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空気の無い、真空の世界。
世界は暗闇であるが、星々に存在する恒星の瞬きによって己が姿を見ることが出来る。
無限に存在するとされるその瞬き。見渡す限り存在する輝き。

それは宇宙と、コスモスと、誰かは言った。

そんな世界の中で、無数に発光させている。
それは真っ直ぐに伸びる光であり、瞬間的に発光する光であり、奇妙な動きをする光であった。
その全ての光が、ある一点へと向かっていた。

漆黒に身を包み、深紅のラインを持ち、雄大な四肢をした鋼の巨人へと――。


Milky Way   - Star Ocean -



上下左右、四方から迫り来るミサイル群をその巨人は背中から伸びている二対の大型スラスターの出力を上げて誘導する。
背後から迫っていたミサイルは一定距離を保つようになり、スラスターから排出される真紅の光の尾を引いて前方を埋め尽くすミサイル群へと一気に肉薄する。
そして直撃の目前、脚部に備えている補助スラスターの出力を瞬間的に爆発させる様に出力を出した。

その結果、巨人はクルリとその場で半回転。さらに背中のスラスターの出力を上げたため、目前に迫っていたミサイル群はスラスターの大きな光を被り、爆発。
巨人は一瞬の膨大なスラスター出力でもまだ殺せなかった慣性のまま爆発したミサイル群の中へとその身体を沈ませていった。
背後から迫っていたミサイル群は、先に爆発したミサイル群の爆発の光と接触して誘爆。

生き残った幾つかのミサイルは、その膨大な光の熱量と光によるあらゆる光情報の遮断によって巨人をロスト。
在らぬ方向へと秩序の無い動きをした後、自爆。巨人は光の直撃自体を受けなかったため、未だに健在。

巨人は二対である四つのスラスターそれぞれの出力、そして脚部にある補助スラスターを使って微妙な身体の動きをし出す。
直後、先ほどまでの巨人の進路上に黄金の光の線が通過した。そして膨大な量の同じ黄金の光が巨人に向かって降り注ぐ。
中には緑色をした大きな光の矢が巨人を肉薄する。巨人は一瞬、全てのスラスター出力を0.3%増加させる事によってスレスレで避ける。

掠った脚部の踵が少し赤く発光するも、直ぐに巨人の廃熱システムを作動させて熱を拡散。
赤く発光していた踵が全体に広がって行き、その分の熱が分散されて一気に光へと熱エネルギーを昇華させた事で冷却を終える。その間、一秒にも満たなかった。
踵は先端がほんの少しひしゃげるも、一次装甲を装甲を表面を撫でた程度であるので損傷とは成り得なかった。

黄金と緑の光は巨人が向かっている方向、小型の緑色の巨人と大きな宇宙戦闘艦からであった。
そしてそんな無数に存在する緑の巨人と戦艦に向かって漆黒の巨人は光の奔流を微細に避けながら、その距離を縮めていく。
先の緑の光が掠った以外、全くの損傷が無い漆黒の巨人は遂に無数の光の中心へと身体を躍らせた。

背後からはいずれかの緑の巨人から幾十のマイクロミサイル、そして戦艦から放たれた高機動量子ミサイルが迫っている。
漆黒の巨人は足裏のスラスターを進行方向に向けて一気に電荷エネルギーを放出。出力を他のスラスターで微細な出力制御をし、巨体をそのまま静止させる。
ミサイルは漆黒の巨人の予測進路上へと動くため、ピタリと止まった漆黒の巨人から大きく離れて通り過ぎてしまった。

静止したために格好の的となった漆黒の巨人に向けて、無数の緑の巨人がその手にあるエネルギーライフルから黄金のエネルギー弾を放出する。
瞬く間に、膨大な量のエネルギー弾は亜高速で漆黒の巨人へと迫り、その10m弱にも及ぶ鋼の身体を焼き裂こうとする。
漆黒の中のコックピットに座っている真紅に黄色のラインの入ったパイロットスーツを着、同じ色のヘルメットを被った彼のスモークバイザーがその無数に迫る黄金の光を映させる。

彼は両手のスティックを瞬間的に別々に動かし、足裏のスラスターペダルを踵と足指の複数を同時に踏み分ける。
漆黒の巨人はそれを即座に答える。脚部とコアを捻り、腕を振って回転する。そこで更に微弱で局所的なスラスターの放出によってその場から少し移動する。
そこに黄金の光が幾重も同時にぶつかって金色の爆発をする。幾つかのエネルギー弾は漆黒の巨人に迫るも、身体を捻られた事で四肢の間を通り抜けていた。

金色の爆発の衝撃波で押し出される慣性に沿って漆黒の巨人はスラスターを再始動させ、再び踊り出す。
両腰に垂らしていた青く流線的なライフルを右手に、鋭利な形で先端から中心が裂けたような銀色の細長めな盾に左手を差し込んで手の取った。
緑の巨人らの攻撃を放物線を描くように、そしてあらゆる方向へと動けるきりもみの機動しつつ、その手のライフルから白く細い光を止めどなく射出する。
それは同じく亜光速で緑の巨人へと突き刺さり、爆発。片腕や片足に着弾した巨人はその身を包む白き光によって蒸発し、動力炉に引火して同じく爆発。

幾つかの巨人が固まって小隊を組んでいる所へと白い光の矢を放つも、前面に突出している三体の巨人のシールドが相互干渉させて展開しるフィールド障壁で弾かれて拡散する。
そのシールドの背後からマイクロミサイルが両脇から放たれ、シールド範囲のギリギリ外からエネルギー弾が放たれる。
漆黒の巨人は左右に身体を振る事でエネルギー弾を避け、迫るマイクロミサイル群を誘導してライフルを幾つかを貫いて他のミサイル全て誘爆させる。

背中と脚部から輝く翼を展開させたかと思わせるほどの出力を出し、電荷の過剰放出による背中2対のスラスターが干渉し合って電荷フィールドを形成。
そこへ更なる電荷を指向性を持たせて注ぎ込む事でフィールド干渉によって光速で後ろへと放出。その反動でスラスターそのものの出力を大きく上回る加速と機動を得る。
小隊の前面に展開し、シールドを展開している巨人たちはフィールドの範囲を広げて漆黒の巨人の激突に備えた。

このフィールドの障壁の前では例え今の漆黒の巨人の突進でも突破は出来ず、フィールド力場の過剰干渉による瞬間的な空間歪曲、そして膨大なエネルギー衝突による異常過熱によって巨体の消失と暴発を起こす。
避けたとしてもその瞬間を狙って後ろに控えている巨人たちが獲物が掛かるのをライフルを構えて待っている。
漆黒の巨人を操っている彼は、そのままスラスターベダルをさらに踏み込んで加速させる。モニター全部に映るのはシールドの展開によって発光する光。衝突の目前であった。

そして漆黒の巨人は、スラスター放出からの真紅の残滓を残して――消えた。
次瞬、小隊の全ての巨人が最低二分割されていた。そして巨人たちは爆砕して発光させた光が離れていく漆黒の巨人の黒い装甲を輝かした。
その左手に付けられた銀色の盾、その裂けたラインから同じく銀色の光の刃は大きく伸びていた。それを振るって肉薄した緑の巨人を次々と薙ぎ払っていく。

漆黒の巨人は先ほど、シールドに衝突する寸前で身体を捻って軌道を変え、そのまま弧を描くように瞬時にシールドの裏側へと移動していた。
その機動はシールドを避けるのを狙っていた巨人たちが反応できないほどの速さ。そして消えるような機動をし、尚且つそのままの速度で小隊の全ての巨人を盾から発振した電荷の刃で焼き裂いた所業はまさに神技。
青き弓から放たれる白き矢は緑の巨人たちにことごとく突き刺さる。振るわれる光の剣はミサイル群を消し去り、迫り来る巨人は薙ぎ払われる。

戦艦からも放たれるエネルギー弾やミサイル群。それらは速すぎる漆黒の巨人の機動に追い着けずにエネルギー弾は大きく外れる。ミサイル群は撃ち抜かれ、薙ぎ払われる。
そして近視炸裂ガトリング砲はミサイルや近距離での小型高機動兵器に対して絶大な命中率を誇るも、漆黒の巨人のその身体では弾かれるのみで逆にライフルで全て破壊されてしまう。
ある戦艦の上側甲板で漆黒の巨人は両足で勢い良く着地をすると、着地の衝撃で漆黒の巨人の何十倍の質量を有する戦艦が本来の軌道から少しズレてしまった。

膨大な質量の前で圧倒的に小さい質量が勝るには、それを上回れる程の運動エネルギーをぶつければ論理上でも可能。
が、実際にそれをするにはそれを可能にするだけの圧倒的な速度を発揮しなければ出来ないのだが、それを可能にする程の速度を漆黒の巨人は発揮し、それに堪えられるだけの強靭な肉体を彼らは持っていた。
漆黒の巨人の目の前にはエネルギー砲が存在するも、火器管制システムは自艦への誘爆を防ぐためにオートセーフティを機能させているのでエネルギー弾を発射出来ない。

漆黒の巨人は緩やかに右手の青く流線的なライフルを砲内へと向け、白き光の矢を放った。
砲内の最奥に着弾したエネルギーはエネルギー発振装置内で発火、逆入したエネルギーが内包していたエネルギーと相まって超過熱。
それは戦艦内部のエネルギー機構へと一気に引火、戦艦全体で内部から爆発していく。

漆黒の巨人は所々で光を発し出した装甲を蹴り、背中の上部一対のスラスターと併用して一気に離脱。
直後に迫っていたミサイル群とエネルギー弾が爆発していく戦艦に着弾。それがその戦艦のトドメとなり、大爆発を起こして細かな破片へと姿を変えた。
その破片は細かいと言っても巨人ほどの大きさもあり、それらは緑の巨人たちや他の戦艦へと突き刺さっていく――。



艦隊最後尾。他の戦艦の2倍近い大きさを誇るこの艦隊の旗艦である白い搭載艦が離れて戦闘を繰り広げている宙域が見守り、緑の巨人を発艦させ続けている。
この艦は砲撃などの支援砲撃装備は貧弱ながら、迎撃及びUMAの搭載数に富んでいる。
UMAとは巨人の正式名称『Unlimited Mobility Arms(無限機動戦闘兵器群)』の略式名称はユーマ(UMA)。
昨今の宇宙での戦闘で主流と成っている機動兵器である。漆黒の巨人もこのUMAに属した機動兵器である。

「敵は一機だけだと…? 識別信号から相手の特定は出来たか?」

旗艦のブリッジに着席している艦隊司令官は分析作業をしているオペレータに確認を取る。
突如現れた敵が艦隊を翻弄されている事に驚き、そして単機であるという事に疑問を持たずにはいられなかった。

オペレータは目の前のモニターに映る機体周波数と艦に保有されている周波数データベースで照合を目まぐるしく行い、その中で合致するデータを一つ特定した。
そして表示されていくそのパーソナルデータを見たオペレータは、光タッチパネルを叩いていた指をピタリと止めた。
表示されてくるデータに手を震わせて、青ざめた顔で司令官に振り返る。司令官はオペレータのその表情からを只ならぬモノを感じ、顔を険しくさせる。

「――――敵機の照合が終わりました………あれは―――」

モニターに表示された敵機のデータの中で、表示されたあるネームデータ。

「『ヴァルキュリア』です!!」

オペレータは悲痛な叫びで答えた。周囲のオペレータたちはその名前を聞いて目を見開き、そして驚愕と絶望に顔色を変貌させた。
それを聞いた司令官も目を見開いて、脳内で刻まれているその名に恐怖を抱いた。
ブリッジに鳴り響くアラーム。司令官や他のオペレータたちもその甲高く鳴り響く音に我に返る。
そして司令官が何事かと声を出すよりもオペレータたちが確認作業に動くよりも早く、ブリッジ全体に映されている外部光学観測モニターが蒼い光で覆われた。



青白く輝く膨大で大きな閃光。その光は旗艦だけでなく、それを護衛していた艦隊やUMA全てをも巻き込んでいた。
それは遥か彼方でエネルギー砲を薙ぎ払い、全ての火器を破壊した戦艦の下部甲板から漆黒のUMA――『ヴァルキュリア』に乗っている彼はモニターごしに確認していた。
ヴァルキュリアは左脇から背中の中央で背負っていた自身の1.3倍はあろうかと言う無骨で長い砲身を突き出し、ライフルを腰に戻して空かせた右手を併用し、両手で砲身を支えている。
その砲塔からは白い霧、冷却の為に発生した膨大な水蒸気が宙に漂った。その大きな砲身から放たれた大きな蒼き光は見事に旗艦へと突き刺さり、周囲を巻き込んで跡形も無く殲滅した。

足場にした戦艦の装甲は大きく陥没し、ひしゃげたり裂けた装甲の下からショートする内部機構が覗いていた。
冷却が完了した砲身を背中へと戻して足場にしていた戦艦から離脱。数瞬後、戦艦は陥没した装甲から大きな閃光を発したのを機に爆発した。
ヴァルキュリアは低出力で宙域を航行し、周囲を見回した。彼が見るモニターには艦隊とUMAの残骸のみが映し出されている。広範囲にもレーダーに引っ掛かれるものはなく、それが艦隊が全滅した事を示していた。

レッドアラート。

鳴り響くと同時に彼はヴァルキュリアの背中のスラスターを全開にしてその静止していた座標から離脱。
ヴァルキュリア胸部の装甲が少し赤く溶解している。不可視レーザー光線による照射によって光速で当てられた装甲が爆発域に達する前に照射ポイントをズラす事で無効化した。
レーダーが感知した方にライフルを構えさせると、無数に迫り来る白き流星がコックピットのモニターに映されていた。

複数の閃光が流れる様に輝いていく。ライフルの連続射撃で半数以上を撃ち落し、残りの亜光速で迫っていた流星をエネルギーブレードで薙ぎ払った。
瞬く閃光の熱量を近距離で避けきれず、漆黒の装甲は廃熱の為に真っ赤に輝いている。消失した閃光によってレーダーには二つの熱紋が表示される。
一つはレーダーレンジギリギリの彼方に留まり、もう一つはヴァルキュリアの全開出力を上回る速度で接近して来ている。

ヴァルキュリアの頭をそちらに向かせ、望遠で確認するまでも無くそれは肉薄してきていた。刹那の交差。ヴァルキュリアはその物体が交差する中で黄金の光の剣を振るってきているのを見る。
こちらも振るい、ブレードを振るう際に瞬間的に出力を開放する事でエネルギーの刃を放ち、黄金の剣を相殺する事で瞬間的に拡散。刃の無い剣はヴァルキュリアを裂く事無く離脱していった。

その刹那で彼は見た。モニターに映された物体は真紅の機体。ヴァルキュリアの背中二対のスラスターを足と背中で形造った、自身がミサイルの如き鋭いフォルム。赤き鷹。
赤き鷹は即在のUMAのそれを大きく上回る出力と機動を確保するも、装甲・装備性を著しく低下させたものの、それを従来を上回る高い性能によって補っている。
脚部スラスターを前に突き出すことで瞬時に上方回転して再びヴァルキュリアへと黄金のエネルギーブレードで斬りかかる。

その前瞬、再びのレーザー照射。前の照射で解析した光線波長パターンを有視可した事で脚部装甲へと降り注ぐ青白い線がしっかりと見えていた。
今度は足を曲げる事で照射を避け、迫り来る鷹を蹴り飛ばす。足の装甲が少し変形するも、その複合装甲の前では大した事も無い。
迫り来る流星の如き圧縮光子推進型量子ミサイル群をライフルと射出される光の槍と化した刃で撃ち落し、鷹を軽く装甲を裂かれながらも避けていく。

その宙域で繰り広げられる光の舞踏会。何時果てるとも知れないその瞬く閃光の中を踊る漆黒と真紅の二羽の鳥。
真紅の鳥が漆黒の鳥に取り付いて残骸と化している戦艦へと押し付けた。真紅の鳥は一気に飛び離れると、瞬時に肉薄した青白い光の雨がその残骸を飲み込んで一際大きく輝いて蒸発させた。
消えた光の中には何者をも細かな塵へと姿を変えていた。真紅の鳥は再び近づき、光の余波で溜まっていた電荷の奔流によって装甲を軽く炙られる。光は全てを飲み込み、漆黒の鳥の姿は何処にも無い。

遥か彼方で真紅の鷹を眺め待つ蒼き破壊の化身。
大型の細長い砲身のような頭に四肢は既に獣である四つん這い、胴体となる装甲の至る所にはミサイルポット・ロケット砲・レーザー長砲身で覆われている。
ミサイル群を放ち、空となったポットをジョイントから切り離して排除する。一瞬、ほんの一瞬。内部モニターが排除したポットで映像が隠された。
ポットが通り過ぎると同時に鳴り響いたアラート音とともに開かれたモニターの視界には蒼い光が迫っていた。

蒼き破壊の化身はその光の奔流に飲み込まれ、装甲は瞬時に廃熱に移行するも耐熱・廃熱ともにオーバーヒート。
溶解した装甲は蒸発し、内部機構の貧弱なパーツは瞬時に消滅。外部装備している高火力の光兵器はポットの消失によって光の直接浴びて暴発。
次々に引火し、蒼い光の中で白い閃光の花火を打ち上げた。蒼い光を巻き込んだその盛大な花火は小さな太陽となって宇宙の星々の光を暗くさせた。

真紅の鷹はそれを見て、驚愕で動きを少し鈍らせる。蒼い光の源である場所を光の道筋から計算するまでも無く、それは居た。
先ほどのミサイルによる連続爆発による磁場の乱れにより、レーダー機能に障害が出ていたために有視界で探索しか出来なかった。スラスターを点火すればその光で発見される。
彼はそれを逆手にとり、爆発によって戦艦の残骸に身を隠して離脱。そしてその残骸を蹴って他の大きな戦艦の残骸へと隠れ、遥か彼方の対象への砲撃。

砲撃によって足場にしていた戦艦は大きく動き、その姿を露わにする。漆黒の雄大な姿は見るも無残に溶解・破損している。
砲撃をした大きな砲身から白い蒸気が排出されるも、その砲も見た目は大きく歪曲していた。
その漆黒のヴァルキュリアは既に終わりを迎えようとしている死に体であった。真紅の鷹は弱った獲物を刈り取ろう飛翔する。

数瞬で肉薄した鷹はブレードを振るう。漆黒の負傷した獲物は大きな砲身を大きく振るった。
切り裂かれる砲身。そして裂かれた瞬間に閃光は両者を包んだ。飽和状態にされていた砲内のエネルギーによって包み込まされるには十分過ぎるほどの光を長時間に渡って瞬かせる。
閃光の中から飛び出す真紅の鷹。装甲の塗料が蒸発する事で装甲の損傷を和らげるも、溶解する片腕を半ばから排除して誘爆を回避する。
鷹は待つ。その閃光の中から出てくる漆黒の――――

――出てきたのは“白銀”のヴァルキュリア。

所々に漆黒の装甲を付けているも、直ぐにそれは剥がれ落ちていく。背中のスラスターからは“青い”光の翼を伸ばしている。
真紅の鷹を一気に肉薄すると、ブレードを振るってくる。それを避けた鷹は瞬時に旋回して背後から切り裂こうとするも、白銀のヴァルキュリアは既にブレードを振るっていた。
排除した片腕の肩を裂かれつつも回避して離脱。直ぐに白銀のヴァルキュリアも追撃に入った。

漆黒の装甲の下に隠されていた白銀の装甲。
その姿は騎士の様であり、金色の彩色が施されたその細身で滑らかな容姿はまさに“戦乙女”。

青き翼は天使の証。
その羽ばたきからは逃れられる者は居らず、真紅の鷹はきりもみ機動をしている中で離す事が出来ないでいる。

銀の剣は選定の光。
ブレードによって最後の武器である片腕が切り裂かれ、同時に脚部スラスターも失った真紅の鷹。
高速機動における機動の乱れはそのまま身体に現れて制御不能にまで陥った。

青い槍は死の象徴。
もはや暴れ馬と化した真紅の鷹をライフルから放たれた光の槍が身体の中心に突き刺さる。
閃光が鷹を包み込み、翼諸共その姿を消し去られた。残されたのは白銀のUMA『ヴァルキュリア』のみ。

最後の光をモニターで見届けた彼はヴァルキュリアを少し反転させ、スラスターから青い光を排出させながら今の宙域を離れていく。

「―――任務完了。これより帰還する」

星々は埋め尽くさんばかりの輝きを放ち、ヴァルキュリアの中で映し出されるモニターでそれを眺めつつ、“彼女”は通信機を介して言った。


宙域を離脱していく中、星々の光を受けたその白銀の装甲は虹色に輝く。
大海原に流れる虹の川。宇宙ガスや塵によって存在してるそれはまさしく宇宙に広がる川。
その後ろから輝いてみせる無数の星々。それはまるで川を流れる小さな光の欠片であった―――



あとがき (06/07/07現在)

元々書こうとしていた所、丁度に七夕だったので書きました。二日で。
天の川と言えば壮大な星の雲海。戦うシチュエーションには持って来いでした。

そして自分が機械関係の戦闘がかなり好きだと言う事を感じさせてくれました。執筆が楽しくて楽しくて…これが二日で書き上げた最大要因。
人間主体の戦闘は細かそうで簡単で、オザナリそうで複雑な戦闘描写はなかなかに難しいです。

描写において太文字や効果音などの要素を全て排除して書いてみました。
音に関しては宇宙空間なので出しようがありませんでしたし……。

このお話にはエトランジェやマナなどは一切存在していません。
ですが、本編との繋がりがかなり濃厚です。実際、今の時点でもそれとなく関係した事象が出てきています。
最後の一行しか喋らなかった『彼』。伏線ですww

ちなみに、これを脳内で妄想している段階で、もう一本妄想が開花しました。
それはもう既に書き上がっています。これも二日で。グロテスクOnlyです。

掲載されていましたら読める方は読んでみて下さい、では。



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