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永遠のアセリア
―The 『Human』 of Eternity Sword―


永遠神剣になっちゃった



Chapter 3  ラキオスの訪問者

第1節 『ヨフアル娘の怪、再降臨!?』



 






 サードガラハムが倒されて一週間半が経つ……

バーンライト王国との開戦が近いためか、午前中の講義が潰れ、一日中戦闘訓練をする日も少なくない。





そんな日の訓練終了時……アオが体を休めていると、メイドの姉ちゃんがこちらにやってきた。



「エスペリアお姉ちゃん?」

「アオ、アウル様から伝言を受けました。至急ラキオス城にある衛兵隊・隊長室に来て欲しいと……」



「……アウル様が?」

「ええ、重大な話だそうです……」







「なんだろ……」

『行けば解るだろう?』

「――そだね、それじゃ行ってきます♪」






























――今思えば、そこで気が付けば良かった――















――俺とアオは、衛兵隊・隊長室(アウルの部屋)の場所を知らないということに――




























『――で、どうすんだよ?』

「どうしよう……」











適当に歩いて誰かに聞けば解るだろうと安心していたのが20分前……







白の兵士に聞いても、冷たい眼で無視され……更に、いくら歩いても変わらない廊下の景色に不安を覚えたのが10分前……







やたら長くて、来た道を忘れたのが5分前……







あの時、メイドの姉ちゃんに道を聞いておくんだったと後悔し始めたのが現在――















『至急……とかいってたよな?』

「……ううぅ」



『規律に厳しいあいつのことだ……長時間の説教確実だな……きっと……』

「ふええぇぇ……」





まあ、泣きたい気持ちも解る……



過去一回……つっても、あのガラハムの洞窟で一日を過ごし行方不明として扱われた青ガキ3人組みは、アウルの説教をくらったのだ。







長々と事情を聞き出されてはネチネチと小言で攻められる……







それを半日……立ちっぱなしでアウルの小言を聞きていた。



――そして、説教が終わってアウルが退室したときには、青ガキ三人組みの口からエクトプラズムが出ていた。











――あれはもう……トラウマに近いだろう……











「どうじよう……」

『下手な鉄砲、数撃ちゃ当たるって言うし……とりあえず聞きまくれ!』













――その後、すれ違う人々に聞きまくった結果……





やけに優しい兄ちゃんに道を教えてもらい、アウルの部屋の前までたどり着いた――



























恐る恐る扉をノックするアオ……





「……誰だ?」

かなり不機嫌なアウルの声が聞こえた。





「あ、ああ、あの……アオ・ブルースピリットです」

「やっと、来たか……入れ」





扉を慎重に開けるアオ……アウルはムスッっとしたまま椅子に座っている――

「一応聞いておく……エスペリアからの伝言を何分前に聞いた?」

「え、えと……30分ぐらい……前、です」



「――で、その30分の間……何をしていた?」

「――迷って、ました」











その言葉を聞いたアウルは、ため息をつき……











「……まあ、いいだろう」

「お前が城に来たことが無い事実を踏まえて、道案内しなかったエスペリア・グリーンスピリットに非がある」



ほっ……と安心するアオ



「まあそんな事より……バーンライト王国への戦線布告の日程が明後日に決まった」

「――そのため、ラキオス作戦執行部より発案された今後の方針を発表する」





「ラセリオ−バーンライト首都『サモドア』を結ぶ道が解放された場合を想定し、
 敵主力が放たれても対応できる判断力に優れたスピリットを――」

「――即ち、セリア・ブルースピリットとナナルゥ・レッドスピリットを独立部隊とし、ラセリオの警護を任せる事が決定し――」









「――お前を除く他の者は、
 エトランジェ……『求め』のユートが率いるバーンライト王国攻略部隊として編成されることになる」















「……………………え?」















「解りやすく言ってやろうか? お前はバーンライト攻略戦は不参加と決定されたのだ――」















「理由は、解るか?」

「……私が……足手纏いだから?」





「その通り……お前は他の者と比べて、未熟過ぎだ」

「戦場に出ても、他の者の足を引っ張ることは間違い無い――訓練士全員も戦場に出すべきではないと満場一致の意見も出た」

「よって、アオ・ブルースピリット……お前はラキオスで特別訓練を受けてもらう」



「…………特別訓練?」

「この国のスピリットは、育成所の教習過程を終えてから配属される」

「だが、お前はその育成所の課程を受けていない。まあ、お前のデータを取るためには仕方が無いことだったんだが……」

「それが裏目に出たと判断した訓練士は、最低の教習事項を教えるべきだと言い出してな……」

「だが、現在のラキオスの訓練士はバーンライト王国攻略部隊のサポートに参加するので誰も居なくなる……」

「よって、訓練士の経歴がある俺が……お前の訓練を見ることになった」





「訓練日程は、宣戦布告を仕掛けた翌日からだ」

「朝、午前の訓練が始まる時間に訓練所で待っていれば良い……解ったか?」



「――はい……」







「――話は以上だ、帰っていいぞ……」

アオが退室しようと扉を開けたとき、アウルが忘れていたように言葉を紡ぐ――







「――遅かれ早かれ、スピリットであるお前が戦争に巻きこまれるのは確実だ」

「死にたくなかったら、最低でも覚悟だけは決めておけ」





「…………………………」



アオは、何も答えずに扉を閉めた――



























アオは沈んだ顔で廊下を歩いている。






――まあ、正面から堂々と『足手纏い』と言われたら……それも仕方がないと思う――






『まあ、なんだ……良かったな、バーンライト攻略戦に参加できなくて……』



「なんで?」



拗ねたような顔で、アオは尋ねる。



『なんでって、殺し合いの場には立たないほうが良いに決まってるだろうが……』

「……どうして?」



『あのな……戦争ってのが起これば、間違い無く命の奪い合いになるんだ』

『例えばネリシア姉妹とか、ヘリオンのガキとか……お前と仲が良い奴等が傷つけられたら、どう思う?』

「……悲しい」



『んで、その傷つけた奴がお前の目の前に現れたら?』

「……許せない」

『そう……親しい者が傷つけられて、怒りを感じない奴なんて……たぶん居ない』

『きっと、誰もが同じなんだ……』



『お前が殺したスピリット達の親しい関係にあった奴は、悲しんだり怒りを感じたりしてるだろうよ』

「あ……」









こいつは、他人の気持ちを自分の事のように思える奴だ。





俺が言わなくても、人を殺すことは悪いことと……そう遠くない内に自分から気が付ける奴だと思う。











でも、それは俺の世界の常識であって……この世界は違う――





――戦わなければ存在する価値が無い世界なのだ。











――何より、戦争という存在の前では……殺すという行為に、良いも悪いも無い――











『なあ、アオ……人を殺すって、どういう意味だと思う?』

「…………わかんない、でも……いけない事だと思う……」

『俺もここに来る前はそう思っていたよ……』







『俺が居た世界でな……こんな言葉があったんだ――』











『――命を奪う行為をする者は、命を奪われても文句は言えない――』











『その言葉を借りるのなら……』



『命を奪う行為をしてるけど、命を奪われる覚悟が出来てない事こそ……いけない事なんだ』







「覚悟が出来ていたら……殺しても良いの?」

『いや……覚悟があっても、無意味に殺す事は罪だ』





「雫、言ってる意味がわかんない……」

『今は解らなくてもいい……でも、これだけは覚えておいたほうが良い』













『相手の事情を考えず、ひたすらに生きろ……他人より自分を大事に考えてくれ――』

















 命を奪うことの意味――今更ながら、綺麗事だと思う。













「……………………」


『……まだ納得できてないって顔だな』

「……うん」














平和な国でのほほんと暮らしていた奴が……自分の想像を膨らませて出した答えなぞ――


――チグハグだらけで説得力なんて微塵も無い。


















『いま俺の言ったことは忘れても良い……俺が今まで生きた中の結論だ』
















――でも、それでも……









――意味を知らなくても、綺麗事でも、想像の産物でも









――考えた事は無駄には成らない筈だと思う。



















『俺とお前は違う……お前が自分で考えた結果が正しいと思って納得したら、それで良いんだ』







――そう、自分で悩んで悩みまくって……それで納得した答えなら





――たとえ答えが間違っていたとしても





















己の力になってくれるのは間違いないんだから――























『どうせ今回の戦争には参加しないんだ……だから時間の許す限り悩め』











――だからアオ……お前も悩みまくれ――





























「…………雫……」

『……ん?』

「なんで、戦争って起きてるの?」



『そりゃあ、この国とバーンライトって国の仲が悪いからだろうな……』

「……仲直り……しないのかな?」



――仲直り、ね……



『まあ、無理だと思うぞ……』

『いいか、戦争を行う大半の理由は略奪目的なんだ』

『話し合いで手に入れれないモノが欲しいから、戦争を吹っ掛ける……それだけだろ』



「…………よく、解らないよ」

『解らなくていいんだよ……俺だって、よく解らん』






――解らないといえば、この世界の矛盾もそうだ――



考えれば考えるほど変なのだ。















スピリットと人間……力の差は圧倒的なのに、なぜ人を殺せないのか?





スピリットはどんな風に生まれているのか……なぜ奴隷という立場で使役されているのか?















日が経つごとに、謎が深まっていく疑問――





――まるでメビウスリングの様に、不可解な謎だ。



















「あれ……」



そんなことを考えながら廊下を歩いていると、誰かが黄昏るように窓の外の空を見ていた。

ラキオスの王女……確か、レスティーナだったか?







なんというか、憂鬱そうな表情が絵になっている――





「……綺麗だね、雫――」

『何処が、ただのブルジョワ娘じゃねえか……』

「ぶるじょわ??」

『成金……ただの金持ちって意味だ!』

「レスティーナ様は、おうじょ様だよ……」







『――違う!! それは違うぞ、アオ!!』







『――知ってるか? ああいう人種はな、朝昼晩の食事は無駄に豪華で
 一人で食いきれないような食事が並べられてるんだ……きっと――』

『しかも、あの体系から、絶対に小食だ!』





『出された料理を一口づつ食べて腹八分目でやめているんだ!
 そして、『食べ残された食事』や『手も付けられなかった食事』達は……きっと無念を背負って捨てられている』


















――許すまじ! ブルジョワめ!!























――料理達が悪霊として化けて出ないのが不思議だ――















白米と塩だけのご飯を1ヶ月ぐらい食ってみやがれコンチクショウ!!

そこらの具無しオニギリと同じくらい美味しいんだぞ!!













『しかもなんだ……あの有り得ない胸の大きさは?』

『どこぞのヨワフル娘と同じ大きさじゃ……………』

























――あれ??











そこまで言って、気がついた――























――(バスト)(ウェスト)(ヒップ) ……全てのサイズが、あの娘と一致していた――























――即ち……











ブルジョワ王女=ヨフアル娘























「どうしたの、雫?」

『……いや、あの王女さんって……ヨフアル娘なんじゃ……』



「……そうなの?」

『よく見たら、目の色や髪の色も同じだし……あの胸のサイズは世界に一人しか居ないだろうに……』







ブルジョワ娘こと、ヨフアル王女はこちらに気がつき――



「あら、貴方は……アオ・ブルースピリットですね?」



優雅に振舞っているヨフアル王女……

――本性を知っているために、なんかギャップの差が笑える……







「えっと、王女様……あの時、ありがとうございます♪」

「あの、とき??」

「えっと、公園で……ヨフアルを――」





瞬間、王女は誘拐犯の如く――



――有無も言わさずアオの手を引き、適当な部屋の中に入り込んだ――











「な、なんで……解ったんですか!?」





何処かの書斎を思わせる部屋で、王女は一人焦っていた――









「……えっと……」



















「胸の小ささで――」

















瞬間、世界が凍った――









『……ぉぃ……』

この馬鹿……それは禁句(タブー)だ――













――まあ、そう言うとは予想してたけど……



























「――って、雫が言ってました」













なるほど、そう来ましたか……



























『――じゃなくてぇぇ!』









つーか、そう来るんじゃないかって……ちょっとは予想してたけどぉ!?

――他の特徴は!? 他の身体的特徴も言っただろぉ!



















「……そう、面白い事を言う神剣ですね――」

――顔は笑っていたが、地獄から響くような声が恐怖を煽っていた。











『――あわわわわ……』

改めて、王族という存在を認識する――

























さすが一国を背負う一族――
















――威圧感が伊達じゃない!


























――つーか、怖いんですけど……


























「とりあえず、その神剣をエーテル変換施設のコアとして技術部門に送りましょうか♪」

指をワキワキさせながら、アオに近づく王女様……







その視線は、俺を捕らえて離さない――







『アオさん、一生のお願いです……助けて下さい……』

エーテル変換施設という施設がどんなところかは知らない。

――でも、あの王女の顔を見れば……俺にとって、絶対マトモな場所じゃないって理解できる。







「……王女様……雫が泣きながら、ごめんなさいって言ってます……」



「そう、まあいいでしょう……」

悪戯が成功したと……そんな顔で微笑む。







「次に不謹慎な発言をしたら……その時は覚悟してくださいって、伝えてくださいね♪」





顔は笑っていたが……視線が洒落にならないほど冷たかった――







「……だって、雫……」

『わ、解ったよ……』











――っキショウ、このナイチチ王女が……いい気になりやがって……























「……アオ……なにか言いましたか?」

「?? 言ってないよ」

「なら良いのです」





『………………………』

――エスパーだ……この人、絶対エスパーだよ……











部屋から出ようと扉を開けようとした王女が、何かを思い出すようにアオに問い掛ける


「そういえば……貴方、これからの予定はありますか?」

「……無いですよ?」











「――では、ちょっと私に付き合ってくれませんか?」















城の最上階にある一室……





王女はその部屋の扉をノックし――



「カオリ、オルファ……入りますよ?」



扉を開くと、見覚えのある学生服を着た少女とオルファのガキが居た――














あとがき



なんとか更新日まで間に合いました♪
戦争の理由、人を殺す意味……それを重点として書いたつもりです。

 補足として、『やけに優しい兄ちゃん』とは、妖精趣味を持った城の兵士です。

 自分なりに考えた考察なんですが……妖精趣味を持った人の割合は結構居ると思われます。

だって、スピをダッチワイフ目的に売る商人とか居るみたいだし……
スピの容姿は、殆どが美人に入るそうですし……

――何より、種族を超えた恋愛って……萌えませんか?(ぉぃ


 スピが世間に嫌われている理由は、スピより容姿が劣っている女性のジェラシーから始まり
それが偶然で妖精趣味=最悪の性癖と広がり……みたいな感じで♪

まあ、そんなこんなで城に居る兵士の6割は妖精趣味と判断しました!
――でも、世間の目を気にするチキン野郎ばっかりなんです!!


 次回は佳織と雫のハイペリアに関するお話がメインとなるのかな?
2ヶ国語で書こうかどうか悩んでる今日この頃……



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