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永遠のアセリア
―The 『Human』 of Eternity Sword―


永遠神剣になっちゃった



Chapter 4  始まりの戦

第8節 『勘違い』



 






 自由時間とされた午後……俺とアオは、街の近くに流れる川のほとりに居る。

その場で、アオは瞑想するように氣を練っている。



「……………………」
『……………………』

目指せ五割……と言ってたけど……まさか、こんな短期間で達成するとは思わなかった。

マジで一ヶ月以内に俺が知ってる技全部習得しそうな勢いがある。



それはそれで喜ばしい事なのだが……なんか、こう……微妙にムカツクっていうか、腹の辺りがフツフツと煮えたぎるっていうか……



いやいや、こんなことで腹を立てるな……俺も訓練して自分を磨けばいい話だ。





 ならば、何をするべきか?



まずは、自分の欠点を補うのが成長の第一歩だ。



そのために、まず自分の欠点を探そう――







――俺の欠点といえば、俺の嘘は解りやすいと言うことだ。



俺もソレを何とかしたいと散々思っているので、それを直すために訓練してやろうではないか。







『なあ、アオ……一つ、重大な事を教えるのを忘れていた』

「……重大な事??」

『ああ……実は――』



『もう、手遅れなんだが……その……お前はもう、二度とお菓子を食べれない身体になって……しまったんだ……』



ピキッ、っとアオが凍る――



「嘘……だよね?」

『――うん、嘘♪』

「よ、よかった……」



アオがホッと安心の表情をした瞬間を狙って、俺は次の爆弾を投下する。







『本当は、嫌いな物しか食べれない身体に……』



「う、うぞ〜〜!?」

ガクッ……とその場に崩れ落ちるアオ――







……なんだ、全然余裕じゃんか♪

心配した自分がアホらしいな、まったく……



「う゛ぅぅ……、そんな大切な事……もっともっと早く、教えて……ほしかったよぉ……ぐす、ぅうう……」

うわ、なんかマジ泣きしてる……



『悪かった、ごめんアオ……さっき言ったこと全部嘘だから♪』

「……本当に?」

『ああ、本当だ』

「…………本当の本当に?」

『ああ、俺を信じろ♪』

「………………………………」



『なんだよ、その超信じられねぇ……って目は!? 俺が嘘をつくとでも思っているのか?』

「…………やっぱり、信じられない」

『冗談に決まってんだろうが……マジで機嫌直せよ』

「――ふんっだ!」

からかい過ぎた……ちょぴっと反省――



『で、真面目な話に戻るんだが……お前、錬気のコツでも掴んだのか?』

「………………」



これだからガキは嫌いなんだ……

冗談と真面目の区別がつかないから――



『……………………』
「……………………」

つーか、本当にどうする?







「アオ、何をしてるのですか?」

――救いの赤い女神よ、よく来てくれた♪



『ナナルゥの姉ちゃん、助けてくれ!!』

「??」

『アオがさぁ、人が真面目に教えようとしてるのに無視るんだよぉ……』

「――それ、私が全部悪いみたいに聞こえる」

悪いからに決まってんだろうが……



「雫は、何を教えようとしているのですか?」

『気功術って、言っても解らないよな……あれだ、アオの生存確率を増やす技を教えようとしてるんだけど……』

「アオが真面目に聞いてくれないと……そういう訳ですか?」

『そうなん――』
「――ナナルゥお姉ちゃん、騙されちゃダメぇぇ!!」



「??」

「雫はね、私が真面目にやってるのに……邪魔ばっかりするんだよ!!」

「……そうなのですか?」

『…………いえ、僕は何も――』

「嘘だよ!! だって、一生懸命やってるのに雫がいきなり怒ってくるんだもん!」

怒ってないもん、嫉妬してるだけだもん♪



「ナナルゥお姉ちゃん……私、悪くないよね??」

「少し、考えさせてください……」



ナナルゥの姉ちゃんは、どっちの意見を信じるか迷ってるみたいだ……



ならば――



『ナナルゥさんや、俺達はパートナーって誓い合ったよな? そのパートナーを信じないなんて……そんな事は無いよな??』

「……え?」



困ってるぞ……あの無愛想の塊みたいなナナルゥの姉ちゃんが困ってますよ?



――なんか、これはこれで面白い♪



『あのクソ寒い部屋で誓い合った俺の、おれの……オ、レ、のぉ!!』

「雫、ずるい! ――私だって嘘言ってないもん!」

「……ぁ……その……」



『俺を信じると言えば楽になるんだぞ……さあ、言うんだナナルゥ!!』

「ナナルゥお姉ちゃん……雫に騙されないで!!」

「わ、私は、その……」







「す、すみません……わ、私には……判断は下せそうにありません……」

そう言い残して、トボトボと落ち込んだように立去るナナルゥの姉ちゃん――







「『あ……』」



冗談のつもりだったんだが……もしかしなくても、苛め過ぎたか??



『アオがあんな事言うから……』

「わ、私の所為なの!?」



どっちかって言うと……両方――つーか、俺の所為っぽいけど……



『全部お前の所為って事で♪ ……まったく、後でナナルゥの姉ちゃんにちゃんと謝るんだぞ』

「……なんか、違う気がする……」



人はそうやって成長するもんだ。



――頑張れ、アオ♪ その理不尽に負けないように♪







自分で言うのもなんだけどな……







『……じゃ、次のステップに進もうか?』

「………………いいのかな? 謝らなくて……」

『別に今じゃ無くても良いだろ? また会えるんだし……』

「………………………………そだね♪」



ナナルゥの姉ちゃんという多大な犠牲を払って、やっと次に進む俺達だった。







――ごめん、ナナルゥの姉ちゃん……後でコイツに何か奢らせるから……



















『……で、お前……錬気のコツは掴んだのか?』

「うん、バッチリ♪」



『じゃあ、今度は錬気で蓄えた氣を皮膚の表面に固定……
 そして圧縮することによって皮膚を硬化させる技……これを『鋼体功(こうたいこう)』という』

「??」

『解りやすく言うと、他の奴等が使う障壁の気功版みたいなもんだ』

「障壁って……私に出来るの!?」

嬉しそうに目を輝かせるアオ。



コイツ、障壁とか基本的な事出来なくて落ち込んだ回数多いからなぁ……



『まあ、その……目に見えない障壁って言った方がいいかもな』



だから、ただ身体を硬化させるだけって……言えない……

初めにぶっちゃけた気もするが……改めて言える勇気が僕には有りません。



「――で、で? どうすれば出来るの??」

『……錬気していたとき、身体の外に漏れ出る道があったよな?』

「うん」

『今度はソレを開放して、漏れ出る氣を外に出るか出ないかの位置で固定する……まずはそれをやってみろ』



そう、コレが一番の難題……

固定する場所が少しでも肌から離れてしまったとたん、気化するように無効化してしまう。

逆に、内に固定しすぎても効力は発揮されない。



肌に触れていて、且つ、外気に晒される中間距離で初めて効果を発揮する。

あとは、その状態で氣を圧縮することで硬度が増加していくのだ。

センチ単位で例えると……だいたい1nm(ナノ)単位の膜を身体の表面に張るということは、膨大な集中力が必要とされる。



名の割には、とても繊細な技なのだ。



こればっかしは、根気が必要。

何度も何度もやって、少しずつ効力が目に見えてくる……そんな技――







――――そう、そんな根気と集中力を必要とする繊細な技の筈なのだが……







『……だからぁ、ちょっと待てってば!!』
「――??」



このガキの皮を被った化け物……苦も無く固定に成功しやがったよ。



『なんなんだよ、お前は!! それは嫌味なのか? 初めてなのに数秒程度で成功させる偶然ってどんな偶然だコラァ!!』

ちゃんと皮膚の表面にマナと思われる青っぽい膜がしっかりと付いてるし……開始10秒も経たないうちに終わっちゃったよ……



「やっぱり怒るし……」







――師匠、爺ちゃん……おれ、もう駄目ぇ……



僕、もう立ち直れないよ……コイツ、絶対一週間以内で俺の全てを奪っていくよ……







「なんでいっつもいっつも怒るのさ!?」

『……お前さ……もう少し自分を――――ん??』



アオの表面に作り出されたマナの膜……の筈なんだが――



『……なんで、皮膚から離れて固定されてるんだ??』

「――え? ダメなの??」

『いや、そういう問題じゃなくて……』



ぶっちゃけると、有り得ないんだよ……

氣は、身体の外に出たら効果が無くなる。

だから、外に出ても効果が継続されるって事は……有り得ない――



――って、まてよ……







もしかしたら、俺はとんでもない勘違いをしていたのかも知れない。



アオが操ってるのは、『氣』ではなく、『マナ』だ……



その特性は微妙に似ているが……同じという訳ではない。







これは、もしかしたら……もしかすると――







『あのさ……その膜はどれくらい離れて固定できるもんなのか確認してみろ』

「うん、解った……」



青っぽいマナの膜は、徐々にアオを中心に広がる。

アオから約30cm離れたところで……その膜は止まった。



「雫……これ……」

『間違いなく、障壁だな……』

青い、卵型の障壁……それが展開していた。



「これが……こうたいこー??」

『違う……絶対違うから……』







そうだ、なんで今まで気がつかなかったんだろう……



そもそも、アオに氣なんて存在していないのだ。







あいつを構成してるのは『マナ』



『氣』と似てる性質とかはあるけど……明らかに別物である。







『遠当て』とか『錬気』とかは、マナと氣が共通する性質のお陰で成功した結果だ。







『……俺はそんな技……っていうか、障壁の張り方なんて知らない』

「だって、雫の言った通りにやったら――」

『それでもだ……それは、お前が自分自身で作り上げた技だよ』

「……私が、作り上げた??」

『まあ、んな事はどうでもいい……で、その障壁の名前は?』

「え? 名前??」

『そう、なんか名称とかないと不便だろ?』

「そうだけど……じゃあ、えっとぉ……うっとぉ……」



『卵防壁とか??』

「なんかヤダ……」



『青障壁とか?』

「……う〜ん……それもちょっとヤダ……」

我侭な奴……



「気功の盾……かなぁ?」

『……なんで?』

「だって、気功術をやってたら出来たんだもん……だから、気功の盾♪」

『それ、マンマじゃねえか……お前なぁ、もう少しモノを考えて――』

「雫にだけは言われたくない……」


















そんな感じで、穏やかな時は過ぎていく……







今は戦争中とは思えないほどの、平和な時間が――――








あとがき



 アオが新たなスキルを覚えました♪(エスペリア風)
Kurikenさんから頂いた技をアレンジして作って見ました。

NEW
DEFENCE SKILL
技名:気功の盾
ターゲット:変動【敵】 属性:青
対HP効果:10 x Lv 最大回数:16 行動回数:16
マインドバランス:0〜100 マインド変動:+5 効果:なし
 アオが鋼体功を習得しようとして、偶然に障壁を作り出してしまった。
『氣』と思って操っていたのは『マナ』であり、神剣の加護無しで障壁を張ったスピリットは、おそらくアオだけ……

 永遠神剣の力を借りたスピリットが張る障壁と比べれると……無論、アオの障壁は微弱過ぎる。
行動回数こそ多いが、障壁としての役割は皆無――

しかし、このスキルに限界は存在しない。
アオが成長すればするほど、対HP効果は比例して上がっていく。


――とまあ、平和な進軍前日・午後編は終了です。

 ちなみに、ナナルゥさんは散歩してたら偶然アオを目撃した設定です。
……それで落ち込まされるんだから、今日のナナルゥの運勢はきっと大凶♪


 補足として……雫の口調が変わる嘘は、自業自得の厄災を回避しようとする場合のみで
からかいを目的とした嘘の場合、口調は余り変化しません。

 アオがだんだんボケキャラから突っ込みに転職してきてますが、その理由は、雫がボケ属性になってきたから♪
なんで雫がボケに走ってるんだ? みたいな理由は、不安を隠すためだと思えばOKかと……

 彼は元々ボケ属性(a Prologue参照)なのですが
アオが雫よりボケLVが上だったためにツッコミキャラになっていたという訳です。
――すなわち、雫はオールラウンダーなのです! アオもオールラウンダーの資質を秘めている事は間違いありません♪


次回は進軍当日・午前編♪

第1詰め所の誰を主体に出そうかと悩んでる今日この頃――





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