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永遠のアセリア
―The 『Human』 of Eternity Sword―


永遠神剣になっちゃった



Chapter 5  反発するエゴ

第5節 『運命の出会い』








日が落ちた夜道……第2詰め所に向って、鼻歌を吹きながら歩くアオ……



そのご機嫌な理由は、ダーツィ大公国攻略戦に参加できるという知らせを受けたからだ。

なんでも、ベテランであるセリアの姉ちゃんを単体で沈めたという要因が大きかったらしい。



――まあ、そんな事よりも……気になっている事がある。



アオの態度……

ケンカしたっていうのに……前と変わらないように俺に接している。

ありがたいって言えば、ありがたいけど……正直、不安にもなる。



『なあ、アオ……』

「うん?」

『あの、さ……俺達……ケンカとかしてなかったっけ?』

――前に、大っ嫌いとか言われた記憶があるんだが……



「? してた??」

『いや、してないならいいんだ……』

「?? へんな雫……」



そうか……アオはケンカしてるつもりは無かったのか……











――雫なんて……雫なんて、大っっ嫌い!!!――





その言葉は、俺が思っている以上に堪えていたようだ。











じゃあ、アオとケンカしてるって思って……無駄に不安がっていたあの時間は……いったい――



――そう考えると……腹の底からムカついてきた。











『クケェェエエエ〜〜〜!!』
「――ひやぁ!? な、なに!?」

『オバケの咆哮だな……きっと、やり場の無い怒りで叫んだんだ……』

「――お、おばけ!?」

アオの顔から血の気が引いていく――



――つーか、幽霊が苦手なのか? コイツ??



『速く逃げないと……食べられちゃうかもな……』

「た、食べられちゃうの!?」

『ああ、頭からガブガブと食べられる……』

「っ、っっ……きゃああぁぁぁぁ!!」

ドスの利いた低い声が効いたのか、顔を真っ青にして爆走するアオ……



……時速80kmと見た。



『つーか、速いな!?』



――とりあえず、ざまあみろ……と、心の中で言ってみる。















「はぁ、はぁ、はぁっ……」

そして現在……食卓に座ってる全員の視線がアオに向っている。



テーブルにはご馳走と思えるべき量の料理が……晩飯を取るにしては、遅い時間だ。



……きっと、アオの帰還祝いでもするつもりだったのだろう。



んで……当の本人が顔を真っ青になって登場するもんだから、皆さん、リアクションに迷ってる様子。







「ちょ……アオ、どうしたの?」

セリアの姉ちゃんが席を立つ。




「おば、おばっ、おば……」

「落ち着いて、ね?」

「オバケが……出たの……くけぇー!って……こ、怖かったよぉ……」



セリアの姉ちゃんの胸でマジ泣きするアオ……つーか、オバケごときでマジ泣きするかぁ?



「オバケが出るんですかぁ!?」

「………ネリー……怖いね……」

「それよりお腹減ったぁ……」

ガキ共はガキ共で、相変わらずマイペース……



アダルト組は、密偵者の可能性を考慮して見回りする案を話し合っている始末……







『………………』

もしかしなくても……厄介事を生み出してしまったのではないだろうか?



















「で、雫……本当にオバケだったの?」

『……………………もちろんだ、俺が保証する』

「今の間は??」

『気にしたら負けだ……だから気にするんじゃない……』

食後……俺は食卓でアダルト組に尋問されていた。

正確には、ハリオンの姉ちゃんを除いたアダルト組だが……



つーか、尋問するならオバケと騒ぎ始めたアオであって……何故俺が標的に??



「スピリットの気配は感じなかった訳ですね?」

『幽霊とスピリットを間違える筈無いだろ!! むしろ、クケェ!って鳴くスピリットが居てたまるか!!』

「そういえば、そんな風に鳴いてたんだっけ?」

『そうだよ、ヒミカの姉ちゃん……密偵者がクケケェエ!って鳴く筈無いだろ?』

「じゃあ……本当にオバケが居るっていうの?」

現に、オバケみたいな存在が叫んだだけだし……うん、嘘は付いていない。



『かもな……ヒミカの姉ちゃんも、喰われない様に注意しな』

「……ふ、不吉な事を言わないでよ……」

――ヒミカの姉ちゃんも怖いんだろうか……オバケが……



『セリアの姉ちゃんとナナルゥの姉ちゃんは怖がらないのな……』

「信じてないもの……」

「右に同じです」

神剣もオバケの類に入ると思うんだよね。



「とりあえず……ユート様に報告しないとね……」

『こんなフザケタ話をか!?』

「義務報告よ……こんな騒ぎが出たっていうね……」







セリアの姉ちゃんが、この部屋から出る寸前……玄関の方から――



「お〜い、誰か居るか〜!?」



――そんな、男の声が聞こえた。







「「「ユート様!?」」」

全員は顔を見合わせる。



上からもドタドタと走ってる騒音と、ガキ共の喋り声も聞こえる。







とりあえず、居間に居た全員……俺も含めて玄関に移動する。







俺達が玄関に着くと同時に、2階の住人も――



――つまり、第2詰め所のスピリット全員の視線が、高嶺の兄ちゃんに注がれる。











いや、どちらかというと……隣に居る見たことも無い緑スピリットにだ。











そのスピリットの第一印象……セリアの姉ちゃんと似た雰囲気を感じる。



――でも、セリアの姉ちゃんみたいなツンツン拒絶オーラは感じない。







「えーっと、クルゥ・グリーンスピリット……詳しい事は知らないけど、ダーツィ攻略戦に加わる事になった」

「初めまして……『光芒』のクルゥです」



そいつは、ニッコリと笑って……まるで天使のような笑顔で自己紹介した。













――これが、俺達とクルゥ・グリーンスピリットとの出会い――







そして、彼女こそが……俺の運命を両極端に別ける事件のトリガーになる事を――









――今の俺が知る筈も無かった。








あとがき



 鍵キャラ、クルゥさん登場♪
長かった……ココまでたどり着くのに、本当に長かった……
現在、永遠神剣になっちゃったを起承転結で表すと『転』の始まりです。

 補足として、雫の尋問中にハリオンは何処に居たかというと……一人で食器を洗っていましたとさ。

 それと、最近……アオの思考がトレースできません。
自分で作った設定で言うのもなんですが……最近のアオの思考が訳解らん!!

ですから、再び思考を正常化するために……チャプター2のノリに戻す勢いで書いてみました。






<今話で出てきた用語>

ツンツン拒絶オーラ(つんつんきょぜつおーら):主に、ツンデレ娘が放ってるオーラ
       :他者を寄せ付けず、気になる相手はもっと寄せ付けない絶壁。
       :だが、気になる相手と結ばれた場合……その作用は逆転する。

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