永遠のアセリア
―The 『Human』 of Eternity Sword―
永遠神剣になっちゃった
Chapter 4 始まりの戦
第7節 『スピリットとエトランジェ』
嫌な事は忘れる……
それが人生を楽しく過ごす基本でもある。
だから、楽しく過ごすには……自分の異常も目を背ける事も大切な事である。
「コレを……アオ・ブルースピリットがやったというのか?」
「うん、凄かったんだよ〜♪ こう剣を振って、ドカーーーン!! ……って♪」
「うん……凄かった……」
そして……目の前に広がる壊れた家の事も忘れるに限る――
「私……知らないよ?」
『…………………』
知らないほうがいい……それがお前の為であり、俺の為でもある。
……うむ、現実逃避万歳!!
「聞いた話では……神剣『雫』に呑まれてたそうだが……」
「雫に?」
――だが、現実はそう甘くないもんである。
『………………』
そもそも、なぜこいつ等が此処にいるんだ?
俺が目を覚ました時には、廃墟と化した民家を調査している最中だった。
その時、何故か第1詰め所の皆さん+ヘリオンのガキがいた。
――伝令が届く頃にはラセリオも、最悪……物資も取られてると想定したほうがいい――
確かに、アウルはそんな言葉を発していた。
座学で学んだ事なんだが……
バーンライト王国の首都であるサモドアの一歩手前の町リモドア……
そのリモドアからラセリオまでの距離は普通に行けば1日はかかる距離だそうだ。
直線距離ではラキオス−ラセリオ間と同じだが、山を超えねば到達は不可能……
空を飛べるヘリオンや鎧の姉ちゃんはともかく、空を飛べないメイドの姉ちゃん達は一体……どうやって来たのか?
「……ねえ、雫……これ、雫がやったの?」
『…………………………』
まあ、こんな事考えてても仕方が無い事は知ってるんだ。
問題は今なんだ。
一体誰が、この廃墟を築き上げた『責任』を負うのかということだけ……
「なんで黙ってるの?」
『……うるさい、少し黙ってろ』
ここで、名乗り挙げても……ぜってぇ賠償金とか払えって言われそうだし――
「お〜い、アウルさん!」
廃墟の奥からやって来たのは『求め』のエトランジェこと、高嶺 悠人――
後ろに、セリアの姉ちゃんとメイドの姉ちゃん+ヘリオンのガキがいた。
「どうだった?」
「どうもこうも……向こう側の全部が全壊してたよ」
『うへぇ……』
「全壊した民家は推定20軒以上だと思われます」
知りたくも無い詳細をセリアの姉ちゃんが説明してくれる。
それにしても……20軒以上ですか……
日本の価値で考えて、一軒家を建てる費用は数千万……最低に見積もって1000万と仮定しよう。
1000万x20=2億円
「半壊以下の損害も合わせれば……そのぉ〜……さ、30軒は軽く……」
軽く30軒……
一軒家の修理費、最低に見積もって200万と想定してみて……
200万x30=6000万円
「……ふむ」
「幸い、非難警告が早く出てたお蔭で怪我人は一人も居ません」
「解った、ご苦労だったな……」
エスペリアの姉ちゃんの言う事が本当なら、怪我人の医療費は一切無し……だと思いたい。
それでも合計2億6千万円……
最低2億6千万円……
年収で考えると、5x12のぉ……40x4回ぐらいでぇ……220万だからぁ……
『は、はは……あはははは……はははははははは……』
「雫……なんで笑ってるの??」
笑うしかないだろう――
――だって、俺の年収……軽く百年分超えてるんだもん……
俺の脳内投票は、満場一致で忘却しろと訴えている。
――よって、忘却決定♪
『それよりさあ、アイツ等どうやって来たの?』
「えっとね……ヘリオンちゃんとアウル様は普通に来て、ユート様達は川を渡って来たんだって」
『ふーん……川?』
想像してみよう……
シールドハイロゥに乗りながら、どんぶらこ、どんぶらこ……と流れてくるメイドの姉ちゃん――
『………………』
なかなかにシュールな光景だった。
「……で、神剣『雫』は何と?」
「『え?』」
「え? ……ではなく、神剣『雫』はこの光景にの原因に覚えは有るのか?」
『僕、知らないですよ?』
「……………………」
これでアオが通訳してくれれば、一件落着――
「……知ってるって言ってます」
『――ぶッ!?』
――どころか、更に状況は悪化した。
『は!? あ、アオ……て、テメェ!!』
お、俺に恨みでもあんのか、コイツ……
「だって、雫……嘘ついてる」
『ほ、ほう……嘘ついてるとして、なんでそう思った?』
「雫……嘘つくとき、言葉使いが変なんだもん」
アオの癖に、中々に的確な意見なもんだから言い返せねえよチキショウ……
自分で解ってても、直せない癖なので、それが一生の悩みとも言える。
いや、それよりこの絶体絶命の状況を打開せねば……
「なるほど、じゃあこれは誰がやった?」
――焦るな、まだ王は取られていない!!
『…………バーンライトのスピリットであります!!』
とりあえず、身代わりを――
「雫、また嘘ついてる……」
『だあぁぁぁ! うるせえよテメェ!!』
――寝返った
『セリアの姉ちゃん、通訳を!!』
まだだ、王を下がらせれば――
「……嫌です」
『――鬼! 悪魔!!』
――ダメです、
つーか、俺に味方は居ないのか!?
「『仮に俺がやったとしよう……仮にな!!
その場合、俺とかアオとかに……壊れた民家を弁償しろとかそういうの問われるんですか?』……って、言ってます」
アウルさん……そんな呆れた顔で見ないで――
「問われない筈だが?」
「『絶対? 絶対だな?』……て、言ってます」
「……しつこいぞ」
「『……も、もう予想はついてると思われますが……俺が、やりました』……って、言ってます」
やっぱり……と言いたげな視線で俺を牽制する周りの人々――
なんか、自分が凄く情けない……
「しかし、なんだ? ……神剣『雫』は、何故そんなことを気にする?」
「お前は神剣で、関係ない事だというのに……」
『なんでって……』
――そうなったら、アオが困るだろ?
なんて臭いセリフが思い浮かんだが、恥ずかしくて言えるはずないので別の言葉をチョイスする。
「『……ま、あれだ……何となく思いついた事だからな、別に深い意味はないぞ』……って言ってます」
「まあいい……お前達は中央の広場に向ってくれ」
「ああ、解った」
「そこで、ラキオス本部からの伝令を伝える……俺が行くまで待機してろ」
「俺が行くまでって……なにか用事でもあるのか?」
「家を壊された住民に色々と説明しなければいけないからな……」
高嶺の兄ちゃんの問いに答え、急ぎ足で立去るアウルさん……
残された俺たちは、指示に従い中央の広場へ移動する。
その途中、なんでバーンライト攻略隊の奴等が此処に居るのかとセリアの姉ちゃんに聞いたら詳しく教えてくれた。
リーザリオ付近には大きな湖があり、その湖は川となってラセリオに続いているそうだ。
よって、第一詰め所の皆さんは川沿いに此処まで走って来たそうだ。
ヘリオンは、ラキオス王国に第一詰め所の皆さんが川沿いにラセリオに向っている事を報告するために伝令役として選ばれたらしい。
第一詰め所の皆さんが到着して約1日後、アウルを連れて合流したと……
……んで、町の被害に驚いていたらしい。
スピリット隊は、警戒の任務のついでに町の被害調査の手伝いをしていた……という事だ。
敵さんは様子見の最中なのか、第一詰め所の皆さんが到着してからは敵襲も無かったそうで。
――ちなみに、アオ達はアウル達が来るまで気を失ってたらしい。
俺が目を覚ましたのは、町の調査してる最中だった。
『なるほどなるほど、良く解った……とりあえず、ありがとう』
「別に礼なんて必要ありません」
『……あっそ』
「……………………」
っと、高嶺の兄ちゃんが不思議そうな顔でセリアの姉ちゃんを見てる。
「――なにか?」
「あ、いや……気にしないでくれ――」
「??」
『大方、独り言を呟いてる危ない人に思われたんじゃねえの?』
「なっ!! ゆ、ユート様……誤解してるようですが、私は神剣『雫』と会話しているだけですので――」
「ああ、そうなんだ……って、え?」
「エスペリアから聞きませんでしたか? アオ・ブルースピリットの神剣は、第4位の神剣であり、明確な自我を持っていると」
「そっか、君が……初めまして、俺は高嶺 悠人――あっと、セリア……だっけ? 君もよろしくな」
「はい、宜しくお願いします」
「あっと、その……よろしくです」
「あのさ……この前、オルファから聞いたんだけど……佳織と会ったんだよな?」
「そうだよ?」
「それでさ、アオから見て佳織はどうだった? 元気にしてたのか? 酷い事とかされてないよな?」
やっぱりシスコンなのか……
いや、それ以前に……言葉が少しオカシイ――
酷い事って……どういう意味だ?
まるで……
「えっと、とっても元気そうで……あ、あとハイペリアのお話とか聞かせてもらったよ♪」
「そっか、良かった……」
アオが嬉しそうに語ってるのを見て、とても安心した表情をする高嶺の兄ちゃん。
「もし、これからも……佳織に会う機会とかあったらさ……佳織と仲良くしてやってくれないか?」
「? もう仲良しだよ??」
「そっか、じゃあ……今後とも佳織の事をよろしく頼むな……」
そう言って、アオの頭を撫でる高嶺の兄ちゃん。
――でも、その表情は……いつの間にか、悲しみに彩られていた。
「むぅ〜……パパ! アオとばっかり話してないで早く行こうよ!!」
「おい、オルファ? ……こら、引っ張るなって!」
高嶺の兄ちゃんとアオを引き離すように、オルファのガキは走るように高嶺の兄ちゃんの腕を引っ張って行く。
微笑ましい光景というか、何と言うか……………………パパってなんだ?
まあ、ソレは後で誰かに聞くとして……
『なあ、セリア……『求め』の悠人って、妹と任意で別居してるんじゃないのか?』
「さあ、エスペリアなら知ってるんじゃないの?」
『じゃあ、聞いてくれ――』
「――嫌です」
って、反応早いなチクショウ……
『じゃあアオ、メイドの姉ちゃんに……通訳頼めるか?』
「うん……なんて?」
『悠人は、なんで妹と離れて暮らしてるのって』
「解った……ねえ、エスペリアお姉ちゃん――」
「どうしたんですか、アオ……」
「なんで、ユート様はカオリちゃんと離れて暮らしてるの?」
「そ、それは……」
メイドの姉ちゃんが言葉に詰まる。
「私も、詳しい事は解りません……ですが、国王の命令により決められたと聞いています」
――後ろめたい事を隠しているような顔で言われても説得力は無い。
高嶺の兄ちゃんの言い様……まるで、妹を人質に取られたような言い方だった。
いや、現に取られたんだろう……でなけりゃ、平和な世界で暮らしていた奴が殺し合いに身を置くはずが無い。
妹を守るために、手を血に染める兄――
――果たして、高嶺の妹さんは……その事実を知ってるんだろうか?
知らないよな、きっと……知ってたら、あんな楽しそうに談話なんて出来るはずが無い。
スピリットとエトランジェ……
戦いの道具としか扱われていない、この世界で生きている彼等を救おうとする者は……
――果たして、過去に誰も居なかったのか?
自分がこういうのもなんだけど……この世界の人間は、本当に心無い奴の集まりなのだろうか?
人と瓜二つの存在を、非道に扱う事に疑問を覚えない……そんな哀しい奴等の世界なのだろうか?
そんな事考えてもどうにも成らないって事は解ってるけど……それでも考えてしまう。
『なんでかなぁ……』
「?? なにが??」
『なんでもねえ――』
でもそれは、俺の預かり知らない事……俺がどう足掻いても変えられない事実だ。
いや、他人の事なんてどうでもいい……今は自分のやるべきことを考えるべきだ。
そう……さっさとこの神剣から離れる方法を見つけて、自分の居場所に戻る方法を考える。
――余計な事を考えるのは、その後でも十分間に合う。
広場に着くと、ナナルゥの姉ちゃんが机らしきモノを運んでいた。
――らしきもの、つーか、でっかい机だけど……
『ナナルゥの姉ちゃんは何してんだ?』
「えっとねぇ……アウル様が大きめのテーブルを調達してこいってナナルゥお姉ちゃんに言ってたよ」
『――何のために?』
「わかんない……」
っと、セリアの姉ちゃんが駆け足気味でナナルゥの姉ちゃんに近づく。
「ナナルゥ……ちょっと……」
「何でしょう、セリア?」
「確認なんだけど、貴方も『雫』の声……聞こえてる?」
「?? 聞こえませんが?」
今、喋ってねえからな……
「……そっか、貴方の前で喋ってなかったものね……雫、ちょっと――」
――嫌です♪
『…………………………』
「ちょっと、返事しなさいよ……」
へっへ〜んだ、人の頼みごと断りまくっておいて自分の頼みごとが通ると思ったら大間違いだ。
自分の行いを恥じて悔しがるが良い♪
「…………まあ、別に対した事じゃないから良いんだけどね――」
『――悔しがれや!!』
「あ、聞こえました……」
「そう、貴方も聞こえるのね、ありがと……一応、『雫』にも礼は言っておくわね」
『そらどうも……』
してやったり……というか、普通引っかかる? ……みたいな微妙な顔で言われても全然嬉しくねえよ、クソ……
「――で、それがどうかしたのですか?」
「ちょっとね……確かめたかっただけだから……」
「そうですか……」
――っと、下らない会話をしているとアウルが遣って来た。
「そろってるな……では、作戦執行部からの命令及び、伝令を伝える」
皆がアウルの方へ整列する。
「セリア・ブルースピリット、ナナルゥ・レッドスピリット
……以下2名がバーンライト攻略部隊に配属される事が正式に決定された」
「そのスピリット共を使い、見事バーンライト城を陥落せよ――との事だ」
「なあ、アウルさん……アオは違うのか?」
「アオ・ブルースピリットはまだ、正式には配属はされていない――」
「――が、今回のラセリオ防衛戦で発揮した力は、十分戦力になると俺は判断する」
「――よって、アオ・ブルースピリット……お前をバーンライト攻略部隊として『求め』のユートの指揮下に入る事を命ずる!」
アオに視線を向けながら、アウルはそう言い放った。
「……でも、まだ障壁は――」
「それは唯の目安だ……聞いた話では、6体以上のスピリットを一瞬でマナの霧に返したと聞いている」
「それだけで十分だ……お前は十分、戦力になる」
「は、はい!」
「アオさん……良かったですね」
「うん♪」
「なあ、俺が言うのもなんだけど……そういうの勝手に決めていいのか?」
「アオ・ブルースピリットの件は、今現在、俺の管轄に入っている……よって、問題は無い」
「解った……つまり、セリア、ナナルゥ、アオが加わったって事で良いんだよな?」
「そういうことだ……次に、現在判明している情報だ」
パラっと、机に周辺の地図が机に敷かれる。
――なんだ、この為の机だったのか。
「今現在、バーンライト王国に25体のスピリットが確認された」
「――25!?」
「情報部からの話では、ダーツィ大公国から派遣されたスピリットが殆ど……
そして、その半数以上は訓練もままならない未熟なスピリットという事だ」
「解ってると思うが、我軍の配置状況はリモドアには4名のスピリット、此処には一人のエトランジェと7名のスピリットが待機中だ」
「情報は以上――なにか質問は有るか?」
「なあ、アウルさん……ここからリモドアまでの伝令って、どのくらいで伝わる?」
「足の速い伝令兵に頼めば、一日は掛かからんだろう」
「そっか……それにしても25って、多すぎないか?」
「仕方有るまい、ラキオスでまともに戦えるのはお前達しか居ないんだ」
「う〜ん……」
高嶺の兄ちゃんが広げられた地図を見て悩む事、約数十分……作戦を決めたように顔を上げる。
「みんな、聞いてくれ……俺はさ、今まで戦争なんてした事がないんだ」
「ゆ、ユート様!? いきなり何を!?」
いきなりの告白で、スピリットの皆さんは動揺している。
――ちなみに、一番動揺してるのはメイドの姉ちゃんだった。
どうでもいいけどな……
そんな中、高嶺の兄ちゃんは構わず告白を続ける。
「だから、俺が立てた作戦は多分穴だらけだと思う……だからさ、おかしい所とか出たら指摘してくれると助かる」
この世界で暮らしてれば解ることだが、スピリットは皆……駒として扱われ続けている。
そんな奴等にいきなり意見しろなんて言われても……速攻で返事する奴なんて――
「――解りました」
居たね……ここに一人だけ……
青い悪魔こと、セリアの姉ちゃん。
もし、白いスピリットが存在して、セリアの姉ちゃんがそのスピリットだったら……良いアダ名を付けれたんだけどなぁ……
「………………」
ほら、何も言ってないのにコッチ睨んでるし……
まさに、ニュータイプ♪ ファーストGのパイロットもビックリだ……
「ありがとう、セリア……」
「いえ……当然の事をですので、お気になさらずに……」
「そっか、じゃあ説明するぞ――」
改めて、皆が高嶺の兄ちゃんに意識を向ける。
「俺達が行うのは陽動だ……ラセリオ−サモドアの道を進めるだけ進むんだ」
「敵が出てこなかったら、出てくるまで進む……それで城までたどり着けたらそれで良い」
「逆に、敵の抵抗が激しくなったら……なるべく敵を引きつけながら後退するんだ」
「その隙を狙ってリモドアの部隊が手薄になったサモドアに残ってる皆が攻める」
「「「「…………」」」」
「……えっと、皆はどう思う?」
自身無さげな顔でこちらを見ている高嶺の兄ちゃん。
「ねえねえ、パパ……ヨウドウって何?」
「…………悪い、後で教える」
「ぶ〜……」
「雫……ヨウドウって?」
『……説明すんのメンドイ』
「へぅ……」
明らかに、ガキ共は論外――
「…………私は、別に……どんな作戦でも構わない……」
「――右に同じです」
どうでも良いと思ってる奴等……てか、ある一種の天然共も論外――
「わ、わわわ、私は、ユート様が立てた作戦なら、どんな作戦でも!!」
「――いや、ヘリオン……あのさ、穴が無いか聞きたいんだけど……」
「はわわわ、あ、穴があっても、き、きき……きっと、大丈夫です!!」
――恋する乙女も論外……てか、アイツは緊張しすぎて言語が支離滅裂だ……
――となると、頼れるのは二人だけ……
「そうタイミングよく進むかどうか疑問ですがね……」
「……やっぱり、ダメかな?」
「いえ、些細な問題点を挙げただけです……私は十分、信用に足りる作戦だと思います」
辛口派であるセリア姉ちゃんが賛同――
「そっか、エスペリアはどう思う?」
「そうですね……どちらにせよ、主力は言うまでも無く私達の部隊です」
「敵が、こちらを陽動部隊と解っていても……あちらは半数以上の兵力を回すしかない筈です」
「そうなのか?」
「ええ……陽動部隊にはエトランジェであるユート様と、ラキオスの蒼い牙であるアセリアが居ますから……」
メイド参謀も賛同――
つーか、ラキオスの蒼い牙って……何??
「じゃあ、これで決定って事で――」
「……では、リモドアの部隊は何時出発させればいい?」
「えっと、明日に着くんだから……明日、日が落ちたら出発させてほしいんだけど……」
「了解した、健闘を祈る……」
「ああ、サンキュ……アウルさん」
「??……それは、ハイペリアでの感謝の言葉か?」
「え、ああ……そうだけど――」
「なるほど……こっちも仕事だから気にするな」
――そんな言葉を残して、アウルさんは立ち去って行った。