作者のページに戻る

このお話はシリアスな展開は無いと思ってください。
多少キャラの人格がぶち壊れているところがあります。
そういったところを笑って済ませられる寛容な方だけこのSSをお読みください。
というか作者もキャラの性格をつかみきれて居ません。
「○○○○はこの何百倍も可愛いんだ!!」「こんなのうちの××××じゃない!!」という方がいらっしゃってもどうかご容赦ください。
あと、文章表現がほんの少し?際どい所もあります。 もしかしたら15禁くらい逝ってしまっているかもしれません。
そういったものが苦手な人もご注意ください。PC版アセリアをやった人なら大丈夫ですよね?


「はぁ〜…」

 しょぼん、という表現が一番しっくりくる表現で黒髪でちんまい少女が居間で椅子に座っている。
 彼女の名前はヘリオン。
 ラキオスでの数少ないブラックスピリットの一人で、そのちっささ、おどおどする仕草などで光陰のストライクゾーンど真ん中皆から愛される年少組の一人である。
 ブラックだからといって性格が暗い訳ではない彼女だが、今日はどういうわけかため息を連続でつきっぱなしだった。

「はぁ〜〜……」

 またため息。
 悠人が見たなら「そんなにため息をついたら幸せが逃げて行っちまうぞ」とでも言いそうな光景である。
 まぁ彼女が落ち込むのは、最近はもっぱらその悠人が原因のことが多いようなのだが。

「はぁぁ〜〜〜………」
「ね〜、どうしたの、ヘリオン?」
「の〜?」
「あ…ネリー、シアー……」

 そんなヘリオンに声をかけてきたのは同じく年少組のネリーとシアーである。
 この二人は姉妹を自称し、いつでも二人一緒に居る。
 そもそもスピリットに血縁関係などありはしないのだが、そんなことをものともしないほど二人は仲がよい。
 『静寂』という名に全く合わない活発さを持つネリー、『孤独』な時はほとんど無いシアー。
 神剣の名前に合わない性格を持つところがまさに姉妹といえるのかもしれない。

「さっきからため息ばっかりついちゃって〜。そんなんじゃユートさまに嫌われちゃうよ〜?」
「……うんうん」
「えぇぇぇぇっ!? そそそ、そんなぁっ!?」

 素直な反応である。
 こういうところがヘリオンが皆から愛される要因のひとつになっているのは間違いない。
 しかしヘリオンのあたふたはそこで止まってしまい、シアーのほうに視線が向く。
 そしてじっと見つめると、また「はぁぁ〜〜」とため息をついてしまった。

「……ヘリオン、ほんとにどうしたの?」
「どうしたの〜?」
「え、いえ、なんでもありませんよ?ただ…」

 再びシアーを―――正確にはある部分を―――見つめてヘリオンはポツリと呟く。

「シアーはいいなぁ……胸、大きくて」

 今思えばその言葉がどたばたの引き金になったのだろう。




恋する妖精達の悩み



がしゃーん。 ばたばたっ。 ぎゃーぎゃー。


「…はぁ、またケンカ? ネリー達ももっと落ち着きを持って欲しいわ…」
「あれ? でもオルファとはさっき別方向に分かれたはずよね?」

 見回りが終わり、第二詰め所に帰ってきたのはセリアとヒミカである。
 その二人をドアを開ける前に出迎えたのは、お帰りの言葉ではなく、最近お馴染みの子供の喧騒だった。

「つまりネリーとオルファ以外がケンカしてるってことか…。珍しいわね」
「珍しいのは良いけどとりあえず入らない?こうしていても仕方ないし」
「…そして私達がケンカを止める、と」
「よくあることでしょ? 私も手伝うから、頑張りましょ」

 子供達のケンカを止める役はその時によって変わる。
 一番仲裁が得意なのはやはりエスペリアだ。
 スピリット部隊の副隊長として規律に人一倍厳しい彼女だが、それもスピリットたちのことを誰よりも思っているからだと、彼女と付き合ったものなら誰でも分かる。
 第二詰め所でもケンカを止めるのは主にハリオンである。
 彼女のペースに一度巻き込まれてしまえば喧嘩できる者は存在しない。
 「ケンカはいけませんよ〜」の決め台詞ですべて終了だ。
 ファーレーンは少々押しが弱いのでこういう役は少ない。
 ナナルゥは除外。
 つまり第二詰め所での仲裁役としての順位は、

ハリオン>ヒミカ≧セリア>ファーレーン

 という具合である。

 というわけで今回はセリアとヒミカにお鉢が回ってきたと言う事だろう。
 先の言葉どおり、この二人がケンカの仲裁をするということも結構よくあることなのだ。

「でも、いったい誰が騒いでるのかしら?」
「さぁ……。 ニムが何か言ってネリーが突っかかってるとかじゃない?」
「どっちにしろ第一容疑者がネリーということに変わりは無い、か」

 思わず苦笑する二人。
 小型ながらも勢力の強い台風ネリー号。
 周囲に巻き起こす影響は時にレッドスピリットの神剣魔法にも匹敵します。

 とにかくこうしていても埒が明かない。
 二人は慣れ親しんだ家のドアをいつものように開けた。
 当然のことながら聞こえてくる声は大きくなる。
 その声にしたがって居間の方まで行くと、もう騒ぎ自体は収まりつつあるようだった。

「ネリーだってそんなにシアーと変わんないもん!」
「そ……そうなんですか?」
「…?」
「そうなのっ!!
 シアーもそこで悩まない!!」
「ご、ごめんなさいぃ〜〜」
「・・・ごめん」

 そこに居たのはネリー、シアー、ヘリオンと意外な組み合わせだった。
 彼女達が遊ぶために一緒に居ることは何度もあるが、言い合いに発展するのはネリーとオルファが主だ。

「ネリーはこれから大きくなるの!
 すぐにハリオンみたいな『ぐらまー』な女になってやるんだから!」

 言い合っている内容から察するに、自身のスタイルの話らしい。
 というより胸囲の話。
 発展途上の少女達のお決まりの話題といえよう。

「ハリオンさんの大きさはちょっと無理なんじゃぁ……。
 セリアさんやファーレーンさんくらいなら…」
「何言ってるのへリオン!夢を大きく持たないでどーするの!!」
「…おっきく」
「…夢なんですね……」
「ち、ちがう!そうじゃなくて……!目標……そう!目標よ!!」
「もくひょ〜」

 なんとも子供らしい、可愛らしい会話だ。
 少女達の会話にくすっと微笑を浮かべるセリア。
 そんなセリアの横で、ヒミカは複雑な表情を浮かべていた。

「ヒミカ?どうかした?」
「え?ううん、何も…」

 あいまいな笑みを浮かべて答えるヒミカ。
 そんなやり取りがされていると知らず、まだネリーたちの会話は続き、そして………

「でも、ヒミカは薄いよね〜〜♪」
「……ぺったんこ」

 あ。

「そ、そんなことは………」
「多分ネリーより小さいもん。もう成長しないだろうし〜〜」
「………えぐれ?」

 禁句が、放たれた。

 室内の温度が上がって下がった。
 矛盾した言い方だが事実である。
 具体的に言うとヒミカが『赤光』にまとわせた炎で室温が上がり、ヒミカの放つ殺気で感覚的に下がっていた。

「え!? ひ、………ヒミカさん?」
「あ゛」
「…あ」
「ちょっと、ヒミカ!」

 ようやく部屋の入り口にいるセリアとヒミカの存在に気づく三人。しかしもう遅すぎる。
 制止の声など今の彼女には聞こえない。聞こえないのだ。
 血涙を流しかねない程怒りに燃える様は、修羅と呼んでも差し支えない。
 そう……、彼女は今、地獄の業火よりも熱く、熱く燃えていた。

「ねぇりぃぃ〜、しあ〜ぁあ……」
「え、え〜っと」
「あわわ……」

「アンタ達の胸を切り落として私の胸にくっつけてあげるからそこになおりなさいっ!!!」

 正に慟哭。
 涙目でファイアエンチャントを繰り出そうとするヒミカは恐ろしいながらもちょっとらぶりーだった。

「ひいいっ! ヒミカさぁん、落ち着いてくださいよ〜!!」
「貴方が暴れてどうするのよ!!」
「セリアには分からないのよ!
 アタッカー担当が多いのは同じなのに、同じなのに……っ、服の上からでも膨らみがあるのがはっきり分かるセリアにはぁぁっ!!」

 何とかセリアとヘリオンの二人がかりで押さえ込むも、鬼と化したヒミカの暴走はとまらない。
 あたふたするブルー姉妹だったが、何とかフォローの言葉を紡ぐ。

「だ、だいじょーぶだよ、ヒミカは筋肉で胸が盛り上がってるから!」
「ネリー………逆効果」

 バニッシュ失敗!!


「うがぁぁあぁぁぁぁっっ!!!」


 ヒミカ、吼える。
 火に油と同意で、ヒミカに胸。新しい諺になりそうだった。
 荷物セリアとヘリオンを背負ったまま、咆哮を上げてずしずしと二人に迫っていくヒミカ。
 この勢いだと口から炎でも吐きそうである。
 レッドスピリット、新技習得か。

「こ…の、なんて、バカ力―――!」
「そんなに胸が筋肉ばかりで脂肪が無いって言いたいのぉぉっ!?」
「そんなこと誰も言ってませんよぉぉ〜〜!!」

 不毛な言い合いを続けながらもヒミカは進み続ける。
 怪獣の動きが鈍っている間に、ネリーとシアーはアイスバニッシャーの詠唱を始めていた。

「ま、マナよ、我に従え……!」
「氷となりて、力を無にせしめよ!」
「大きい胸はねぇがぁぁ〜〜〜!!!」

 青い姉妹と赤い鬼(+α)が激突しようとした、その時―――!

「もう〜、ケンカはいけませんよぉ〜〜?」

 騒ぎを聞きつけたのか、第二詰め所のお姉さんこと、ハリオンが降臨した。

「あ!ハリオンさん!!」
「ハリオン!良い所に!」
「ハリオーン!お願い助けてぇ〜〜!」
「てぇ〜〜!」

 これぞ天の助け、とばかりに全員ハリオンに援護を頼む。
 が、そこで気が緩んだか、ヘリオン達に一瞬の隙ができてしまった。
 それを見逃すヒミカではない―――!

「おぉぉぉぉっ……!!」
「ひゃぁっ!?」
「しまっ―――!」

 その一瞬でセリアとヘリオンを振りほどくヒミカ。
 枷の解けた獣は、ただ一直線に獲物を狙うのみ―――!


「その胸、もらったぁぁーーーっ!!!」


 床を蹴ってヒミカは一気に間合いを詰める。
 その踏み込みの速さは正に疾風。
 セリアとヘリオンは体制が崩れて動けない、ネリーとシアーの呪文詠唱は途切れている、ハリオンの位置ではヒミカに届かない。
 誰一人動けない中、ヒミカの剣が成長段階の乳房に突き刺さる―――!!


ずがんっ!! びぃぃぃん………


 部屋を静寂が満たす。
 見事に、深々と、疑いようも無く、根元までぐっさりと刺さっていた。
 『大樹』が、ヒミカの目の前に。

 具体的に言うと、投擲された『大樹』がヒミカの顔すれすれを横切って壁に突き立ったということである。
 ヒミカの眼前には未だふるふる揺れている『大樹』の柄がある。
 流石にヒミカも動きを止め、『赤光』はシアーの胸元に刺さる寸前で停止していた。
 恐るべしハリオン。お姉さんパワーは伊達じゃない。←違う

「もう〜〜、駄目じゃないですかヒミカ〜〜〜。
 ケンカする悪い子にはめっ、しちゃいますよぅ〜〜〜?」

 ぷんぷん、と注意するハリオンには威圧感など皆無だったが、そこに居るヒミカ以外のスピリットは全員、以後彼女を怒らせないようにしようと誓ったという。

 ハリオンの言葉にようやく動きだすヒミカ。
 彼女の視線がハリオンのほうへ向き、ふとある一転で固定される。
 しばらくじぃっと彼女の豊かなふくらみを見つめ、その後自分の胸へと視線が移る。
 そしてもう一度ハリオンの双丘に視線が移ると……、


じわっ


「うわぁぁぁん…………」

 泣き出してしまった。それはもう幼子のように。

「あらら〜〜〜? ちょっとやりすぎたでしょうか〜〜〜?」
「……ちょっと?」
「ネリー、しっ」
「多分、そういうことじゃないと思うわ……」
「ヒミカさん……」
「ふぐっ、ぐしゅっ…うぁぁ……」

 ヒミカの涙の理由は説明するまでも無いが、敢て言うなら自分との戦力差を見せ付けられ、堪えきれなくなってしまったと言う事だろう。
 慰めの言葉などかけられない。
 この場にいる全員がその資格を持ちえていなかった。
 ぶっちゃけサイズが大きいか輝かしい未来があった。

「ヒミカ〜、泣かないで下さいな〜」
「ぐすっ…………」


たゆん。


「………うえぇぇぇ」
「ハリオンさん……今は貴方じゃ駄目ですよう………」
「あらら〜〜?」

 ましてやハリオンでは傷口に塩を擦り込むようなものである。

「何の騒ぎですか!?
 …ヒミカ!?皆さん、いったい何が!?」
「……ふぅ、また面倒ごと?」
「………何か、ありましたか?」

 先程の騒ぎとヒミカの泣き声を聞きつけたか、残りのスピリットの面々まで集まってきた。
 しかし彼女達の中にもヒミカを癒す言葉を持つものはいないだろう。
 今彼女に何か言える者がいるとすれば、恐らくかのヨフアル好きの団子髪娘くら(只今ラキオス全国家権力によって粛清されています。しばらくお待ち下さい。)




 十分ほどたって、ようやくヒミカも泣き止み、落ち着きを取り戻していた。
 ついでにナレーションの先程の発言への無礼討ちも終了していた。あイタタタ…

「みんなゴメン。つい頭に血が上っちゃって……」
「…ホント、面倒だった」
「こら、ニム!」
「すいませんでした、ヒミカさん…」
「ヘリオンが謝ることじゃないわよ。貴方はヒミカを止めてくれたんだから」
「そーそー。気にしない気にしない」
「しないしない〜」
「ネリーたちは反省しないといけませんよ〜?」

「「……は〜〜い」」

 とりあえずケンカの件はひと段落。
 ラキオスのスピリットたちの結束は固い。
 こんなことくらいで仲が悪くなるような人はいない。

「それにしてもヘリオン、どうしてそんなに落ち込んでたの?」
「はい……実はコウイン様が……」

『悠人のヤツはエスペリアみたいなばいんばいんがタイプなんだ。
 しかし悲観することはない!ヘリオンちゃんたちのような小さい娘達はこの俺が生涯愛でまくって見せるから!!』

「と仰いまして……」

 ちなみにこの台詞の後、破戒僧が電撃の天誅を食らったのはわかりきった結末。

「つまり今の貴方の胸じゃ愛しいユート様の御眼鏡にかなわないかもしれない、ということで落ち込んでたわけね?」
「はい……ってなんですか『愛しい』って!?
 わ、わわ、私はユート様のことは尊敬する隊長であって真剣な顔がステキだなって思うこともあるけどそれは恋愛感情じゃなくって!」
「ヘリオン…その態度でもう丸分かりですよ?」
「それで隠してるつもりなの?」
「はうっ!?」

 一瞬で首まで真っ赤に染めて硬直する小さき妖精。
 うーん、愛らしい。持ち帰りてぇ。「タイムアクセラレイト!!」 ウヴォアー

「そ、そういえばやっぱりハリオンさんは大きいですよね!? 何か秘密があるんですか!?」

 苦しい。苦しいぞヘリオン。
 そんなあからさまな話のそらし方に乗るようなヤツは―――

「うふふ〜〜。それはみんなのお姉さんだからですよ〜〜〜」

 ―――いたようです。
 しかし答えるハリオンの顔は普段よりもニヤケ具合が増している気がしたが。

「それじゃ理由になってないよー。年ならヒミカとハリオンおなむんぐぐっ!?」
「ネリー……駄目」
「またヒミカさんが爆発しちゃいますよっ!」
「さっきと同じ轍を踏むですか貴方は!」

「………バカ」

 いつものようにネリーのそばにいたシアーと、スピード勝負のブラックスピリット、ヘリオンとファーレーンの三人の活躍によって二次災害は水際で阻止された。
 ヒミカの背後から陽炎の様に何かが立ち上るのは気にしない。気にしたら負ける。

「………そういえばナナルゥ、あなたは?」

 何とか気を紛らわそうと、ヒミカが先程からいるが、会話に参加しないレッドスピリット、ナナルゥに声をかける。
 まぁ、ナナルゥが会話に参加しないのはいつものことなのだが。
 しかし何か聞けば機械的ながらもナナルゥは必ず答えを返す。それに最近はナナルゥ本人の意思というものもおぼろげながら感じられるようになり、部隊仲間は皆ひそかに喜んでいる。
 そんな彼女から今、驚天動地の新事実が告げられる。

「詳細は不明です。恐らくハリオンと同程度と推測します」

 ………
 ……
 …

「え〜と、ナナルゥ? 悪いんだけど、もう一度言ってくれない? 耳がちょっとおかしかったみたいで…」
「了解。 詳細は不明です。恐らくハリオンと同程度と推測します」


「「「「「「「!?」」」」」」」


 数秒前と一字一句変わらぬナナルゥの発言はハリオンを除く全員に多大な衝撃を与えていた。

「そうなんですか〜。ナナルゥ、ちょっと見せてくれませんか〜?」
「ちょ、ちょっとハリオン!?あなた何言い出す「了解」」
「って、待ちなさいナナ――」

 止める間もなく、するりと淀みなく上着を脱ぎ捨てるナナルゥ。
 更に下着まであっさり脱ぎ捨てると、


ぷるんっ♥


 というありえない音を全員が聞いた。

「う゛わぁ〜〜」
「…わぁ〜〜〜」
「そんな………」
「嘘……嘘よ………」
「あらあら〜〜」
「……むぅ」
「そ……そんなに………」
「ふぁぁ………」

 正に十人十色という声が漏れた。
 惜しげもなく晒された果実は確かにハリオンの大きさに迫る。
 ハイペリアにて「私、脱いだらすごいんです」と言った人が居たらしいが、正にそれを体現している。
 服の下にこんな兵器を隠し持っていたとは、ナナルゥ侮り難し。

「これは私も本気を出さないといけませんねぇ〜〜」
「ってハリオンもいつのまにか脱いでるしっ!!」
「し〜」

 いつものスローペースはどこ吹く風、素早く衣服を脱いでいるハリオン。
 スピリットの中でも随一の大きさと思われていた胸が『ふよん』と放り出されている。

 比べてみると、ハリオンが全体的にふっくらといったイメージで、ナナルゥは出るところが出ている、といった体型だろうか。
 つーかハリオン、本気って何だ。

「お姉さんとしてはこの勝負、負けられないんですよねぇ〜〜」
「………何の勝負ですか?」
「それはもちろん〜、女の証であり母性の象徴である、おっぱいの勝負ですよ〜〜♪」

 意味のわからないことを実に楽しそうにしゃべりつつ、ハリオンはナナルゥへゆっくり接近していく。
 その笑みはいつもと微妙に違う、好敵手を得たことへの喜びが浮かんでいた。
 と、視線を転じるといじいじと部屋の隅っこで「の」の字を書き続けているヒミカがいた。

「どうせ………どうせ私は洗濯板の筋肉娘よ……。
 あんな『ぷるん』や『ふよん』になるなんて一度再生の剣に浄化されない限り無理なのよ………」
「しっかりしてヒミカ。
 私だって昔は小さかったけど、ニムが時々「お姉ちゃんっ!!!」」

 …ナニをしてるんですか、貴方達姉妹。

「そ、それじゃ私もユート様に揉まれればハリオンさんみたいな大きさにっ!?」

 いやそれは無理だろう。おっきなヘリオンなんてヘリオンじゃないっ!!!

 がやがやと外野が騒がしい間に、ハリオンはナナルゥの前まで移動していた。
 そしてひょいと両腕を伸ばし……

「それでは〜〜、勝負開始ですよ〜〜〜♥」


むにゅん♥


 ………ナナルゥの乳房を鷲掴みにしていた。

「う〜〜ん、これは本当に大きいですねぇ〜〜〜♪」
「………何を、しているのですか?」
「もちろんナナルゥの胸の大きさを調べてるんですよ〜〜♪」

 いつもと変わらない落ち着いたナナルゥの声にハリオンは嬉々として答える。
 そんなやり取りの間にもハリオンの指の動きは止まらない。
 戦争時には槍を振るうということなど微塵も感じさせない白い指が、ナナルゥの豊かな双丘をぐにぐにと弄りまわす。
 十本のそれはそれぞれが独立した生物の如く蠢き、そこに手の平も加わり、一時も形を留めることを許さない。
 他のスピリットの皆は、ハリオンのあまりに突飛過ぎる行動に呆然としていた。

「―――はっっ!?
 な、何してるのよ針恩あなたはぁぁーーーーっ!?」
「だからぁ〜〜、ナナルゥのおっぱいの大きさを調べてるんですよ〜〜〜。
 それとヒミカ〜、私の名前の変換が間違ってますよ〜〜〜」

 いち早く我に返ったヒミカがハリオンを止めようとするも、まだ完全には混乱が直っていなかったらしい。
 …つーかなぜ分かった?ハリオン……。

「貴方が素手で調べる必要はないでしょっっっ!?
 メジャーを持ってくるからちょっと待ってなさいっっっ!!!」
「え〜〜、それじゃ揉み心地が分からないじゃないですか〜〜〜。
 勝敗は大きさ、形、揉み心地、感度、その他色々を競って決まるんですよ〜〜〜」
「誰が決めたのっていうより今すぐ破棄しなさいそんなルール!!」
「ほら〜〜〜、ナナルゥも確かめてみて下さいな〜〜〜」

 ハリオンがナナルゥの片腕をつかみ、自分の胸に手を押し付ける。


ふにょん♥


 ハリオンの性格の如く柔らかなソレは少しの圧力でやすやすと形を変えた。
 ナナルゥはハリオンの胸に置かれている自分の手をただじっと見つめていた。
 実は一番混乱しているのはナナルゥなのかもしれない。

「って人の話を聞きなさいよっ!!」
「大丈夫ですよ〜、女の子同士女の子同士〜〜♪
 ほらほらナナルゥ〜〜、貴女も揉んでみてみなさいな〜〜〜♥」
「……こう、ですか?」


ふにふにゅ。


「あんっ♥そう、そんな感じですぅ〜〜。どうですか〜〜?私の胸は〜〜〜♪」
「とても、大きいです。私の手では掴みきれません。
それに柔らかいです。指がどこまでも沈んでいくようです」
「ナナルゥの胸こそ大きくて〜、弾力も凄いですよぉ〜〜。揉んだ指が押し返されちゃいます〜〜〜♪
 …やんっ、ナナルゥ、そこはくすぐったいですよぉ〜〜〜♥」
「……んっ……なにか……胸が、むずむずします………」


むにぃっ…もにゅうぅ……ぎゅむむっ………

ふにゃふにゅっ……むぎゅうっ………


「あふんっ…ううん………んはっ」
「……ふうっ……っ……」

 次第に二人の間に会話は交わされなくなり、聞こえるのは互いの悩ましげな吐息だけである。
 しかし二人は相手の胸を揉みしだき続ける。
 先程から静かな他の面子は、ハリオンたちを止めるどころか、むしろ見入ってしまっていた。
 おっとり美人のハリオンの妖艶な微笑み、普段寡黙なナナルゥのほんのり染まった頬。
 その二人の手によって形を変え続ける四つの突きたての餅の様な胸部。
 免疫の少ないラキオススピリット陣には刺激が強すぎるようです。

「あ、貴方達っ!もうその辺にしておきなさいってばっ!!」

 と、なんとかそこへヒミカが立ち直ってハリオンたちを止めようとする。
 しかし彼女も免疫が少ないのは同じ。必死で上げた声は上擦り、迫力もなかった。

「ふうぅっ………。
 ………え〜〜?まだ勝負の途中じゃないですかぁ〜〜〜」
「あなた達の胸が規格外に凄いのは十分よく分かったから!
 このままじゃこのSSが18禁になりかねないでしょうが!!」←禁句っ!!!
「う〜〜ん……
 …それじゃぁ〜〜〜、ヒミカも混ざっちゃいましょう〜〜〜♪」
「………は!?」
「そうすればヒミカも共犯ですから〜〜。もう文句は言えないという寸法ですよ〜〜〜♪」
「ど、どうしてそうなるのよ―――」
「ナナルゥ〜〜、援護お願いしますぅ〜〜〜♥」
「了解」
「な、ナナルゥ!?ちょ、やめなさ―――きゃあっ!?」

 おおひみかよ、しんでしまうとはなさけない。
 憐れ、勇者はあえなく魔物たちの毒牙にかかり、宴の贄にされてしまいましたとさ。

「は、ハリオぉン……ホントに、やめてっ…お願いだからぁ……」
「だって〜〜、そんな涙目で上目遣いをされたら余計にやめられませんよ〜〜〜。
 うーーん、ヒミカの胸は確かに薄いですけど〜〜、感度はバッチリみたいですね〜〜〜♪」
「服の上からでも、硬い部位が分かります」
「やだぁ……言わないでぇぇ……はんッ!?」
「なるほど〜〜、これがコウイン様が言っていた『萌え』というものなのですねぇ〜〜〜♪」
「…可愛いです、ヒミカ」

 ヒミカまで加わって形成された妖しげなトライアングル。
 三人が放つ熱は更に上昇していき、周りにいるスピリットまで巻き込もうとしていた。




「…ね、ねぇシアー……」
「………?」
「あ、あれってさー、……気持ちいいのかな……?
「……わ、わかんない」
「ひ、ひょひょっとして、ああいうことしてるから、ハリオンさんは胸が大きくなったんでしょうか………?」
「…………」
「…………」
「…………」
「………試してみよっか?」
「…うん」
「ふ、ふえぇぇぇっっ!?!?」




「あ、あうううぅ………」
「も、もう、お姉ちゃん?そんなにじっと見なくても………」
「えぇっ!?そ、そんなじっとなんて見てないわよ……」
「ふーーーん……」
「ほ、本当よ?あんなの、じっと見つめられるわけ無いじゃない………」
「…………」
「…………」
「………ねぇ、お姉ちゃん…」
「な、何?」
「ユートはやっぱり、胸が大きいほうが好きなのかな……?」
「え!?い、いいえ、そんなこと無いと思うわよ?
 ほら、カオリ様だってそんなに大きいとはいえない大きさだったし、むしろ小さいくらいで―――」
「……お姉ちゃんは、胸、大きいよね」
「そ、そんな、ハリオンやナナルゥほどは無いわよ―――」
「…ニムはそんなに大きくないのに………」
「……そんなことないわよ。ニムだってそれなりにあるじゃない?」
「ねえ。お姉ちゃん―――」
「………何?」
「…………」
「…………」
「………“また”、おっぱい、大きくしあおうか?」




「み、みんな、いったい何やってるのよ……」
(と、止めなきゃいけないに……体が動いてくれない……)
(そんな、胸の大きさなんてどうでもいいじゃない………)
(ましてやユート様がどう思うかなんて………)
(………)
(も、揉むと大きくなるって……本当なのかしら?)
(わ、私は何考えてるの!?大きさなんてどうでもいいって言ったばかりじゃない!!)
(…………)
(………でも……)
(ちょっとだけ………少しだけ試すくらいなら………問題ない…わよね?)




「くうぅ……これこそ正に極楽浄土……」

 同時刻、第二詰め所の窓に張り付いてハァハァと息を乱す炉理坊主がいた。
 名前は高嶺悠人、じゃなくて碧光陰である。
 先程ヘリオンに会った時、懲りずにモーションをかけてみたが敢え無く失敗。
 毎度の如く雷のハリセンを喰らいました。
 しかしこれしきではくじけないのが光陰の強さ。
 ヘリオンに謝ると称して第一詰め所を抜け出し、隙あらば再びヘリオンに迫って見せる、と黒い野望を燃やしながらやってきたのだった。
 しかし何やら詰め所の様子がおかしいことに気づき、窓から様子を伺ってみたところ、そこは正にユートピアだったわけである。

「ね、ネリーちゃんとシアーちゃんとヘリオンちゃんが絡み合ってる!?
 あぁ、ファーレーン、ニムントールちゃんの胸は俺に任せて欲しいぞぉぉぉっ!!
 しっかし……大きい娘たちもこれはこれで……
 セリア……真っ赤になって自分でなんて可愛いところあるじゃんか……。
 しっかしハリオンとナナルゥはやっぱすげぇ………
 しかもヒミカがボーイッシュだからなんか可愛い男の子がお姉さん二人に襲われてるみたいでハァハァ」

 只今光陰は怪しさ爆発煩悩4049%でお送りしております。
 大変御見苦しいところがございますがその怒りは作者に向けないでいただけると大変ありがたい所存です。

「ああーーーっ、何でこの世界にはビデオカメラが無いかなぁ!?
 今この瞬間この場面は正に永久保存版だってのに!!!」
「電気は凄く身近にあるってのにねぇ?」
「そうそう、俺や悠人に喰らわす以外に利用法は幾らでも、ある、だろうに………

 自分の背後から聞こえるはずの無い相槌が放たれ、光陰の声は尻すぼみに小さくなる。
 体が硬直し、全身を脂汗が流れる。
 光陰は振り向けない。振り向けば地獄が待っていることが分かっているからだ。
 しかし光陰が振り向かなかろうがどのみち地獄はやってくる。
 地獄の鬼―――今の光陰にとっては―――はバチバチと強力な雷のオーラフォトンを溜めていた。
「えーと……どうしてここに?」
「アンタの帰りが遅いから、ひょっとしてまたヘリオンたちにちょっかいかけてるんじゃないかと思って見に来たのよ………。
 まさか覗きをしてるなんて思いもしなかったけど、さ………」

 振り向かなくても光陰には容易に想像できる。
 稲妻をハリセンに纏わせて構えている自分の思い人、今日子の姿が。
 ちなみに想像の中の今日子はにっこり笑ってこめかみに青筋を浮かべていた。

「で?何か申し開きはある?光陰?ん?」
「ここまできた以上、ない。しかしひとつだけお願いがある」
「何よ?」
「後十秒ハリセンは待ってくれ。ヘリオンちゃんたちの艶姿を脳裏に叩き込んでおかなきゃいけないんでな」


「こぉんの、アホんだらぁ――――っっっっ!!!」


 光陰の遺言は聞き届けられることなく、閃光の中に消えていくのであった………。




ずどおぉぉぉぉぉん!!

「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」

 いきなりだが聞き慣れた爆発音に部屋の中の妖しい空気が吹っ飛んだ。
 全員夢から覚めた様に目の前の相手からばっと距離をとる。
 といってもハリオンは年中夢を見ているようだし、ナナルゥも動揺しているのかどうかはその無表情からは判別できなかったが。
 例外を除いて少女たちは顔を真っ赤に染めて胸を隠すようにかき抱いている。
 特にヒミカは、顔はおろか首まで自分の赤い髪よりも赤く染めてしまっていた。

 しばらく誰も声を発することができないでいると、コンコンと窓をノックする音が響いた。
 その音にびくっとほとんどの者が過剰反応してしまう。

「は〜〜〜い、どなたですか〜〜〜?」

 が、ハリオンはマイペースに訪問者に応答していた。
 しかもいつの間にか自分だけでなく、ナナルゥの衣服まで正して、である。
 彼女のマイペースさがスピリットたちにとってこれほどありがたく感じられたことは恐らく無かったであろう。
 反応が返ってきたのを確認したのか、ガララと来客が窓を開いた。

「こんばんは。ごめんね〜、騒がしくしちゃって」
「何いってるんですか〜〜。キョーコ様達の夫婦漫才はいつものことですのでお気になさらず〜〜〜♪」
「な、何時アタシが光陰と夫婦になったのよっ!?」
「あらら〜〜?私はコウイン様の名前なんて一度もいってませんよ〜〜〜?」
「うぐ……。
 っと、話がそれちゃったわね。今の雷はちょっとバカをシメただけだから、敵襲でもなんでもないってことを一応報告しておこうと思ったの。
 ネリーたちが眠ってたりしたら悪かったと思ったけど…起きてたみたいね」
「え!?う、うん!!」
「…え?うん」
「それだけ。騒がしくして悪かったわね。おやすみ」
「は〜い。お休みなさ〜〜い」

 ピシャっと窓が閉まり、今日子は去っていった。
 その後もしばし部屋の中には気まずい空気が流れ、ハリオン以外は黙ったままだった。
 そのまま一分ほど経って、ようやくセリアが口火を切った。

「……何時までもここにいてもしょうがないわね。
 明日も訓練があるんだから皆さっさと眠りなさい」
「……そ、そうですね。ほらニム、行きましょ?」
「……お風呂、入りたい」
「あ、私も入りたいです………」
「ネリーも入るぅーー」
「シアーもー」
「私も入るわ。記憶を全部お湯と供に流してしまいたいから……」
「それじゃ全員入るということになるのかしら?順番を決めないと……」

 全員さっきの出来事でかなり汗をかいたらしく、次々に入浴への希望があがる。
 そんな中、ハリオンののほほんとした声が上げられた。

「私とナナルゥは後でかまいませんよ〜〜。勝負の続きをしますので〜〜〜」
「…ってあなた達、まだするつもり!?もう引き分けということにしておきなさいっっっ!!!」
「大丈夫ですよ〜〜。今度はおっぱいを揉み合うとかそういう内容じゃありませんから〜〜。
 それに皆がお風呂に入っている間に勝負するから見られるという事もありませんし〜〜〜」
「はぁ……ナナルゥ、貴方はいいの?」
「はい。構いません」
「………分かったわ。さっさと済ませてハリオンを満足させてあげなさい」
「了解」

 そしてハリオンとナナルゥは居間を出て行った。
 そして残った者達は風呂に入る順番を決める。
 ハリオンたちのことを気にすることができぬ程、全員疲れ果て、頭が麻痺していたのだ。

 後にこのやり取りを思い出すと、ヒミカは腹の底から後悔するという。
 この時もっと強く止めていれば、あんなことにはならなかっただろうに、と―――。




「それじゃ〜ナナルゥ、行きましょうか〜〜♪」
「…どこへ行くのですか?」

 二人は第二詰め所を出て、夜の道を歩いていた。
 もうそれなりに遅い時間。森林が近い詰め所付近では明かりは少なく、かなり暗い。

「し〜〜っ。これからはおしゃべり禁止ですよ〜〜。誰かに気づかれるとアウトですから〜〜〜♪」
「…どこへ、行くのですか?」
「うふふ〜〜〜。それはですねぇ〜〜〜」

 ぴた、とハリオンの足が止まる。目的の場所に着いたらしい。
 そこは見慣れた建物の前だった。恐らく第二詰め所の次にラキオススピリットが愛着を持つ建物。
 ハリオンはその建物―――第一詰め所を指差し、告げる。

「ユートさまの部屋ですよ〜〜〜〜♥」




「エレメンタルブラスト〜〜〜」
「ぐはぁぁっ!?」


ちゅどーん。


 部屋で眠っていた悠人はいきなりの衝撃で目を覚まされた。
 敵襲か、と思い『求め』をとろうとするも身動きができない。
 ダメージは少ないが、とにかく動くことができない。まるで守護者のブレスを喰らって行動回数を削られたような―――

「お目覚めですか〜?ユートさま〜〜♪」
「こんばんは」

 ―――上から降ってきた声に悠人の思考が止まる。
 暗い部屋の中、目を凝らしてみると、ハリオンとナナルゥが横になっている悠人を覗き込んでいた。

「は……はりおん、ななるぅ、どういうつもりだ?」
「それはですねぇ〜〜、ユート様に審判になってもらいに来たんですよ〜〜〜♪」
「し……しんぱん?」

 予期せぬ単語に混乱する悠人。
 そんな悠人の様子を実に楽しげに眺めながら、ハリオンの説明は続く。

「実はですねぇ〜〜、先ほどナナルゥとどちらのおっぱいが優秀かということで勝負してたんですよ〜〜〜」
「そ…そうなのか」
「ナナルゥったら大きさも形も揉み心地も感度も最高で〜〜、強力なライバル出現なんですよ〜〜〜♪」
「は……はぁ」
「これは甲乙付け難いということで〜〜、それなら第三者に勝敗を決めてもらおうと思ったんですよ〜〜〜♥」
「なぁ……話の流れとこの状況から察すると、まさかその第三者って」
「も・ち・ろ・ん・ユート様のことですよぉ〜〜〜〜♥」
「できるかぁぁーーーっ!!そういうのはヒミカたちにでもたのめばいだろうがぁぁぁーーーっっっ!!」

 力の限り叫んだつもりだったが、エレメンタルブラストの効果が効いているらしく、大きな声を出すことができない。
 しかも今この第一詰め所には悠人以外誰もいない。
 アセリアとウルカ、オルファは夜警に行っている。
 エスペリアはまた何かやらかして今日子に黒焦げにされた光陰の治療に行ってしまっていた。
 なにやら今回はかなり手ひどくやられたらしく、城の医務室に担ぎ込まれたが、エトランジェなら神剣魔法を使ったほうがいい、と急遽エスペリアが呼び出されたのである。
 つまり、誰かに助けを求めることもできないということだ。スイマセン、御都合主義全開です。

(こんなことなら光陰を見捨ててでもエスペリアに残ってもらうんだった………!)

 何気にかなりひどいことを考える悠人だった。

「そんなわけでユートさま〜〜、しっかり判定してくださいね〜〜〜♪」
「な、ナナルゥ…頼む、ハリオンを止めてくれ〜〜〜」
「…不可能です。それに……」

 悠人の必死の頼みをあっさり退けたナナルゥが、珍しく言いよどむ。
 なにやら頬を赤くしながら、悠人の目をはっきり見つめ、言った。

「…決めてもらうなら、ユート様を希望します」

 …それは、殺し文句だった。
 ナナルゥの思わぬ言葉に悠人の顔も赤くなっていく。
 そんな二人の様子をあらあらとでも言いたげにハリオンは見ていた。

「それじゃ始めましょうか〜〜。ユート様〜、しっかりご賞味くださいねぇ〜〜〜♥」
「……お願いします」

 二人の衣服がはだけられ、合計四つの果実が悠人の眼前にさらされた。
 それはさながら禁断の果実エデンのリンゴ。一度味わってしまえば戻れなくなると分かっていても、手を伸ばさずにはいられない。
 悠人も体の自由が利いていたならとっくに手を伸ばしていただろう。
 そんな悠人を見て一人は微笑み、一人はほんの少し赤らんで、勝負が始まる………。

「お姉さんは負けませんよ〜〜〜♪」
「先制攻撃、決めます」
「あぁーれぇー!?」




 それから勝負の行方がどうなったのか、そして悠人はどうなったのかは別のお話。
 敢てあげるなら、ハリオンとナナルゥの服の胸部が更にぱっつんぱっつんになってきたようで。
 スピリットの年少組が悠人に胸を揉んで欲しいと頻繁にねだるようになって。
 しかもねだるのが年少組みに留まらなくなって来て。
 悠人の代役に志願しようとした光陰が毎度の如く雷を落とされて。
 悠人が偶然出会ったレムリアまで胸の話を持ち出してきて。
 そして悠人のそばにハリオンとナナルゥがいることが多くなったという。

 でもそれは別の話ったら別の話。


終わり?


後書き

 ご無沙汰しています。もう記憶から消去されているはず、4049です。
 今回はほぼサブキャラのみで固めてみました。

 今回の作品についてまず一言。

 ヒミカとセリアが書き分けられねぇーーー!!!

 うう、未熟だ自分(涙

 え、そんなことより言うことがあるだろうって?
 そうですね、とりあえず。

 さぶすぴファンの皆様、ごめんなさいぃいぃーーーーー!!!
 そして光陰ファンの皆様もごめんなさいぃぃーーーーー!!!

 書いているうちにどんどん内容が妖しげなことに……
 これが若さか…

 胸の大きさについては自分の勝手な想像ですので、あまり突っ込まないでいただけるとありがたいです。
 しかし書いといてなんですが、誰がどの発言か全部分かるようにできたでしょうか…(汗

 この作品を泡となったPS版サブスピルートに捧げます。
 最後に。こんな怪しい作品を読んで下さった人に心からの感謝を。

作者のページに戻る