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永遠のアセリア
―The 『Human』 of Eternity Sword―


永遠神剣になっちゃった



Chapter 4  始まりの戦

第2節 『俺達の契約』



 






 アウルは、自主訓練でもしてろ……といって自室に戻った。






気持ちは解らんでもない。



訓練師はスピリットを鍛える者――



神剣に原因があったら……お手上げ状態なのだ。







 やることも無く、俺を素振りしているアオ……



その一生懸命に訓練に励む表情から、一刻も速く皆の元に駆けつけたいのだと……



そんな思いが嫌になるほど理解できた――






――今の俺に……一体何が出来るのだろう?



契約の方法は知らない……



魔法も使えない……



ただのお荷物でしかない……



――アオに、何も与えてやれない――






『ごめんな……アオ』

「……なにが?」

『契約できなくて、ごめん……』

「雫の所為じゃないよ……」






俺に出来る事、俺が今出来る事はなんだろうか?



何も無い……今の俺は傍観者でしかない。



話す事しか出来ない傍観者……アオに何も与えれない神剣……



そう、出来損ないの神剣……何も出来ない……何も――













――いや、あった……



俺が、アオに与えられるモノが――













『なあ、アオ……』

「ん、なに?」



『今から……契約しようか?』



「え? だって、解らないんじゃ?」

『うん、解らない……でもさ、形だけでもやってみないか?』

「??」

『もし、契約ってのが……互いの任意から初めるんだとしたら、俺達はそれすらもしてないだろ?』

「そうだっけ?」

『そうなの……だから、契約――』

『お前は一刻も速く強くなって皆と合流したい、俺はマナが欲しい……というか、マナを摂取しないと生きられない』

「……うん」

『俺は……俺が出来ることは、お前にアドバイスすることだけだと思う』

『だから、俺の知ってる戦闘に関する事を全てをお前に教える……』

『お前は、俺の知っている知識を使って強くなれ……そして、マナを集めてくれ……』

「マナって……どうやって集めるの?」







『どうやってって……殺すんだよ、他のスピリットを……』











『……どう見ても、俺の方が軽い条件で……お前の方が酷な条件だけど――』











『……それでもいいなら、契約してくれないか?』

「うん、契約する♪」



アオは迷うことなく……二つ返事で了承した。






口約束の契約……なんの意味の無い儀式――



他人から見れば……本当に意味の無い儀式であり、意味の無い契約だ。






でも……



俺とアオにとっては……本当の契約だ――



――そう……俺達は、ここから初めるんだ。










『契約は完了だな……そして、初めに俺がお前に教えるのは――』






『気功術だ――』













 アオは、地面に座って……地面に刺した俺と対座している。



『気功ってのは、『氣』っていうエネルギーを練り上げて使う技なんだ――』

『自分の体を元気にさせるとか、己の身を守るとか……まあ、そんな感じだ』

「……キって、マナなの??」

『どちらかと言うと、オーラに近いかもな……』



「おーら?」

『……あれ?』







――まただ……また知らない知識が頭の中に有る――







「雫??」

『――ああ、っと……オーラだったよな』



『オーラってのはな、オーラフォトンと呼ばれるマナ……つまり、高純度のマナの事だ』

『大気のマナに含まれている不純物を分解し、圧縮して強力なマナになるんだ』

『氣とオーラの部分はこの辺が似ている』

『氣も身体に宿るエネルギーを圧縮して、身体に張り巡らせるからな』

「???」

『要約すると、マナより強いマナの事をオーラっていうの』

「……そっか♪」



『話が脱線したな……まず、氣の運び方を覚えてもらう』

『これが出来なければ、気功術なんて出きるわけが無い』

「どうやって運ぶの?」

『そうだな……身体を動かすときに意識しながら動かせ』

「――?? 意識してって、どうやるの?」

『えーっとな……普段感じていない感覚を感じ取れ、つーか……筋肉の動きを感じろ、つーか……ぅぅっと――』



なんていえばいいんだろう?

講習のとき……先生はなんて言ってたっけ?



『身体の構造を意識しながら体操してみろ?』

「……なんで私に聞くの?」



――ごもっとも……つーか、アオに突っ込まれましたよ?



『――とにかく、そんな感じで全身を動かせ』

「は〜い♪」







アオは腕を曲げたり伸ばしたり、足を伸ばしたり曲げたりと……そんな運動をしている。



『……懐かしいな』

「――?」

運動をしながら、アオは俺のほうに顔を向ける。



『俺もさ……昔にそんな事やっていたなって』

「キコウジュツって……どんな技なの?」

『どんな技って……沢山有るぞ?』

「沢山有るんだ」

『全部に共通して言えるのは……自己防衛に特化しているんだ』

『自分の身体を固くして攻撃力や防御力を上げる技とか、身体を軽くする技とかな』

「……こう、ナナルゥお姉ちゃんみたい……ドカ〜ンって技じゃ無いの?」

『これは人を殺す技じゃない……言ったろ、自己防衛に特化した技だって』

「そうなんだ……」

『障壁も張れないし魔法も使えない……そんな俺達にとって、うってつけの技だって思わないか?』

「そうだね……」



納得したように、再び運動に入るアオ……



マナの流れを観察しながら、アオの様子を見守る。

こんな能力で氣の流れを観察できるとは思ってないけど……

変化ぐらいは見つけることが出来るかもしれない。



そんな思いを胸にしながら見守っていると……変化が見えた――







大気のマナが、アオの動きに合わせて微量ながらアオに吸収されている――



吸収されたマナ(空気)は、辛うじて確認できる程の濃い色となって放出(吐き出され)ている――



そう……マナの不純物さえ取れていないが……確実に圧縮しているのだ――







『…………えっと……ん?』



ちょっと待て……

スピリットを構成しているのは……確かマナだ。



『氣』は、体内に宿るエネルギーを利用する技で……

アオが氣を扱うというのは、マナを扱うという意味では無いのか?



となると、アオの場合……『マナ=氣』という方程式が成り立つ。







即ち、アオは氣を動かすという過程をクリアし――



――氣を集中させるという過程をもクリアしているという事ではないだろうか?







異常だ……これは有り得ない異常だ――







『才能が有る』という言葉では生易しい――



しいて言うなら、天才という文字の一歩上を行く――







『化け物……』







無意識に、そんな言葉が漏れた――



自分でも解る……俺がアオに嫉妬しているという事実に――



血の滲むような思い……までは行かなくとも、かなり苦労して習得した技――



年単位の時間を掛けて、やっとコツを掴めた技――



――でも、コイツは……既にコツを掴み始めている――



恐らく……数ヶ月も経たない内に、俺の知っている技を習得するだろうという予感がある――







「雫……本当にこれでいいの?」

『あのな……今行ってる運動は「精神を集中する」「意を用いて意を練る」「気をめぐらして気を練る」という理がある』

『解りやすく言うと……意が到達すれば気が到達し、気が到達すれば勁が到達する訳だ』

「ぅ〜〜」



『意識による運動は、内に内気の活動過程をかくし、外には神態と外気の躍動を現す。
 ――即ち……内気は内より外に発し、また外より内へと収めることもできるんだ』

「う゛〜〜〜」







訳解らないだろ?



俺だって、習得してやっと納得した詩だ。



初めて言って、解られたら……それこそ俺が困る……色んな意味で!!







『早い話、一夕一朝で習得できる筈無いんだよ! みんなの役に立ちたいと思ったら我慢してやりやがれ!』

「――うん……解った」

疑問を浮かべる顔をしながら、再びゆっくりと身体を動かすアオ――



『それより、何か感じるとか……そんな変化とかあるか?』

「――んっとね、身体の中に何かが流れてるの」

『……………全身に?』

「――うん」







――それが、氣の流れだ。



俺が氣の流れを感じ取るまで、数ヶ月以上の時間を費やしたのに対し――



――コイツは、ものの10分で感じ取っている。







『……その流れを自由に変えたり出きるか?』

「止める事ならできる……かも?」

『もう、氣の流れを操れるんだ……へぇ〜〜…………』







――俺の中でナニカがボロボロと崩れていく――







『……くそが……』

「――?? 雫、なんか言った?」

『言ってねえよ!!』

「……なんか怒ってるし……」

『うっせ、その運動を一日中してやがれ!!』

「――ずっとするの!?」

『あたりまえだ!! 才能が有ろうが無かろうが基本が大事なんだ!!』

「え〜〜、他にやる事とか無いのぉ!?」

『無い!!』







――認めない! 認めたく無い!!







俺……才能が有るって言われたのに……



才能有る奴が3年以上かけて習得した技を1ヶ月以内でクリアしそうな奴――







――絶対に認めないからな!!







あとがき



 契約に関しましては、ただの口約束です。
これでアオの能力が上昇するなんて現象はありません。

 補足として、オーラフォトンの説明はBBS2のオーラフォトン考察+私の推測による産物です。

皆さんの意見を聞いて、この物語中のオーラフォトン設定は
『大気のマナに含まれている不純物を分解し、圧縮して強力なマナになる』
そのマナに指向性を持たせたりしてオーラフォトンの魔法を放つ……みたいな感じになっております。


なお……今現在の悠人達は、エルスサーオからリーザリオ間で戦闘中♪



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