永遠のアセリア
―The 『Human』 of Eternity Sword―
永遠神剣になっちゃった
Chapter 4 始まりの戦
第1節 『導かれる真実』
鳥の声が囀る中……アオは幸せそうな顔で寝ている――
昨日の寂しそうな顔が嘘のようだ。
『……アオ、起きろよ』
「……あと、もうちょっと……」
『今日から、お前を起こしてくれる奴は誰も居ないんだぞ?』
「……雫……うるさい……」
ポイっとベットから投げ出された俺――
『……お前……アウルに殺されるぞ――』
「zzz……」
――って、聞いてねぇし……
……まあ、お前がそのつもりなら……俺にも考えがある――
『先に言っておくけど、後悔しても知らないからな!』
「zzz……うぅん…………」
いい度胸じゃねえか、コラ……
俺は心の邪念を追い払い、神に向って祈りを捧げる。
――訓練が始まるまでの1時間の間……アオが『起きません』ように――
「zzz……」
要約すると、俺を投げ落としたアオに天誅を♪
――55分後――
「――なんで起こしてくれなかったのさ!?」
『だってぇ、必至に起こしたけどさぁ……起きてくれなかったんだもん』
「――嘘! 絶対に嘘だぁ!!」
『つーか、昨日の晩あたりに寝て寝坊するってどうよ?』
ちなみに、今回のアオの睡眠時間は12時間以上……
「私だって知らないよぅ!!」
『寝癖も直さないで……アウルの奴、なんて言うんだろうな♪』
「ぅぅ……雫のバカァ!!」
アオが起きたのは、今から5分前……俺的には一時間ぐらい寝過ごして欲しかったが……
俺に時間を聞いたアオは……そりゃあもう、洒落にならないぐらい驚いた表情で飛び起きて速攻で第2詰め所を出た。
――で、現在に到る……まあ、面白いモノが見れたから良いけど♪
訓練所に到着する頃、アウルは既に到着していた。
「………………………………」
「はぁ、はぁ……ち、遅刻ですか?」
「…………いや…………ギリギリだが………………」
「――??」
まあ、アウルの気持ちも解らんでもない……
アオの髪が見事に地面と平行に立ってるから――
酷い時は、垂直に立っている時もある……
「とりあえずだ……その寝癖を直して来い――むしろ直せ……これは命令だ……」
「あ、はい♪」
なんか平和だ…………
俺を置いて、水筒とタオルを持って室内に駆け込むアオ……
「……普通、あそこまで似るか?」
『――??』
「なあ、神剣『雫』……人は、スピリットに生まれ変われるものなのか?」
『……はぁ!?』
「……って、何を言ってんだろうな」
――お疲れですか? アウルさん?
この世界にリポビタンD等の栄養ドリンク剤があったら、ソレを飲む事をお勧めする――
アウルが空を見ながらぼんやりしてること数十分……何時もの髪型に戻ったアオがやって来た。
「おまたせしました♪」
「……じゃあ、始めるか……」
アウルは、ポケットからメモ帳を取り出した。
「初めにお前の状態を聞く」
「そして、最適と思える訓練メニューを与えるから……正直に答えろよ」
「まず、ハイロゥが展開できないそうだが……無意識の内に展開した事はあるか?」
「ありません」
「そうか――」
アウルはメモ帳に、何か書き加えている。
「展開できそうとか、そういう感覚はあるのか?」
「えっと、雫?」
『――俺が解る筈ねえだろうが!』
「……ない、です……」
「ふむ――」
「展開の仕方とか、他のスピリットには聞いたのか?」
「はい……でも、教えれないって言ってました」
「感覚的な事だからかもしれんな……なるほど――」
「神剣の力は開放できるのか?」
「できません……」
「……危機的状況になれば、神剣魔法が扱えるそうだな」
「は、はい」
「そして、その後は疲労のために倒れると?」
「そうです……」
「そうか、神剣の力を引き出せていないという事は無さそうだ……いや、しかし――」
ブツブツと独り言を言っているアウル……
「まてよ、力の制御が出来ないと仮定すると……ふむ……」
何かを閃いたように、メモ帳のページをパラパラとめくり、何かを書き始めているアウル……
「そういえば、ニムントール・グリーンスピリットとハリオン・ブラックスピリットから聞いた報告なのだが――」
「――?」
「お前とファーレーン・ブラックスピリットが瀕死となった時、
神剣『雫』が神剣魔法を使ったと言っていたが、事実なのか?」
「――そうなの?」
そんな事も有ったな……
でも、あれは……どうなんだろう……
自力なのか……それとも、『曙光』と『失望』の力なのか――
『正直な話、解らない……でも、神剣魔法じゃない事は確かだ』
「違うって言っています」
「そうか……」
数分間、アウルが考え込んで……口を開いた――
「推測だが――」
「お前が神剣の力の引き出し方を習得してないか、
神剣『雫』の神剣魔法が強力すぎるため、神剣『雫』が意図的……又は無意識に力を封印しているか?」
「……どちらにせよ、原因はお前か、神剣『雫』に有るという事だ」
「『…………』」
――多分……俺の所為だと思う。
大体は解ってるんだ。
あの魔方陣や障壁は……マナで編まれた一種の方程式なのだと――
いわば数学みたいなものだ。
頭の良い神剣は高度な方程式を独自に組み立て、強力な魔法を使え――
頭の悪い神剣は基本ぐらいしか使えないのだと……
俺は、その基本すら知らない……
「あの……神剣魔法って……そもそも何なんですか?」
「――知らん、俺は人間で……神剣なぞ握った事も無い……」
「ぁぅ……」
「だが、そういえば……昔、奴が言ってたな……」
「やつ??」
「神剣とスピリットの関係を熱心に調べてた科学者だ――」
「主に研究していた課題は『神剣とスピリットが一緒に生まれるのは何故か?』」
「奴が立てた仮説は、スピリットと神剣が同時に生まれるのではなく……神剣が先に生まれるそうだ」
「身体を持たない神剣は、自分のマナを分裂させ自由に動ける身体を……つまり、分身を作る」
「その分身がスピリットという仮説だ」
「この仮説を当てはめると、スピリットと神剣は同一な存在だから神剣魔法を駆使できる事も納得できる」
『……アオは魔法を使えないのは、俺達が別人だからか?』
「――??」
一人……会話について行けない奴がいる――
『――通訳、行け!!』
「えっとぉ……私が使えないのは『雫』と別人だから?」
「……それは違うな……」
「神剣には『契約』という能力がある」
「伝承では、力を与える代わりに代償を……ソレと同等の価値の有るモノを与えなくてはならない――って、まてよ……」
「お前たちが『契約』していない……もしくは、お前が神剣『雫』に等価を支払っていないとしたら――」
『――あ!?』
契約していない……それも納得できるし、アオが俺に等価を払っていないという点も納得できる。
「お前が使う神剣魔法、契約してないとして……無理矢理に神剣『雫』の力を引き出し、その代償として疲労が限界を超えるのなら――」
『ちょっと待て、俺は……あんな能力なんて知らな――――』
……くも無いかも知れない。
『時神一族』って……そもそも何だった?
『時を操る力を持った一族』じゃ無かったっけ?
――神剣になった事で……その能力が開花したとしたら?
――アウルの仮説が最も正しいと思える。
それに、ハイロゥが展開できない理由も……契約してないからの一言で片付けれる。
「…………納得がいった」
『そういう……事だったのね……』
「――??」
――結局のところ……
俺達は、『契約』すらしていなかったという事か?
原因が解れば、後は簡単だ……
「アオ・ブルースピリット、神剣『雫』と契約しろ……それで全てが収まる」
「……えっと、どうやってですか?」
「神剣『雫』に任せればいい……」
――俺っすか!?
「雫、お願い♪」
『……………………』
――解りません……って言ったほうが良いのかな?
でも、それは……あまりにも格好悪くないか?
「……♪」
そんな期待に満ちた目で見ないで……
心が痛むから――
『………………………………』
……言うしかない……
解らない事は……解らないから――
『…………ません……』
「――?? どうしたの♪」
『解り、ません――つーかぁ…………んな方法知るかあああぁぁぁ!!』
「――ひぅ!?」
ポテ……っと、頭を抑えながら倒れるアオ……
――逆ギレ……
やられると、一番むかつくが……有効な逃げ手でもある。
「アオ・ブルースピリット……どうした!?」
「あ、頭が……き、キーンって……」
「――それは……契約できたという事なのか?」
「……雫が……契約の方法が解らないって……言ってました――」
「――なんだとぉ!?」
――そう、結局のところ……
俺が一番……アオの脚を引っ張っているのだ――