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BAアセリア ちょこっと劇場


その一 [ 砂漠に現る*** ]


砂漠を横断中のレイヴンたち。
そんな中、突如として目の前に、居るはずの無い光陰が出現した!

「おいそこのアンタ!!」

「……何だ?」

鼻が触れ合うほどまでにレイヴンに接近する光陰。
その瞳は血走っており、何より鼻息が変質者のごとく荒かった。
そんな鼻息を吹きかけられているレイヴン自身は、二酸化炭素を吸わされている事に少し眉を寄せるだけである。

そして光陰は血走った瞳でレイヴンを捉えたまま、後ろに居るフィリスたちを的確に指差した。
レイヴンの後ろにいたフィリスたちは出現したそんな変質者から大きく離れ、身の危機を感じて震えている。

「あれは何だ!!?」

「―――何がだ」

そろそろ鬱陶しくなって来たため、レイヴンの声が少し低くなっている。
しかし目の前の変質者それ全く気が付いていない。むしろ無視していた。

そして変質者は言った。


「ロリっ娘の汗で濡れ、服が肌に引っ付いて未熟な果実の柔肌ラインが見えてます!!というおいしいシチュエーションに何故俺を呼ばない!!!?」

「………」

「ああ、まだ発達していないながらもそのスリムな流線を描く柔らかなライン!!!

普段から着ている服はその甘酸っぱい身体を隠しているも、濡れる事によってその甘酸っぱい身体を浮き彫りにしてくれる!!」

「………」

「服を脱ぐよりも、幼い少女にエロティックな容姿を見せてくれるその甘味na―――」


どっかーーーーーーーーーーーーーーん


「びsbんgrlgんそ!!??」

レイヴンは光陰という名の変質者を遥か彼方へと蹴り飛ばした。

「―――余計な時間を過ごしたが、行くぞ」

「「「……はi「待てぇい!!!」ひぃいいいい!!!?」」」


5行も進行しないうちに帰還を果たした変質者。
フィリスたちはさらに距離を離す。

「待ちたまえ、お嬢さんたち。この坊さんである僕が暑さを和らげる術を伝授してあげよう(キラーン)」

真面目な顔でニッコリスマイル。小さく覗かせていた歯が輝いた。
が、鼻息は依然として荒いままなので、変質者としての様相を増しているだけである。
光陰はいつのまにかフィリスたちの背後へと忍び寄り、両手をワキワキさせてにじり寄って行く。

「さぁ、その外套の下に隠された美しいラインをこのお兄さんに見せてごらん?」

「「「(がくがくがくがく)」」」

「さぁ、どうしたんだい?(ハァハァハァ!!)」



「―――オーラフォトンビーム…」


ちゅどーーーーーん


「あべしっ?!」

レイヴンは『月奏』の先端からビームを放ち、光陰を攻撃。
軽く焦げながら吹き飛んでいく変質者。

「世界を渡って何してんのよあんたはーーーー!!!!」


ずばーーーーーーーん


ばりばりばりばり……


「あんぎゃぁああああああああああ!!!??」


続いて紫電を発した心地よい響きを伴ったハリセンが変質者に落とされた。
発光が収まったそこには何もなかった。変質者の姿もなかった。

『…………………』

砂漠の風が吹いている中で、無言で佇んでいるレイヴンたち。
突然現れ、そしてこつ然と消えた誰とも知れない変質者。

あれは夢だったのだろうか?

そう思わずにはいられないフィリスたち。
だが、あの恐怖は今もこの身に宿っている。

「―――行くぞ」

「「「………はい」」」

レイヴンが直ぐにフィリスたちに声をかけ、再び砂漠の横断が始まった……。



その二 [ 初めての** ]


グレンによるフィリスたちの森での訓練が終わり、スピリットの詰め所での生活へと戻った初夜。
夕飯を作る場所である台所で事件は起きていた。

『『…………………』』

本日の食事当番であったスピリットたちは呆然と目の前の出来上がっている料理を見ていた。
そこにあるは野生身溢れる料理がズラリと並び、そのどれもが微妙な色合いを醸し出している。

――色の一つを言えば、“紫”とか(ぇ

「「「(じーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…)」」」

それを作った当事者であるフィリスにリアナ、そしてレイナ。
彼女たちは詰め所の皆に森での料理を食べてもらおうとして作り、期待交じりの視線を皆に向けている。

しかし、フィリスたち自身が料理をするのはこれが初めてであり、森では全てグレンが作っていた。
つまり、見よう見真似で作っていたのである。

『『――あう(汗』』

「「「(じーーーー…)」」」

『『――――あうあうあうあうあう!!(汗汗汗っ』』

「「「(じじじーーーーーーーーーーーーーー……)」」」

フェリクスの訓練方針によって感情が少なめな彼女たち。
そんな彼女たちでも目の前にある得体の知れない料理とフィリスたちの眩しいほどに輝いている瞳を浴びせられ、オロオロとさせている。

これをどうしろと?色について言えと?色自体ありえねぇよ、つーか食えと?食ってマナの霧へと還れと?

結論。

――他のスピリットの皆に生贄になってもらう事にした。


場所は台所から変わりまして食卓へ。


「「「(じじじーーーーーーーーーーー………)」」」


『『『『(何てモンを押し付けやがるか今日の当番はーーー!!!!)』』』』

何も知らずに集った詰め所のスピリットの皆さんはそう思っていた。
ちなみに今日の食事当番の面々はお風呂場掃除を進んで志願し、戦略的撤退を行っている。

向けられる輝かしい金・琥珀・エメラルドグリーンの合わせて六つの瞳。
アニメであったのならば瞳からキラキラと光る小さな星々が放たれていた事だろう。

「「「………(しょぼん)」」」

なかなか食べてもらえない事に気を落とすフィリスたち。
その様相は食べるなと本能の警報を鳴らしていた面々に物凄い罪悪感を持たせる程に暗く、そして可愛らしかった。

本能の警報と痛む良心。

訓練で死闘を繰り広げるよりも精神的に過酷な環境が今この場に出来上がっている。

「―――食べて…くれないの?」

無垢なるフィリスの潤んだ瞳。幼くも上目遣に出される期待と不安に震えた小さな声。
良心に再生の剣が突き刺さるほどの威力がそこにはあった。


『『『『いただきますっ!!!!』』』』


様々な色合いの料理を食べ始めるスピリットたち。
その様子に安堵したフィリスたちは、自らも自身が手掛けた料理を口にした。

――それらの料理は意外にも美味しかった。

戦略的撤退をしていた本日の食事当番であったスピリットの面々も、その結果に驚愕しつつも食べた。
そして次の日。詰め所のスピリットたち全員が腹痛で寝込んだ。

その後、グレンが調合した胃腸薬を皆が飲んだことで今日の午後には全員復活。

「いやはや〜…一体何があったのでしょうかね〜?」

「知らん」

何が起こったか知らぬはケムセラウトの二人の訓練士。


後日、事の顛末を知ったグレンはフィリスたち三人に料理特訓を行った。
その内容と様子を知る者は、その時の事を誰も口にしようとはしなかったという…。



――少なくとも、彼女たちにも食事当番を任せられるだけの腕を身に付けた事は確かであった事を追記しておく。




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