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永遠のアセリア
―The 『Human』 of Eternity Sword―


永遠神剣になっちゃった



a Prologue  出会い

第0節 『夢とは抑圧された願望を――』



 






 朦朧としていた意識が徐々に活性化する。


まだ目覚ましが鳴っていないというのに意識が覚醒するだなんて、月に一度有るか無いかのレベルだろう……


さあ、起きろ……起きるんだ、俺……


あの退屈な日々を過ごすのだ……











――でも、まだ眠いんです……











つーか、昨日このパターンで遅刻した……


2日連続で遅刻したら……今度こそ店長にお仕置きされる……


――解雇(クビ)……という名のお仕置きが……





だから、起きなければ――



















『………………あ゛?』



 目が覚めて、初めに感じたのは疑問……





まず、何も見えない……



――でも、感じる。

半径10mの空間に何があるのか、どんな地形なのかが判る。


視界に例えると、360度の情報が手に取るようにわかる。

――でも、見えない。




判るんだけど、見えない。


体を動かそうとしても、何一つ動かない。





判るのは、森の中、寝息をしている幼い青髪の幼女に抱きかかえられていることだけ。


――裸で! 裸で!! 裸でですよ!!

 しかも容姿は◎、顔もすごく整ってて、こんな美人、いや、美少女はまず見たことない。





――見えないんだけどな――






ロリ趣味じゃなくても、こんな美少女に裸で抱きかかえられてたら心臓がドキドキとするはずなのに、体温が上がるはずなのに……






その変化さえ感じない。

どうなっちまったんだ、俺の身体……








 考え込むこと10分……いや、実際はもっと長かったのかもしれないが、俺はある結論に達した。











もしかしなくても、これは……夢か!

けど、確かめようにも体は動かないし……むしろ、夢だな。うん、間違いない。



 それにしても久しぶりに夢の中でこれは夢だって判る夢を見たな。

不満があるとすれば、せめて身動きを取れる夢が見たかった。








――そして、自分がロリに興味ある事を自覚させられたことが鬱――








――せめてボインボインの姉ちゃんを……








しかし、悔やんでも、見てしまった事は仕方が無い。

ま、夢から覚めるまで気長に待とうか……













――そんなこんなで2時間後――













『なんだ、この夢は!? 暇にも程があるわ!!』


 暇と感じる夢なんて聞いたこともねえぞ、ちきしょう!

俺は、こんなガキンチョの身体を何時間も舐めまわしたいという願望は絶対無いはずだ!!


断言できる! 断言できるぞ!! 断言……できる――

――けど、そういえば昨日……




『夢とは、過去の整理、『抑圧された願望』を開放するための手段として――』




 俺は……ロリ好きなのか? たしかに、顔が可愛ければ胸がAでも構わないと自覚していたが……






実は幼稚園児並のロリが大好きだったのですか〜〜〜〜!?





















――訂正……顔が良くても、最低Bは欲しいと思ってる――


Aなんぞ誰が好むか!! ――って、いやいや、落ち着け……問題はそこじゃねえ!!








自分の無意識な願望が自覚させられる夢、否、自分の好みが自分に否定される夢……

『つーか、これは夢じゃなく拷問だ〜……』



 泣き喚いていると、俺を抱いていた少女が目を覚ました。





抱いていた俺をまじまじと見て……

「えっと、あなたは誰?」

 ……と俺に話し掛けてきた。


『え、えっと……雫』

 寝顔も可愛かったが、普段の顔も見とれるほど美しかった。


――でも、A……もったいないけど、サイズはA……しかもガキンチョ……





「階位は?」

『かいい??』

「貴方、永遠神剣でしょ?」

『えいえんしんけん??』

 永遠親権?永遠新券?……永遠真剣――真剣!?


 自分の状態を把握したくなかったので無視していたが、改めて己に関する情報を調べる――


うん、剣だ……どっから見ても剣だ……いわば日本刀。刃渡り1m弱……
そっか、日本刀になった夢を見てたのか。あはははは……





…………ごめん、笑えねぇ…………






『あのな、ガキンチョ……俺は普通の人間でしたって言ったら…信じるか?』

「普通の人間だったの?」

『いや、思い返してみれば、かなり特殊な部類に入ってたな』

 妖怪退治とか、妖怪退治とか、妖怪退治とか……


「とりあえず、階位は?」

『階位って、順位の事だよな?』

「うん」

『そうだなぁ……大雑把でよければ……』

「いいよ」


『俺の実家は『時神』っていってな、日本では有名な退魔一族『倉橋』『神木』『神咲』に劣らない程の実力を持った一族だったらしい』

『その中で一番の権限があるのは『倉橋』でな、俺の一族はその分家なんだって』

「??」

少女の顔は、段々難しい顔に変化していく。


『普通、判んないよな……話が長くなるから纏めると、権力順では第4位だ』

「4位の神剣なの?」

『退魔グループの場合な!』

「そっか、4位の神剣か」

何が違うか判んないが、コイツ、絶対勘違いしてるぞ。勘だけど……





「……私の名前は?」

『ああん!?』

いきなり突拍子の無い質問が来た。


「私、生まれたばかりだから……」

『生まれたばかり?? どう見ても赤ん坊じゃなくてガキじゃねえか!!』

「ほんとうだもん!!」

プク〜っと頬を膨らませるのは微笑ましいモノがあるが……

『あ〜、ま〜、もうどうでもいいや……』

「??」

 所詮は夢だ……適当に流せ、俺!


『名前だな、名前……』

めんどくせ〜、つーか、自分で考えねえのかよ……

『あれだ、おまえの名前は青、決定』

「アオ?」

『そう、髪が青いから青。うむ、我ながらナイスネーミング♪』

「アオ……アオ……」


 なんか、目を閉じて呟いてるんですけど……

自分で言ってなんだが、安直過ぎだよな。

ちょっと罪悪感が……


『あの、嫌ならもちょっといい名前を……』

「ううん、アオ……良い名前かも……」

気に入ったんかい!!


「……で?」

『あん?』

「私、どうすればいいの?」

『知るか!! つーか、俺が聞きたい』

「うーん……」


腕を組んで考えるアオをよそに、気配を感じた。


『!――アオ、人が来る』


 人数は4人

一人は鎧を着た兵士のコスプレしている体格が良い男。

他は……全員女。

槍を持った緑髪のメイドさんと双剣型の剣を持ったショートカットの赤髪、あと西洋風の剣を持った青髪ポニー……

森の中にコスプレ集団なんぞ、なかなかにシュールな光景だ。――じゃなくて!!


『アオ、隠れろ!!』

……っと、アオの今現在の姿を思い出して、慌てて指示を飛ばす。


「え?」

何故隠れる必要があると言わんばかりの反応を示すアオ。

『裸はやばいだろう!』

「なんで?」

『常識だ!!!』



 だが、時はすでに遅し……


「スピリットか……」

 見つかった……

兵士が裸のアオを舐めまわすような視線を向けている

『この変態め!!』

「ブルースピリット? いや、ブラックスピリットか?」

『スピリット?? というか、お〜い、俺の声聞こえてますか〜〜?』

「まあいい、連れて行け!!」

『無視かい!?』

 兵士は、興味無さげに俺の視界から消えた。見えないんだけどな……


槍を持ったメイドさんが兵士がいなくなったのを確認し、アオに近づく……

「寒かったでしょ……はい、これ」

 そう言って、服を取り出してアオに渡した。

「えっと、どうやって着るの?」

 最近のガキは、服の着方も知らんのか?


「あらあら、じゃあ、お姉さんが着させてあげますよ〜」

 間延びした声……のほほんとした雰囲気で和むのは何故だろう?

服の柄は、後ろにいる2人と同じデザインだ

「ん〜〜、ブカブカですね〜、帰ったらちゃんと直さないといけないです〜」


 そこで、俺は違和感を覚えた。


『アオ、おかしくないか?』

「?? なにが?」

『やけに手馴れてるし、裸の人を見てもリアクションが無い。』

『もしかしたら誘拐犯かもしれん、気をつけろ……』


 忠告してやると、キョトンとした顔で、とんでもない事を言い放った。
















「お姉ちゃん達、誘拐犯なの?」
















ビキ!……っと場の空気が凍る


『アホかお前はぁ! 直接聞いてどうするよ!? 馬鹿正直な答えなんて返ってくるはず――』


「これって、誘拐に入る……わよね? セリア」

ショートカットの赤髪さんが気まずそうに呟く

「なに言ってるのよヒミカ! 保護よ、保護!!」

セリアと呼ばれたポニーの姉ちゃんは心外とばかりに否定した。


「だって、雫」

『……そっか、よく判ったよ。』


 このやり取りで、こいつらの性格がわかった気がする。

こいつ等、善人だ。

保護ね。よく考えりゃそうだ。

アオみたいに裸で、自称生まれたと言い張るやつが続出したら……







――そりゃあ保護も必要だよな。







変に考えた俺が悪うございました。




「なにイジケてるの?」

『うっさい、アホ子』

「?? 私はアオだよ」

『おまえなんてアホな子で十分だ!!』

「その名前、なんか嫌い」

 また、頬を膨らませて『私、怒ってます』という表現をしているが……
それでは覇気がマイナスに行ってる事を気づいているのだろうか?


『わかったよ、アホな子』

「む〜〜」


「え〜と、アオちゃん……だよね? 誰とお話してるのかな〜?」

メイドさんがニコやかに聞いてくる。

「雫とだよ」

そう言って、俺を持って指を示すとお姉さんが真面目な顔になり、後ろの二人も非常に驚いた顔をしている


「この神剣、自我を持っているというの!?」

ポニーの姉ちゃんが有り得ないと、俺を凝視する。

『そんなに見つめられると……恥ずかしいです』

「と〜、いうことは、高位の神剣でしょうね〜」

「……隊長に報告する必要があるわね」

……また無視かい。


『つーか、話が見えないんだが……』

「私も……」


ポニーの姉ちゃんがアオに手をさし伸ばす。

「とりあえず、一緒に行きましょう」

ポニーの姉ちゃんが微笑みながら言うと、アオもまた微笑で答え――


「うん♪」


――と、嬉しそうな返事したのだ。




つーか、なんでアオ以外の奴は無視する?














                 報告書


 昨夜、リクディウスの森に突如スピリットの反応が発見された。
 その正体を確かめるために、スピリット3名
ヒミカ=レッドスピリット・ハリオン=グリーンスピリット・セリア=ブルースピリットと共に問題の場所を捜索。

 神剣の気配を辿り、一人のスピリットを発見する。
反応は、生まれたばかりのスピリットからだった。
身体的特徴はブルースピリットだが、神剣はブラックスピリットが所有する神剣と特徴が一致。

 なお、スピリットの報告でその神剣は自我を持つことから高位の神剣であることが予想される。
すでに名前を付けられ、『アオ』と名乗っている。

 私論を述べさせててもらうならば、
このスピリットは変異種で、今までに無い特殊な例だと思う。
憶測だが、戦闘能力は他のスピリットとは違うと思われる。



                                      ラース警備隊・隊長
                                           バル=リシェルド


あとがき

 多少追加執筆しましたが、ぶっちゃけ内容は変わってません
他の話も似たようなものなので、既に内容をご存知の方はスルーしても問題ありません♪






<今話で出てきた用語>

神木(かみき):神を体内に宿す力を受け継ぐ一族。主に言霊を使った除霊を行っている。
       :しかし、ここ数百年、神を宿す能力を持った者が現れず、衰退している。

神咲(かんざき):倉橋とは別の意味で頂点に立つ一族。除霊方法は多々。
        :霊力のあるものを次々とスカウトしては成功を収めている。
        :それでも頂点に立てない理由は、神咲家はもはや一族ではなく組織として機能しているからである。
        :近々、脱退するという噂も有る。(とらいあんぐるハートの設定を流用)

倉橋(くらはし):時を見る力を受け継ぐ一族。主に式紙を使った除霊を行っている。
        :しかし、時を見る力は時代を重ねていくごとに廃退……もはや見れる人物は稀に生まれる程度
        :過去に戦巫女の伝説を残したのはあまりにも有名。退魔集団では頂点に立つ一族。

退魔集団(たいましゅうだん):幾つもの退魔師の家系が同盟を組んだ組織、現在三十家以上の同盟が居る。
              :主な活動は、新人教育、情報交換、取引、共同退魔活動ets……
              :幹部家は倉橋、神木、神咲、時神の四家である

時神(ときがみ):倉橋の分家で、時を操る力を持った一族。主に破魔弓を使った除霊を行っている。
        :神木と同じ理由で、衰退の道を辿っている。

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