深が此処に現れたか分かった。
テムオリン。タキオス。そしてテムオリンの間接的なサーヴァントウルカ。
キャスター。アサシン。
これだけ戦力が居る。
此方には凛を除けば時深とユウトとアセリアの三人だけだ。
英霊はエターナルには敵わないだろうが方法によってはそれに迫る事が出来る。
この世界のルールにはエターナルでも逆らえないからだ。
エターナルでもこの世界の法則に最適化される。
宝具とはその顕著なものだろう。
宝具を使えばエターナルでも倒す事が出来るかもしれない。
ユウトたちは冷や汗が流れた。
あのウルカが敵に……剣の腕は一流もいいところだ。
第三位の永遠神剣「深遠」の力は侮れない。
それとテムオリンの第二位永遠神剣「秩序」、タキオスの第三位永遠神剣「無我」この三人のエターナル。此方とエターナルの数は同数だ。
だが此方にはもう二人来ていたはずである。
時深の確認ではそうなのだが……。
二人ともサーヴァントになってしまっていたのである。
そして忘れていた事がある。
エターナルもう二人が回ってしまう可能性に。
時見の目には見えている。その二人がサーヴァントして行動している事に。
しかし時深はそのときは確認していなかったが、二人目もキャスターのサーヴァントとして敵に回ってしまっている事に。
その名は……。
「再生のオルファリル」
彼女も二人目のキャスターとして呼ばれていたのである。
時深の話を聞く。
「柳堂寺……か……」
多くのサーヴァントとエターナルを従えるテムオリン。確かにそれは緊急事態であった。
此方の戦力が削がれた上に相手の戦力が同時に増している。
聖杯戦争。一筋縄ではいかなかった……。
オルファリルまで敵に回ってはまずい。時深はその時見の目を駆使してそれを防ごうと努力するつもりであった。
だが、時見の目は確実に未来を写している。
真実、他の三人全てが敵に回ってしまう事に……。
学校の校門前と異常な光景であったが、凛は事態の深刻さをユウト達の顔から判断していた……。




昨日。
夜中にキャスターは高笑いしていた。
「あははははは……まさかあんな英霊が……いえ、神とも言えるものを従えられるなんて!」
その令呪の命令の先には深遠の翼ウルカ。
もう一人のアサシンの方はどうでも良かったがこっちのアサシンは頼りになるどころではない。
まさに英霊としては最高峰のセイバーすら及ばないかもしれないこのアサシンに、キャスターは満足していた。
「ふふふふ……貴方が居ればバーサーカーですら葬れるでしょう。従いなさい。この私に」
「……」
ウルカは無言で自分のマスターを見る。
令呪があるので何を言われても逆らえない。
逆らえばどんな命令をこの魔女が下すか分からないからだ。
ウルカは本能的に警戒態勢を取っていた。
このキャスターは多くのサーヴァントを従える事が出来る。
柳堂寺を神殿として集めた魂の力でだ。
許容量はこのウルカを従えてもまだまだ余りある。
これで聖杯戦争は貰ったようなものだ。
バーサーカーの侵攻すら容易く防いでくれるであろうそのサーヴァント。
他のマスターたちが束になってもこの神殿を侵す事は出来ない。
そう確信していた。
だが、そこにマスターでない、サーヴァントでも無いものが現れたのである。
「ふふふふふ……ご機嫌ですね。キャスター」
「誰!?」
キャスターの神殿の結界を乗り越えてくるとは……アサシンは何をしていたのか。
だがこの人間、いやエターナルはサーヴァントではない。
正面から入ってくる必要は無いのであった。
例え正面から行っても同じ結果だろうが。
山門からの攻撃しか防がないアサシン。
隣にはもう一人のアサシン、ウルカが居るが尋常ではないその様子に驚く。
「な!?英霊ではない……神!?」
「ふふふ……神ですか。神に近い存在であるエターナル。その僕になれるのだから光栄に思いなさい」
「アサシン!」
命令するが、ウルカは命令するまでも無く、その者……テムオリンに向かっていっていた。
元々そのために来たウルカである。
だが、深遠の翼ウルカでも法王テムオリンは荷が重かった。
そこに更に現れる影がある。
「お前の相手は俺だ……」
「タキオス!」
相手の永遠神剣『無我』と『深遠』を合わせる。
流石にタキオス。
ウルカ相手にも動じずその攻撃を受け止めている。
その二人が争っている間にテムオリンはキャスターに忍び寄る。
「貴方……私の配下になりなさいな……よくしてあげてよ?」
「だ、誰が貴方などに……私のマスターはあの方だけ!」
空に跳躍する。
飛翔して、敵を見下ろす。
そうすればこの威圧感も消えるだろうと思って。
だが、威圧感は増すばかりだった。
「き、消えなさい!」
空から魔術を打ち出す。
次々と。
全てAランクの魔術。
だがそれを持ってしてもテムオリンの『秩序』の力は破れなかった。
「ほほほ……かわいらしい事を。本当の『秩序』の力はこんなものではなくてよ?」
テムオリンの言葉と共に解放されるその力。
Aランクの魔術を超える、A+に該当するかも知れない魔術を連発する。
この世界では魔術とか魔法とか言うものも、エターナルには容易い事だった。
「くっ」
空間転移だ。魔法の真似事かもしれないそれをなすことがキャスターには出来る。
だが、テムオリンはそれをさせなかった。
空間が凝固して固まる。
「な!?」
動けないキャスターに力が迫る。
その力はキャスターを地面に叩き落した。
「ぐ、ぐはぁ……」
なんと言う圧倒的な力。これが英霊の力とは思えない。
明らかに違う存在。それがエターナルだった。
「分かりましたか……大人しくこの『秩序』に従いなさい」
余裕で歩み寄ってくるテムオリン。
キャスターは何とかしようとその宝具を出して近づいていたテムオリンに振りかざす。
それなら何とかこの法則を打ち破ってくれる事を信じて。
だが、テムオリンはあっさりとその永遠神剣『秩序』で受け止めた。
「なるほど……面白いものを持ってますね……これが宝具ですか。逆に、これで貴方を突き刺したらどうなるのでしょうか?」
くすくすと笑いながら奪い取った”破戒すべきすべての符(ルールブレイカー)”をキャスターに振り下ろす。
キャスターなど死んだところでどうだって良かったのだが、エターナルは未来まで操る事が出来る。
「がっ」
突き刺さる、ルールブレイカー。
その瞬間キャスターを縛っていた法則が消え、テムオリンへと受け継がれた。
「ほう。これが令呪ですか……この世界の法則。確かに」
これでキャスターのマスターになったテムオリン。
隣ではまだウルカとタキオスの剣戟が続いていたので、キャスターに命じた。
「さて……これで私は貴方のマスター。命令なさい。ウルカを止めるように。そして……聖賢者ユウトを殺すと……」
「くっ……」
圧倒的な力と威圧感。逆らえないキャスターはその命令に従ってウルカを止める。
そして……。
「聖賢者ユウトを殺しなさい!」
そう、令呪を使った……。
「ふふ……それでいいのです。貴方マスターに惚れているのね?安心なさい。悪いようにはしませんわ……」
そう言ってほほほほ……・と笑うテムオリン。
直ぐそばではウルカが口惜しそうにタキオスのそばでひざまづいていた。

「本当なのね?」
キャスターが不安げにマスターを見る。
「嘘は言いませんわ。では、これから私の指示に従いなさい」
「……分かりました」
「では、最初の命令を」
「……」
「再生のオルファリル。貴方と共に此処に現れたもう一人のキャスターを配下になさい」
「……」
「そして、もう一人……」
テムオリンはその言葉を口にする。
「ランサーの一人、聖緑のエスペリアを」
最後に口にするテムオリンには壮絶な笑みが浮かんでいた……。



ウルカがすでに敵に降った事を知ったユウト達は驚きも間もなく、他の仲間を捜索する事にしなければならない。
時深の言う事が本当なら、狙いはオルファリルとエスペリア。この二人だからだ。
すぐさま行動を開始しなければならないユウトは凛に早退するように頼んだ。
凛とアセリアとユウトと時深。この四人は更なる困難に立ち向かわなければならなかったのである。
凛は色々聞きたい事があったのだが緊急事態ということで捜索が優先されたのであった。
(時深……この人も違う存在みたい……)
どういう事なの?今回の聖杯戦争は?
凛の疑問に答えられる者は未だ黙してユウトとアセリアを見るばかりだった……。
















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